2025年5月14日(水) 薄日
宿泊業を営みながらも集客のための手段を自作のホームページだけに頼っている我が宿は、近隣の宿に比べると週末もさることながら、日光にもっとも多く人が訪れるGWでさえもガラ空きの状態が多い。
今年も例外ではなく、そうだった。
だが、そんな無欲な管理人にも神の存在がある。
それも福の神というありがたい神様である。
宿を30年もやっていると常連客という、特別な存在のお客さんがいる。
多くは仕事をリタイヤし、趣味で花を観賞したり写真を撮ったり、ハイキングや登山を楽しむために訪れる人々である。人と車でごった返す日を避けて、引き潮の如く、日光から人がいなくなる時節に訪れるのがこれらの人々の行動パターンである。
今年のGW後の初客はTさんとSさんだった。
Tさんは今から14年前の2011年が初めての利用だった。
沖縄に住む友だちを誘って管理人が主催するスノーシューツアーに参加したのが管理人との出合だった。
翌2012年にはお子さんが同じ学校に通うママ友、Sさんを誘って同じくスノーシューツアーに参加してくれた。
以後、常連客として不動の地位を確立したわけだが、Tさんの交友範囲は管理人の想像がおよばないほど広く、いったいどういう関係なのと思わせるほどで、Tさんと一緒に訪れるのは会社の同僚や山友、ゴスペルの仲間などなど多彩だ。
ようするにどのような人とも友達関係が築ける、そんな大らかな心の広さが行動として表れる、希有な存在と言って過言ではないだろう。
さて今日は、かつて修験道者たちが利用していたという山道を歩いてツツジを堪能するのが目的である。
明智平から始まる古道は細尾峠を経て和の代に至るロングコースで、管理人は2016年の4月に歩いたことある。→こちら
今日はその一部、細尾峠から薬師岳を目指そうというのがTさんと考えた計画であった。
ツツジ観賞を目的とするには十分な距離であり、満足を保証する。
メモ(地図アプリはGeographicaを使用した)
・歩行距離:6.1キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:4時間31分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:744メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)
明智平から降りてくると現在は登山者以外には使われていない車道の細尾峠と交わる。
ここが古道後半の登山口となっている。
歩き始めるとすぐ、トウゴクミツバツツジの出迎えを受けた。
蕾もあるが今が見頃と言っていいだろう。
アカヤシオも見たいところだが、トウゴクミツバツツジが咲くころ、アカヤシオは終わる。
遠くからでもよく目立つこの色、ピンクと紫の中間とでもいうか、新緑の中に映える美しさだ。
細尾峠から薬師岳へは距離は1キロと短いながら標高差で200メートルを一気に上がる。
辛いコースだがトウゴクミツバツツジに囲まれているとそんな辛さも忘れる(といいのだが)。
ホッと一息つける平坦路に来てトウゴクミツバツツジをじっくり楽しむ余裕が生まれる。
と言えるのも束の間で、このコース唯一の怖い箇所に差しかかる。
昔、画像右側にあった大木が傾いで道を塞ぎ、その下をしゃがんでロープを伝って通過しなければならなかった箇所である。
その大木は関係者によって取り除かれたが、沢側に傾いた道はそのままの状態となっているため、人によっては通行を躊躇ってしまう。
当時の様子はこちら
今度はヤマツツジだ。
まだほとんどが蕾だが、トウゴクミツバツツジよりもさらに目立つこの朱色も新緑と実によく合う。
紫(トウゴクミツバツツジ)と朱(ヤマツツジ)と白(シロヤシオ)の三種混合となった。
これに薄桃色のアカヤシオが加われば言うことなしだが、そうはいかない。
アカヤシオは咲き終わっているのだ。
おや、わずかだがアカヤシオが残ってるぞ。
微妙な標高差だがこれが自然の妙というものだ。
薬師岳に到着。
わずか1キロの距離を1時間もかかったが、それほどツツジに魅入られながら歩いてきたと言うことだ。
男体山を背景にパチリ。
いい構図です。
さて、時間はまだ早い。
もう少し先へ進みましょうか。
薬師岳さえクリアしてしまえばその先、ごく緩やかなアップダウンはあるものの、ほとんど平坦路が続くのがこのコースのいいところ。
ランチに適した場所があったらそこで折りかえすことにしよう。
ちなみに薬師岳を過ぎるとコースは日光市と鹿沼市との境界線上にある。
この平坦なコースは鹿沼市の山の特徴で、日光市内に位置する山にこのような歩きやすい道は少ない。
このコースには修験道の跡がまだたくさん残っている。
祠の中にお札が入っていることから、現在もなお修験する人たちがいることが窺える。
この祠には「寳歴十四甲甲夏四月」と刻まれており、隣に不動明王像が座している。
調べると(池田正夫氏著「日光修験・三峰五禅頂の道」より)、この祠(金剛堂)は明和元年(1764年)のものとされる。
3種類のツツジを堪能したのでランチとし、折りかえすことにした。
このブログの読者におかれてはしつこいほどトウゴクミツバツツジの写真を目にすると思うが、この美しさを記録に収めないと真の記録にならないためご容赦を。
今日のハイキングも終わりに近づいてきた。
トウゴクミツバツツジも見納めのころだ。
9時半に日光駅で待ち合わせてもこの時間に下山できるありがたさ。
マイカーでなければ来ることはできないが、いいコースだとつくづく思う。

グラフでわかる通り、細尾峠から薬師岳まで、距離約1キロを登ってしまえばあとは緩やかなアップダウンを繰り返しながら歩くことができ、日光の山らしからぬ快適なハイキングが楽しめる。
4種類のツツジが楽しめるのでこの時期を逃すのはもったいない。











