通行禁止が解除された霧降高原・丸山にいつもの通り北斜面からスノーシューで

2021年1月5日(火) 曇り

昨日とは気象環境がまったく異なる、霧降高原丸山の実踏である。
奥日光湯元地区は日光市の西の外れに位置し、冬は日本海側の気象の影響を受けて雪がよく降るが、霧降高原は日光市北部に属しここ数年の気候変動によって北日本上空の寒波の影響が弱くなり、どちらかといえば太平洋側の気象の影響を受けるようになっている。

管理人は霧降高原の麓に住んでいて登山口まで15分で行けるから、望ましくはここに大量の雪が降ってほしいと願っているが、ここ数年、1月2月に酷い雨に見舞われたりしてせっかく積もった雪が跡形もなく消えてなくなるという事態に直面している。
かつては冬の間ずっとパウダースノーが味わえるほど雪に恵まれていたが、今ではそんなことはなく、雨が降らないことを祈りながらスノーシューを楽しむというほどに様変わりした。

昨年末の大型寒波はありがたいことに日光連山を越えて霧降高原に雪をもたらせた。
年が明け日が経つにつれて雪の量は減少していくだろうが、それまでの間に歩いておこうと出かけた。次はいつ雪が降るかわからないしね。

ところで昨年1月31日、管理人がスノーシューの定番コースとしている丸山で、登山者が滑落して亡くなるという痛ましい事故が発生した。
地図にある登山道に忠実に歩いて起こったあるいは、無雪期の経験で登山道のある場所を知っていたから起こった事故のどちらかが原因であろうと推測するが、事故が起こった場所は無雪期は安全そのものだが積雪期は非常に危険な場所なのである。
管理人が主催しているスノーシューツアーではその危険な夏道を回避するルートを歩くようにしているので事故の心配はないが、これも多くの経験から得られた危険回避策である。

無雪期は安全な登山道が積雪期は危険な登山道に変わる。

その事故の折、登山道を管理する日光市によってルートが閉鎖された。
一時的には妥当な対応(実際にはそうではないのだがここではその理由は割愛する)であるといえるが、次にとるべき対策は事故の場所を特定し、原因を把握して、安全対策を講じ、登山者のために一日も早く閉鎖を解除すべきはずである。
しかし実際にはシーズン中、閉鎖は続き、ツアーの場所を奥日光に変更せざるを得ない結果となった。

丸山は小ぶりながら雄大な展望が得られるのと、変化に富んだルートゆえに雪山気分が味わえるのが特徴であり、参加者の喜びも大きい。
なにしろ日光駅から30分(ただし、マイカーで。バス便なし)で登山口に着くし、1時間も歩けば大展望に恵まれるので、冬の観光資源としてここを活用しない手はないのだ。

事故から一年経過して、もしもまだ閉鎖が続いているようであれば日光市に対して解除を申し出るつもりでいた。
今日は解除を申し出るのに必要なデータ収集も兼ねて歩いてみた。

メモ
・歩行距離:4.6キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:3時間14分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:481メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

キスゲ平園地に到着し身支度を調えてこれから向かう丸山を眺める。
正面が小丸山から赤薙山を経て女峰山に続く長い稜線で、右に見える大きな塊が管理人が主催するスノーシューツアーの定番、丸山(1689m)である。
小丸山へは直進して天空回廊を昇るか、この時期だけ許可されるゲレンデ歩きとなる。
丸山へは小丸山から南斜面を辿る方法と八平ヶ原を経由して北斜面から登る方法、それとチャレンジャー向けには旧登山道で小丸山へ出て南斜面から登る方法がある。
管理人が主催しているスノーシューツアーでは八平ヶ原を経由して登る方法をとっている。それがもっともルートが変化に富んでいるのと展望がいい。


レストハウスの手前が登山口になっているが昨年は事故を受けてここに通行禁止のロープが張られた。
しかし、まったく見当外れの対応だったため強く抗議した結果、後日、撤去されてロープは別の場所に移った。


旧登山道と八平ヶ原との分岐。


分岐を右へ行くのが八平ヶ原へのルートだが、ロープは登山口からここに移動された。
しかし今年はロープはなく、通行可能なようだ。
ということは滑落事故が起こった場所に安全対策が高じられたのだろうか?
それを見届けるために八平ヶ原へ向かって沢を降りていった。


昨日の金精沢に比べると雪はまだこんな状態。
積雪量、雪質から見て昨年末に降った雪そのままのような気がする。


八平ヶ原に到着。
ここから北東に位置する高原山(鶏頂山、釈迦ヶ岳、中岳、西平岳の総称)がよく見える。
視線を東に向けると宇都宮市街地の向こうに筑波山まで見えるほど展望が良く、このような環境は奥日光のスノーシューエリアにはない。


道はここで西へ直角に折れて丸山の尾根に向かう。


同じ場所から見上げる丸山。
右の斜面が事故のあった北斜面で、事故はあの山頂直下で起こった。


ここが夏道であることを示す赤リボンだが、道は山頂までハッキリしているので無雪期であればリボンは必要ない。
むしろ、雪に道が覆われるこの時期は赤リボンに誘導されて危険な夏道を歩くことになる。


北斜面の尾根。
この辺までは尾根上を歩くようにリボンが誘導してくれるが、、、


リボンは次第に尾根から外れていく。


やがて急階段。
階段の上が尾根? と見えてそうではない。


足下はこんな急斜面になっている。
今はまだ雪が少なく夏道だとハッキリ分かるが、雪がもっと積もると登山道も斜面と化してしまい、足を滑らすとここを滑り落ちることになる。
もっとも、登山道の存在そのものがわからなくなるため危険はさらに増す。


登山道は尾根の5~10メートル下に尾根と並行している。
ここはもっとも近づいた部分で、尾根がすぐ上に見える。
積雪期はこの尾根上を歩いた方が安全なのだが、、、


再び手摺りのある階段。
この階段を上がっても尾根はまだその上だ。


ここでようやく尾根と交わり、滑落の危険から開放される。


標高1689メートルの丸山山頂。
ここは岩がゴロゴロした広場になっていて景色を眺めながらの腰掛けて休憩するのに最適だが、今日は陽射しがなく寒い。
手早く食べて下山しよう。


赤薙山から女峰山へ続く長~い尾根を見てしばし感慨に耽る。
ちなみに女峰山はここからでは見えない。
右端のピークのさらに奥なのだ。


昼食を立ち食いで済ませて早々に下山開始。
南斜面を降りて赤薙山稜線との合流点まで来ると小丸山はすぐ目の前。
小丸山から先は天空回廊で下るかゲレンデを歩いて登山口に降りる方法があるが、ひと工夫して旧登山道を下るのが面白い。
林がやや密だがそれが幸いして陽が当たらず、雪質がいい。


ゲレンデの積雪量を確認するためにここで林間を抜け出た。


地肌が完全に隠れるほどの雪の量だが強い日差しをうけたせいか雪は固く締まり、快適とはいえない。


最後に天空回廊を数段歩いてレストハウスの前に降り、下見を兼ねた実踏は終わった。


通行禁止が解除されていたので滑落事故があったルートを歩いてみた。
通行禁止を解除するにはなんらかの安全対策を講じたからであろうと考えたが、残念ながら元のままであった。
昨年は雨が降るなどして雪質が悪く、表面がクラストして最悪のコンディションだった。
それが本質的な原因とはなり得ないとしても、正規のルートは危険に変わりはない。
これまでの説明で北斜面の夏道がどれほど危険なのかをご理解いただけたであろうか?
登山道を管理する日光市はその辺りの認識が弱い。
夏道の危険箇所に入り込まないよう、ロープを張って尾根上に誘導するなどの対策を講じなければ危険は危険のままで変わることはない。
一年経って熱さが喉元を過ぎたから通行禁止を解除した、そんな印象を拭えない。