2024年11月22日(金) 晴れ
栃木県県南、栃木市にある太平山(おおひらさん)に通うようになって一年半が経過した。
初めて太平山を訪れたのは昨年3月だった。
管理人が経営するペンションの常連客Fさんの依頼で3月になったら山歩きをすることになっていた。
Fさんは例年だとスノーシューをするためにやって来るが、近年の日光はスノーシューで歩ける期間が限られてしまい、3月に雪山を歩くには2千メートル以上の山を選ばなくてはならない状況に変わってきている。
そこで、太平山ではどうかと考えてみた。
別の用事で太平山の麓にある大中寺を訪ねた際に見た全体図で、なかなか面白そうな山であることに興味を持ったからなのだ。
低山ながら起伏に富んだ地形でいくつかの山の縦走が楽しめるのと、低山ならではの展望が得られるのも気に入った。
それともうひとつ、太平山には三大名物というのがあって、「謙信平」には焼き鳥と厚焼き玉子、だんごを提供する茶店が数軒ある。
その茶店にはマイカーで行けることから多くの人で賑わうそうだ。ぜひ食してみたいものだ。
初めて登ったときのブログ→こちら
Fさんとは栃木駅で待ち合わせて太平山神社へ向かうアジサイ坂から歩き始めた。
おぉ、なるほど。
起伏は多いが緩やかで歩きやすい。
展望も事前に調べたとおり良かったし、花も多かった。
三大名物のうち厚焼き玉子を食べたがその名の通り分厚く、美味だった。
この日は太平山と晃石山を縦走、3つの社寺(太平山神社、清水寺、大中寺)を巡って終了となったわけだが、日光の山とは違って「穏やかな山」、といった印象で帰ってきた。
ごくスタンダードなコースを設定したつもりだが、それでも10キロもの距離は低山としては十分すぎるものであることを歩いて実感した。
この日、太平山を歩くにあたって地理院地図を見てコースを設定したわけだが、山域の中で地理院地図に登山道が収まっているのは東西5キロ、南北3キロと、古賀志山山域をひと回り大きくした程度で、決して広いわけではない。
しかし興味深いのは、地理院地図に描かれている登山道の全長は車道も含んで推定20キロもあることだ。
コースの設定次第では一日をフルに楽しめそうなのである。
また、その20キロはピストンすることなく、周回できるのもこの山域のおもしろさを特徴づけている。いつか必ず、挑戦したいと思う。
だがその前に、することがある。
分割でもいいので、地理院地図に描かれている登山道をすべて歩くことだ。
そうしておけば最長コースに挑戦しやすくなる。
最長コース挑戦に先立っておこなったのは周回コースの南北を結んでいるショートカットコースを歩くことであった。
なんらかの故障で歩けなくなった場合に、エスケープルートとして使えるからである。
最長コースは細長い楕円形を左に30度くらい傾けた形をしていて、楕円形の上辺(北側)と下辺(南側)を結ぶ7本の登山道がある。
まずこれらをすべて歩く計画を立てた。
周回コースの北側を起点にして書くと、
1.ぐみの木峠と大中寺を結ぶ道(0.77km)
2.晃石山とあじさいロードを結ぶ道(2km)
3.晃石山と清水寺を結ぶ道(2km)
4.青入山と清水寺を結ぶ道(1.2km)
5.桜峠とあじさいロードを結ぶ道(0.65km)
6.桜峠の少し先とあじさいロードを結ぶ道(0.85km)
7.馬不入山とあじさいロードを結ぶ道(1.45km)
※あじさいロードとは周回コースの南側、主にアスファルトの車道のことを指す。
以上の7本の道である(これらはいずれも地理院地図に描かれている)。
したがって、周回コースと周回コースの南北を結ぶ7本の道を組み合わせると太平山山域を歩くコースはさらに多くなり、歩く楽しみが倍増する。
Fさんとの山行で太平山の概要がわかったので、次ぎは太平山の素顔に迫ろうと、南北ルート歩きに挑戦したのが昨年4月22日だった。
そのときの様子はブログ「新緑萌える太平山山域。廃道久しい変則ルート18.8キロを歩く」に詳しくまとめておいた。
管理人が山を歩く際、他者の山行記録を読むことはあまりない。
先入観を持たないようにするためである。
言語化された情報は書き手が加工したものであり二次情報、三次情報として位置づけるのが正しいであろう。
二次情報、三次情報が先入観としてインプットされるとそれを追従することになり、さらに言えば情報の受け取り側による読み違えがあるだろうし、記憶違いをすることもあって危険性が増す。
ために管理人は二次情報、三次情報に頼ることはせず、一次情報である地理院地図(地理院地図を表示させるスマホの地図アプリも含む)を使い続けているわけである。
注:管理人が発信しているこのブログは地理院地図を頼りに歩いた結果を管理人の主観で言語化したもので、二次情報である。できるだけ正確に書いているつもりでも間違いは避けられないと思っている。
長くなってしまった。
太平山に戻って話を進めよう。
山行の計画そして実踏に際して管理人が頼りとする地理院地図によると、山域を周回する長大なコースを南北に結ぶ7本のコースがあることがわかる(上記1~7を参照)。
それらをすべて歩くのが昨年4月22日の目的であった。
その結果わかったのは、登りは可能だが下りは勘弁してよという道が2本あるのと、登山道として描かれてはいるが今では歩くに歩けないほど荒れた道が2本あることだった。
前者は青入山と清水寺を結ぶコース、そして馬不入山からあじさいロードを結ぶコースであり、後者は桜峠とあじさいロードを結ぶ、並行する2本のコースであった。
後者の2本に謎が残った。
地理院地図のあじさいロードから桜峠に向かうコースは荒れ放題の廃道なのである。
道の形跡すらなく、沢筋の斜面をトラバースするという危険をおかして登っていった。
また、帰路で利用した桜峠(の少し南)からあじさいロードへの下りもまた荒れ放題の廃道であった。
これは30度もある急斜面で、滑って尻もちつくこと数回という怖い体験をした。
なのだが、桜峠で出合ったハイカーは一様にあじさいロードへ向かって下っていく。
あの荒れ放題の沢筋を下って行くのだろうか、そんな馬鹿な、という疑問を持ったのが今日の山行に至った理由である。
桜峠とあじさいロードを結ぶ2本の並行した登山道は、お互いに中間地点までが廃道で、その先がいま利用されている登山道、それがどこかで交わっていま使われている1本の登山となっているはずと推測し、それを確かめるのが今日の目的である。
重複するが昨年4月22日に歩いたときのブログをもう一度紹介しておく。
→こちら
メモ(記録にはGeographicaを使用した)
・歩行距離:8.4キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:3時間58分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:770メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)
太平山(の山域)を歩くには点在している4ヶ所の駐車場を利用するといい。
太平山神社下に2ヶ所と大中寺、清水寺の駐車場を利用できる。
この日、管理人は大中寺の駐車場を利用した。
そして着いた時間が10時40分。
なにかのイベントがあるわけではないだろうに、40台は駐まれそうな大きな駐車場は平日にもかかわらずほぼ満車で、管理人は空いていたぬかるみの場所に駐めた。
ここより狭い太平山神社下の駐車場であれば、駐車スペースが空くのを待たなければならなかったであろう。
太平山は古賀志山同様、人気があるのだ。
大中寺の参道となる長い階段の奥に山門が見える。
本堂は山門をくぐったさらに高い場所にある。
今日は廃道の謎を解き明かす、それだけが目的なので、太平山へは登らず、ここからぐみの木峠へ直登し、それから周回コースを晃石山(てるいしさん)、青入山(あおいりやま)を経て桜峠まで行く設定とした。
桜峠へは清水寺から歩き始めるのがもっとも近いのだが、それだと片道2時間もかけてここまで来た甲斐がないため、そこそこ満足できる歩きをしたいと考えて大中寺を起点にした次第だ。
太平山山域の道の多くは広葉樹林の中にあって明るいが、大中寺からぐみの木峠への道は深い針葉樹林であるため陽が通らず、暗くそしてジメジメしている。
前方に空が見えるとそこがぐみの木峠。
あまりにも暑いので来ていたジャケットを脱ぎ、長袖Tと薄手の中間着という2枚構成にした。
シロヨメナがまだ生き生きとしていた。
里山は花の咲く期間が長く楽しめるのがいい。
長い間、山歩きから遠ざかって脚力の弱った管理人にはこんな緩やかな斜面が優しく感じられる。
晃石山へ向かう稜線からの展望。
ここにはベンチ(ただし、1台)があり、この展望を眺めながら休むことができる。
東南東40キロの方角に筑波山をとらえた。
晃石山手前の2つ目の展望地。
栃木市の田園風景に加えて大平地区に多いぶどう園が見られる。
晃石山は山域の中でもっとも標高が高い。
北面に視界が開けていて、日光連山が見えるらしいが今日はどうか?
おっ、あれは男体山だな、きっと。
ごく一部を除いて雲に被われているが、左にわずかに見えるあのすそ野は男体山に違いない。
晃石神社の奥宮。
実はここ、一等三角点なのである。
この祠が奥宮であるということは、本社もあるということだ。
本社はこの手前、急な傾斜を下りたところにある。
今日は本社へは立ち寄らないが、本社から周回コースへ下りるコースが2本あることを紹介しておく。
本社を背にして階段を下りるとコースは2本に分岐する。
1本は清水寺(あじさいロード)への道で距離約2キロの安全な登山道である。
もう1本はあじさいロードの大中寺に近い方へ下りる、これも距離約2キロの安全な登山道。
晃石神社を三角形の頂点とすると、2本の登山道は正三角形を描くことになる。
さて、本日のメインテーマである桜峠とあじさいロードを結んでいる登山道の謎を解明するためにも先を急ごう。
晃石神社の奥宮を正面に見て左への道を下ると明るく、歩きやすい道となる。
青入山へ続く道である。
約700メートルの緩やかなアップダウンのある稜線を歩くと20分もかからずに青入山に着く。
ここからは南西の展望が素晴らしい。
古賀志山山域からの展望も良いがそれに劣らず、太平山山域にも展望地がいくつもあって飽きさせない。
青入山からの好展望。
あれは三毳山(※)の稜線でしょうかねぇ。
※諏訪岳(右端)から唐沢山(左端)に至る稜線
ツツジ他の広葉樹林の間を縫って謎解きの目的地である桜峠へ向かう。
この階段がいやらしい(笑)
長い階段が続いているのでずっと下を見ながら歩かなくてはならない。
そのうち、階段を歩いているという感覚が鈍ってきて階段を踏み外しそうになってヒヤッとすることがある。
前方に広場が見えてくると、そこが桜峠。
左に四阿、右にベンチが3台あって休憩するのにちょうどいい場所である。
「桜峠」の名の由来を知りたいと思うが、手がかりとなるのはこれしかない。
樹齢まだ10数年という、3メートルほどの桜の樹である。
注意書きがある。
木を切って持っていくなとは一体、どういうことなんだろう。
サクラは枝を切って挿し木や接ぎ木することで増やすことができるそうだが、それを目的に切って持ち帰るのだろうか。
よく見ると確かに枝がスパッと切られた跡が見える。
サクラの幼樹など園芸店に行けば入手できそうなものなのに、それを惜しんで山から持ち帰るとは悲しい。
廃道の謎解きはこの桜峠から始まる。
その前に英気を養うためランチとしたい。
話は変わるが、2年半ぶりにザックを替えた。
これまで山と道のMINI2という30Lの軽量ザックを使ってきてなんの不満もないが、山への情熱が薄れつつある管理人の心を奮い立たせるための動機付けとでも言おうか、道具変われば心も変わるとばかり、へそくりをはたいて買ったのである。
製品はカリマーのクリーブ。
容量はMINI2と同じ30Lで、フロント側にメッシュポケットがあるのも、雨蓋式ではなくロールトップであるのもMINI2と同じで、これといった特徴は特にない。
むしろ、これは管理人の誤算だったが、左右のショルダーベルトを結ぶチェストベルト(チェストストラップ)の脱着が実に面倒であることに、使ってみて気がついた。
パチッとはめるバックル式ではないため、厚手の手袋を着用する冬などチェストベルトの脱着は絶対に無理だ。
大きなストレスになっているのは否めない。
いつもと変わらないランチ。
のり巻きは炭水化物の固まりなので、エネルギー補給にいい。
菓子パンはもしものことがあって停滞せざるを得ないときの非常食として用意した。
飲み物は昔であればストーブで湯を沸かして飲んだりしていたが、体力が衰え、装備のより軽量化を図るため最近は保温ボトルに入れた湯で済ますことにしている。
さてさて、ではこれから廃道の謎に迫る旅へ。
ここ、桜峠からあじさいロードへ向かうことにする。
いま管理人は昨年4月22日に歩いた(赤線)のと同じ登山道をあじさいロードへ向かって下っている(紫)。
地図アプリに表示されている赤い逆三角が現在の場所である。
4分後、赤い三角は昨年4月22日に歩いた道から外れて、地理院地図に描かれていない場所に移動した。
だが、ここは多くの人が歩くしっかりした道だ。
その8分後、上下に並行する下側の登山道と合流した。
ここもしっかりした道である。
なるほど、そうだったのか。
昨年4月22日のブログで推測したとおりの結果となった。
すなわち、並行する2本の登山道は中間地点でクロスして1本の登山になっているのである。
この画像で言えば、桜峠から下ってきて途中で登山道を外れてその下の道に向かっている。
登山道から外れたその先は廃道、また、下の道と合流した桜峠側は廃道なのである。
昨年4月22日に管理人が歩いた地理院地図に描かれた2本の登山道はそれぞれ、半分は廃道、半分はいま使われている登山道だったわけである。
推測が図星だったことに気を良くし、帰路に着いた。
桜峠からの道を下りきると車道とぶつかり、それがあじさいロードである。
これから大中寺まで、この舗装された道を歩くことになるが、この山域を隈なく歩こうとすると舗装道路歩きは避けることができない。
大中寺へ向かうあじさいロード沿いにある清水寺。
古く、由緒のある寺の佇まいを見せている。
管理人に信仰心はないが、こういった旧い建造物を見るのは嫌いではない。
境内からの眺めも悪くない。
テーブルとベンチが置かれていて休憩できる。
山の麓にある清水寺からあじさいロードに下りると、そこに分岐する道があることに気がついた。
標識を見ると行き先がJR大平下駅となっていて車を置いた大中寺とはまったく方向が違うのが気にはなったが、地理院地図を見るとやや遠回りになるが大中寺へも行けるように読める。
せっかく見つけた新しい道だ、あじさいロードではなく、この道を歩いてみよう。
ちなみに、「東山道(とうさんどう)」と名付けられていて、古い歴史があるらしい。
※ウィキペディアに詳しい説明があるが、歴史に疎い管理人にはなにがなんだかサッパリ理解できない。
ほ~、なかなか良いではないか。
里山の麓を歩いているような(実際その通りだが)風情があって気持ちが和む。
真新しいオートキャンプ場があった。
たまたま出合ったキャンプ場のスタッフに聞くと、昨年の8月にオープンしたのだそうだ。
ちょうど30分歩いて東山道はあじさいロードと交わって終わった。
大中寺は近い。
車を置いた大中寺に到着し、謎解きの旅は終わった。
これから2時間かけて日光まで戻るが、車中で次の山行計画を考えることにしよう。
新しくしたザックを使うためにも、だ。