齢七十五の誕生記念に女峰山(帝釈山)往復、11時間半。

2023年8月28日(月) 晴れと曇りの繰り返し、ゴール手前で夕立

加齢に伴って低下していく体力はいかんともしがたく、忸怩たる思いをするが、その低下を最小限にとどめるべく、山に行かない日は距離は短いが平地を歩いたり走ったり、屋内で自転車を漕いだりスクワットをして過ごすようにしている。

とはいえ、実際に登山に必要な体力を日常生活で養うのは甚だ難しく、これで良いだろうと思って登山に臨んでも効果が実感できないまま疲れて下山することがよくある。

現在の体力は日本人男性の75歳に比してどれくらいなのか、なにが出来れば年相応なのかといった相対的な尺度は意味を成さないため、絶対的な尺度として管理人は、毎年、同じ対象物(山)を相手に体力を測るようにしている。

対象は3つある。
ひとつは持久力を要求される中禅寺湖一周25キロ、ひとつは距離が長くかつ岩尾根のアップダウンを繰り返す古賀志山大外周り18キロ、そして長大な尾根が続く女峰山(帝釈山)往復16キロである。

これらのうち、中禅寺湖一周は先月29日、管理人の誕生日に合わせておこない、これまで最短の6時間半で歩き終えることができた。→こちら
古賀志山は涼しくなってから(なにしろ暑いので)実行予定。
女峰山(帝釈山を折り返し)は誕生日から1ヶ月以内の実施を目標としたが、コロナが収まりをみせているためかこの夏は本業が思いのほか忙しくまた、近年著しい天候不順で機会が巡ってこないままとうとう8月も終わりかけようとしている。

誕生日を大きく過ぎてしまうと、歳をひとつ重ねたときの体力がどの程度なのかを測る意味が薄れてしまうため、週間予報をにらんで雨の心配のない今日を選び体調を整えて臨んだ。

結果(GPSはGARMIN Instinctを使用した)
・歩行距離:15.4キロ(女峰山と稜線続きの帝釈山を折り返し点とした)
・所要時間:11時間35分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:1661メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)
女峰山に登るには予報が晴れであっても雨を想定しておかなくてはならない。
そのためスタートは5時に予定した。
女峰山の登山口となる霧降高原キスゲ平には4時50分に着いた。
驚いたことにこの時間、レストハウス前の第1駐車場と第2駐車場は満車に近い車の数だった。
まさかこれらすべて女峰山に登る登山者の車ではないだろうと思いながら、5時ちょうどに天空回廊を上がり始めた。


これから向かう赤薙山、女峰山方面は雲が多いながらも青空も見える。
今日一日、この空が続いてくれるとありがたい。


1445段の天空回廊の中段、700段目にやってきた。
キスゲ平は管理人が日光に移住した1994年(平成6年)はまだスキー場として稼働していたが、スキー場としては規模が小さくまた設備がお粗末ということもあって客は塩原のメジャーなスキー場に流れ、廃業を余儀なくされた。
その跡地を利用してできたのがキスゲ平園地で、リフトを撤去して小丸山へ続く階段を敷設した。
空に届くほど長い階段、すなわち天空回廊として人気を呼びまた、園地内のどこからでも御来光を仰げるとあって訪れる人が多い。


元スキー場の傾斜を利用した階段だけに途中で傾斜が変わる。
それが700段目でそれ以後、30度の傾斜となる。
この階段でバテてしまっては女峰山はおろか赤薙山でさえ行けなくなってしまうため、管理人は100段上がる毎に1分の休憩をとるようにしている。
すなわち、700段目から先は800段目で休み、900段目で休み、、、1300段目で休むというように6回の休憩の後にトップにたどり着くわけである。

階段を上がって行くうちに駐車場満車の謎が解けた。
実にたくさんの若者と遭遇した。
皆、20代だ。
天空回廊を下ってくる若者や展望台にいる若者、彼らの車だったのだ。
時間から察して御来光目当てにやって来た若者に違いない。
SNSで評判が広がって首都圏からやってきているのだろう。
だが残念なことに、東の空には厚い雲がかかっていて御来光は望めなかったはずだ。


この時刻、日の出の時間は過ぎているが太陽は厚い雲の中に隠れて見えない。
若者はそれでも気落ちした様子はない。
友達と一緒にいるだけで楽しい年代なのだ。


鹿侵入防止用の回転扉を抜けると小丸山で、赤薙山を真ん中に、女峰山へ続く山が一気に迫ってくる。
女峰山は赤薙山のほぼ真西に位置しているが、ルートとしては北に向かって半円を描くようにして道がついている。
赤薙山の右に連なっている尾根がそれ。
赤薙山を含めて7つ目のピークが女峰山である。


小丸山から先赤薙山まで、笹原の中を歩く。
朝早いため夜露朝露の心配をしたが笹の葉は乾燥していてパンツや靴を濡らす心配はなかった。


ゴマナ
似た花にシロヨメナがあるが、シロヨメナの花はゴマナほど大きくなくまた、1株にゴマナほど花がたくさんつかない。
さらにいえば、主脈から出る側脈の向きが異なっている。


標高1800メートル付近。
前方に見えるのは焼石金剛を示す道標。


焼石金剛から見る赤薙山とその右に女峰山へ続く尾根。


赤薙山直下の斜面は厳しい。
木の根が露出している大きなギャップをなんどもなんども乗り越えて進んで行かなければならない。


赤薙山へは歩き始めてちょうど1時間半で到着した。
これはいつも通りの時間。


赤薙山山頂は周りを木々に囲まれて展望が悪い。
ただ1箇所だけ、鳥居の奥に開けた場所があり、そこから女峰山と男体山がよく見える。
だが女峰山には雲がかかっていて山頂は見えなかった。


ダイモンジソウ


これもゴマナでしょうね。


ハンゴンソウ


ホツツジ
淡いピンク色が楚々としていてとてもきれいだ。


奥社跡(2203m)に到着。
ここまで2時間28分かかった。
昨年は2時間14分だったので14分、余計にかかったことになる。
ここまでの休憩は写真を撮るときだけというのは昨年と同じ。
だが、なにかが違っていた。
赤薙山から先、身体を重く感じるようになり、心拍数は120から130の間を示していた。
これは最大心拍数の83~90パーセント((120~130/(220-75))に達していて、管理人にとって過負荷であることを示す心拍数だ。
考えれば直近の山行は5日で、以来、今日までウォーキングや軽いランニング、室内での自転車漕ぎはやってきたが、山を歩くことはしていない。
女峰山に登るには運動不足といって差し支えない。
これがこの先になってどんな影響として現れるのか、心配だ。


奥社跡から50メートル下ると短いが平坦な鞍部に変わる。
次のピーク(2209m※)へ向かって56メートル登るのでここで息抜きをする。
※実際にはピーク手前で進路を西に変えて2209mから派生する尾根に乗る。


岩が堆積しているヤハズを通過。


一里ヶ曽根。
ここまで来て、ようやく女峰山が近づいたと実感する。
ところで、ヤハズと一里ヶ曽根の間、わずかな傾斜はついているもののスピードが上がるのもこの区間だ。
ところが今日は、上り傾斜になっていることがハッキリわかるほど足取りが重く、スピードを上げることはできなかった。
この間の所要時間は昨年の48分に対して今日は57分と、明らかに時間がかかっている。
赤薙山から奥社跡まで昨年より14分遅かったのは先ほども書いたが、ここでも9分遅いという結果になった。


一里ヶ曽根からガレ場の急傾斜を下りきると広い鞍部と出合う。
木々はまばらで見通しが良く、実に気持ちのいい広場だ。


次のピーク、2318mへの上りに差しかかるとすぐ、水場がある。
斜面に塩ビ管を差し込んで伏流水を引きだしたもので、水量は少ないながら涸れたのを見たことがない。


ピーク2318を過ぎるとザレ場、岩場、ガレ場と変化しながら山頂に向かっていく。


イワカガミ
おそらく最後の株であろう、ここでしか見ることができなかった。


赤い実をつけたコケモモ


オトギリソウ


山頂のひとつ手前の三角点ピーク、2463mからの女峰山の眺め。
山名板が目視できるまでに近づいた。
登山者の姿は見えない。


ふ~、重い足を引きずりながらようやく、山頂直下の女峰神社に到着。
長い道のりだった。
一里ヶ曽根から1時間29分(対昨年20分遅い)。
歩き始めから4時間54分(同29分遅い)。


肩からザックをおろして身軽になり、三脚にデジカメを取り付けた後セルフタイマーをセットして、9秒かけて岩を駆け上がって撮った75歳の女峰山登頂記念写真。
この先、はたして何回、ここで写真を撮れるのだろう。


風が吹いてくれたおかげで雲が流れ、お隣の帝釈山が望めた。


雲はまたいつかかるかわからないので今のうちに写真を撮っておこう。
右から小真名子山、大真名子山、雲がかかっているのは男体山。


自宅での朝食から6時間経った。
腹ごしらえを兼ねてこれからどうするかを考える。
疲れてはいるが帝釈山まで行ってみたい。
昨年は身体の調子が良かったので帝釈山まで行って折り返したところで両足太ももが痙攣を起こすという予期せぬ出来事に見舞われた。
大汗によるカルシウムとマグネシウムの流出が原因であった。
同じ失敗を繰り返さないようにと、今年になってサプリメントを常用するようにした。
その効果か、今年の山行ではまだ痙攣は起きていない。
そこで、効果を昨年と同じ状況下で確認したいと思う。
しかも昨年より今日の方が疲れが激しいから、効果を見るにはうってつけであろう。
ここから700メートル先の帝釈山(2455m)まで行くことにした。


女峰山から帝釈山へ行くにはまず、両手を使って岩場を下り、次にガレ場を下っていく。


鞍部へ降りると白根山が見えた。


女峰山頂で10分ほど休憩したからだと思うが、帝釈山へは予定していた40分をやや下回って33分とまずまずの時間で到着した。
今日の本命はこの山の頂に立つことだったので喜びは大きい。


太郎山がくっきり見えた。
左手前は小真名子山。


今日の管理人の出で立ちだが、荷物は5キロ未満に抑えた。
靴は雨を想定してスポルティバのトレランシューズ・ウルトララプター(ゴアテックス)、パンツは真夏用の極薄生地。上はモンベルの薄手の長袖ハーフジップとその下にfinetrackのドライメッシュ。
荷物もウエアも軽量化を図ったが体脂肪をたっぷり蓄えたこの身体が重い。


さあて、ぼつぼつ帰るとすっか。
所要時間の計測は帝釈山までとしたので帰りは時間を気にしなくてもいい。
事故を起こさないようゆっくり歩くことにしよう。
行く手に三角定規を立てたような女峰山を見ながら(雲にじゃまされた)同じ道を進んでいく。


咲き終わったツガザクラ


そう、これが女峰山を西から眺めた姿。
東側からだとわからない、女峰山の真の姿が拝める。


山頂に別れを告げ、これから長大な尾根を下っていくことに。


オヤマリンドウ


ウメバチソウ


水場で飲み水を補充して一里ヶ曽根まで来て、10分ほど休憩。
かなり疲れているのを意識した。


来年のために栄養を蓄えているアズマシャクナゲの花芽。


この辺りがもっとも速度を上げて歩けるのだが今日はダメだ。


奥社跡
ここでも10分ほど休憩をとった。


赤薙山の手前で道は分岐する。
直進するとすぐ先が山頂だがここは左へ下った方が楽。


赤薙山を下り切ると小丸山への尾根と丸山が見えてくる。
気持ちに安心感がもてるのはこの辺からだ。


ここ、小丸山の少し手前まで来て、とうとう降り出した。
夏の雨はなんの前ぶれもなく降り出すから雨具を着る余裕がなかった。
手っ取り早くザックから傘を取り出したが、横殴りの雨を小さな傘で凌ぐには雨脚が強すぎる。
夏以外の季節なら6時から登り始めるところを5時にしてよかった。
あと30分もすれば下山できるが6時のスタートだったら1時間余計に雨に濡れるところだった。
それと今日はカミナリが一緒でなくて助かった。


ヤマハハコ


アキノキリンソウ


トンボソウかな?


ツリガネニンジン


小丸山を降りて天空回廊までやってきた。
雨は再び激しくなり、パンツを伝って靴の中に入ってくる。


オオカメノキ


ゴマナの群落


シシウド


ここから歩き始めて11時間35分。
なんどもなんども休憩しながら、なんとか無事に戻ることができた。
身体は疲れのピークに達している。
汗と雨で全身ぐしょ濡れ。
75歳になった記念に限界とも言える山行をし、気持ちの昂ぶりを感じている。
帰ったらすぐに風呂に入り、目をつむって気持ちを落ち着かせよう。
そして、今夜の夕食に相応しいアルコールはなにかを考えよう。


齢七十五の誕生記念に女峰山(帝釈山)往復、11時間半。」への2件のフィードバック

  1. TOSHIO TAKAHASHI

    お疲れ様でした。
    しばらく前15年位?女峰山ピストンで12時間位掛かった記憶があります。
    その時、アッププダウン多く疲れた。

    返信
    1. 亀歩き 投稿作成者

      TOSHIO TAKAHASHIさま
      女峰山はアップダウンが多いので往きも帰りも時間があまり変わらないのですよね。
      山と高原地図を見ると休憩なしで10時間が標準となっていますので、休憩込み12時間は普通だと思います。
      まっ、いずれにしても日光屈指の難易度の高い山には違いありません。 

      返信

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