難題度高い裏那須だが秘境度は満点。朝日岳と三本槍岳へも登った。

2025年6月20日(金) 晴れ/猛暑

先月21日に続いての那須連峰歩きである。
先月は連峰の南に位置する白笹山と南月山を歩いてミネザクラを堪能した。
距離は12.6キロと短かったが、猛暑の中、那須連峰でも急斜面を登って行く白笹山で疲れ果て、駐車場に戻る最後の登りは休憩しながらでないと進めないないほどだった。
前日も8.8キロを歩いているので無理もないこととはいえ、コースの選定を誤ったことを悟った。

まっそれはそれとして、先月21日の続きで今日は那須連峰でもっとも人気のある朝日岳と三本槍岳を選んだ。
累積標高こそ夏から秋の課題としている女峰山に及ばないが、距離は15キロと女峰山とほぼ同じなのである。

管理人はいま、年中行事としている女峰山(帝釈山まで)16キロ、中禅寺湖1周25キロ、古賀志山大外18キロを目指してトレーニング中である。
年中行事を無事に乗り切るためには15キロ前後の行程を、疲れずに登れる筋力と心肺能力を身につけておかなくてはならない。

朝日岳と三本槍岳は那須連峰の中でもっとも人気がある山だが、ただそれだけの理由で登るのではない。
この2座の裏側すなわち西側に位置するいわゆる裏那須は、登山者がほとんど訪れることのない秘境の地なのである。
それゆえに冒険心がくすぐられるし、強い脚力が求められる。

2017年7月、那須連峰を歩き始めてまだ2回目というとき、無謀にもルートは今日とほぼ同じだが4キロ長い、20キロを歩いたことがあった。
秘境という名にふさわしく、那須の山というのはこれほど奥が深いのか、と感動したものだ。

それから8年が経ち、当時とは比べものにならないほど体力が衰えたが、女峰山を目指そうとしている管理人にとって、このルートこそ女峰山をシミュレートするのにもっとも相応しいと考え、計画した次第だ。
懸念は昨日、奥日光を15キロ歩いているので、今日の山行でその疲れが出ないかどうかだ。

猛暑の予報になっている今日、荷物を軽くしたいので飲み物は水道水を1.2リットルと水分補給の代用になるジェル飲料だけにした。
裏那須を歩く頃にはなくなるかもしれないが、水に困ることはない。
裏那須は至るところに沢が流れていて水が豊かなのだ。

さあ、女峰山の成否を分ける裏那須へ!

メモ(地図アプリはGeographicaを使用した)
・歩行距離:15.8キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:8時間31分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:1397メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

峠の茶屋駐車場は県内外から訪れた車で、この時間すでに8割くらい埋まっていた。
麓から山頂まで、どこからでも大展望が楽しめるのがこの山の魅力となっていて、百名山に劣らぬ人気なのである。


山ノ神という扁額が飾られた鳥居をくぐって登山道へ


ベニサラサドウダン


ウラジロヨウラク


マイヅルソウ


林間を抜けると展望は180度となり、火山帯特有の荒々しさが表れてくる。


これから目指す朝日岳が見える。


進行方向の展望はこんな感じ。
連峰全域が火山帯なので背の高い木がなく、好展望だ。


マルバシモツケ


正面には峰の茶屋跡避難小屋が小さく見える。


肉眼でも人の姿が見えるまで近づいた。
茶臼岳と朝日岳への分岐点になっているので登山者が多い。


避難小屋に到着。
避難小屋というと宿泊できるイメージがあるが、那須連峰に2つある避難小屋は噴火や落雷、遭難など、命に関わる事態が発生したときにしか利用できない。
ちなみに正面に見えるピークは剣ヶ峰だが登山道はない。
朝日岳へは剣ヶ峰の麓のトラバース道を進む。


西の斜面を覗き込むとそこにも避難小屋が見える。
那須岳避難小屋である。


高山でよく見るイワカガミ


アカモノ


剣ヶ峰を抜けて朝日岳へと続く道は実に荒々しい。


ここを登る、、、わけではない。
左のすそ野に道がある。


「朝日の肩」という鞍部。
正面に見えるピークが朝日岳。
遠くからだと急峻な岩峰に見える(8:36の画像)が、実際にはこの朝日の肩までの道程がそう見えるのであって、ここから山頂はすぐ先である。


展望360度の贅沢を誇る山頂に着いた。
この展望あっての人気なのでしょう。


山頂から眺める茶臼岳。
その大きさがわかるというもの。


山頂から降りてこれから向かう三本槍岳へのルートを見る。
このなだらかな傾斜が三本槍岳まで続く。
日光の山の傾斜とは大違いだ。


熊見曽根(曽根とは尾根のこと)を通過。


イワカガミの群落


木道のある辺りが清水平で、その先の平坦な山が三本槍岳。
名前とは違って三本槍岳は穏やかな山なのである。


清水平(湿原)


マツの雌花


三本槍岳への上りに差しかかる。


北面に旭岳が見えた。


道幅が狭く、下山してくる人とすれ違う場合、どちらかが立ち止まってやり過ごすことになる。


三本槍岳に到着。
登山者が大勢いる。
ここも360度の展望があって人気がある。


惚れ惚れするほどの大展望にうっとり!
余談だが、積雪期でもここへ来ることができる。
とはいっても管理人が辿った道を歩こうとしてもそれは無理だ。
マウントジーンズスキー場のゴンドラを使うのである。
ゴンドラを下りるとほぼ直線状に歩くことができ、また風が強いことから積雪が少なく、割と楽に来られた記憶がある。


山頂からの眺め。
あの美しい稜線はこれから向かう大峠から登り始めて流石山、大倉山、三倉山へと続いている。
管理人はまだ歩いたことがないが、生涯のうちに一度は行ってみたい。


三本槍岳からいよいよ裏那須へ。
標高差が470メートルもある傾斜を大峠に向かう。


須立山分岐は矢印にしたがって大峠へ。
8年前は須立山を経て別のルートで大峠に向かった。


ツマトリソウ


樹林帯もあればこのように展望のいい場所もあり、退屈しない。


我が行く道まで上から見えるという、なんとも不思議な気分。
それにしてもずいぶん長い下りが続くな。


眼下に大峠が見えるようになった。
間もなくこの長い下りが終わるのだ。
峠の先へ向かっている道は流石山への登山道・


ナナカマドとベニサラサドウダン


三本槍岳からの標高差470メートルという実に長い下りを終えて、大峠に着いた。
ここは四差路になっていて直進すると11:05の画像で紹介したあの稜線で流石山へ、右へ行くと福島県の観音沼森林公園へ、そして左がこれから管理人が進む三斗小屋温泉に向かう道である。
その道こそ、秘境と言われる裏那須の中でもっとも秘境らしさが残されている道なのである。
三斗小屋温泉まで地理院地図に道は画かれていない。


これからの長丁場に備えて、エネルギー補給にふだん滅多に口にすることのないジェル2種類を飲んだ。


コバイケイソウ(たぶん)の群落


8年前は背丈ほどもある篠竹をかき分けながら歩いたが、歩くのに差し支えがないように刈られていた。


小さな沢があったので手を差し入れてみた。
水は冷たく、熱気を帯びた手に心地がよかった。


これだけ刈ってあれば十分、歩ける。


やがて1本目の沢、峠沢と出合う。
地理院地図に道として書かれているのはここまでで、ここから三斗小屋温泉まで道はないことになっている(実際にはあるが)。
第1回目の渡渉。
やや高みから俯瞰して靴を濡らさずに渡れそうな場所を選ぶ。
靴は軽くて水捌けのいいトレランシューズを履いてきた。
だから沢の中を歩いてもいいのだが、濡れた靴、濡れた靴下は気持ちが悪い。
できることなら濡らさずに渡りたい。


分岐路がある。
道なりに行くと三斗小屋温泉で、管理人が向かう道である。
右への道は笹が生い茂ってすでに廃道化している。
その道を管理人は2019年11月に歩いている。
途中にある「三斗小屋宿跡」を見に行くのが目的だった。

1600年代末期に会津(福島県)と氏家(栃木県)とを結ぶ街道ができ、三斗小屋宿として人も住んでいた。
江戸時代になると修験道として栄え、信仰で賑わったとある。
戊辰戦争の犠牲にもなるという変遷を経て、1957年に最後まで残った一戸が転出し、無人になったそうだ。→こちらに詳しい
管理人が歩いたときの記録


幹が太く立派なブナ


中ノ沢で2回目の渡渉をおこなう。
あの倒木に伝って行くのがよさそうだ。


渡渉後、こんな道を行く。


3回目の渡渉は赤岩沢


これらの岩の向こうに登山道があることから、おそらくこの場所には丸太かなにかで作った橋がかかっていたのではないかと想像する。
大雨による増水で流されてしまったのであろう。
とはいっても前回、2017年に来たときも橋を渡った記憶はないので、それははるか昔のことであろうと思う。


三斗小屋温泉が近いと見え、歩きやすい道になった。


三斗小屋温泉にさらに近づくと地理院地図に画かれた道に変わる。


三斗小屋温泉「大黒屋」。
木造の建物だが作りはしっかりしていて重厚さがある。


こちらは煙草屋旅館
敷地内にテント場には5張のテントがあった。


沼原への分岐を過ぎるとパイプで引いた伏流水が飲める場所がある。
「延命水」と名付けられている。
冷たくてまさに命を救ってくれる水だ。
ボトルに残っていた水を捨て、この水で満たした。


裏那須に4本ある大きな沢で唯一、橋がかかっている「御沢」を渡る。
これで裏那須を流れる4本の沢を渡り終える。
ここへ来てふと、そういえば8年前はここを反対側から来て渡ったなということを思い出した。
そしてあまりの暑さに沢に浸かって身体を冷やしたのだった。


那須岳避難小屋
ここも峰の茶屋跡避難小屋と同じく泊まることはできない。
ここまで来ると残りの行程は峰の茶屋跡避難小屋のある稜線に出て、そこからは駐車場に向かって下るだけとなる。
が、稜線に出るまでの道というのが、、、


こんなのや、、、


こんなのだ。


ベニバナツクバネウツギ
初めミヤマウグイスカグラかと思ってSNSで発信したところ、詳しい人からベニバナツクバネウツギとの指摘があった。


峰の茶屋跡避難小屋が建つ稜線は目の前。


なんとか頑張ってここまで無事に戻ってくることができた。
下山は朝と同じ道を歩く。


雲に覆われかけている茶臼岳。
茶臼岳も那須連峰を代表する山だが今日はパス。


歩き慣れた道だからこそ気をつけなくてはならない。


注意を怠らないよう、ゆっくりと。


ふ~、なんとか無事に下山できた。
昨日に続いて15キロの山行で疲れたが、これでまた女峰山に一歩、近づいた。


この時間になるとさすがに駐まっている車が少ない。
下山する管理人の前にも後にも人はいなかったので、これらはおそらく三斗小屋温泉に泊まる人の車であろう。




オマケの画像
日光では貴重なハクサンチドリが足元で見られるという贅沢を味わった。

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