結氷した落差180mの雲竜瀑へ下見に行ってきた。

2022年1月24日(月) 晴れ/気温高く解氷進む

管理人が主催している冬のアクティビティは主に雪原を歩くスノーシューツアーで、これは詳細をホームページで公開しているが、古くから参加している客で管理人が脚力を把握している場合はツアーメニューに限定せず、客に行きたい場所があれば応えるようにしている。

我が女峰山の麓、標高1600メートルの高さから180メートルも流れ落ちる雲竜瀑は深い谷間にあることから冬は気温が下がり、全面結氷することで知られている。
首都圏近郊に、これだけ大きな凍る滝は存在しないことから「超」が付くほど人気があって混む。

管理人が経営しているペンションから車で20分も走ればスタート地点に着くことから、地の利を生かしてここをツアーに組み込めば参加者はそれこそ断るくらい多く集まること間違いない。

が、混むのである。
滝が、というよりも駐車スペースが。
もともと専用の駐車スペースというものはなく、渓谷にかかる砂防堰堤の維持管理のために通行する車両が出入りする林道に設けられたスペースがあるが、本来そこは大型車両が転回したりするためのスペースであり、工事をしない冬だけ一般車両が駐められる。
とはいえその数、10台が限界である。
しかも平日であっても8時に着いたのではそこはすでにいっぱいになっていて、Uターンした車は林道脇の待避所に、そこも埋まっていれば狭い林道の路上に、さらには1キロも手前の元資材置き場(今は一般用の駐車場)に駐めて歩き始めることになる。
そのことから土日の混雑は想像に難くない(管理人、土日にここへ来たことはないが)。

客を乗せた管理人の車が混雑で駐められないとあってはツアーが成立しない。
それが雲竜瀑をツアーに組み込んでいない最大の理由である。

次なる理由として強い脚力が求められる。
その年の気温にもよるが近年、気候変動によって冬の気温が高めの傾向にあり、すると渓谷の流れが氷で被われることなく、轟々と流れていることがある。
そこを雲竜瀑目指して何度も繰り返し渡渉するため短足の管理人は苦労が絶えない。
いや、足の長短にかかわらず、対岸へ思いっきりジャンプする力が必要になってくる。

それから持参する装備の問題もある。
核心部の雲竜瀑直下へ行くにはアイゼン、ヘルメット、ピッケルが必要になる。アイゼンは不慣れな人にとって取り扱いが難しい。
また、それまでの行程はチェーンスパイクとトレッキングポールの組み合わせが歩きやすい。
ツアーを主催して積極的に参加者を募るとなるとそれら5点セットを主催者である管理人が用意しなくてはならず、それもネックとなる。
などなど、雲竜瀑をツアーに組み込まない理由をあれこれ挙げたが、スノーシューツアーと異なりそれらを解決するのは難しい。

スノーシューツアーを主催して24年にもなるとリピーターも増える。
中には首都圏から近い日光に雪が積もることなど知らなかったという客もいたが、今では近いのに雪がたっぷりあって雪質も良いと認識され、毎年来てくれる人がいる。
それらリピーターがヤマレコやヤマップ、YouTubeで雲竜瀑の存在を知り是非行きたいと頼まれると、その熱意を無下に断るわけにはいかない。
では一緒に行きましょうとなる。
ただし、上に挙げた諸々の難題をクリアできればの話。

近隣に住むYさんから、凍った雲竜瀑を見たい、氷のカーテンを見たいという要望があったのは今月13日、スノーシューツアーを行ったときのことである。
諸々の難題を挙げ、クリアできればという条件を提示したところ、条件が整ったとの連絡があった。
すなわち日の出前に集合、装備OK、ジャンプ力も鍛えたというものである。
日程は28日(金)に決まった。

管理人、スノーシューツアーのコースは歩き慣れているので別として、それ以外は本番前に実踏して危険箇所の把握に努めるようにしている。
それを今日、24日に実行した。

この時間、駐車スペースはすでに埋まっていたため管理人は林に突っ込んで駐めた。
本番の28日は7時に着くようにしよう。


堰堤を稲荷川左岸に渡る。


稲荷川には上流からの流木や岩をくい止めるための堰堤がいくつもかかっていてその役を果たしている。


コンクリートの巨大な塊。
荒れた林道はこの日向ダムで行き止まりとなる。


林道の行き止まりで堰堤を右から巻く。


日向ダムの上に達した。
先へ進むと林道の枝と合流しそこを上がっていくと林道本道と合流するが、管理人はさらに先へ進んでもうひとつ先の堰堤まで行こうと思っている。
その方が100メートルとわずかだが距離が短い。
ちなみに地図にある稲荷川はここで終わり、ここから先が雲竜渓谷になる。


林道枝を通り過ぎてさらに進んで行くと早くも渓谷の左右に氷柱が現れる。


左岸を高巻きして堰堤の上に出た。
林道と出合うにはこの堰堤が最終になる。
流れを跨いでこの斜面を上がったが雪が深く、大いに手こずった。


急斜面のラッセルから抜け出して洞門岩手前で林道に合流。
疲れたのなんのって!
日向ダムから林道を歩いてここまで来れば30分のはずが1時間15分もかかってしまった。
なんのためのショートカットだったのだ(笑)。


洞門岩分岐を右へ下ると真新しい堰堤と出合う。
昨年完成したパイプ製の堰堤で、上流からの流木や岩をこのパイプで受けとめる構造。
この工事をするために渓谷に続く尾根が削られてしまい、ここがショートカット道であることがわからなくなっていたが、工事が終わった今は踏跡がしっかりついていて間違うことはない。


堰堤の裏に回り込み次ぎに斜面を上がる。
チェーンスパイクで歩くのも限界と感じ、アイゼンに替えた。


特別危険のない斜面だが、アイゼンのおかげで楽に登ることが出来た。


雲竜渓谷にかかる最後の堰堤まで来た。
雲竜瀑まであと30分というところ。


今年は雪が多いようだ。
ということは、気温が高いことを示している。
渓谷が氷に被われることなく轟々と流れているのがその証。


渓谷両側の壁にはしみ出て凍ってできた氷柱がびっしり。


同じ氷柱を別の角度で。


どれも同じように見える氷柱だが実際には場所が異なっている。


雲竜瀑が見える場所まで来た。
結氷していない季節にも来たことがあるが雲竜瀑はもともと幅が狭いため、この位置から見る雲竜瀑は結氷するとより小さく見えてしまう。


雲竜渓谷右岸の氷柱はここ数日の高気温によって崩落しているのが散見された。


さて、ここからが雲竜瀑直下への怖い道程となる。
足を滑らすと50メートル下の渓谷にドボンとなる。
アイゼン、ヘルメット、ピッケルが必須。


長さ180メートルの雲竜瀑は途中、いくつかの岩の踊り場に当たって最後に渓谷に流れ落ちる。
ここは下から2つ目の段差でこれより上へは行けない。
10:34の画像では細く見えていた滝だが真下に来るとその大きさに圧倒される。
先ほどの画像では隠れて見えなかったのがこの部分。

まだ早いがここでランチとした。
大地震など万一の場合、この巨大な氷の塊が崩れる恐れがあるため、ここ(滝壺)から5メートルほど高い場所に移動した。


別の場所から見た雲竜瀑(上部は隠れて見えていない)。


この流れなど本来なら氷で被われていていいはずなのだが、、、


「友知らず」付近の見事な氷柱。


もっと近づいて見ると実に立派な姿形をしていて圧倒される。


渓谷から地上に這い上がるための急階段。
ハイキングのために設けられた階段ではなく、あくまでも工事のためのもの。


足を軽くするためにここでアイゼンからチェーンスパイクに履き替え。


同じルートでパイプ製の堰堤まで戻って来た。
こんなに遅い時間にもかかわらず、これから雲竜瀑まで行く人とすれ違った。


日向ダム分岐を左へ入り、階段を下って堰堤の上に。
わずかに近道。


歩き始めて最初に渡った堰堤が見えてきた。
ここまで来ると林道の雪も溶けてなくなったのでチェーンスパイクを外した。


無事に帰着。
危険箇所は大方把握することができた。
本番で事故のないよう、今日の下見の結果を参加者に伝え、安全第一で歩こう。


オマケの画像2010年9月、あえて天気が悪い日に行ったときのもの。
この日は狙いが当たって濃い霧が立ちこめて幻想的な光景と出会えた。
滝は霧の間から流れ落ちているように見え、まさに雲間を縫って龍が舞い降りるあるいは、龍が天に昇る姿を見ることができた。
まさに「雲竜瀑」いや、「雲龍瀑」である。