雪の古賀志山を鞍掛山から馬蹄形へと10時間。最後は暗闇に。

2016年11月25日(金) 晴れ 気温:10度→6度

森林公園駐車場~こぶし岩~長倉山~大岩~鞍掛山~手岡峠(仮称)~手岡分岐(仮称)~ピーク444~腰掛岩~作業小屋~北ノ峰~赤岩山~中岩~御嶽山~古賀志山~富士見峠・・(北コース)・・森林公園駐車場
※歩行距離:18キロメートル
※累積標高:1974メートル
※所要時間:10時間30分

今月7日に女峰山に登ってからというもの、満足感に浸るばかりでどこへも行く気になれず、丸2週間が過ぎた。
いつもなら余韻の消え去る前に次の山歩きの予定を立てるのに、なかなかエンジンがかからない。感動の余韻がいまも続いているということであろう。それほど今度の女峰山は素晴らしかった。
7日が11回目の登頂だった→こちら

同じ山になんども登るのは管理人の性格の現れとでもいおうか、とにかく気に入った山なら飽きることなくなんどでも登る傾向がある。
突きつめて言えば、気に入った山を極めたいのであろう。知らないことのないようにしたい、そんな願望がある。
古賀志山なんかこの二年で51回も登っているのに、まだ知らない顔を見せることがある。知り尽くしたい。毎回、そんな思いで登っている。

ところで、女峰山の余韻の有無にかかわらず、そろそろ停止しているエンジンを始動しないと錆びついて再起動が困難になってしまう。
管理人の経験上、筋トレで筋力をつけても2週間は維持できるが以後は低下する一方となり、回復させるには並々ならぬ努力を要する。管理人が週一での山行を課しているのはこの理由による。

折しも24日は季節外れの雪に見舞われた。
これをいい機会ととらえて身体が錆びつく前に重い腰を上げよう。
7日の女峰山は17キロ、11時間半を要した。もしも筋力が衰えていなければ同等の距離、時間の負荷をかけても大丈夫だ。反対に体力が消耗してリタイアせざるを得ない事態に陥った場合は鍛え直さなくてはならない。
それを見極めるためにも今日は女峰山に匹敵する長い距離と時間のかかる山に登ってみよう。

女峰山と同等の山として古賀志山の馬蹄形に鞍掛山を加えたルートがマッチする。古賀志山は近隣に住む人たちが好んで利用する里山だが、100以上あるとされるルートを組み合わせることで20キロほどのマイルートが設定できる。
2週間以上も歩いていないが古賀志山山域であればエスケープルートが充実しているので安心して歩ける(※)。
今日の朝刊によれば古賀志山が位置する宇都宮市で積雪4センチを記録し、初雪としては45年ぶりだそうだ。市街地で4センチなら古賀志山はもう数センチは多いだろう。
雪の古賀志山は今年の1月に経験しているが距離7キロ、5時間という軽いものだった。
今日は推定距離18キロ、アップダウンが激しくて無雪期でも身体を酷使するルートを歩くことにした。

※エスケープルートもバリエーションルートの一部であり地図にはないし道標もない。管理人はこれまでの経験で理解しているのであって初めての方や経験の浅い方にとってエスケープルートを探すのは困難であろうと思う。


女峰山に匹敵する距離、時間を歩くつもりで古賀志山を選んだが、その割に到着が遅かった。この時間から18キロも歩くとなれば日没は間違いない。当然ながらその備えはしてきている。
前日、雪が降ったこともあってか森林公園の駐車場に車は1台もない。
地元の皆さんは雪が積もった古賀志山がどれほど危険なのかをよく知っているのだ。
この広い駐車場を管理人の車1台で独占する、、、わけではない。なぜならここは時間の規制があって17時にクローズされるからだ。
今日は古賀志山山域の大外、鞍掛山から馬蹄形ルートに入るため、この時間から歩き始めると17時には戻れない。そのためにも時間の規制を受けない外側の駐車場(※)を利用することにした。
※画像の駐車場に接する車道脇に15台くらい駐まれるスペースがあり、そこは時間の規制がない。


駐車場からアスファルト道路を北に向かうと赤川ダムがある。農業用水用のダムだが畔から古賀志山がよく見える。
双こぶの右が東陵見晴台でその左が古賀志山。10分もあれば行き来できる。


赤川ダムからさらに北へ向かうと道は二手に分かれ、左の道が古賀志山への北コースとなる。
今日はまず、鞍掛山を目指すので右の道を行く。


右の道を行くと右側に大きな岩が出現する。
岩の基部に沿って急斜面を登っていく。
なお、鞍掛山へは駐車場脇の登山口から長倉山を経由するルートが一般的(ただし、道標なし)。写真の岩場から入るルートは危険でお勧めできない。おそらく入口も見つからないと思う。


水分をたっぷり含んだ落ち葉が堆積して滑るので、ここで滑り止めのためにチェーンスパイクを装着。


濡れた落ち葉と昨日の雪で滑る。
登山口から長いトラロープが途中まで続いている。いくらチェーンスパイクといえどもこのロープなしでは難しい。ありがたく利用させてもらった。


次はこの岩場だ。
チェーンスパイクで岩を登るのは危険が伴うが外すのも面倒なのでロープにすがって慎重に高度を稼ぐ。
この最頂部が地図の天狗鳥屋(てんぐのとや)で、岩は「こぶし岩」と呼んでいるようだ。


長倉山。積雪は5センチ強といったところ。
ここへは駐車場のすぐ脇から、もっと歩きやすい道で来ることができる。それが一般ルート(といっても地図にはないし道標もない)。


長倉山から次の鞍掛山へは並行するふたつのルートがある。
どちらも急な下りを強いられる。


管理人は東へ向かうルートをよく利用する。
東とはいってもすぐに北に向きを変える。


斜面を降りきると続けてふたつのアスファルトの林道に出合う。
2本目を横切ると丸太の階段があるので上っていく。ここまで長倉山から北に向かって降りる道よりもほんの少し短い。


紅葉したヤマツツジ。
ちなみにこのルートは春から初夏にかけて多くの花が楽しめる→こちら


チェーンスパイクは圧雪した道や落ち葉が堆積した道であれば威力を発揮するが、降ったばかりでなおかつ水分を多く含んだ雪には弱い。
このように雪が付着して団子状になり、スパイクの効果がまったく得られない。そればかりか、かえって滑りやすくなる。
チェーンスパイクを着けないと滑るし、着けたら着けたで雪団子になって滑る。数歩、歩いたら靴を地面にたたきつけ、付着した雪を落とす必要がある。それはなかなか面倒な仕事だ。
今日は滑って尻餅をつくこと3回。いずれもこの団子が原因だ。


鞍掛山への道は険しい。急な斜面がずっと続く。
ここ、大岩に来てようやく息がつけた。


大岩の目の前に古賀志山が見えるが今日のルートだと最後に訪れることになる。


大岩から鞍掛山へは平坦な気持ちのいい道を歩ける。
大岩まで急傾斜で脚に負担をかけてしまったのでここで回復に努める。


鞍掛山山頂。
ガイドブックだと周りを木々に遮られて見晴らしのない山頂と書かれているが、大岩からここまでの稜線からの眺めはいい。


鞍掛山から緩やかな下りで次の小ピークへ向かう。


標高450メートルの小さなピークがある。
ここでルートは北(画像の右側)に転じ、急な下り斜面になる。次に目指すのは「シゲト山」だ。


細く危なっかしい道を登っていくと視界が開け、そこに「シゲト山」と書かれた板ッ切れが木に取り付けられている。正しい名称なのかどうか、地図に描かれていないのでわからない。
見る場所によって尖って見えることから「鞍槍」とも呼ばれている。


シゲト山からの日光連山と高原山。いい眺めだ。


書き漏らしたが大切なことを。
古賀志山は宇都宮市にあるが、広く古賀志山山域としてとらえると、日光市との境界と重なる部分が多い。赤川ダムのある宇都宮市森林公園から登ると鞍掛山で日光市との境界になり、手岡分岐と管理人が名付けた分岐路から先の馬蹄形ルートは、林道内倉線に至るまでずっと日光市内を歩く。
それなのに日光市の山という気がしないのは古賀志山の裾野に位置しているからだ。


猪倉峠
ここで直進(南)と右(北西)、左(東南)に分岐しているが馬蹄形ルートに向かうには直進する。


地図のピーク431を過ぎると西へ向かって平坦な道に変わる。実に快適、気持ちのいい歩きが楽しめる。


ここが手岡分岐。鞍掛山から来た場合はここから馬蹄形ルートが始まる。馬蹄形ルートを歩く際のとても大切な分岐路となる。
地図には描かれていないため説明のしようがないがここを直進すると知らぬ間に古賀志山へ行ってしまい、馬蹄形ルートに入れない。せっかくここまで来たのに目標を達することなく終わってしまう。
正しくはここを右斜めに入っていく。
えっ、これでも道なの? というほど危なっかしい歩きを強いられるが、それで正しい。


尾根はここで北向きと南向きに分岐する。
年に数回歩くだけだとどちらへ行ったらいいのかわからないので、毎回、地図とコンパスで尾根の向きを確かめる必要に迫られる。


北北西に向かう尾根。
こちらではない。


南へ向かう尾根。
実際には西に向かいたいところだが西に向かう尾根はない。実にいやらしい分岐だ。


上の画像の尾根を南に向かうとすぐまた尾根が分岐する。


南へ向かう尾根。
歩いてきた進行方向にあるのでどうしてもこちらに行ってしまいたいが、間違いだ。


身体の向きを90度右に向けると目立たない尾根がある。
こちらが正しい。
つまりピーク383で南の尾根に入り、すぐに西の尾根に入るといったクランク状のルートになっている。


檜林の中を西へ向かって平坦な尾根を進む。


ルートに間違いがなければ檜林を過ぎて複数の送電線が見えるようになる。送電線の下に特徴的な地形が姿を現す。
あそこへ向かって一度、下り登り返す。


下りのも登るのも藪。


ピーク444手前の大きな岩を這い上がる。
地図にはピーク444まで岩記号が続いているがその最初の岩だ。


ピーク444を通過。
ここは地図にはあるが目印となるのは石の祠のみ。


ロープがかかっている先ほどの岩からピーク444を挟んで連続した岩記号が地図に描かれている。その長さ300メートル。ただし、道は岩記号の北側につけられているので岩の上を歩くわけではない。
岩記号の末端(西端部)に位置するのがこの腰掛岩。ちなみにここは日光市。


腰掛岩で午後3時を回った。
ここから北ノ峰まで1時間と見て、赤岩山あたりで日没になるはずだ。


腰掛岩から南に延びている尾根を下るが傾斜は急。
木立につかまりながら慎重に下ると檜林となり、まもなく沢と出合う。


失敗した。
200メートルほど東へ降りてしまった。


林道内倉線を西へ歩いて軌道修正を図る。そして腰掛岩への入口(画像の右)に。
ここから崩落によって土砂が堆積した沢を横切って再び林に入る。


沢を横切るとまるで魔界への入口のような林が口を開けて待っている。
ここを突破すると林道がもう一本あるのでそこも横切る。


魔界への道がもうひとつ。
両側から木々の枝が迫り、両手でかき分けながら進んでいく。
この先を左に曲がって右へ曲がると、、、


馬蹄形コースのランドマーク的な存在のプレハブの作業小屋が現れる。
こいつが見つからないと魔界を彷徨うことになる。


プレハブ小屋の脇をすり抜けると広い斜面になるので上へ上へと、地図のピーク432.7に向かう。
この斜面は一応、尾根になっているが広すぎて尾根とは思えないほどだ。尾根をしっかり意識しながら歩かないととんでもない方へ行ってしまう。
目印は「無縫塔」と書かれた小さな道標。
疲れはピークに達し足が重い。


「無縫塔」と書かれた道標が見つかったら正解。
道標は巨大な岩が連なる端っこにある。ただし、岩は地図に描かれていないので厄介だ。
ピーク432.7はそれら岩の上に位置する三角点である。まずは鎖を使ってよじ登る。


鎖が終わると急斜面の登り。


北ノ峰に到着。
腰掛岩からちょうど1時間だった。
尾根が分岐して地図とコンパスを必要とするルートはこれで終わった。
ここからは一本のルートのみで道迷いの心配はない。が、岩の上り下りと細尾根が待ちかまえているので危険は増す。


この時期、日没は早い。
あと30分で日が暮れる。
来たるべき闇に備えるためザックからヘッドランプを取りだして頭にセットした。


北ノ峰から日光連山を眺める。


南西の方角に目をやると二股山(鹿沼市)の向こうに日が沈もうとしている。


赤岩山山頂を通過、、、


二尊岩を通過、、、
ただひたすら歩く。


5メートルほどの岩を登る。
ふだんなら鎖を使わず登るところだが暗がりの中、ホールドが見えないため両手でしっかり鎖を握って登る。


中岩を通過、、、
ここからの眺めは見応えがあるが今見えるのは宇都宮と鹿沼の夜景だけ。


今度は5メートルほどの岩を下る。


ふ~、御嶽山に到着。


これまでの無事と、最後の最後まで気を抜かずに無事に下山することを御嶽神社に向かって誓う。
さらには二年前の9月、木曽御嶽山の噴火で多くの登山者が犠牲になったことへの思いを込めて合掌。
過去に書いているが木曽御嶽山とこことは深い縁で結びついている。木曽御嶽山に眠る霊がここにもあると考えて差し支えない→詳しいことはこちらを


御嶽山から宇都宮市街地の夜景を眺める。


古賀志山はさっと通過。


時計を見ると北ノ峰から2時間もかかっている。漆黒の闇の中をヘッドランプの灯りを頼りにいくつもの岩を登りそして下り、足を踏み外すと谷底へ転落するような細い尾根を注意しながら歩いたので妥当なところ。
さてと、古賀志山から下山するにはいくつかのルートがあるが馬蹄形ルートは古賀志山で終了したので無理はしないことにする。
闇夜なのでもっとも安全(でもないのだが)な、地図に道が描かれている北コースで下ることにした。


東陵見晴台との鞍部。ここを富士見峠の方向に進む。


富士見峠から北コースに乗り下山口へ向かう。
途中、伏流水が流れ出ている場所がある。備え付けのカップを使って一気に飲み干す。


下山口となる赤川まで来た。
ここからアスファルト道路を歩いて森林公園の駐車場まで10分。10時間半にわたる山行が間もなく終ろうとしている。


点線から左側が馬蹄形ルートで、これだけでも歩きごたえがある。
ただし、ルートがはっきりしているのは古賀志山から北ノ峰までで、北ノ峰から先は尾根の分岐が多い。読図の練習にいいとは思うが難易度は高い。失敗覚悟でどうぞ。
点線の右側は馬蹄形ルートのオプションだが、オプション抜きでも馬蹄形ルートを完遂するには手岡分岐から古賀志山まで歩いた後、駐車場に戻らなくてはならない。それはオプションを歩くのと比べて距離が2キロ短いだけだ。さあ、読者ならどうする?
※青い線が今回(左回り)、赤い線は11月3日の右回り


標高600メートルに満たない典型的な里山だが今日のルートだと累積標高が2千メートル近くになる。その理由はアップダウンの多さにある。厳しいよ~、古賀志山は!!