霧降高原・赤薙山~丸山をチェーンスパイクとスノーシューで必死の縦走

2021年1月20日(水) 快晴 汗噴き出す

今月14日、栃木県に緊急事態宣言が発令され、制約事項ばかり目立つ中で外食に出かけるのでもなく街に飲みに出かけるわけでもなく、日々慎ましく暮らしている管理人には宣言自体、あまり意味はない。

それよりもすでに一年になろうというのに終息どころか感染が拡大する一方の新型コロナに対する国の施策がまったく見えない中で、対策は国民の責務とは、これが国が国民にもっとも強く求めている「自助」の実態なのであろう。

”国は誰も(一部を除いて)助けないからな、そのつもりでいろよな!”

それが国の腹の内であることを知っているからこそ国民は緊急事態宣言に従うことなく、その結果が今あるのである。
情けない国になってしまった。

さあ、管理人も緊急事態宣言に従うことなく、不要不急とは縁遠い我が楽しみとしての山へ向かおう。
強いてこじつけるとすれば、健康増進とコロナに打ち勝つ免疫力の向上というのが理由だ。
が、それは毎度のことなので大きな理由とは言えない。

昨年末、我が足としていたジムニーが高齢化でこの先どうなるか分からないため手放し、代わりとして軽貨物を購入し、これを登山時の寝床とすべくDIYを始めた。
正月返上で(ペンションに客もいないから)作業に努め、ベッドと収納庫、棚が完成しとりあえず寝るには不自由しないまでに仕上がり、一息ついたところだ。

作業の合間に敷地から日光連山を眺めては積雪の状況をあれこれ想像する。
昨日も軽貨物の改装中に見上げると、霞んで全貌が見えないながら明らかに雪が降っているようである。
霧降高原に直近で行ったのは9日(土)だ。
お客さんとのツアーだったが前々日、前日と続けて降った雪のおかげで新雪が40センチも積もり、絶好のコンディションでのツアーになったのは幸いだったがその後、16日には近年の特徴といえる1月の大雨に見舞われてダメージを受けたと想像できる。
それが心配で、状況確認と、車の改装も一段落したので息抜きと、さらには金曜日に予定しているお客さんとのツアー(中止になったが)の下見を兼ねて歩いてみることにした。

メモ
・歩行距離:6.9キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:6時間8分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:831メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

昨日、自宅から見上げると、雪雲の中にうっすらとしか見えなかったのでかなりの量の雪が降ったのであろうと思ったが、キスゲ平に到着してみると降った形跡は見られず、古雪のままであった。
まっ、でも、コンディションは悪くはなさそうだ。


起点となるキスゲ平のレストハウス(日光市所有・自然公園財団が管理)は栃木県の緊急事態宣言をうけて来月7日まで休館となった。
ただし、係員はいて、館内のトイレは休館中でも利用できる。


振り返ると関東平野の上空から強い陽射しが照りつけ、厳冬期とは思えないほどだ。


キスゲ平のコンディションを見て、歩き始めはチェーンスパイクにした。
アイゼンは不要と判断したがスノーシューはザックにくくりつけた。
後で必要になるからだ。


9日以来、11日ぶりとなる運動なのでゆっくりと歩を進める。


空気は冷たいものの陽射しは強く、顔から汗が噴き出すようになってきた。
ゲレンデ(キスゲ平はかつてスキー場でした)の中腹で休憩し、中間着として着てきたフリースを脱いで身体を冷やした。
振り返って筑波山を眺める。


北東に高原山(鶏頂山、釈迦ヶ岳、中岳、西平岳の総称)がくっきり見える。


天空回廊トップの展望台。
ここでスキー場のゲレンデは終わりとなる。


天空回廊終段から5分も歩けば大きな広場に出、そこが小丸山。
丸山と赤薙山(経由して女峰山)との分岐である。
正面に見えるピークが女峰山の中継地となる赤薙山だが女峰山はここからでは見えない。
赤薙山の右に連なるピークを越えてさらに4つ目が女峰山だ。


鮮明ではなかったが富士山が見えた。


赤薙山が眼前に迫ってくるとすぐ先は焼石金剛。


標高1820メートルの焼石金剛に到着。
歩き始めてから1時間35分を要したが亀足の管理人にはまずまずの所要時間だ。
視界はさらに広がり福島県境の山並みが見えるようになった。
ちなみに、管理人が主催しているスノーシューツアーでは健脚の参加者に限り、ここまで案内することがある。
管理人がこのルートを好んで歩くのは奥日光のスノーシューコースでは得ることのできない、この大展望と出会えるからだ。


焼石金剛で5分の休憩をとって歩き始めた。
無雪期であればここから赤薙山山頂まで30~40分というところだが、果たして今日は如何に?
手にしているのは野ウサギの落とし物。
野ウサギはこの季節でもちゃんと活動していることの証。
割って鼻を近づけると干し草の匂いがする。


この頃からポールの片方のロック機構が壊れて固定できなくなってしまった。
応急処置もなにもできないのでこのまま使い続けるしかあるまい。
もう片方も昨年、同じ箇所が壊れてしまい、長さを固定した状態で強力ボンドで接着した。帰宅したらこれも同じ処置をしよう。
冬しか使うことがないので短くならなくても差し支えはない。


このルートの最大の難関、山頂直下のヤセ尾根に来た。
無雪期であれば普通の尾根だが、雪が積もるとナイフのように尖って幅は50センチにも満たない危険な尾根となる。
左に足を滑らすと300メートル下の中の沢までノンストップで滑り落ちるから要注意。


ヤセ尾根を無事に乗り切ると今度は急登攀が待っている。
冬の赤薙山は楽しさ満載なのである。
しかしなんだな、昨年9月に帯状疱疹をやってからというもの、スポーツジムに通うことも出来ず、長い自宅療養の結果、脚力がすっかり衰えてしまい登りが厳しく感じる。


ふ~、やっとここまで来れた。
この大岩が見えれば山頂はすぐだ。


と~ちょ~!!
急傾斜に苦しみながら2時間20分かかって登頂した。
一昔前であれば赤薙山(赤薙山を経由する女峰山も)へのアクセスは悪く訪れる登山者は少なかったが、天空回廊が完成してからというもの日光駅からもっとも近い2千メートル峰として人気が高まった。
積雪期は元スキー場のゲレンデを歩けば標高1600メートル、大展望が得られる小丸山に登ることができ、さらに少し頑張れば2千メートルの雪山の山頂に立てるから訪れる人は多い。
管理人が登り始めたのは9時過ぎだが途中、3人の登山者とすれ違い、2人の登山者に追い越された。
管理人が下山する際は登ってくる3人とすれ違うなど、平日しかも緊急事態宣言中にもかかわらず、登山者が多かった。


赤薙山はコメツガに囲まれて展望は良くないが、鳥居をくぐって山頂の端まで行くとそこだけが展望がいい。
ずいぶん先に我が母なる山、女峰山が見える。


男体山


おや、富士山まで見えるぞ。


富士山を眺めながらランチとし、下山に取りかかった。


福島県との県境の山。
あそこまで日光市というから広い。


ヤセ尾根を慎重に進んで行く。


焼石金剛まで戻り、、、


ここでチェーンスパイクからスノーシューに履き替える。
往きはここまでチェーンスパイクで歩いて来たが、帰りにここでスノーシューに替えたのには訳がある。


次に目指すのは眼下に見えるあの山だからである。


膝まで潜る深い雪に足を取られながらスノーシューの醍醐味を味わう。
ただし、このルートは急な下り斜面である上に雪が深く、雪崩の恐れがあるためお勧めできない。


丸山鞍部まで降りてきた。
さあ、これから登り返しだ。


よいこらせっ、と。


ふ~、丸山山頂だ。
それにしても雪が少ないな。
9日にツアーで来たときとほとんど変わっていないのはどうしたわけだろう?


振り返って赤薙山を見上げる。
先ほど歩いたトレースがくっきりと見える。


しばらく身体を休めた後、丸山の北斜面で八平ヶ原へ向かった。
昨年、滑落事故があった北斜面の登山道がその後の雪でどのように変化しているかを確かめたい。


北斜面の始まりはまだ安全に歩けた。


尾根から(尾根を、ではないことに注意)斜面に向かって下る階段。
ここはスリップしても階段の柵にぶつかって止まるからそれ以上、斜面を滑り落ちることはない。


問題はこの辺りからだ。
尾根から5メートル下、東斜面をトラバースするように敷設されている夏道だが、雪が深く積もると夏は安全な登山道が完全な斜面と化す(画像ではわかりにくいが)。
この画像の右側は急斜面になっていて足を滑らすと止まらない。
赤リボンはここに付けられていて、リボンを頼りに歩こうとすればこの斜面は避けられない。
昨年の滑落死亡事故はこの辺りで起きたと管理人は推測している。


短い距離ながら緊張は続く。
この5メートル左が安全な尾根なので危険な目に遭いたくなければ尾根を歩くことを強く勧める。
身の安全を確保できる人でない限り、赤リボンにしたがって歩くのはやめるべきだ。安全な尾根を歩くべきである。
尾根と谷の区別がつかない人などいないと思うが、今、自分が立っている場所が左右に比べて高いのが尾根で低ければ尾根ではない、と乱暴に書いておこう。
この画像でいえばカメラの位置が尾根から下がった谷側で、この左が尾根であることがわかる。


ここで尾根と合流し滑落の危険はなくなる。
この辺りまで来て管理人の脚に異変が起きた。
雪の深みにはまったときに太もも内側にピキッという強い痛みが走った。
左の脚もだが右足が特に酷く、痛みに耐えながら為す術もなく、その場に立ち竦む始末だった。
午前中、大量の汗をかいて脱水気味だったのだろう、それが今になって痙攣として現れた。
痙攣は膝を深く曲げたときすなわち、太ももの筋肉が収縮するときに起こるようだ。
そこで収縮の反対動作、伸張してはどうかと思い、足を真っ直ぐに伸ばすと痙攣は治まり楽になることがわかった。
そうか膝を曲げないように歩けばいいんだな、でもそれは無理であることをすぐ理解した。
とにかく、ゴールまでだましだまし歩くしかない。


サルオガセ


広大な雪原、八平ヶ原(やっぺいがはら)に来ると緊張が解かれるとともに大展望に息をのむことだろう。
高原山から筑波山、宇都宮市街まで180度の展望が得られる。


八平ヶ原が終わる頃になると地肌が剥き出しの部分があった。
スノーシューで歩くのはここまでにしておこう。


チェーンスパイクに履き替えて歩き始めた。


小丸山への分岐路。
ここまで来ればゴールまで15分というところ。


キスゲ平とフェンスを挟んだ旧登山道を歩いて行く。


ふ~!
今日、何回目のため息だろう。
太ももの痙攣で一時はどうなることかと思ったが這々の体ながらゴールできた。
帯状疱疹以後の運動不足をこれほど痛切に感じたことはなかった。
疲労が蓄積しないようスポーツジムを退会して自宅での筋トレに切り替えたわけだが、筋トレに費やす時間はスポーツジムの比ではない。
ゼロから鍛え直すつもりで取り組むとともに、太もも痙攣の原因追及と対策を課題としよう。


丸山山頂から北に延びる登山道が昨年、滑落死亡事故があった場所。
13:58と14:01の画像でも指摘したが進行右(下山の場合)は傾斜30度はある急斜面である。
夏道はそこにつけられていて赤リボンがある。
日頃、赤リボンに沿って忠実に歩く習慣のある人は当然ながら上図の危険なルートを歩くことになるであろう。
また、過去に夏道を歩いた経験のある人や地図を読める人は赤リボンがなくても夏道を歩くだろう。
それがいかに危険なことなのかを管理人は指摘しておく。

関連ブログ
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