2025年7月18日(金) 晴れたり曇ったり
梅雨らしい天気が続いた今週、どうやら18日に梅雨が明けそうだとの予報を見て、出かけることにした。
決めたのは大雨がようやく止んだ昨夜だった。
明日からの3連休は天気が良く、観光スポットだけでなく、山も混雑が予想される。出かけるとしたら、その前しかない。
連休が明けてからも晴れる日はたくさんあるはずなのだが、サービス業に身を置く管理人が出かけられる日は客のいない日に限られる。
幸いと言っていいのかどうか、完全予約制の商売ゆえ、予約がほぼ確定する数日先の状況はわかるがその先はわからない。
したがって、その数日内の天気のいい日に出かけるのが管理人の長年の山行スタイルとして定着している。
で、どこへ行こうか、それを決めるのが難題だった。
近年の日本各地は、梅雨とは思えないような雨に見舞われるようになったが、それとともに高温化が大問題となっている。
この時期、涼を求めて山にへ行くとなると森林限界のある山以外、望めない。
残念ながら日光および周辺の山は那須連峰のように火山帯で林のない山を除いて、森林限界のある山はない。
ときおり展望が開ける場所はあっても他は林間を歩くことになる。
その林のおかげで日が差し込まないとはいえ、大量の雨水を含んだ大地は風も遮られ、夏は蒸し風呂と化す。
前夜、そんなことを考えているうちに気力が萎えてきて、家でじっとしていようか、そのほうが涼しいし快適だしなという考えが浮かんでくる始末だった。
管理人は霧降高原の麓、標高820メートルに住み、8月でも朝晩は涼しく過ごせる。
だからわざわざ暑さが目に見える山の中に飛び込んでいく必要はないのである。
行く理由をあえて考えるとすれば、今月末に迎える誕生日以後、年内に3つのイベントを己に課していることだ。
女峰山(帝釈山往復)16キロと中禅寺湖1周25キロ、そして古賀志山大外回り18キロを歩くことである。
これらは長年、管理人が年間ルーティンとしておこなってきたことで、いわば年に一度の体力測定なのである。
この3つのルーティンをクリアできれば体力はまだ大丈夫という自信につながるとともに、これ以外の他の山もまだまだ登ることができるという自信が持てる。
持論だが、登山に必要な体力は登山で身につける。
設定したコース、管理人の場合だと距離10キロ以上の目標を最後まで歩き通すには、最低でも5時間を要するが、それを3つのルーティンのトレーニングとして課している以上、暑いだの寒いだのと言っていられない。
山に行けない日は自宅に置いたバイクやトレッドミルを使って体力の維持に努めているが、眼の前の無機質な壁を見つめながらの運動は長続きしない。
30分もやっていると飽きてきてしまう。
なにもやらないよりはマシだが、登山にかける時間に比べたら30分など取るに足らない、微小な時間と言える。
再度、
登山に必要な体力は登山で身につけることが大切なのである。
とはいうもののこの時期、トレーニングを目的に丸一日かけるのはためらう。
暑さによって体力の消耗が著しく、筋力や心肺能力を向上するどころか、反対に落としかねない。
10キロ程度の距離を5・6時間で登って下山できる山が望ましい。
場所は手っ取り早く、古賀志山にした。
古賀志山は山域の中でもっとも標高が高いが、それでも583メートルである。山頂でさえ管理人の住まいよりも240メートル低い。
古賀志山は過去に真夏でも登っているが、その暑さといったら言葉に困るくらいだ。
だが、メリットとして、エスケープルートがたくさんあるから、暑さで参ったら先へ進むのをやめ、同じ距離を歩くことなく、最短距離で駐車場に戻ることができる。
梅雨が明けて暑さが予想されるが、それよりも、昨日までの大量の雨を含んだ林間は湿度が充満しているはずだ。
どういう結果になるか、「飛んで火に入る夏の虫」を身を以て体験してみよう。
メモ(地図アプリのGeographicaで記録した)
・歩行距離:11.4キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:6時間09分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:1092メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)
5時に目覚めたものの前夜遅くまで行き先が決まらず、身支度もせずに朝を迎えた。
自宅を出発したのは8時に近かった。
宇都宮市森林公園駐車場は暑さを敬遠したのであろう、車はまばら。
駐車場は隣接して2箇所あり、柵の向こうは時間制でゲートが閉じられる。
この時期は確か18時半に閉まるはずだ。
管理人は柵の外、時間制限のない側に駐めた。
万が一のことを考えた上でのことである。
ブログのタイトルに古賀志山と入れたが、古賀志山山域は広い。
独立峰であり、裾野をぐるっと1周できる道を歩くと18キロにもなる。
地理院地図に描かれていない、いわゆるバリエーションルートが100本以上あって、それらを組み合わせることによってその日の体調や気分でいくらでも距離が調整でき、また設定したルート次第では古賀志山山頂に達しないことがある。
今日は古賀志山を目指してスタートしたが、地理院地図にあるルートで古賀志山へ行くには駐車場前の林道を直進する(親指の方)。
が、そっちへは行かずここを右へ入る。
鞍掛山を経てピークをいくつも乗り越えて最後に古賀志山、というルート設定である。
林道を右へ折れるとすぐ林間に入るのが鞍掛山ルートである。
地理院地図に道として描かれていない尾根ルートだが道ははっきりしている。
鞍掛山の手前、大岩(地元での呼び名)まで展望はない。
が、春から初夏にかけては多くの花を見ることのできる、管理人お気に入りのルートである。
気になるのは、草木が生い茂って風が吹き込む隙間がまったくないことだ。
う~ん、なんの花だろう?
花は明らかにオカトラノオ(※)だが、それにしては花が疎らだからか、やけに花序が長く見える。
これから咲こうとしているからこう見えるのか、それとも咲き終わりだからこう見えるのか、判然としない。
こういう場合、花だけではなく、葉っぱや茎など全体を撮っておくとあとになって調べやすいのだが、それをしなかった。
調べるのは後回しにして先を急ごう。
※帰宅して調べてもオカトラノオしか考えられない。
この時期、花が少ないので写真を撮ることもなく、30分かからずに長倉山(357m)に着いた。
道はここで3本に分岐する。
左へ折れるのが北尾根コース。
古賀志山山域大外のコース、北主稜線に合流する近道である。
それとは別に、北に向かって東西にほぼ並行する2本の道があって行き着くところは同じだが、春先は多くのスミレが咲く西側の道を管理人は好んで歩く。
スミレはとっくに終わっているが、なんとなくそっちの道を選んだ。
おっ、花ではなく、クワちゃんを見つけた。
管理人のようにヨタヨタ歩いていたのでまだ子どもなのかもしれない。
立派なクワガタに成長してくれ。
数年前、左の斜面に育っていたヒノキが伐採されて見通しが良くなった。
春先はこのあたりからスミレ(マキノスミレが多い)が見られるようになる。
うわっ、こんな凄いことになってる!
右からも左からも、草や木の枝がせり出し道を塞いでいる。
ほんの数メートルという短い距離だったが、両手でかき分けながら進んだ。
実はこの日の山行を終えた1週間後の26日、右手首に8・9個ほどの赤い発疹があるのを見た。5年前に帯状疱疹をやったことがあったのでその再発かと考え、週明け28日に近所の皮膚科で調べてもららうまでに発疹は倍に増えていた。
医師から、庭仕事をしたことはないかと問われた。
ウルシや害虫(蛾の幼虫など)に触れたのではないかとの疑いを持ったようだ。
まったく予期しない問いであった。
ウルシか害虫かはわからないが、上の画像のような場所を通過したと答えたところ、断定できないが、毒を持つ植物あるいは虫に触れたのであろうとの結論に至った。
あらためて、上に挙げた画像とその前後の画像をよく見ると、赤い枝の左右に対を成す葉っぱが見つかった。
ネットの情報と見比べると、ウルシの枝葉に見えないこともない。
帯状疱疹のときはチクチクといった痛みを伴ったが、今回のは僅かな痒みを感じる程度で痛みはない。
あの辛い帯状疱疹でなくてよかった。
知識不足を反省しつつ、いい勉強をさせてもらったと思う。
芳香を感じたので見回すとヤマユリが咲いていた。
長倉山を降り、沢を渡るとアスファルトの林道と交わるので右へ行く。
長倉山から延びるもう1本の道はこの先に出る。
鞍掛山の登山口。
以前はこの階段脇にスミレがあったが藪化が進んでここ数年、見ることがない。
鞍掛神社から流れ出ている沢沿いの道を上流へ。
山を水が流れているのは絵になる。気持ちが癒やされる。
と、画像で振り返るとそう思うが、湿度が充満していて癒やしどころではないというのが正直な気持ちだ。
シャツはすでに汗でびっしょりだ。
石像がふたつ、並んで置かれている。
双体神と呼ばれているが、2体とも頭が欠けていて、代わりに小石が載せられている。
2体とも、それも頭がないことから、これは廃仏毀釈の影響によるものであろうと管理人は勝手に解釈している。
双体神の前を幅1メートルほどの沢が流れている。
水量はいつもとは比べ物にならないくらい多い。
これほど轟々と流れているのを見るのは初めてのことだ。
道は双体神の前で2本に分岐しているので今日は右の道を行くことにした。
わずかだが距離が長くなる。
この道が平坦になると、双体神から沢に沿って登る道と合流して大岩そして鞍掛山へと向かう。
大岩は南面に視界が開けていて、古賀志山(画像中央)が一望できる。
わずかだが風を感じる。
この先の鞍掛山は展望がないのでここで一息入れた。
大人数で休憩できるほど広い山頂を持つ鞍掛山(492m)だが展望はない。
写真を撮っただけで通過。
やや急な下り、やや急な上りをクリアすると地元での呼び名、シゲト山(466m)に着く。
山頂は狭く、休憩できるスペースはない。
シゲト山は北面が開けていて日光連山から釈迦ヶ岳まで一望できる。
日光連山は雲がかかっていて今日は見ることができなかった。
ちなみにこの山、角度によって尖って見えることから、北アルプスの槍ヶ岳にちなんで「鞍槍」とも呼ばれている。
どこから見ればそう見えるのかは下のリンクをたどってみてください。
画像1、画像2、その時のブログ
シゲト山から鞍部(猪倉峠)に降りると、つい最近伐採したのだと思うが坊主と化した斜面と出合った。
一瞬、あれっ、登山道はどっちだっけと思ったが、斜面を上がるにつれて見覚えのある道を発見して一安心。
道はここで突き当たる。
左は長倉山への近道となる北尾根、右は長倉山から延びている北主稜線で、ここは右へ行く。
ちなみに、駐車場からここへ来るまでの間、長倉山→林道→双体神→大岩→鞍掛山→シゲト山→猪倉峠というように、山域の大外を経てここまで来たが、ここを左へ行くと、山道を300メートルほど歩くだけでアスファルトの林道と出合うことができ、上に書いた経路を一切通らずに駐車場に行くことができる。
古賀志山の核心とも言える岩また岩が続く。
ただし、距離はごく僅かだし、危険はまったくない。
11:46の画像の説明にも書いたが、北主稜線のいいところはエスケープルートが充実していることだ。
ここは手岡峠(ちょうかとうげ)、左へ折れるとすぐアスファルトの林道と出合い、駐車場に戻ることができる。
疲れ果ててもう無理、といった状況になっても、少し頑張ればエスケープルートを使って苦境から脱することができる。
さあ、やって来ました。
手岡分岐(管理人が識別のためにつけた名称)である。
人差し指の方へ下っていくのが古賀志山の難ルート、馬蹄形の始まりである。
古賀志山へは直進する。
手岡分岐のすぐ先に真新しいベンチがある。
鞍掛山の手前、大岩で10分ほど休憩しただけでここまで歩き通したので、ここでランチを兼ねて休むことにしよう。
誕生日はまだ10日先だが、今日の体調次第では鞍掛山ルートに加えて馬蹄形ルートも歩いてしまおうというつもりでいた。
そのために時間制限のない駐車場に車を置いて歩き始めたのだ。
だがここまで来て、それは無理だと悟った。
鞍掛山の先、シゲト山まではなんとか順調に歩けたが、そこからここまでで疲れを強く感じた。
昨日までの大雨で大地は水をたっぷり含んで、それが気温の上昇で林の中は湿度が充満していた。
着ていたシャツは絞れば水がしたたり落ちるのではないかというほど、汗を吸っている。
シャツで吸いきれなかった汗は下半身に流れ落ち、パンツまでびっしょりになった。
炎天下の山行であれば日差しと体温で乾くものだが、今日は違った。
高湿度による発汗で体力が奪われたらしい。
いつになく疲れを感じた。
熱中症の初期症状だろうと思う。
年老いた管理人の耐熱・耐湿性能を試されているようだ。
ここから先にエスケープルートはないから、何らかの理由で自力で歩けなくなったら為すすべがない。
馬蹄形ルートは潔く諦めることにした。
となるとここから手岡峠まで戻ってエスケープルートで駐車場へ、という方法もあるが、それでは不甲斐ない。
古賀志山へ向かおう。
馬蹄形ルートの1/3の距離で済む。
ベンチに腰を掛け、火照った体を冷やすため、用意してきた氷水を一口、また一口、胃に流し込んだ。
う~ん、極楽じゃぁ!
疲れで食欲はなかったが下山するまでのエネルギー補給に、270kcalの菓子パンを味わうようにゆっくり食べた。
氷水と菓子パンで胃が満たされるとようやく、日光連山を眺める余裕が出てきた。
さあ、そろそろベンチから立ち上がって先へ進もう。
いや、あと1分だけ、追加でもう1分だけここにいて身体を休めよう。そんな気持ちのほうが強かった。
手岡分岐で20分ほど休憩した。
スタート時の元気には程遠いが、歩く気力はやや復活した。
北主稜線はここで突き当たり、古賀志山へは左へ行く。
右は高さ5メートル以上もある弁天岩を経て県道170号線に至る尾根道。
これが弁天岩。
5メートルを超える巨大な岩で、鎖が取り付けられているが垂直に近い部分もある。
岩を登ってしまえばあとは短い下りなので行程はすぐ終わるが、下った先は森林公園の駐車場とは程遠く、帰ることができない。
ここは古賀志山へ向かうしかない。
太ももに筋痙攣の兆候が現れ始めた。
つらい思いをする前に、カルシムとマグネシウムを多量に含んだタブレットと塩分を含んだタブレットを飲んだ。
這々の体で古賀志山直下の富士見峠まで来た。
ここまで来たら古賀志山は目前。
30分もあれば往復できる距離だが、なんだかとても面倒くさく感じた。
それに古賀志山に登ったらここへ戻って下山するよりは東稜の岩場を降りるほうが手っ取り早い。
だがなぁ、熱中症気味の身体で岩場を降りるのは命懸けだ。
手足に力が入らない→岩をつかめない、踏ん張れない→岩から手足が外れる→転落→痛い→動けない→レスキュー→新聞に載る、といった連想が頭をよぎる。
う~ん、77歳の誕生日を病院で迎えるというのはいかにもカッコ悪いな、それは絶対に避けたい。
それと、この暑さだ。
帰り道に寄りたいオアシスがある。
疲れがピークに達している今、古賀志山単体であればどんなコンディションのときでも来れるではないか、無理することはない。きっと疲れによる幻聴なのであろう、天の声が聞こえてきた。
その声に甘んじることにして、古賀志山へは行かず、ここから古賀志山のオアシスへ向かうことにした。
危険とはいえない階段だが一歩一歩、慎重に下っていく。
大雨で水路と化した下山路。
汗を含んだ手ぬぐいを浸してきれいにし、顔をぬぐった。
2015年9月の豪雨によって土砂に埋もれた広場(地元の呼び名)はその後、有志の努力によって少しずつ整備され、10年後の今、こんな立派なベンチが作られるに至った。
赤川に注ぐ細い沢も今日は轟々と音を立てて流れていた。
安全に降りられるようになった橋をわたる。
命の水が流れ出るオアシスに到達。
ものすごい水量だ。
腹いっぱい飲んでも涸れることなどないほどの水量だ。
空になったボトルに補充しようとしたが、流れ出る水の力は強く、差し出したボトルが押し返えされそうな勢いだった。
ここまで来れば駐車場まで飲水は不要だが、せっかくだからこの冷たい水をボトルに満たし、帰りの車の中で飲むことにした。
駐車場から続いている林道が目の前。
林道にもヤマユリが咲いていた。
赤川ダムの堰堤から見る古賀志山。
いつもなら朝見るところだが、今日は鞍掛山に向かったので見ることができず、この時間になった。
鏡のような静かな水面に映る逆さ古賀志山が美しく、印象的だった。
昨年は取水口となる建造物の塗装工事で水を抜き、干上がっていたが、工事が終わって再び水で満たされていた。













