毎年10月は古賀志山記念日。今年も馬蹄形と鞍掛ルートを!

2023年10月24日(火) 爽やかな秋晴れ

10月も後半に差しかかり日光は紅葉見学の車と人でごった返していると想像できる。
「想像できる」と書いたのは、その現場に足を運んだことがないからだ。
だが、その様子は手に取るようにわかる。

管理人が経営するペンションの客から渋滞にはまった際の嘆きの声を聞いたり、客をペンションに乗せてくるタクシードライバーの話を聞くと渋滞のすさまじさが伝わってくる。
だからわざわざ管理人が渋滞の現場に足を運ばなくても凄さがわかる。
こんな時期に日光の山に登りに行こうなどという気持ちは起こらない。

2014年10月、渋滞に遭わずに山へ行く方法はないものかと地図で探したのが宇都宮市の古賀志山だった。
日光へ向かうのと同じ国道を走るのだが反対車線なので渋滞はないはずだ。
読みは当たった。
登山口となる宇都宮市森林公園の駐車場はそこそこ埋まっていたが順番待ちをするなどということはなく、なんの苦労もなく駐めることができた。
それから何年も同じ時期に古賀志山に通っているが、ほぼ同じ時間で登山口に着く。

山頂の稜線続きに東稜見晴台という場所がある。
名前の通り見晴らしが良く、宇都宮市街が一望できるだけでなく、遠く筑波山も視界に入ってくる。
それまで展望と言えば日光の2千メートル峰の山頂から眺める雄大な景色しか経験のない管理人には、すぐ下に家が建ち並ぶ光景はとても新鮮に映った。
人の営みが感じられる眺め、これが低山の良さなのだろう、そう思った。

東稜見晴台からの展望を楽しんでいるとき、地理院地図には登山道など描かれていないのに、そこから人が上がって来たことに興味を覚えて進んで行ったところ、垂直の岩の上に出た。
足が竦んだ。
ロープが垂れ下がっているのを見て、今の人はこの岩を下から上がってきたのだろうか、と素朴にそう思った。
そんなことが果たして可能なのか、というのが垂直の岩を上から覗き込んだときの印象だった。
いつかは自分もそうなりたい、それが管理人をして古賀志山にのめり込むきっかけとなったのである。

以来、毎年10月は古賀志山を訪れ、足が竦んだときのことを思い起こすようにしている。

古賀志山は多くのハイカーが利用している昭文社「山と高原地図」に収録されていないため、頼りになるのは国土地理院の地図(地理院地図)ということになる。
しかし、地理院地図には主要な登山道と山名は描かれているものの、古賀志山の登山道の圧倒的多数を占めるバリエーションルートは描かれていないし地名も描かれていない。
古賀志山に精通している地元の登山者を除き、実にとっつきにくい山と言える。
そこで管理人は、古賀志山の保全に尽力されているNPO法人「古賀志山を守ろう会」が公開している「古賀志山周辺地図」の利用をお勧めする。
バリエーションルートもすべてではないが載っている。
今自分がいる場所を地図アプリで確認するとともに、どこへ行きたいのかを「古賀志山周辺地図」で決め、スマホの地図アプリを確認しながら歩くのが安全のためにいいと思う。
なお、当ブログの古賀志山関連記事には地理院地図に描かれていない地名がたくさん出てくるので、それはどこを指しているのかを「古賀志山周辺地図」で確かめていただきたいと思っている。

メモ(記録にはInstinctを使用した)
・歩行距離:16.5キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:7時間48分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:1715メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

絶好の古賀志山日和となった。
赤川ダム堰堤から古賀志山がくっきり見える。
が、なにかがおかしい。
これだけいい天気でなおかつ無風とくれば、水面に逆さ古賀志が映えるのだが、それがない。
そう、手前はダムなのに水がないのだ。
一滴もなく、湖底を晒している。
工事をするために一時的に水を抜いているのかもしれない。


先ほどから砂糖を焦がしたような甘い香りが漂っている。
カツラの葉が黄葉したときの香りだ。
堰堤の際に大きなカツラの木があってそこから漂っている。


赤川ダムに注ぐ赤川をまたぐ芝山橋を渡って古賀志山の登山口へ向かう。
古賀志山へのアプローチはいくつもあって、ここからだと橋を渡って右に膳棚林道を行き、膳棚林道から続いているいる道が地図にあるノーマルな登山道。
膳棚林道の終わり部分から急斜面を行くのが東稜コースというバリエーションルート。


水場を通過。
今日は右回りにしたので登山口からすぐのこの水場は利用しないが、左回りにした場合、それまでの疲労と喉の渇きでこの水は命の水となる。


樹林帯の中の薄暗い登山道もここ、富士見峠で終わる。
これからしばらくの間は明るい林間を心地よく歩ける。


古賀志山山頂に到着。
これからのルートだが、古賀志山山頂から延びる古賀志山主稜線で主稜線最後のピークの北ノ峰まで行き、北ノ峰から北へ向かって日光市との境界をまたぎ、腰掛岩、鳥屋山(ピーク444)へと進む予定だ。


まず御嶽山へ、大きな岩をふたつ超えていく。
なお、古賀志山の岩場は昨年10月以来だが、今回も鎖を使わず両手両足で岩場をクリアすることを課題とした。


御嶽山からの眺めはとてもよく、古賀志山が南の一部しか開けていないのに対して、御嶽山は西を中心に南北180度の展望がある。
空気が澄み、雲ひとつない状況だと日光連山や白根山、皇海山がよく見える。
混み合う古賀志山を避け、ここまで来て昼食にする地元の人も多い。


センブリ
登山道の真ん中に咲いているものだから危うく踏んづけるところだった。


高さ5メートルほどの岩、地元の呼び名でカミソリ岩を上がる。
ホールドもスタンスもしっかりしているので鎖を使わずとも上がれる(管理人の場合)。


古来から信仰の対象にされている二尊岩。
ここをクリアするわけではなく、岩の基部を通過する。


古賀志山山域はどのルートを歩いてもそうなのだが、視界がパッと開ける場所があってホッとする。
2千メートル峰の山頂のように360度の展望が得られるわけではないが、低山特有の景色は視界に市街地が入り、人の営みを感じることができる。


赤岩山(535m)


赤岩山は北面の一部が開け、高原山(鶏頂山、釈迦ヶ岳、中岳、西平岳の総称)が望める。
長居をすることもないので写真を撮っただけで立ち去った。


主稜線最後のピーク、北ノ峰(432m)に着いた。
ここから標高を一気に下げて日光市に入り、林道内倉線を突っ切って腰掛岩、鳥屋山へと向かう。


444メートルの鳥屋山がよく見える。
これからあの山の山頂を通過するのだが、ここから200メートル下って200メートル登り返してあの山頂なのである。
なんだか意地悪をされているような、、、

北ノ峰からは細く急な道を下り、林道に出る前に、山の中に似つかわしいこんな不気味な小屋の脇を通過する。
今日は陽射しがあって明るいのでまだいいが、薄暗いときにここを通過するのは勇気がいる。
いつだったか、通過しかかると後ろから人に呼び止められた気がして振り向いたが誰もいない。
あまりの気味悪さに、その場で金縛りになってしまった。
もしかすると小屋の中に人がいるのかもしれないと思ったが、小屋を覗いて確かめる勇気はない。
高鳴る鼓動を抑え、冷静になるまで待ってここを足早に立ち去ったことがある。

あっ、そうそう、馬蹄形ルートを歩く際、この小屋はランドマーク的存在となっていて避けて通れないので念のため。


林道に降り立つとセイタカアワダチソウが群れを成していた。
今の時期、市街地の空き地や里山の麓は外来種のこの花が目立って多い。


2本の林道を突っ切ると腰掛岩へ導く道標があるので矢印に従って右へ。


明るい林間で気持ちはいいのだが上に行くほど傾斜がきつくなり、ヒイヒイ言いながら登ることになる。


なんとか腰掛岩にたどり着いた。
腰掛岩とは言い得て妙だが、まさに腰掛けそのものの形をした岩なのである。


展望がいい。
下ってきた北ノ峰と鹿沼市街地、日光市街地がよく見える。


松の木に隠れて日光連山が見えないのが残念。


続いてピーク444の鳥屋山。


今が盛りのコウヤボウキ。
蕾のある枝を管理人は初めて見た。
コウヤボウキは枯れると花がブラシ状になって冬を越す。
それを箒に見立てたのが名前の由来である。


アキノキリンソウ


鳥屋山から40分ほど経過。
この間、アップダウンがあったり岩場があったりで気を抜けない。
画像のような歩きやすい道もあるがごく一部だ。


画像では伝わりにくいが、疲れた身体にとって地獄を味わうキツイ斜面が待ち構えている。
この斜面の上が手岡分岐で一息付けるが、そこへ行くまで何回立ち止まって息を整えたことか。


ふ~、手岡分岐だ。
重い足を引きずりながらようやくここまでたどり着いた。
腰を下ろして休むことなくここまで歩いて来たので座れる場所を探そう。
ちなみに、尾根を右へ行くと古賀志山、管理人の今日のルート設定は左へ行く。


最近、管理人が朝食の主食にしているオートミールを使ったケーキを、山行の時の昼食にもしている。
他に魚肉ソーセージを食べた。


きっかり15分の休憩を取り歩き始めた。
道はここで北主稜線と名称を変え、先ほどの分岐を右へ曲がると古賀志山へ行き、古賀志山で馬蹄形ルートが終わる。
管理人は北主稜線を左、鞍掛山へと、ここまでと同じ距離を歩く予定だ。
疲れを感じているがこの先にはエスケープルートがいくつかあるので、限界を感じたら逃げ込むつもりだ。


手岡峠
管理人がいま歩いているルートは、馬蹄形ルートと鞍掛ルートを組み合わせた20キロに近い、長いルートである。
距離が長いだけに何かことが起こるとにっちもさっちもいかなくなり、レスキューのお世話になる羽目になる。
だが、このルートにはいくつかのエスケープルートが用意されていて、駐車場や県道に出られる便利さがある。
もっとも、ことが起こってからでは遅いので、その前にという条件がつくが。
ここを右へ曲がると間もなくアスファルトの林道と出合い、駐車場まで平坦路のまま戻ることができる。


オクモミジハグマ


誰とも出合わなかったがここへ来て、人の声が聞こえてきた。
姿は見えないが近くにいることは間違いない。
この分岐を右へ行くと「三角山、地元の名称・大日向山」がある。
三角山転じておむすび山と言われているくらい、地元で知られている山頂で、そこから聞こえてくる人声である。


古賀志山から始まる主稜線は岩場のアップダウンばかりだが、それに比べると北主稜線は歩きやすい。


ここでまた分岐。
北主稜線はここで北尾根ルートと名称を変えて長倉山へ向かう。
直進するのが北尾根ルートで、駐車場へのエスケープルートとして使える。
鞍掛山へはここを左へ入る。


アブラツツジがいい色に染まっている。


北主稜線からわかれた鞍掛山ルートはアップダウンが多い。
正面にシゲト山(472m)が見える。
あそこへ行くにはもちろん、ここを下って登り返すことになる。
厳しいぜ!


ヤクシソウ


シゲト山山頂
ここも赤岩山と同じく北面が開けていて日光市街を見渡せる。


シゲト山からの展望。
日光市街を通して高原山が望める。


鞍掛山直下の岩、岩、岩
もう少しだ、死ぬ気でガンバレ!


鞍掛山は展望がないのでサッと通過。


ほぼフラットなまま大岩に到着。


このルート最後の展望地、大岩。
この先、展望は望めないのでここで低山からの景色を頭に焼き付けておこう。


オクモミジハグマ


キチジョウソウ
花を見たかったな。


今日は立ち寄らなかったが、ルートから外れて鞍掛山神社がある。
岩盤を伝って細い滝が流れ落ち、その脇の洞窟の中が神社になっている。
一見の価値あり(洞窟の中を見るには明かりが必要)。


林道に降り立ち、これから最後の上りが始まる。
長倉山までの長く厳しい上りである。


疲れていると斜面の上に空が見えるとそこが山頂だと思いたい心理が働くが、長倉山はそういった場所が数カ所ある。
なので、それに惑わされることのないように、ただ無心で足を進めていく。


お~、やったぞ!
鞍掛ルート最後のピークだ(実際には349mの小ピークがこの次にあるが大したことはない)。
もう苦労することはない。
あとは駐車場に向けて下るのみ。


駐車場への快適なルート。
思わず走りたくなるがそんな元気はない。


疲労困憊で下山して古賀志山記念日が無事に終わった。
予定していた8時間をわずかに切って下山した。
1年後、管理人は齢76になっている。
同じ時間で終えることが可能かどうか、まったくわからないが、努力は惜しまず続けよう。



参考
過去の馬蹄形ルートの結果

同じルートは2015年から歩き始めて今回で8回目となる。
ここ数回は8時間弱で歩き終えているが、かつては10時間を超えることもあった。
尾根の分岐が多く、間違って違う尾根に入り込んでしまったり、距離が長いだけに体調の良し悪しが影響したりで所要時間が違ってくる。
2020年以後は8時間を切っているのでこれからも同じ時間で歩き終えるのを目標にしたい。

毎年10月は古賀志山記念日。今年も馬蹄形と鞍掛ルートを!」への4件のフィードバック

  1. まっちゃん

    少し亀レスになってしまいましたが・・・
    (この表現も今の時代死語かもしれませんね)

    改めて管理人さんの健脚ぶりに舌を巻いています。
    自分は10歳以上若いのですが、ちょっと自信の無いルート。
    シゲト山へと最後の長倉山への登り返しで足が攣りそうです。
    北ノ峰から取りついて馬蹄形南半分+半蔵山までの縦走を長らく考えていたのですが、
    体力のあるうちに実行しなきゃならんなぁと痛感しています。

    返信
    1. 亀歩き 投稿作成者

      まっちゃんさま
      こんにちは。
      お久しぶりですね。

      健脚だなんてとんでもありません。
      よく知ったルートゆえ、力を抜くポイントがわかっているだけですよ。
      未体験のルートだと神経を使ってしまい、古賀志山のようにはいかないと思います。
      『北ノ峰から取りついて馬蹄形南半分+半蔵山までの縦走』、長距離になりそうですが是非ともチャレンジのほどを。
      半蔵山には石切り場の跡が残っているそうで、私も関心を寄せています。

      まっちゃんさまの今後のご活躍に期待しております。

      返信
      1. まっちゃん

        半蔵山の石切り場跡についてですが、記憶があったので古い記事を探してみました。
        手前みそで申し訳ないのですが御笑覧いただけたらと思います。

        http://www.mattyan.sakura.ne.jp/blog/2007/04/post_80.html
        2007年4月の記事はブログを始めた頃で読み返しても恥ずかしいですが、
        男抱山北西の291mPにある採石場跡に触れています。
        当時は男抱山自体も歩く人は殆ど無く、ここから半蔵山への登山道は存在していませんでした。
        朽ちた鉄条網の下に見える採掘跡に溜まる暗い色の水を見て「ここに落ちたら絶対発見されないな」と思ったものです。今はどうなっているかわかりません。
        また上記ルートの取り付き部分は現在メガソーラーになってしまっており残念な思いです。
        山のオーナーさんがいらっしゃるので仕方がないことではありますが・・・

        https://mattyan.me/2015/11/28/hagurosan-2/
        2015年11月は男抱山南西の羽黒山から南に延びる稜線に古い碑文や石塔、露天掘りの垂直の岩を見ました。
        かつて新里に鉄道が引かれて採石を運んでいたまさにその歴史を垣間見る遺構であると思います。

        返信
        1. 亀歩き 投稿作成者

          まっちゃんさま
          男抱山そして羽黒山の石切り場跡の詳細をどうもありがとうございます。
          石切り場といえば私は大谷しか知りませんが、他でも大規模な採掘がおこなわれていたとは驚きです。
          ぜひ行ってみたいと思います。

          それにしても「道なき山シリーズ」の上記2本はいい足跡を残されていますね。
          いまほどネットが充実していない時代ゆえ、情報収集には苦労されたのではないかと思います。
          それが今日のまっちゃんさまの技量となっているのでしょう、きっと。
          なにごとも苦労して始めて自信に結びつく、その典型ではないかと思います。

          返信

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