2026年2月15日(日) 快晴・温暖
歳をとると思いがけないことがいろいろと起こるもので、今年は年初早々に起こった。
実際には冬を迎えると毎年のように起こる持病のようなものなのだが、靴が履けなくなるまで悪化するとは想像もしていなかった。
日光に移り住んで32回目の冬を迎え、近年顕著になった気候変動で寒さは和らいでいるとはいえ、それでも真冬の寒さは年老いて抵抗力がなくなった身体に堪える。
仕事柄、立ったままの姿勢が多いため血液の循環が悪く、屋内にいても足先がキンキンに冷える。
そのため、風呂に入ったときなど、湯温は40度とぬるいのに、指先に熱湯を浴びたような熱さを感じてしまう。
血行不良の足指はパンパンに膨れあがり、紫色に変色し、フライパンで焼いたウインナの如く皮が所々がはじけて指の原形をとどめなくなる。
今年がそれだった。
しもやけを悪化させてしまったのだ。
これまで市販の薬でなんとか誤魔化してきたが、ここ数年は利きが悪く、悪化の一途を辿っている。
それも歳のせいかもしれない。
靴下が擦れて痛い。
テーブルや椅子の脚、器材の角に足が触れたりすると飛び上がるほどの強い痛みに襲われて、その場にうずくまって痛みが引くのを待つほどになった。
靴も履けない。
スノーシューツアーの季節を迎えてこれは辛い。
1月25日に予定していた常連さんとのツアーは管理人から申し出て中止にした。
どれほど頑張っても、どれほど我慢しても、重たい登山靴を履き、さらにスノーシューをつけた足で歩くことなど無理だと思ったからだ。
意を決して皮膚科の世話になることにした。
処方された薬の効果はてきめんで、16日(1月)の初診で出た、皮膚を再生する軟膏(プロスタンディン軟膏)と末梢血管の流れを良くする漢方(当帰四逆加呉茱萸生姜湯=とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)のおかげで1週間後には効果が表れ始めた。
変色し、膨れあがった足指は親指と中指を除いて春から秋の、普通の指に戻った。
足先の冷えが取れたのか、入浴時に熱湯を浴びるような感覚も治まった。
それにしてもなんなんだ、この効き目の速さは。
20年も使ってきた市販の薬で治らなかったしもやけが、処方された薬を使ったらわずか1週間で効果が出てくるとは、脅威としか管理人の目には映らない。
焼いたウインナの様に皮がはじけた親指も、肉が盛り上がってきて、完治は目前となった。
やはりあれだな、「餅は餅屋」のたとえの通り、市販の薬は軽度のしもやけなら治るのかもわからないが、処方薬とは効果のレベルが違いすぎる。
治る見込みがないと思ったら病院へ行くべし、なのだ。
今月6日に最後の診察を終えた。
ひと月分の薬をもらい、完治を目指しているところだ。
そんなわけで例年ならば1月半ばにスノーシューツアーをスタートするところだが、今年のスタートは遅れに遅れて、2月になってからになった。
今冬2回目のツアーの参加者は常連のMさん。
登山経験は管理人の方が長い(それはそうだ、歳が二回り以上違うのだから)はずだが、「井の中の蛙、大海を知らず」を地で行く管理人と違ってMさんの行動エリアは広く、いつも管理人の方が勉強させてもらっている。
かくいう管理人は日本アルプスの山に登ったことがなく、地図やガイドブックを見て山の名前を知っている程度だ。
やがて訪れるフレイルを前に、いつかはMさんのガイドで登ってみたいものだ。
コースはMさんのリクエストで、湯元温泉と光徳温泉を結ぶ10キロ弱のハイキングコースとなった。
日光にこれほど歩きやすく、ほどほどの距離で、いい展望が望めるコースは珍しいといえるほど、管理人のお気に入りだが、積雪期は簡単ではない。
昨年、別の常連さんとチャレンジしたことがあったが、膝まで潜る雪に阻まれて、湯元から歩き始めて刈込湖に行くのが限界だった。
管理人が根を上げたのである。
しかも常連さん(並の脚力ではない女性)に先頭を任かせて、管理人はその踏跡をついて行っただけにもかかわらずだ。
今年は2月としてはやや物足りない積雪(6日に実踏済み)とはいえ、雪は締まって歩きやすく、時間が読める。
課題といえば、周回コースゆえ、下山後に管理人の車を置いた場所へ戻るのに路線バスを利用する必要があって、スタート地点を湯元にするか、それとも光徳にするかの検討だった。
コースの所要時間とバスの時刻表を丹念に調べ、光徳温泉をスタート地点に決めた。
下山口は湯元温泉になるが、光徳に行くバスの方が便数が多いためだ。
メモ(地図アプリのGeographicaで記録した)
・歩行距離:9キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:5時間47分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:647メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)
Mさんは前夜、管理人が経営するペンションに泊ったから、出発時間を早めた。
早起きは一文の得、善は急げの言葉通り、8時20分には支度を調えた。
ここは光徳駐車場。
かつてはクロスカントリスキーで賑わったエリアだ。
山王峠へ向かう。
このルートは一部傾斜のきついところはあるが、概ね平坦なので歩きやすい。
最初の目的地、旧山王峠に着いた。
地理院地図にはコースも地名もなく、往時の面影だけが残っている。
なお、積雪期以外、ここへ来ることはできない。
背丈ほどの笹が茂っていて、進めない(懲りた経験がある)。
涸沼から這い上がって登山道と合流する。
いつのものか不明だが、Mさんの後方に踏跡が見える。
その踏跡が地理院地図にある登山道。
ただし、踏跡は数メートル先でUターンしている。
滑落の危険を感じたのか、先へ進めないと判断したのであろう。
その回避策は涸沼を歩くことである。
地理院地図にある登山道は、涸沼から刈込湖の西端まで、三岳北面のすそ野の斜面を横切るようにしてついている。
そこは三岳に遮られて影になり、遅くまで雪が残る。
深い雪を被った斜面を横切る行為がいかに危険なものかは、経験者であれば誰もが知っている。
「君子危うきに近寄らず」、安全なルートを選ぶのが事故を回避する最善の策である。
そんなわけで刈込湖の隣、切込湖に着いた。
登山道は画像左に見える斜面のさらに上にあるが、踏跡などない。
氷上を歩くのがもっとも安全な方法と言える(ただし、氷の厚さと解け具合次第)。
Mさんと管理人はもちろん、切込湖の上を歩いた。
そこに踏跡があるから歩いたというわけではない。
足元の氷をポールで突き、カツンと乾いた音がして石突きが1ミリも刺さらなければ大丈夫、そんな判断が必要なのである。
それと万が一のことを考えて、数メートルの距離をおいて歩くことも大切である。
切込湖は隣の刈込湖と水路でつながっている。
ここがそれ。
凍った水路が見える。
ここでクイズ。
この水路はどちらからどちらへ向かって流れているでしょうか?
答は地理院地図にあり!
小峠に着いた。
積雪量はこの道標で昨年との比較ができるが、今年は昨年比で50センチくらい少ない。
小峠から、尾根と沢が複雑に入り組んだ斜面を下りるとそこは幻の湖と呼ばれる、冬限定の蓼ノ湖(たでのうみ)。
ここに至る道がないのと、登山道からも見えないことからそう呼ばれている。
湯元温泉と蓼ノ湖をむすぶ冬道を歩くツアーは、管理人以外の事業者もおこなっていて、歩く人が多い。
雪が締まりスノーシューが使いづらくなったので、ここでチェーンスパイクに履き替えた。
こんな計画を組んで臨んだ。
過去の経験から所要6時間半を見込んだが、スタート時刻が20分早かったのとMさんの脚力に助けられ、湯元を14時20分に出て光徳へ行くバスに間に合った。
すべてが上手くいった。
Mさんはこれから湯元の旅館に泊まるという。
管理人はペンションに戻るが、昨夜少量に抑えた(と思っている)アルコールを、今夜は昨夜の分まで飲んでしまいそうな気持ちの良さだ。
Mさんもそう思っているに違いない。










