栃木市の太平山。展望の良さと歩く楽しさはまるで古賀志山のよう。再訪確実。

2023年3月12日(日) 晴/暑い

このところ、県南の栃木市へ続けて通っている。
8日に宿泊を予定している知人をどこかへ案内する約束をしたものの、この時期の日光はまだ冬というのが管理人の認識であり、冬のアクティビティや雪景色を観るのを目的としないのであればお勧めの場所はない。
なにしろ相手は管理人よりも年上の、ハイキングや登山と縁遠くなってしまった女性3人である。
傾斜面よりも平坦路を、雪景色よりも花を楽しみたいという。

であればその希望を叶えることができる場所として、栃木県民になって28年も経つのに栃木県のことなどほとんど知らない管理人の知識は、税務署(確定申告でなんどか通った)のある鹿沼市と、中古車を探し回って広範囲を回った帰りに立ち寄った栃木市郊外の太平山の麓に建つ「大中寺」のことしか思い浮かばない。

地域のホームページをいくつか閲覧すると、太平山と大中寺のある栃木市には駅のすぐ近くを巴波川(うずまがわ)が流れていて、観光客向けに木舟を運行していることがわかった。
また、栃木市中心部は「蔵の街」と称し、歴史ある蔵が点在しているらしい。
太平山と大中寺は桜と紫陽花の名所でもあるらしい。

と、ネットで得た乏しい知識はなんとも頼りないが、決め手は都内から東武電車で来る知人にたいして、日光から車で迎えに行く管理人が会う場所として、中間的距離として栃木駅は最適ということだった。

その下見として栃木市を訪れたのが今月1日、木舟の発着場に立ち寄ってこの季節の運行状況を尋ねたり(日光だとこの時期、運休や休業中が多いので)、点在する蔵を見て回ったりして知人を案内する場合の所要時間や歩行距離を計測。
日光からの移動時間はナビの通り、ちょうど1時間半であることを確かめ、待ち合わせするさいの日光を出発する時間を決めた。

栃木市の下見を終えて日光へ帰る途中、花が好きな知人のために鹿沼市上永野の「蝋梅(ろうばい)の里」へも寄った。
千坪の敷地内に4種類のろうばいが黄色の花を咲かせ、3月まで鑑賞できるそうだ。

よしっ、これで知人を案内する予定は決まった。
簡単な下見だけで決めてしまったことに不安はあるが、なんとかなるだろう。
見知らぬ土地なので道に迷う心配はあるものの、山と違って滑落や転倒、行き倒れの心配はないはずだ。

そんなわけで当日(3/8)は歩くほどの速度でゆっくり進む木船に乗り(管理人は専属カメラマンとして船を追いかけた)、中心街を歩きながら蔵を眺め、手打ち蕎麦の人気店で天ぷら蕎麦を食し、蕎麦店の敷地に生育する600株もあるというミツマタを鑑賞し、最後にろうばいの里に寄って日光に着き、遅くまで宴会してその日を終えるといった盛りだくさんのメニューをこなした。

その4日後の今日12日、再び栃木市を訪れた。
ペンションの常連客であるFさんから、長期間にわたる激務から解放されようやく休みが取れたので山に行きたいという要望があった。
Fさんとは長い付き合いで、管理人はFさんの仕事も知っている。
クライアントを相手に小さなミスでさえ許されない仕事をしており、緻密さと強い精神力が求められる。
仕事の多寡は季節によって異なるため管理人の予定となかなか合わず、すれ違いが多かった。
予定が合うのは年に一度くらいしかないため、この機会を逃すと次回まで1年待たなくてはならない。
Fさんの希望を叶えてあげたい。

叶えてあげたいが、上に書いたように日光はまだ冬から明けきれず、山を歩くには中途半端な季節だ。
そこで思いついたのが知人と行った栃木市なのである。
中心部から遠くない距離に太平山(おおひらさん)、晃石山(てるいしさん)といった里山があって縦走できるらしい。道は整備されていて展望のいい場所が随所にあるらしい。
駐車場も多く、各駐車場にトイレが備わっていて女性に優しそうだ。
太平山も晃石山も、500メートルに満たない低山なので山歩きが久しぶりのFさんに向いていると思うし、最後のスノーシューから2週間も歩くことのなかった管理人も然りだ。
とまぁ、好感度抜群のイメージをいだきながらFさんとの待ち合わせ場所、栃木駅へ向かったのだった。

メモ(GPSはiPhoneSEを使用した)
・歩行距離:10キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:5時間2分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:810メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

事前にネットで調べると栃木駅を起点に目的とする太平山を目指すには距離の長短はあるものの、登山口が複数あることがわかる。
とはいうものの、5年前に所用で佐野市を訪れたついでに太平山の麓の「大中寺」を見たのが初めてで以後、訪れることはなかったからどこを登山口にすればいいのやら、見当がつかないという頼りなさである。

とりあえず、栃木駅からもっとも近い「あじさい坂」が登山口となりそうなので、カーナビをセットして走り出すことにした。
どこをどう走ったのかわからないまま着いた場所は道路が左に急カーブを描く場所だった。
カーブの左右が駐車場になっていて、右の駐車場にはトイレがある。
左右の駐車場とも無料のようだ。


左の駐車場に車を駐めて外へ出ると大きな案内板が目についた。
全体像を把握すべく案内板の現在地に焦点を当てて太平山へのルートを考える。
現在地を直進すると階段があって太平山神社に行けるように見えるが、肝心の太平山が見つからない。「太平山ハイキングMAP」となっていながら太平山が描かれていないのは不思議だが、事前に入手しておいた栃木市観光協会発行のハイキングマップを上着のポケットから取り出して見ると、太平山は神社のすぐ先に位置しているようだ。


案内板に目を戻しルートを決める。
太平山と大平山神社の位置関係がわかったので先ず目指すのは太平山神社だ。
太平山神社へは階段を巻く道(案内板の茶色の線)の方が面白そうだし距離を長くとれる。
怖いもの見たさで行ってみることにした。


「怖いもの」はすぐ現れた(笑)
案内板からは想像もできない荒れ様だ。すごい道を選んでしまったものだ。



巻き道を道なりに歩いて行くと突然、階段と合流した。
これが駐車場を直進して神社へ行く階段であろう。
駐車場からだと1000段もあるそうだ。


前の画像で階段の上に見えるのが「随神門」だった。


今が盛りの寒椿。


階段のトップまで上がったところが大平山神社だった。
老若男女、多くの人で賑わっていた。
ここまでマイカーで来ることができるのがその理由らしい。


階段最上部の脇はやや広くなっていて、そこから栃木市内が一望できた。
古賀志山とも共通するがすぐ足下に人家や畑が見え、人々の営みが感じられる、それが里山の良さといえる。


太平山へ向かう途中にある、太平山神社の奥宮(おくのみや)。
太平山へは太平山神社の前を右に進むのが正しいルートだが、案内板や前述したパンフレットにはそこまで詳しく書かれていない。
ここはやはり地理院地図の出番だ。
管理人、紙の地理院地図とスマホの地図アプリ(Geographicaを利用)に表示される地理院地図を併用しているが、現在地が瞬時に把握できる便利さから、最近はもっぱら地図アプリを使うことが多い。
だが、よほどマイナーな存在なのか、地図アプリにも奥宮は描かれていない。
そこで奥宮の場所が地図上でわかるよう、ウエイポイントとして登録しておいた(最後に掲載してある地図)。

奥宮の前で手を合わせているのが同行者のFさん。
スリムな体型からは想像もできない力強い歩きをする。
実はFさんは長距離を好んで走るアスリートなのである。
身長168センチ、体脂肪率8.6パーセント、6つに割れた腹筋、柔軟な身体、足の長さは管理人の腰骨辺り、といずれも管理人の推測でしかないが、その恵まれた身体から噴出するパワーは山でも遺憾なく発揮され、管理人など足下に及ばないほどだ。


太平山山頂は冨士浅間神社の裏手にあった。
なんとも慎ましい、目立たない山頂だこと。
標高は341メートルと控え目


太平山から晃石山へ向かう道はアップダウンの繰り返しで、今回のルートでもっとも楽しめる区間だった。
展望もいい。


1本道で迷うことはないが道標があると安心する。


「駒形石(駒の爪)」との標識の立つ、大きな岩。
はて、どうやって見れば駒(ウマ)の蹄になるのか、考えさせられる岩だ。
岩の上部の真ん中に見える凹んだ部分が蹄に見える、というのがFさんの見解だった。


歩きやすいいい道である。
急な登り下りあり、岩場あり、そして平坦な道ありと変化に富んだルートは古賀志山を思い起こさせる。


花の季節にはまだ早く、期待はしていなかったが少数のカタクリを見つけた。
他にどんな花が咲くのか、足繁く通わないとわからないが、里山の特性から多くの花が見られるものと思う。


ほどなく晃石山に到着した。
標高は419メートル。
北西の展望が開けていて、空気が澄んだ日であれば日光連山が見渡せるようだ。


晃石山からの展望。
春霞がかかって山の特定はできなかった。


一等三角点だったのだね。


春の陽光を浴びながら晃石山の山頂で時間をかけてランチとし、次に向かったのは南に位置する清水寺(せいすいじ)だった。
晃石山を南へ少し下ると道が左右に分岐するので、右へ辿ると画像の道標がある。


清水寺への緩やかな下り道。


清水寺に到着した。
落ち着きのある佇まいだ。


境内にはテーブルとベンチがあった。
こういうのが里山らしいところだ。


ミツマタ


清水寺本堂
ここへもマイカーで来ることができ、駐車場にはトイレもある。


清水寺から次に訪ねる大中寺へは車道を行く。
アスファルトの道を3回、曲がったあとは道なりに進む。


マンサク


道標はあるが、ホントにこの道でいいの? といった感じの細い道を大中寺へ向かって進む。


大中寺の入口。
ここを入った左手に駐車場とトイレがある。


大中寺の山門をくぐる。


石畳の先が階段になっていて大中寺に行けるようになっている、、、のはずなのだがそこには太い竹が渡してあって階段を上がれないようにしている。
参拝者は別の通路から大中寺に行く。
理由はここへ足を運ぶとわかる。


大中寺の境内は紅梅と白梅が見頃を迎えていた。


時代を感じさせる佇まいの大中寺。


500年以上もの歴史があるそうだ。


大中寺から車を置いたあじさい坂に戻る最短ルートは一旦、山に入ることが地図から読めた。
だが、その道はとんでもない急傾斜であることが歩いていてわかった。


山道を20分ほど歩くと車道と合流し、そこは太平山の三大名物すなわち、玉子焼きに焼き鳥、団子を提供する店(あづま屋)の前だった。


せっかく来たのだから名物を食べてみたい。
三大名物のひとつ、玉子焼きを注文した(¥350)。
ほの甘く、しっとりした厚焼き玉子は美味。
熱燗が合いそうですね、とFさん。
Fさんは酒豪でもある。


さて、帰りのルートだが、茶店前の車道を茶店を正面に見て左へ行くと太平山神社の階段に至るが、その反対方向、謙信平へ行くことにした。
駐車場に行く道としてはかなり遠回りとなるが、展望がいいらしいのだ。
その謙信平、なにやら曰くがありそうで興味深い。
ここから車道を20分かけて歩き、駐車場に戻った。


帰宅後、GPSで記録したログをカシミール3Dを使って地理院地図に再現してみた。
全体で見ると軌跡はオムレツの形をしていて面白い。
上半分は山道なのに対して下半分は一部区間(大中寺~玉子焼き)を除きアスファルトの車道歩きとなっている。
が、時節柄なのか車と遭遇することはなく安全に歩くことができた(桜や紫陽花の季節を迎えるとわからない)。
地理院地図に描かれたルート(点線)のうち今回歩いていないのがあるのでそれらは次の機会に歩いてみたい。

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