我が地元、女峰山直下の氷瀑「雲竜瀑」ツアー(解氷始まる)。

2022年1月28日(金) 快晴 解氷さらに進む

去る13日(木)、管理人が主催しているスノーシューツアーのリピーターであるYさんと庵滝へ行ったさいにYさんから、次は雲竜瀑(※)に行ってみたいとの要望をいただいた。

Yさんにとって冬の雲竜瀑は夢にまで見る憧れの滝だそうだ。
雲竜瀑ツアーをおこなっているガイド事業者は日光市内にあるが、いずれも開催日程が定められているためYさんの休みと合わず、これまで参加する機会に恵まれなかったそうだ。

YouTubeの動画を観ては行った気分に浸る、そんなYさんの健気な気持ちを打ち明けられたら管理人としてそれに応えないわけにはいかない。

しかし、ペンションの経営とガイドを兼ねる管理人にとって雲竜瀑のツアーは困難を極める。
その理由は24日(月)のブログ「結氷した落差180mの雲竜瀑へ下見に行ってきた。」に書いたとおりで、安易な約束ができないのだ。

それが今日、実現できたのはひとえに長い登山経験によって身につけたYさんの素養の賜であると考える。
それと、平日の日の出前に集合、この日のために脚力を鍛え上げておくこと、アイゼンにヘルメット、ピッケル、チェーンスパイクを自前で揃えられること、そしてこれがもっとも大切なことになるが、ノーマルルートを嫌う管理人についてくる精神力の強さが条件となる。
Yさんの強さは脚力もさることながら、高難易度に果敢に挑戦する精神力の強さがあることで、それは庵滝ツアーのさいに管理人が理解したことである。

雲竜瀑の行程は庵滝とほぼ同じ13キロメートル。
庵滝との違いは渡渉をなんども繰り返すこと、滝壺への危険な道を歩くこと、踏跡がしっかり付いているルートを避けて歩くことなどである。
Yさんであればすべてを難なくクリアしてしまうだろう。
問題なのは巣ごもりが続いて腹が出てきた管理人の体力だ。

なおこの日、偶然にも、過去になんども行動を共にしているKさんからも申し込みがあった。
登山経験豊かなのとトレランランナーとして活動しているKさんとは、ガイドと参加者という関係を超えた付き合いである。
管理人からすればいいタイミングで強力な助っ人が現れたというのが正直なところ。


国土地理院地図には雲竜瀑と表記されているが管理人としてはこの滝を「雲龍瀑」と、旧字体である「龍」で書きたいところだ。
竜も龍も同じ意味を表す漢字とされているが、雲竜瀑の姿形はどう見たって管理人がイメージする「龍」なのである。→こちらの画像を

結果(GPSはiPhone7を使用した)
・歩行距離:12.9キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:7時間34分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:1675メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)
※この累積値には疑問
日の出前の出発だった。
参加者のYさんと日光駅に6時に待ち合わせ、Kさんとの待ち合わせ場所である滝尾神社へ向かった。
そこでKさんのスバルに乗り換えて早朝の林道を走ったのだがここ数日、雪が降らずまた高気温が続いたため林道にはアイスバーンはなく、6時20分に林道の車止めゲート前まで進入することができた。


稲荷川にかかる巨大な堰堤。
堰堤としては珍しく堰堤の上面を歩いて対岸に渡ることができる。
ただし、通行禁止の看板を無視しての話。
ちなみにこの上流、日向ダムで流れは雲竜渓谷と呼び名が変わる。


稲荷川堰堤上からの日の出直前の関東平野の眺め。
視界が狭いのでここから太陽が拝めるかどうかはわからない。


日向ダムの上に立つと正面に女峰山(2483m)がくっきり見える。
目指す雲竜瀑はあの麓、標高1600メートルから流れ落ちる日光最大180メートルの滝である。


渡渉に苦労して日向ダムを工事する際に敷設された資材置き場の上に出た。
ここから延びたアスファルトの林道が雲竜瀑へのスタンダードルートだが、ここから先は雪に被われているため駆動力を増すためにチェーンスパイクを装着した。
アイゼンの出番はまだ先である。


林道をしばらく歩き洞門岩で川原に降りる。
ちなみに洞門岩という「岩」は今は存在せず(「日光四十八滝を歩く」より)、道標だけが残っている。


洞門岩からのルートは幾本かに分かれるが、要は雲竜渓谷の上流へ上流へと向かうのである。
ただし、ルートの取り方によっては命がけの行程にもなる。
画像のルートはその典型であった。


靴を水に浸けなければならないほど足場の悪い沢を渡渉。


ここの氷柱は小ぶりながら美しかった。


オーバーハングした岩からしみ出た水が見事な氷柱を創っていた。


氷柱に見とれながらいい気になって進んで行くと、行く手を堰堤に阻まれた。
流れの両側は急な斜面になっている。
引き返すべきかと躊躇したが、それには渡渉を繰り返しながら20分も歩かなくてはならない。
無駄な努力とは思いながら堰堤ギリギリまで進んだところ、細心の注意を払えば右岸の斜面をよじ登って堰堤の上に乗れそうであることがわかった。


ひぇ~~怖い!
45度もある斜面を細い草木をつかんでよじ登る。
気がついたら病院のベッドの上、ということになるほどの急斜面だった。
帰宅してGPSのログを地図に描画して見ると、このルートは通常の4倍近い距離を歩いたことがわかった。
加えて滑落の危険もあるしこのルートを使うのはもうよそう。
それにしても実に神秘的な光景を拝むことができた。


雲竜瀑の核心となる川原へ降りる階段まで来た。
ここから滝直下まで流れをなんども渡渉するが、経験豊かなYさんとKさんであればなんということのない行程。


ポールを長めにセットして水中に沈めて渡渉の際の支点とする。
このとき、足下の氷が崩れることがあるので要注意。


幅の狭い部分を探してヒョイッと、決死のジャンプ(笑)。


渓谷の両側は垂直に近い岩壁が屹立し、その岩からしみ出た水が長い時間をかけて凍りつく。
それがこのような氷のカーテンを形作る。


よく見ると氷柱は溶け、岩壁が剥き出しになっているではないか。岩壁からは水が滴り落ちている。
そのはずで、ザックに取り付けてある温度計はちょうど零度を示していた。
毎年、12月から1月にかけて寒波がやってきてこれらの氷柱が創られるわけだが、1月下旬ともなると寒波の予兆すらないというのがこの数年の傾向である。
地球規模の気候変動すなわち温暖化は、このように管理人の身近な場所にも影響を与えている。


氷柱が崩れてできた空洞に収まるYさん。


流れの水しぶきが凍ってできた自然の造形物。
これが肥大化すると氷の橋ができて労せず渡れるようになるが、気温の高い今年はもう期待できないであろう。


自然の造形美を眺めながら実にゆったりしたペースで歩いて来た。
間もなく滝直下に着く。


右岸の氷柱が高気温によって崩れ落ちている様はまるで氷柱の墓場のようだ。


雲竜瀑全体を眺めることができる場所まで来た。
今日はYさんとKさんをここから一段上がった滝壺まで案内することになっている。


ここで滝壺へ行くための必須の装備となるアイゼン、ヘルメット、ピッケルを装着。
緊張感も高まる。
なにしろ50センチ幅の道をトラバースするのに、谷側の足を滑らせると50メートル下の渓谷まで一気に滑り落ちて大怪我(どころではないな)必至なのである。


滝壺への道程はカメラを取り出す気持ちの余裕がないくらい管理人も緊張した。
写真を撮れたのは滝壺に到達したときだった。


滝壺からの戻りも渓谷に降りきるまで気を抜けない。


滝壺から眺める雲竜瀑を堪能したのでそろそろ戻ることにしたい。
が、戻るのを躊躇うほどの渓谷美に、必然的に歩みが遅くなる。


スノーブリッジを渡渉する。
流れの表面が厚く凍り、その上に雪が乗ると盤石の硬さとなって人が乗ってもビクともしない(ただし、その見極めが重要)。


友知らず付近を通過。


9:11の階段上広場でランチとし、洞門岩へと進んで行く。


このパイプ堰堤から林道に出て歩くこと400メートル地点で我々一行はさらなるショートカットを試みることにした。


冒険というよりは無謀というに等しいショートカットである。
Kさんの後に見える急斜面を下りてきて、これから最初の渡渉をおこなうところ。
ちなみに、このショートカットで短縮できる距離はノーマルルートに比べてわずか100メートルにすぎない(笑)。
だが、楽しめれば(ただし安全に)いいのである。


左岸に渡り今度は日向ダムへ向かうため急斜面を這い上がる。


幅の広い流れを渡渉してようやく、日向ダムの上に立てる。


日向ダムを抜けてここまで来ればもうなにも心配はない。
稲荷川左岸を車止めのゲートへと向かう。


時刻は間もなく午後2時。
帰るには早すぎる時間だが朝6時半に歩き始めたので所要7時間半。男体山往復とほぼ同じ時間をかけてツアーを終えた。