2023年6月21日(水) 晴後曇り
歳を重ねても難易度の高い山に果敢に挑戦する尊敬に値する人がいる。
管理人が経営するペンションの常連客Oさんとは、2020年に女峰山、2021年に男体山に登り、そして今年は太郎山を案内することになった。
Oさんは現在77歳、11月で78歳になる女性である。
女峰山に74歳のとき、男体山は75歳での登山だった。
難易度の高い山に挑戦するという場合、普通であれば難易度を順に高めていくよう計画を組むがOさんは反対に、体力が衰えないうちに難易度が高いとされている女峰山を、一年経てば体力がやや衰えるだろうから高齢者も登っている男体山を、そしてその一年後には体力がさらに衰えるだろうから難易度を下げて太郎山へという計画で臨んできた。
自分の体力の変化を客観的にとらえた計画が組める、これぞ真の山女と称することができる女性なのである。
太郎山は昨年、すなわちOさん76歳での予定だったが予定日と梅雨入りが重なっため断念し、一年持ち越して77歳での太郎山挑戦となった次第だ。
メモ(GPSはGeographicaを使用した)
・歩行距離:9.5キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:7時間45分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:1175メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)
太郎山の登山口は光徳温泉と川俣温泉を結ぶ山王林道の山王峠にある。
ペンションを5時10分に出発し、ここまで1時間かかった。
登山口の標識はここからの行き先が太郎山となっているが、太郎山はその手前の山王帽子山(さんのうぼうしやま)を越えていく。
山王帽子山は標高2077メートルなのでここから350メートル登れば山頂に到達する。
日光の2千メートル峰の中では割と楽に登れる山である。
山王帽子山よりも低い赤薙山(2010m)でさえ登山口から660メートル上がるから、山王帽子山がいかに登りやすいかがわかる。
では太郎山はどうかといえば山王帽子山に達した後、1919メートルの鞍部まで一気に158メートル下り、次ぎに太郎山手前の小太郎(2328m)を目指す。
1919鞍部から小太郎への登りが標高差409メートル。
小太郎はピークだからその先36メートル下り、次が太郎山である。
小太郎の鞍部から太郎山へは76メートル登り返すから、登山口からの累積標高は計算の上で835メートル(350+409+76)ということになり、決して易しいとはいえない。
さらに書けば、小太郎からの下りはロープも鎖もない岩場で、その先は痩せた尾根と続き、これが太郎山を難しくさせている。
太郎山は侮れない山なのである。
山王帽子山への笹藪。
歩き始めてわずか3分しか経っていない。
車でのアクセスは簡単なのに登山道の整備が行き届いていないという現実、これが登山者が白根山や男体山といった百名山に集中する結果を招く原因であろう。
笹についた朝露でズボンを濡らした。
これからのことを考えて雨具を装着した。
笹は腰高まであって登山道を覆い、段差や枯れ枝が見えない。
転倒しないように細心の注意を払って進んでいく。
歩き始めて1時間10分で山王帽子山に到着。
これから鞍部まで標高差158メートルの下りが待っている。
笹で被われた鞍部から上りに転じると樹林帯に変わって山の植物が一気に多くなる。
アズマシャクナゲは終わっていた。
木々の切れ間からのぞく白根山方面。
遠くに白根山、五色山、前白根山、金精山が見えた。
標高が上がったためであろう、咲いたばかりのアズマシャクナゲを見ることができた。
ヒメイチゲは実になっている株が多かったが、花を一輪だけ見ることができた。
無事に小太郎に到着。
晴れていれば最高の展望が得られるのだがあいにくの曇天で展望が利かなかった。
目指す太郎山はあそこ。
急峻な岩場を下りヤセ尾根を歩き、最後に急登すると山頂である。
山頂直下の急斜面。
ガレ場と違って浮いている岩、石はないから安心して歩ける。
だが傾斜は厳しい。
Oさんの歩みはゆっくりだが疲れている様子はなく、足取りはしっかりしている。
Oさん、念願の太郎山に立つ。
嬉しさを満面の笑みで表すOさんである。
2020年に女峰山、続く2021年に男体山、そして今年はその子どもの太郎山に登った。
女峰山と男体山の子どもとしてあと2座、大真名子山と小真名子山があるが、これらに登るには駐車場から片道5キロもの林道を歩いて登山口まで行かなくてはならず、登山をつまらないものにしている。
そして、Oさんは自身、無理であることを知っている。
日光の山はこれが最後になるだろう。
1919鞍部まで下りてきた。
これから山王帽子山まで158メートルの登り返しとなる。
朝と同じように、登山道が見えない笹藪の中を慎重に下っていく。
疲れた様子もなく無事に下山。
よく頑張ったと思う。
間もなく78歳になろうとするOさんにとって良い記念になったであろうか。