ガイド、飲み過ぎて丸山南斜面で道を失う(ガイドツアー)

2022年2月25日(金) 晴れ

長い間ガイドをしているといろいろなことが起こるもので、それが不可抗力であったり無意識であったりと理由はあるが、二日酔いで回転の鈍った頭でガイドをするとろくなことは起こらない。

作戦会議と称して常連客のKさんと翌日予定しているスノーシューツアーの事前打ち合わせをしているうちに盃が進み、気がつくと四合瓶が空っぽになっていた。Kさんと二人だから2本だ。
管理人の限界を超えていた。

目が覚めて特に頭が痛いわけではなく、吐き気がするわけでもなく、きわめて普通の目覚めだった。
むしろ、日常に比べて高揚感があってなにごとにも前向きに取り組めるようないい気分だった。

ツアーの行き先は歩き慣れた霧降高原丸山にした。
いつもと異なるのは元スキー場のゲレンデで小丸山まで行き、小丸山から丸山の南登山道で山頂に達するルートにしようというのが昨夜のKさんとの作戦会議だった。
いつもと異なる、と書いたのは丸山へ登る管理人のスタンダードなルートはキスゲ平のレストハウス手前から歩き始めて八平ヶ原へ出て、丸山北斜面で山頂に達するというもの。
この方がコースに変化があって断然、楽しめるのである。

そう考えると地図に描かれた登山道で丸山を南斜面から登ったことなどここ数年なかったことに思いが至った。
いや、そうでもない。
焼石金剛からの帰りに赤薙尾根の登山道から外れて丸山を南西の斜面から直登するというのが北斜面からのアプローチの次に多い。
まっ、東西南北、どの斜面だろうが上に向かって登っていけば山頂に達するのが丸山のいいところ(実際には南北の登山道しかなく、東西斜面は危険)なので、南斜面の実績がなくとも大丈夫のはずだ。

天気はいいはずなので山頂からの展望を楽しみながら昼メシでも食べよう、そんな気持ちで出かけていった。
飲み過ぎた割には妙に冴えてる頭と気持ちの高揚感。
それは夕べのアルコールの影響によるものであることが明かなはずなのだが。

ペンションが建つ霧降高原の麓から丸山登山口のキスゲ平まで約20分。
日光駅からでも30分(ただし、マイカーのみ。バス便なし)で着いてしまうキスゲ平は、奥日光へ行くよりも近くて便利なので管理人が主催するスノーシューツアーの定番コースである。
この日は8時40分に駐車場に到着し、身支度を整え9時5分にスノーシューを装着して歩き始めた。
前方の小丸山に雲がかかっているが天候は概ね良好。


標高1400メートル辺り。
まだそれほど上ってはいないのに振り返ると関東平野が一望できるのも霧降高原の良さで、奥日光でこのような展望が得られる場所は2千メートル峰の山頂に立たなければ困難である。


視線を北に向けると目指す丸山(1689m)がで~んと構えている。


前の画像で丸山の斜面を右へ辿っていくとほとんど平らな大地、八平ヶ原が広がっている。
丸山山頂を北から目指す場合、一旦あの大地へ出て、そこから登山口に取りつく。


標高1540メートル付近で振り返るとここから80キロメートル先の筑波山が望める。
筑波山はよほどの悪天候でなければ丸山を登山中、どこからでもよく見える。


標高1550メートルにある展望デッキ横を通過するKさん。
雪はほどよく締まっていてスノーシューが少し潜る程度で歩きやすい。


キスゲ平ゲレンデの最上部、標高1582メートルの展望台が見えてきた。
ゲレンデ横に敷設されている1445段の階段(天空回廊)はあそこで終わる。


最後の展望台を過ぎ、シカ避けネットを通り抜けると小丸山に達する。
小丸山は「山」となっているもののピーク状にはなってなく尾根の踊り場、広場という言い方の方がぴったりする。
国土地理院地図を見てもピークを表す閉じられた等高線ではなく「・1601」と標高点として描かれているだけである。
中央奥に見えるのは赤薙山とその右に女峰山へ向かういくつかのピークが連なっている。
目指す丸山はこの少し先の分岐を右へ進む。


小丸山先の分岐を右に折れ一旦、下って登り返す。


見るも荒々しい徘徊の跡(笑)。
何の考えもなしに先導した管理人は、山頂への取り付き口を見逃して登山道を少し東にずれたコメツツジの群落に入り込んだ。
コメツツジはシャクナゲと並んで枝がしなやかで、最強の藪を形成する低木である。
特に樹高の低いコメツツジは細い枝が幹の上に密生して屋根を作るため、枝に雪が積もると地面との間に空洞ができ、雪で隠れた枝に気づかず人が乗るとまるでベッドの上を歩くが如く足が安定しない。
そうなると藪から抜け出すのに難儀する。
それを知ってかKさんは無謀な挑戦はせず、悪戦苦闘する管理人が藪から抜け出すのを見計らって、登頂を断念する決断を下した。
画像はそのときのもの。
汗まみれで悪戦苦闘する
管理人を見ていたたまれなかったのであろう、Kさんの厚意に甘えて登頂を断念し、背に陽光を浴びながらランチとした。


春の日差しを背中に受けながら長い時間をかけてランチを終え、小丸山からは旧登山道のある深い林の中を天空回廊の700段目まで下りて、ゲレンデに移動した。


日光と塩谷町、那須塩原にまたがる高原山が実にきれいに見える。
久しく訪れていないので今年はツツジが咲く季節にでも行ってみたい。


キスゲ平の駐車場が見えてきた。
天気は崩れることなく保ってくれた。
Kさんはこれからペンションに戻って着替えを済ませ、車で船橋まで帰る。
コロナ自粛で体力に自信をなくしたというKさんだが、管理人も同じ感覚を抱いている。
ガイドの依頼があるからこうして山を歩くのであり、個人としてはどこにも行かず閉じこもっているだけだ。
体重は増え筋肉は細るという、山歩きには向かない体型に向かっている。
山を歩くための勘も鈍っている。
思慮にも欠け、今日のような無謀、単純ミスを犯す。
どこかで立て直さなくてはと反省しつつ、今夜も晩酌を。