古賀志山大外、馬蹄形ルートと鞍掛山ルート17キロを歩いてみた。

2021年4月22日(木) 晴れ(強風)

こういうときは一気呵成に突き進んだ方がいい。
いつまた病気で歩くのもままならなくなるかもしれないし、加齢とともに体力と気力は衰える一方だし、そこからの快復は並大抵の努力ではなしえない。
高齢者にとって好調な時間は長続きしないものなのだ。

3月18日から始めた古賀志山の花の探索は、昨年9月に発症した帯状疱疹の後遺症で動くのが辛くて一気に萎えた身体と気力にむち打って、半ば無理やり始めたものだが、なんとか週一ペースを保っていて前々週は鞍掛山ルート12キロ、前週は馬蹄形ルート14キロを歩き通すまで快復(まだまだその途上だが)した。

平地の10数キロとは違ってアップダウンが連続する古賀志山は、累積標高がアップダウンの数に応じて大きくなるから、10数キロの距離でも身体にはそれなりの負荷がかかる。
それを週一でおこなうことで筋肉が付き、心肺能力が高まっていく。

より難易度の高い山(危険な山という意味ではなく)を疲れずに登る身体を作るには、生まれ持って高い身体能力を有する人を除いて、管理人のような非力な体力の者には今の筋力、心肺能力よりも高い負荷をかけることを継続しておこなっていくしか方法はない。

このブログになんども書いていることだが、古賀志山はわずか4キロ四方という狭い山域ながらルートが100本以上あるとされ、それらルートを組み合わせることで距離と時間、累積標高を自在に調節できる大きなメリット、魅力がある。
その古賀志山に取り憑かれて7年目になった。
回を重ねるうちに季節(花や新緑、紅葉など)や気分(ゆるく歩きたい、岩場を歩きたいなど)、許せる時間(朝のみ、午後のみ、フルタイムで)によってルートを設定すれば、望む山行のほとんどが実現できることがわかってきた。
体力の維持増強にこれほど相応しい山はないと管理人は断言する。

「一気呵成」とは、勢いづいているときにやりたいことを一気にやり遂げてしまおうという意味で管理人は用いているが、それほどに年寄りにとって、やれるチャンスは少なくなっているというのが現実である。
そのチャンスはまさに今だ。
逃してはならない。

この春の仕上げとして、前々週の鞍掛山ルートと前週の馬蹄形ルートを組合せた、古賀志山大外ルートを歩くことを課題とした。
鞍掛山ルートが12キロ、馬蹄形ルートが14キロだからその合計26キロを一日で歩く、というわけではない。 両ルートをつなげて歩く場合、両ルートに共通する古賀志山中央稜は歩かないから、距離は26キロより短くなる。
とはいえ、各ルート単体よりは長くなるので筋力と心肺能力の強化に相応しい。

直近だと昨年3月に歩いているが、そのときの結果は距離16.7キロ、所要時間7時間57分、累積標高は1866メートルだった。
その前は2017年で距離19.9キロ、所要時間9時間46分、累積標高は2238メートルだった。
さらにその前だと2016年が距離18.7キロ、所要時間10時間36分、累積標高は2113メートルだった。
同じルートを歩いているのにそれぞれの結果が大きく異なっているのはそのとき時で使うGPSが異なっていたり、ルートを少し変えたりしているという理由による。
2016年、2017年はGARMINまたはHOLUXのPGSを使っていた頃で、管理人はこれにもっとも大きな信頼を置いている。 その後、地理院地図を画面に表示できるGeographicaというスマホの地図アプリを使うことになったが、正確性はスマホが内蔵しているGPSによって左右されるため信頼は置けない。メーカーが異なるスマホ4台を同時に試したことがあるが、結果はまちまちだった。 正しいのは所要時間だけだった。
したがってGeographicaは結果を知るために利用するのではなく、地理院地図をスマホの大きな画面に表示させ、ナビゲートするために利用するのがもっとも賢い方法である。

今回は2016年と2017年のGARMINでの記録を参考に、距離18~19キロ、所要時間10時間、累積標高2000メートルを頭に入れて計画を組んだ。
2016年、2017年、2000年とも起点を宇都宮市森林公園としたが、順路は鞍掛山ルートから馬蹄形ルートへ廻る左回りだった。
今回は先に馬蹄形ルートを歩き、次に鞍掛山ルートを歩く右回りとした。
これには明確な理由があって、体力にまだ十分な自信を持てない現在、万が一のことを考えたのである。
鞍掛山ルートに比べると馬蹄形ルートの方が距離が長くなおかつ、アップダウンが多いため累積標高は460メートルほど大きくなる。
そこで午前中、まだ元気なうちに馬蹄形ルートを歩けば午後は楽になる(という安易な見通し)。 また、鞍掛山ルートに入れば数本のエスケープルートがあるので有事の際はリタイヤして森林公園にショートカットで戻ることができるというメリットがあり、それを考えたわけである。

計画段階で課題としたのはふたつ。
馬蹄形ルートは岩場が数多くあるが鎖を一切使わず上り下りすること。
これは長い空白で鈍った岩場での勘を取り戻すためでもある。
もうひとつは課題と言うより願望に近いが、所要時間8時間を切りたいというものだ。
山中での早歩きは決して勧められるものではないが、これまでで昨年3月の7時間57分が最短であった。
この頃はスポーツジムに通っていて体力、気力が充実していた時期で自信(慢心ではなく)があった。
その一年後の今、どん底から脱しつつある己の体力、気力が本物かどうかを是非とも確認したい。 それには実践で試すしか方法はない。

結果(今回はHOLUX製のGPSロガーで記録)
・歩行距離:17キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:7時間37分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:1979メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)
※腰を下ろして休憩したのは2回、計15分だった。
※写真を撮るのを極力抑えたつもりだが、それでも長年の習慣で300枚を超えた。
※1枚撮るのに10秒かかったとして、それも休憩と考えれば計50分。

いつもの宇都宮市森林公園には7時45分に着いた。
荷物を再点検し靴ひもを締め、トイレを済ませるなどして8時を待った。
経過時間を把握しやすいように8時に歩き始めた。
なお、起点となる宇都宮市森林公園には時間制限のある大駐車場とそのすぐ隣に時間にとらわれずに駐められる駐車場がある。
想定している所要時間10時間だと下山は18時となり、大駐車場は閉まっていることが考えられるため、隣の駐車場を利用した。


まずは赤川ダムの堰堤に立ち古賀志山をパチリ。
今日は古賀志山から始まる主稜線を北ノ峰まで行き、次に手岡分岐まで行き、そこで鞍掛山ルート(北主稜線)に乗り換えて森林公園に戻ってくる、推定18~19キロを歩く予定だ。


すべての道は古賀志山に通じるといわれるほど、古賀志山は山域の要となっていて、山頂へ向かう道が多い。
今日は距離が短くまた、岩場を使うことで一気に標高が稼げる東稜ルートを使うことにした。


もう間違えることはない、フモトスミレ。


東稜ルートは明るく歩きやすいのがいい。
今のうちは、、、


歩くにつれて傾斜は次第に厳しくなってくる。


ルートはやがてこのすぐ先で東南稜と交わる。


東南稜と交わって最初に出合う岩は落差5メートルほどの垂直に近いこれ。
太くしっかりした鎖が取り付けられているが、岩場での勘を取り戻すために鎖は使わず、両手両足で上がって行く。
鎖の左側の溝(影になっている部分)を伝い、最後に鎖の支点となている木に移動すると上がりやすい。


中間に緩斜面のある岩を超えて最後にこの岩を上る。
2段になっていて上段は高さ2メートルほどの垂壁。
幅1メートル強の岩の両側に手と足をかけて慎重に上がって行く。


岩を上り終えて東稜見晴台の上に立つと展望が一気に広がる。


見晴台とは稜線続きの古賀志山山頂へは5分とかからない。
さて、これから長く、アップダウンが連続する古賀志山主稜線を北ノ峰まで行く。


御嶽山


御嶽山は西側の展望が良く、この時間、日光連山が一望できた。
画像中央の雪を被った山が白根山で、その右に男体山、大真名子、小真名子、女峰山、赤薙山と続く。
白根山の左には錫ヶ岳と皇海山が見える。


主稜線は幅50~100センチ幅の岩で構成されていてそれがアップダウンしているため歩くには細心の注意を必要とする。
この岩にも鎖がかかっている。
足場はしっかりしているので鎖を握って上がる限り問題はないだろう。
ここも鎖には手を触れなかった。


幅50センチしかない尾根の両側は切れ落ちている。
草木があるので恐怖感はあまりないがそれは見かけだけで、足を滑らせたら崖下に転落すること間違いなしといった危険をはらんでいる。


開いたばかりのヤマツツジとそれより前に咲いたトウゴクミツバツツジ、その向こうにマルバアオダモ。


ここは下る。
鎖を使わない場合、鎖に沿って下るのではなく上から見て鎖の右側の溝(チムニー状の)を利用するといい。
木の根っ子が吊り輪のごとく露出しているので鎖の代わりに利用できる。


岩を下りると今度は地盤から根っ子が露出した急斜面を上がって行く。
そこに20数株のヒメイワカガミが生育していてちょうど見ごろを迎えていた。


主稜線はこんな岩も超えて先に進むがここなど可愛らしいものだ。


赤岩山はさっと通過。
主稜線で残すピークは北ノ峰だけとなった。


主稜線の末端、北ノ峰に到着。
ここまで写真を撮るほかに立ち止まることなく歩いて来たので小休止としよう。


昨夜買っておいた菓子パンを半分だけ食べ、5分後には立ち去った。
ちなみに、この菓子パン1ヶで303キロカロリー。その半分を食べておけば2~3時間分のエネルギーにはなる。


馬蹄形ルートも後半になった。
北ノ峰から先、腰掛岩への上りに差しかかるまで下り一方になる。
ここは地面が濡れていると確実に滑る急傾斜だがここ数日の好天が幸いして快適に下れた。


最後に平坦になるとその先は深い桧林になる。


毎度のことながら、ここは踏跡が薄く、それに尾根になっているが茫洋としていて下りだとどこを歩いていいのかわからなくなる。
この下に目印となるプレハブ小屋があるのだが、尾根を歩き続けると目標から外れてしまう。


尾根の途中で進路をほんの少し右に変えなければならないところだが、尾根を歩きすぎて遠回りして目標のプレハブ小屋にたどり着いた。2分のロス。


小屋を通り過ぎて左へ1回、右へ1回、直角に曲がると日光市との境界線上にある明るい林道に出合う。
ここを横切り、堰堤工事をしている川(流れはない)を横切り、さらにもう1本の林道(林道内倉線)と出合ったところが腰掛岩の登り口になっている。


林道の脇を入るといかにも手作り手書きといった道標があるので矢印にしたがう。
ここから鞍掛山まで長い縦走路となるが手岡分岐までは日光市内を、手岡分岐から先、鞍掛山までは日光市との境界線上を歩く。
日光市のエリア内だが山容でいえば日光市の山とは異なり、変化に富んでいてその上、明るく展望がいい。


今日は花の探索は休止して歩くことに集中すると決めた。
花、特に背の低い花を写真に撮るには地面に膝を突き、息を潜めてシャッターボタンを押してそれから立ち上がるという動作を強いられ、疲れるのだ。
それを今日は極力やりたくない。
とはいうものの習性とでもいうのか、花を見つけると反射的にカメラを取り出してカシャカシャやり始める。
ただし、今日は座り込むことはせず、中腰で撮ろうとしたためにカメラが定まらず、接写はピンボケだらけ(笑)


腰掛岩直下の岩場と補助鎖。


真横から見ると学校の椅子のように見えるが、下から見上げる腰掛岩はこんな様子。


腰掛岩から眺める鹿沼市の二股山。


腰掛岩での休憩は写真を撮る10秒ほどで先へ進み、鳥屋山(とややま、444m)まできた。


鎖がかかった岩をふたつ続けて下りる。
これらも鎖に手を触れることなく下りたのは計画時点で決めたとおり。


いやぁ今の季節、どこを歩いてもふわふわした綿帽子のような白い花、マルバアオダモがよく目立つ。気持ちまでふんわりする。


このピーク状のところで道は左右に分かれるので左へ行く。


管理人はいま林道の上に立っている(赤い矢印部分)、はずなのである。
ここを通るたびに疑問に思っていることなのだが、地理院地図(※)で見るとここに稜線の鞍部を横断するように林道(幅3メートル未満の軽車道)が描かれている。
その林道が形跡すらないのだ。
たとえいまは廃道と化しているとしてもその形跡は残っているようなものだが、前後左右見渡しても獣道すら見当たらない。
不思議で仕方がない。
いずれ機会があればこの林道の南、他の林道と交わる辺りを探索し、林道の形跡を見つけ出し、そこから歩き始めてここまで来てみたい。

スマホは京セラのandroidone(V.10.0)で地図はスマホ用の地図アプリGeographicaで表示している。


その林道の数メートル先にある239号鉄塔へ向かう巡視路。
この巡視路が林道を指しているのかと当初は思ったが、鉄塔の位置は林道から北東に120メートル離れているし、巡視路の反対側つまり画像の右下には道がないことから、巡視路は林道とは別物であると考えるべきだ。
まっ、あまり考えすぎると時間が消費されるばかりで先へ進まないので、帰宅したら地理院地図とにらめっこしながら考えよう。


根を上げるほどの長い急傾斜を上がって行く。
これを上がれば手岡(ちょうか)分岐。
そこで昼飯にしよう。
そのためにも立ち止まることなく
頑張ろう。


つ、ついに手岡分岐だ。
馬蹄形ルートはこれで終わった。
ここから鞍掛山ルートへの縦走路、北主稜線に替わる。
ひと区切りついたのでここでひとまず休憩、としたいところだが、
この日は歩き始めて間もなくこれまで強風に見舞われてきた。
渦を巻きながら容赦なく吹きつける風に戦意を失い、ここでの昼飯は諦めることにした。


エスケープルートとなる手岡峠まで下りたがここでも風が吹き荒れていた。


手岡峠を少し先に進むと周りを桧に囲まれた「盗人山」への分岐があり、どういうわけかそこだけ風が弱い。
休憩するには今しかないと考えて、北ノ峰で食べた菓子パンの残りと5ケ入りのミニあんぱんのうち、ひとつを食べ、丸太のベンチから腰を上げた。


ミニあんパンはこれひとつで127キロカロリー(裏面の表示より)あるから行動食として適している。


このルートは馬蹄形に比べれば鎖を伝って上り下りする岩場は少ないが、尾根上には露岩が多く、それなりに注意しなくてはならない。


咲いている花はなにかないかと右を見たり左を見たりしながら歩いていると満開のズミが見つかった。
古賀志山山域ではこれまで大岩でしか見たことがないがこんな場所にもあったのだな。


これはミズナラの花でしょうね。


日本庭園の中を歩いているかのような佇まい。
このルートのハイライト部分だ。


道はここで分岐する。
直進路は北尾根といい、緩やかなまま長倉山へ続いている。
その途中にアスファルトの林道へ下りる道がいくつかあって、エスケープルートとして利用できる。
北尾根の外側を歩く道、北主稜線(鞍掛山ルート)はここを左へ入る。


すぐ目の前にピーク431が目に入る。
先鋭的な形のピークだが標高差はわずかだ。


小ピーク431を乗り越えると次のピークへの鞍部、猪倉峠を通過する。
ここも右へ行くとすぐ林道と出合い、森林公園へのエスケープルートになっている。
疲れが極限に達するとこれらエスケープルートに誘い込まれそうになるが、今のところその誘惑はない。


猪倉峠から登り返すとシゲト山に出る。
狭いが北側の展望に優れた開放的な山頂である。
眼下に日光市郊外の工場が見え、そこの操業音が聞こえてくる。


今日は長丁場なので約2リットルの飲料水を持参した。
500ミリは水道水で、万が一、ケガをした場合に傷汚れを洗い流すのに用意した。1.5リットルは自家製のドリンクである。
固形物は消化してエネルギーに変換されるのに時間がかかるし、胃に負担がかかる。
本来、食事の後は動かずにいて血流の多くを消化器官である胃腸に回すべきところを登山だとそうもいかない。
短い距離の場合はさしたる心配もないが長距離だと摂取したエネルギーを歩く方に回したい。
それには胃腸に負担がかからない食事計画が必要だと考えている。
固形物を少なくすることでそれが可能になる。

管理人が今日、これまでに口にした固形物は1ヶ303キロカロリーの菓子パンと同127キロカロリーのミニあんパン、計430キロカロリーという、少食の女性の1食分に相当する。
しかしそれだけではなかった。
この黄色の怪しげな液体(笑)、これが管理人の命をつなぐ重要な役割を果たしている。
さて、この液体の正体は?
それをこの場で書いていたらブログが先へ進まないので割愛する。


鞍掛山はこのすぐ上。
しかし足がなかなか言うことをきいてくれない。


鞍掛山
これで全行程の3/4が済んだ。
足は重いながら8時間を切るのはこれで確実になった。


あぁ、きれいだ!!
感動的な美しさだ。
そんな言葉が管理人の口から出るのは疲れている証。


大岩に到着。


ズミは見頃を過ぎ、花の変色が始まっていた。


大岩を下りると登山道はふたつに分岐する。
推奨されているのはこの手前を右に折れる道だ。
今日はあまり利用されていない尾根(直進)に入ってみた。


なにか得られるものがあるかも知れないと期待したが、これまでたくさん見てきたヤマツツジしかない。


尾根の最後はこんなところ。
以前、シュンランを探してよく歩いた踏跡もない荒れた桧林だが、当時から比べるとさらに荒れ果てていて、もはやまともに歩ける状況にはなかった。


鞍掛神社の鳥居に降り立ち、これから今日最後のピークとなる長倉山へと向かう。


長倉山への尾根は長く、しかもあそこが山頂かと思わせるような尾根の踊り場がいくつかあって、疲れた身体には実に辛い。
こんな花が唯一、慰めになる。
オトコヨウゾメ。


ようやく最後のピーク、長倉山に着いた。
これから先は下る一方だ。
これでもう傾斜を上る必要はないのだと思うと自然と気持ちが楽になる。


今日の山行の苦楽を振り返りながら下っていく。


駐車場脇を通る林道細野線が見えた。
これで課題としていた古賀志山大外周りのロングルートが無事に終わった。
前回の馬蹄形ルート+鞍掛山ルートの7時間48分を11分短縮する、これまでの最短時間で歩き通すことができた。
我ながらよくぞここまで快復したものだと思う。
他人から見れば取るに足りないことを喜んでるなと見られるかも知れないが、それでいい。
登山の記録は他者との相対で考えるものではなく、相手は自分自身なのである。
今日の結果をこれから先の自分につなげたいものだ。


古賀志山(標高583m)は「日本百低山」にリストされている紛れもない低山で、高尾山(599m)よりも低い。
もっとも多く利用されている宇都宮市森林公園からの標高差はわずか360メートル。
地理院地図に描かれている登山道を使う限り危険はなく、散歩気分で登れる。
古賀志山に日参する地元の常連さんや家族連れの多い、ごく普通の里山である。
しかし、一般の道を外れてバリエーションルートを歩くとわかるが、ルートの多くは岩で構成されていて滑落者の絶えない、危険この上ない山であることが理解できる。

注目すべきは、どのようにしてこんな地形になったのかと不思議に思うほどアップダウンが多いことで、管理人が今日歩いたルートは距離17キロながら、累積標高差は2千メートルにもなる。
これは厳しい上りが続くと言われている男体山をはるかに凌ぎ、女峰山よりも多い。

ルートは100本以上あるとされ、それらを組み合わせれば自分の体力や技量に応じて自在に調節でき、My登山道が出来上がる。
日光にこれほど面白い山はなくなおかつ、クマやシカ、サルがいないという特異な存在の山でもある(ただし、イノシシや他の小動物はいる)。
車で奥日光へ行くのと同じ時間で登山口に行くことができるとあっては、管理人の足が日光から遠のくのは必然、と読者にこの山の素晴らしさを宣伝しておきたい。


※一部でGPSの軌跡が2本表示されているが、これは持参したHOLUX製のGPSロガーとGeographicaの軌跡を重ねて表示したことによる。
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両ルートを実際に歩いてみると、岩場ばかりの馬蹄形ルートに比べて鞍掛山ルートの方が歩きやすいように管理人には思える。
それは他の登山者も同じと考えるのか、人と会う確率は鞍掛山ルートの方が高い。
古賀志山や御嶽山は人の姿が多いから避けているという人もいて、それらの人は鞍掛山ルートを好んで歩くようだ。
管理人はどちらのルートも好きだし、その内側にある中央稜や中尾根、東稜、北尾根も、それぞれ個性があって好きだ。
バリエーションルートにもなっていないところへ迷い込み、激藪で難儀したごく一部を除けば、古賀志山山域に面白くないルートはないと言っても過言ではない。
そこまで多様なルートが存在するのもバリエーションルートを開拓してきた先人と、それに理解を示してきた地主さんのおかげがあってこそと管理人は考えている。

先日、顔見知りの人と出会ったとき、わかりにくい場所にあるが故に管理人も知らなかった貴重な植物が盗掘にあったと聞かされた。
古賀志山と班根石山の中間に位置する通称「伐採地」、いまは桧の幼樹が植林されている場所では植林して間もない桧20数本が幹の先端を折られるという被害に遭った。
岩にかかっている鎖やロープが支点側に巻き取られ、上がるに上がれない状況になっていたという話を過去になんども聞いている。
状況から見て古賀志山を細部まで熟知した人間の仕業であることに間違いはなく、その陰湿さに嫌悪感をもよおす。
しかし、古賀志山を訪れる多くの人(その8割は地元の愛好家)は根っから親切で、いろいろなことを教えてくれる。
管理人が住む日光に登れる山は数多くあるが里山故の親しみやすさ、寛容性が古賀志山にはあって、足はどうしても古賀志山に向いてしまう。


馬蹄形ルート

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下の表は管理人が好んで歩く馬蹄形ルートそして、馬蹄形ルートに鞍掛山ルートを組み合わせたロングルートの一覧です。
2016年から最新まで、すべてを記録しています。参考にご覧ください。
所要時間が異なるのは当然として、距離と累積標高が異なるのはそのとき時で使用するGPSが異なる(仕様や精度)のと、歩くルートが少し違っているのが理由です。
実施日ルート備考距離所要時間累積標高
15回目2023年10月24日右回り+鞍掛山ルート16.5km07:481715m
14回目2022年11月08日左回り+鞍掛山ルート17.8km07:502130m
13回目2022年10月20日右回り馬蹄形単独14.7km07:021725m
12回目2021年04月22日右回り+鞍掛山ルート17.0km07:371979m
11回目2021年04月19日左回り馬蹄形単独14.0km07:511638m
10回目2020年03月13日左回り+鞍掛山ルート16.7km07:481866m
9回目2019年12月08日右回り馬蹄形単独14.5km08:501653m
8回目2017年09月10日左回り+鞍掛山ルート19.8km09:452224m
7回目2017年03月29日右回り馬蹄形単独15.4km08:221749m
6回目2016年11月25日左回り+鞍掛山ルート18.0km10:301974m
5回目2016年11月03日右回り馬蹄形単独14.7km08:041522m
4回目2016年04月30日左回り+鞍掛山ルート17.6km09:441922m
3回目2016年01月09日左回り馬蹄形単独10.7km07:271420m
2回目2016年01月03日右回り馬蹄形単独13.4km10:411804m
1回目2015年06月30日右回り+鞍掛山ルート20.2km10:111784m

最後にタネ明かし(14:05の画像参照)
あの怪しげな飲み物の中味だが、あれは液体燃料である(笑)
登山中にエネルギーが枯渇しないよう、粉飴(こなあめ)をボトル1本に50グラム入れたもので、200キロカロリーのエネルギー飲料がボトルの中味だ。

運動時に限らず、人が生きていくためには食事が必須であり、食事はPFCのバランスが取れたものでないといけない。
PFCとは、タンパク質(Protein=P)、脂質(Fat=F)、炭水化物(Carbohydrate=C)の3大栄養素を指しているが、管理人のような昭和20年前半生まれが子供のころから食べている、店で言えば「焼き魚定食」などがPFCバランスの優等生だと言われている。

ただし、山でそれを食べるのは無理があるため、日頃からPFCバランスの良い食事を心がけることが大切だと思っている。
PFCバランスを比率で表す場合、これしかない、という決定的なものはなく幅が大きい。
年齢だったり仕事の内容だったり、運動してるかどうかによって比率は異なるが、管理人の場合だとP:F:C=3前後:2前後:5前後という割合である。
焼き魚定食と同等の食事を食べていればこの範囲に収まるようになるのが和食の優れているところだ。

今日、最初に食べた菓子パンは1ケ72.2グラムのうちタンパク質が8.8グラム(12%)、脂質が2.8グラム(3.9%)、炭水化物が60.6グラム(84%)なのでバランスの点からいうとかなり悪い。
いわゆるジャンクフードと同じ類のバランスの悪さだが、山ではバランス云々などと言っていられない。
それに一日や二日の山行でPFCバランスの悪い食事を食べたところで、体調が悪化して山行に影響を及ぼすとは思えない。
それよりも重視するのは食べ物のエネルギー量である。
日頃、食べているエネルギー量を下回ってはいけない。
登山中は少なくとも同等か1.5倍程度のエネルギーを食べ物から摂取すべきであろう。

そのエネルギーだが、固形物から摂取した場合、それを胃腸で消化吸収してエネルギーに変換するにはそれなりの時間がかかる。
エネルギー変換を促進するためにも血流を胃腸に集中して送ってあげる必要上、理想は食べ終わったら30分なり1時間なり、その場にじっとして消化を待つことだが、山ではそれは無理だろう。
いや、古賀志山の山頂などで見かける地元のグループの人たちはよく喋り、よく笑いながら時間をかけて食事を楽しんでいるので、それが理想のスタイルといえる。
しかし、ほとんどが単独登山、その上、時間に追われている管理人だとそれはできない。

であれば、その日持参した食料を数回に分けて小刻みに食べることである。
そうすれば胃腸への負担を軽くできるし、少ないながらも歩くエネルギーになる。
長距離、長時間の山行では昼食の時間を決めてすべて食べ切るか、小分けして食べるかの違いでその後のパフォーマンスが違ってくる。

もうひとつの方法が今日、管理人が持参した飲み物である。
胃腸に負担をかけることなくエネルギー源となる炭水化物を摂取する方法である。
粉飴は炭水化物を粉末にしたもので水に溶ける性質をもっている。
1グラムあたり4キロカロリーというエネルギーを持つのは固形の炭水化物と同じである。
この性質から、病院では食事に難のある病人の栄養補給に利用されているそうだ。
その粉飴を700ミリのボトルに50グラム、200キロカロリー分入れたものを2本、持参した。
喉が渇いたときに一度に50~100ミリの水を飲むとして、水分補給と同時に14~29キロカロリーのエネルギーが補給できるというわけである。
消化に時間がかかる固形物の摂取はその分、少なくて済む。

この日、管理人は下山までの間に菓子パンから430キロカロリー、飲み物から400キロカロリー、合計830キロカロリー摂取したわけだが、これは普段の昼食の1.5倍に相当する十分なエネルギー量といえる。

ところで、ここまでの説明だとまだあの黄色の不気味な液体の答にはなっていない。
粉飴は水に溶かしても無色透明なのである。
あれは管理人が筋トレの際に飲んでいるXTENDというブランドのBCAA(必須アミノ酸のうちバリン、ロイシン、イソロイシン)を溶かしたもので、色は人工着色料。
まっ、色はともかくとして、山でも普段のPFCバランスに近づけるためにタンパク質を最小限にまで分解したアミノ酸を管理人はよく利用する。
アミノ酸は筋肉の成分として欠かせないものであるし、登山時において時間の経過とともに分解されていく筋肉の、分解を抑えてくれる役割を果たす重要なものである。
市販の商品にアミノ酸系のドリンクあるいは粉末があるが、アミノ酸の量はXTEND BCAAに敵わない。

昨年9月、帯状疱疹に罹るまで、管理人は週に2・3回の割でスポーツジムに通い、その合間に山に登るという生活スタイルだった。
XTEND BCAAの存在を知ったのは4年くらい前だが、飲み方の工夫によって登山時や下山時の疲れを感じないようになった。
今では粉飴と同じように筋トレと山行に欠かせない存在となっている。

鰯の頭も信心からということわざがあるし、信ずるものは救われるとも言われるし、困った時の神頼みというものまであって、人は昔から物事を自分の都合のいいように解釈するのを常のこととしてきた。
管理人は信心深いわけではないし無宗教だし、物事を割と理性的に判断するタイプだと思っている。
その一方で、あのサプリは身体に良さそうだと聞くとすぐに飛びつくという人柱的精神、実験的精神が旺盛でもある。管理人、この手のサプリの誘惑に弱いんです(笑)
これまでそれらサプリに多額の投資をしてきたが、現在はBCAAと粉飴に落ち着いている。

BCAAの効果についてはすでに触れたが、落とし穴があることも書いておかなければならないだろう。
BCAAは食事で摂るタンパク質を極少まで分解したものであり、水に溶かして飲むことで胃腸に負担をかけずに筋肉の分解を最小限に抑えてくれる(商品説明より)。
味がついているので清涼飲料水のように飲みやすく、いくらでも飲めてしまう。
その結果、腎臓を悪くした。
もちろん、他にプロティンパウダーやEAA、グルタミン、クレアチンといったアミノ酸系サプリをかなり大量に摂り込んだことも原因になっているのだろうが、摂りすぎはよくないことを身をもって体験した。

帯状疱疹は心身の疲れの蓄積が大きな原因とされているが、発症した昨年9月はおろか、それ以前も筋トレと登山を頻繁におこなっていて、疲れを感じたことなどなかった。
したがって帯状疱疹の本当の原因というものがイマイチわからない。
そこで突き詰めて考えたところ、もしかするとそれはBCAAの効果によって疲れが隠されていたのではないのか、そう思えて仕方がない。
体調が良く元気だと思っていたが実際には身体は疲れ切っていたのかも知れない。
それを隠したのがBCAAの効果すなわち、管理人の身体には覚醒剤として効いたのではないか、それが結論であった。
実際に、このブログを書いている23日現在、疲れは尾を引いていないし筋肉痛もないからBCAAが効いているのであろう。やはり覚醒剤?(笑)

賢明な読者におきましては、過ぎたるは及ばざるがごとしの言葉通り、なにごとも度を超してしまうと取り返しのつかない重篤な事態になりかねませんので、どうかほどほどに。