太郎山、厳しさを乗り越えた先に大展望のご褒美が(ガイド登山)。

2023年10月2日(月) 快晴

どうしたわけか太郎山が人気である(笑)
6月と9月そして今日、今年になって3回目のガイド登山をおこなった。

参加者に聞くと、男体山と女峰山を登り終え次はその子どもの太郎山を登りたいというものや、ネットの情報によると傾斜が厳しい怖~い岩場があるのでひとりでは無理そうというものや、登山口までマイカーでなくては行けない不自由さがあるというものなど、さまざまな理由がある。
特に女性にそれらの理由が当てはまるようで、過去も含めて5回の太郎山ガイドに参加したのはすべて女性しかも、単独での参加である。

典型的な山岳地帯の日光はいくつもの2千メートル峰があり、登る山に困ることはない。
中でも白根山と男体山は日本百名山として人気があり、平日でも多くの登山者で溢れ、白根山など山頂に立つのに順番待ちをするほどだ(なにしろ山頂が狭い)。
それほど百名山人気は高い一方で、それらの人気に隠れた名峰というのがあり、管理人が筆頭にあげるのが女峰山(2483m)である。
登山口のスタンダートとなる霧降高原から7キロ、6つのピークを超えた先が山頂という実に長い稜線歩きが楽しめるのと、展望が良い。
別の登山口へ降りることができるので周回コースを設定できるのも魅力である。
他にも大真名子山に小真名子山、太郎山など日光連山と呼ばれている2千メートル峰がある。
大真名子山と小真名子山は
残念なことに、駐車場から登山口までアスファルトの林道を5キロも歩かなくてはならないという苦行を強いられるため、ガイド登山の対象からは外している。

日光連山で残るのが太郎山である。
段差だらけの斜面と夜露朝露に濡れた笹藪、鎖やロープのない危険な岩場はあまり好ましいとはいえないが、太郎山山頂そしてその手前に控える小太郎からの展望は息を呑むほど素晴らしく、さすが日光連山、これぞ2千メートル峰からの眺めと、参加者から絶賛されている。

ただし、どの山にも共通して言えることだが、前提は天気の良し悪しである。
今日、管理人が案内した横浜市在住のAさんは当初、9月14日の登山を管理人に申し入れてきた。
気候変動の影響で不安定な天気が続いている日光は、9月になっても梅雨の延長のような雨と高湿度の日々ばかりで予報が当たるのは前日発表になってからだ。
催行日まであと1週間となり、これなら大丈夫そうだと判断したものの、予報は毎日変化し、催行前日すなわち13日6時時点の14日の予報は晴一時雨、降水確率20%と発表された。
しかし、天気は悪化傾向にあり15日は100%の降水確率、次の日は90%になっている。
しかも予報は平地を表しているから山はそれ以上に悪くなるのは必至だ。
Aさんに中止の連絡を入れたのは、参加者の安全を願うガイドとして当然の判断であろう。

一年でもっとも天候が安定する10月が間近となり、週間予報によると10月2日から4日まで晴マークが続いている。
この日を逃すとこの先どうなるかわからないので、予報が変化しないことを祈る気持ちで2日に催行する旨の連絡をAさんに入れた。
2泊するAさんのために3日を予備日とした。

メモ(記録はGeographicaを使用した)
・歩行距離:7.6キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:7時間01分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:1083メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

奥日光光徳温泉と川俣温泉を結んでいる山岳道路、山王林道の標高1700メートル付近に太郎山の登山口がある。
冬は除雪しないため車で来ることはできないが、光徳温泉から登山道を使えばここまで2時間で来ることができる。
しかし、ここまで来ることができたとしても太郎山まで行くのは遭難しに行くようなものである。
管理人はその気になれない。
だが、行程の途中にある山王帽子山(2077m)までなら不可能ではなく、管理人は数回、登ったことがある。


参加者のAさん
妙齢のご婦人だが若いころは北アルプスの多くの山に登ったことがあるという。
参加するにあたって太郎山に関するガイドブックの記事をなんどもなんども読んできたそうだ。
植物にも詳しい。


太郎山はコメツガの茂る深い樹林帯のため山頂に着くまで展望は望めない。
厄介なのはこの腰高の笹だ。
登山道に覆い被さるように茂っているため道の段差や木の根などが見えず、ときどき、おっとっとということになるので慎重に歩かざるを得ない。
それに雨上がりの次の日など笹についた雫がズボンを濡らして不快な思いをする。
それを見越して今日は歩き始める前に雨具を装着した。


最初のピーク、山王帽子山の手前で一瞬、視界が開ける。
だが、山頂からの展望には及ばないのであまり時間をかけずに先へ進む。


歩き始めて約1時間で山王帽子山に着いた。
これは過去の登山でほぼ一定している。


山王帽子山からの展望もあまりいいとは言えないが、男体山を拝めるとあって参加者はこれで満足してくれることも多い。


登山口から急登の連続でようやく、山王帽子山に登ったと思ったら今度は160メートルもの標高差を下らなくてはならない。
それから次は小太郎への登り返しだ。
これがややキツイ。
このすぐ先の鞍部で5分ほど休んだ後に登りが始まった。


登り返しも始めは緩やかだが、、、


心拍数が嫌でも上がる急な登り。


来年の花芽をつけたアズマシャクナゲ。
真冬になると葉の裏の気孔を守るように葉巻状になって越冬する特徴がある。


段差が大きいので木の根をつかんだり、立木にすがって身体を引き上げていくと脚への負担を軽減できる。


急傾斜はまだ続く。
木の根が露出した斜面は足の置き場に困るし、濡れた木の根の上は滑る。
慎重に歩くのが無難。


これまでの段差ばかりの登山道がこの景色に変わると小太郎は近い。
背の低い笹の中を一路、小太郎へ向かう。


抜けるような青空。
小太郎に着いた。


歩き始めて2時間40分、このコースでもっとも展望のいい小太郎である。
太郎山山頂からの展望もいいが、小太郎はもっといい!
Aさんを見ると山名板の前で両手を合わせている。


南に男体山とすそ野に中禅寺湖。
中禅寺湖の対岸に見える尖った山は社山。


西に白根山。
もうすぐ冠雪するはずだ。


東には女峰山(左)、小真名子山、大真名子山が見える。
実に素晴らしい展望である。
9月の予定だったのを変更した甲斐があったというものだ。


飽きることのない小太郎からの展望だが今日の本命である太郎山に行かなくてはならない。
小太郎は復路にも立ち寄るのでもう一度、展望を楽しむことができる。
鎖もロープもない岩場、剣ヶ峰を無事にクリアして太郎山へ。


大きな岩がモザイク状に埋まっている斜面を慎重に上がって行く。


危険と言うほどではないがスリル満点の痩せた尾根を慎重に歩くAさん。


立ち枯れ木が林立する一帯。
どうしてここだけが立ち枯れているのか、という疑問をいだく。
推測だがこの一帯は風の通り道になっていて、強風に地中の木の根まで揺さぶられ、それが原因で木の根の周りに空洞ができて枯れるのではないかと管理人は見ている。
下に見える草原は「花畑」。


前方にいい色に染まった樹木が見えたので近寄るとナナカマドだった。
ナナカマドの紅葉は早く、例年だと9月中旬には色づくが、今年は猛暑の影響で遅いようだ。


山頂すぐ手前。
だが、感動はこのあとにやって来る。


岩を乗り越えると、それまで岩に阻まれて見えなかった山名板が突如のごとく現れる。
これに参加者は一様に感動する。
歩き始めて3時間半、Aさん念願の太郎山に着いた。
この日が予報通り晴れて本当に良かったとつくづく思う管理人である。


ここでランチの予定だが、その前に大展望を思う存分、堪能する。


東からだと全体像をつかめない女峰山は、西から見ると鋭角で、実にカッコいい。


遠くに白根山や前白根山、金精山など、群馬県との県境に位置する山が一望。


管理人がガイドを務める登山としてはこれまでになく長い、40分もの休憩を取り、太郎山を後にした。


小太郎へ向かう途中で見た男体山。
男体山の写真は今日一日で何枚撮ったろうか?


登りでは何でもない斜面も下りは細心の注意を払って歩かないと転倒事故につながる。
Aさんにその心配はなかった。


草紅葉を構成するひとつ、ゴゼンタチバナが真っ赤な実をつけていた。


小太郎に名残を惜しむように10分ほど景色を堪能し、下山を始めた。
登山口まで景色は望めないのだ。


日本庭園の中をゆっくり歩く。


樹林帯の中を山王帽子山との鞍部まで下り、これから160メートルの登り返しとなる。


ゴマナは枯れ始めていた。


山王帽子山に戻って来た。
下山まで1時間とかからないはずだ。


山王帽子山からの下りは急斜面もあるがこうした平坦路もあって疲れた足を休ませることができる。


始めから終わりまで秋らしい陽射しに恵まれて無事に下山することができ、Aさんにはとても喜んでもらえた。
でもこれが悪天候の日であったなら、正反対の印象を持たれたことだろう。
催行日の選定はとても難しく、いつも頭を悩ませる。
過去には二度の中止にもめげず、晴れる日を待ち続けて、三度目に晴天日をゲットした参加者もいた。
目的とする山に登るには根気強さが求められるのだ。
管理人が務めるガイド登山はそのような人によって支えられていると言って過言ではない。


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