あぁ恐ろしか、日光屈指の難易度だった太郎山周回(ガイド登山)。

2023年9月10日(日) 晴れたり曇ったり

2千メートル峰が連なる日光連山のおかげで太平洋側から流れ込む湿った空気はそこで阻まれ、日光連山の裏側すなわち奥日光は日光市街地と比べて晴天率が高い、というのが例年の天候だが、今年は梅雨の延長のような天気が続き、登山に適した日を選ぶのが難しい。

それにもまして、同行者がいるとなると、天気の良い日にお互いの休日を合わせるのはとても難しくなる。
日程が決まってからの管理人は日に数回、数社の天気予報を見比べては開催日の天候の予測に努めるようにしているが、今年のように予報がコロコロ変わると予測は極めて困難だ。

雨の中の登山ほど危険でなおかつ、つまらないものはないと管理人は思っているのでツアーは開催しない。
その判断基準としているのが降水確率30%である。これ以上だと開催しないのを基本としている。

今日、10日を選んだのは連日30%を超える降水確率の予報の中で、この日だけ30%に留まりそうだというのが理由である。
Yさんに開催決定の連絡をしたのは前々日という慌ただしさだった。

県内に住みマイカーを所有しているYさんは、車の運転を厭わない実にアクティブな女性で、山を求めて広範囲に足を延ばしている。
その行動範囲の広さは井の中の蛙を自認する管理人など到底及ばないほどだ。
そのYさんから、車を2台使って太郎山を周回するのはどうかとの提案があった。
スタート地点の山王峠とゴール地点の梵字飯場跡にそれぞれの車を置けばそれが可能になるというものだ。
まったくその通りだ。
車が2台あってこそ可能になる計画である。
管理人の虚を突くYさんからの提案だったが、もちろん管理人に異存はなかった。

メモ(GPSはGeographicaを使用した)
・歩行距離:10.6キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:7時間23分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:991メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)
※累積標高(マイナス)は1197メートルと、登りよりも多くなった。これはスタート地点よりもゴール地点の方が標高が低いのが理由。

太郎山の登山口は光徳温泉と川俣温泉を結ぶ山岳道路、山王林道の山王峠に近い場所にある。
裏男体山林道・梵字飯場跡駐車場でYさんと待ち合わせて管理人の車でここまで来た。
駐車場には先着車が2台、駐まっていた。


ここが登山口。
駐車場の少し先にある。
画像でわかるように登山道には両側から笹がせり出していて歩くのに苦労する。
笹は地面の段差や枯れ枝を隠しているので注意しながら歩かなくてはならず、その分、時間がかかる。
その上、笹には夜露朝露がびっしりついていて、嫌でも服を濡らす。
Yさんと管理人は濡れる前にここで早くも雨具のパンツを履いた。


登山口から続いていた笹は一旦、なりを潜め、普通の登山道に変わった。


登山道は日も差さないほど深いコメツガ林の中にある。
前方に木漏れ日が見えた。
林の外は晴れているらしい。


うぉっ、また笹だ。
雨具のパンツはすでにびしょ濡れ。


歩き始めて1時間で山王帽子山(2077m)に着いた。
日光の2千メートル峰では赤薙山(2010m)と並んで低い方だ。
空は晴れている。
この青空が小太郎、太郎山まで続いてほしい。
なにしろ360度の展望を誇る小太郎そして、太郎山なのである。
Yさんに是非とも展望を楽しんでほしいのだ。


山王帽子山からの展望はいいとは言えないが、男体山だけはよく見える。


管理人がガイドするツアーの常連、Yさん。


10分ほど休憩した後、小太郎(正面右のピーク)へ向かった。


今が盛りのシロヨメナ


せっかく山王帽子山に登ったのに、小太郎へ行くには思いっきり下らなければならない。
その標高差は160メートルもある。


鞍部まで降りると今度は小太郎に向かって400メートルの登り返しだ。
これは登山口から山王帽子山へ登るよりも標高差が大きい。


急斜面は容赦なく続く。


岩ばかりの歩きにくい急斜面が終わり、視界が開けるとともに傾斜が緩くなった。


これまでの厳しさが嘘のように消えて、手入れの行き届いた日本庭園を思わせる佇まいとなった。


この笹が始まると間もなく小太郎に着く。


小太郎直下の荒れた斜面。
このすぐ上が小太郎である。


山名板を見上げる。
小太郎は地理院地図に標高が表記されているだけで名は描かれていない。
いつの頃から小太郎と呼ばれるようになったのか、管理人は知らないが、管理人が所有している昭文社「
山と高原地図」でもっとも古い2001年版には小太郎山と表記されているので、2001年よりも前にすでにそう呼ばれていたのであろう。

地理院地図には等高線が閉じられたピークとなっているし、2328メートルという高さといい360度の展望といい、立派な山といっていいと思う。

ちなみに画像右端に傾いた石柱が立っているのがおわかりになると思うが、あれは三角点である(後ほど説明)。


山名板を背にして南を向くと、雲がかかった男体山が、その右下に中禅寺湖が見える。
不安定な天気が続いているここ数日、まずまずの展望だ。
あの雲が流れていけば360度の展望が得られる。


小太郎からの展望は360度。
日光の山はどこもそうなのだが山頂直下まで樹林帯が続き、樹林帯が終わったところが山頂で、展望がガバッと開ける。
メリハリがあっていいと言えばいいのだが、管理人はどちらかと言えば登山口からずっと展望が開けたまま山頂に向かって道が続いている方が好みなんだが、そんな山などあるわけがない。


男体山をバックにYさんお得意のポーズ。


10:07に少し書いた三角点の画像がこれ。
画像をクリックすると拡大されるので石柱に刻まれた文字を見てほしい。
文字は縦2列に刻まれていて、右が「御料局」、左は「三角點」となっている。
山でよく見る「一等(二等、三等)三角点」とはずいぶん違う。
そもそも御料局とはなんだ、という疑問がわく。
ということで、これ以上書くとボロが出るので止めておき、興味のある読者には詳しく説明しているサイトを紹介するのでご覧になってほしい。
御料局の測量


北にこれから目指す太郎山が見える。


小太郎からの展望を20分ほど楽しみ、太郎山へ向かった。
小太郎から太郎山に至る岩場とヤセ尾根には花が多い。
ハクサンシャクナゲやテガタチドリが見られるのもこの区間。
画像は赤い実をつけたコケモモ。


この大きな岩を上って下るがロープや鎖はない。
この岩の先に剣ヶ峰という別の岩がある(たしか)。


岩場をよじ登る。


岩場をクリアするともう怖いところはない。


7月の花、ハクサンフウロがまだ咲いている。


立ち枯れした木々を右に見ながら進む。
下に下山時に通る「お花畑」が見える。


アズマシャクナゲの群落を歩く。
この中にハクサンシャクナゲが混じる。


太郎山山頂すぐ手前の新薙コースとの分岐。


と~ちょ~!
Yさん念願の太郎山に登頂した。
喜びを素直に表すYさんを見ると管理人も嬉しい。
ちなみに計画では4時間を見積もったが、3時間半で着いたのでまずまずの結果だ。
ただし、この後が想定外の展開となったが、、、


雲は多いものの展望はそれなりに良く、管理人のガイド登山としては異例の、50分を超える休憩をとった後、下山することになった。
Yさんにとって太郎山登山は初体験となるが、今日で5回目となる管理人も下山ルートに選んだ新薙コースは初めて歩く。
どんな展開になるのか楽しみでもあるし初めてゆえの怖さもある。


山頂からの荒れた道を下っていくととてつもなく大きな岩と出合い、その先にあったのが地理院地図に描かれた「花畑」だった。
地理院地図には名称とともに湿地記号で表されている。
山頂のすぐ下にこれほど広く、平らな場所があるのが不思議に思えるほど、気持ちのいい空間だった。
一方で、花畑は登山道以外、笹で被われていてここに花が咲くのかと疑問を抱くほどだった。
次は初夏に訪れてみなくては。


花畑を抜けるとほんのわずかに登りとなり、その先は山腹が崩れて薙になっていた。


アキノキリンソウ


最後の1株なのかも知れないイワカガミ。


薙を3ヶ所超え、本格的な下りが始まった。
荒れた薙を下っているのかと錯覚しそうなほど大小さまざまな岩が堆積しなおかつ、傾斜は急だ。
画像の場所は下りが始まったばかりで傾斜が緩く、まだ歩きやすいがこの後、ロープが連続している岩場に突入した。
ここまで片手にカメラを持ったまま歩いて来たが、さすがに身の危険を感じ、ケースに仕舞った。
写真を撮ろうにも立ち止まる場所がないほど岩場は急で気を抜けない。
Yさんとの会話が途切れる。
足の置き場を慎重に選びながら下っていった。
女峰山にも緊張する場所がいくつかあるが、太郎山の下山に選んだ新薙コースは女峰山に匹敵する厳しさと、初めてゆえの怖さを感じた。


コースは岩場から緩やかな土の斜面に変わった。
岩場はこれで終わったのかも知れない。
是非そうあってほしいと願った。
帰宅して、撮った写真をPCに取り込んでみると、上に書いた怖かった場面の写真がないことに気がついた。
事故のないよう慎重に降りることだけを考えていたため写真を撮る余裕がなかったのかもしれない。
見事なほど、その区間の写真がない。


緩やかな斜面はやがて裏男体山林道から分岐した林道と出合った。
これで山王峠から太郎山を経て周回する登山が終った。
太郎山山頂から1時間50分の下山だったが、緊張の連続だったためかとてつもなく長く感じた。


裏男体山林道と合流。
Yさんの車を置いた梵字飯場跡駐車場へはここを右へ行くが、左へ行けば志津乗越すなわち、男体山や女峰山、大真名子山の登山口に着く。
以前なら志津乗越までマイカーで行くことができ、登山のバリエーションが豊かだったが、今はそれができない(※)のが残念だ。
なにしろここから志津乗越までアスファルトの林道歩きで1時間もかかるのだから。


「できない」、と一方的に決めつけるのはいけないのかもしれない。
なぜなら次の画像でわかるように、車を置いた梵字飯場跡駐車場には15台ほど駐車できるスペースがあり、Yさんと待ち合わせた6時40分には日曜日ということもあってすでに10数台の車が駐まっていた。
それらは男体山(がもっとも多いはず)や女峰山、大真名子山、太郎山に登る登山者の車、と断言する。
なぜなら、それ以外の目的でその駐車場を利用する理由はないからである。
志津乗越の登山口(太郎山は別の登山口)までアスファルトの林道を2時間も歩く(太郎山は1時間20分ほど)が、需要はあるのだ。

目的完遂意欲の低い管理人にそれは到底無理だ。
2時間の林道歩きなど考えただけで気持ちが萎える。
駐車場イコール、そこが登山口であるのが望ましいと考えている管理人のワガママだと断っておこう。


林道を3.8キロ、1時間弱歩いてYさんの車を置いた梵字飯場跡駐車場に着いた。
これからYさんの車に便乗し、管理人の車を置いた太郎山登山口まで行ってそこで解散となる。


山王峠登山口(7:18)~山王帽子山(8:20)~太郎山鞍部(8:51)~小太郎(10:08)~太郎山(10:53/11:40)~林道出合(13:33)~林道分岐(13:50)~飯場跡(14:29)
所要時間 7時間11分
休憩場所 上記各ポイントで10分ずつ、小太郎で20分、太郎山で47分。

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