日光さいはての湖でまったりし、次は400メートルを一気に登って高山へ。

2025年6月27日(金)晴れ

2千メートル級の山に不足しない奥日光で2千メートル未満の山を探すのはかえって苦労するほど少ない。
地理院地図に名前があってなおかつ登山道が描かれている山を探してみると、2千メートル級の山は15座あるのに対して、2千メートル未満の山は4座しかない。

その4座も登りやすいのかというとそうでもないことは、地理院地図を見てわかるように、等高線がかなり詰まっている。
登山口から山頂までの距離が短い割に標高差が大きいのである。
2千メートル未満の4座を、山頂の標高と山頂に一番近い登山口との標高差を調べてみると次のようになっている(登山口の標高がほぼ同じなのは登山口が中禅寺湖畔だから)。
・黒檜岳 1976m:1276m(標高差700m、距離2.8キロ、斜度20度)
・社 山 1826m:1276m(標高差550m、距離2.1キロ、斜度20度)
・半月山 1753m:1276m(標高差477m、距離1.7キロ、斜度26度)
・高 山 1667m:1269m(標高差398m、距離1.8キロ、斜度25度)
※各数値は大まかにとらえたもので正確とはいえない。

加齢とともに体力が衰えてきている管理人は登り始めるとすぐ、心拍数が危険ラインの130拍/分を超えて息苦しくなる。
上がりすぎた心拍数を下げようとすると休憩も多くなるから、下山までの所要時間が必然的に長くなり、これは登山において望ましいとは言えない。

そのため最近は、心拍数が危険ラインを超えないよう、大平山のようにアップダウンは多いが標高差が小さく、苦しまずに登れる山を好んで登るようになった。
心拍数を上げすぎて登山中に心臓発作にでも見舞われたら、その場で命を失う結果となる。
年寄りには怪我よりも恐ろしいことなのである。

適正な心拍数は次の式で計算できる。
1.最大心拍数=220-年齢・・これ以上、上げるのは危険
2.運動時心拍数=最大心拍数×0.6~0.7・・運動が持続可能な心拍数
3.心肺能力強化=最大心拍数×0.8~1.0・・かなりキツイ運動だが心肺能力が強化される(ただし、高齢者は避けるべき)

管理人でいえば、経験上110~120拍/分が苦しむことなく、休まずに歩き続けることのできる心拍数だが、これは最大心拍数×0.77~0.84なので上記2と3の中間くらい、つまり運動として緩すぎずきつすぎず、快適な運動レベルといえる。

話はガラッと変わるが、管理人は一度の山行で写真を200枚、300枚あるいはそれ以上撮るのが常のことである。
記録のために撮るのでザックからカメラをパッと撮りだしてカシャッとやって歩き出す、それを繰り返しながら歩いて行く(だからピンボケも多い)。
それに要する時間が管理人の休憩時間であり、昼食時を除き特に休憩というのはとらない(ときには長い距離を歩いて疲労困憊して休むことはもちろんある)

写真を1枚撮るのに10秒かかるとして、200枚なら2000秒すなわち30分が昼食時以外の足を止めての休憩となる。
昼食時の休憩を除いて全行程のうち30分を10秒前後と細切れに休むわけだが、これが心拍数を落ち着かせるのに効果を発揮する。

疲れたから休む、ではなく、疲れる前に休む。
管理人の場合、そこに花があれば写真を撮り、いい景色と出合ったら写真を撮るといった歩き方をするので、それが結果として「疲れる前に休む」ということになっているのであろう。

なにを言いたいのかというと、心拍数の乱高下は心臓に悪いし、心肺能力強化につながらないと言いたいのである。
最大心拍数の0.6~0.7(管理人の場合0.77~0.84)を維持して歩き、それ以上になったら休んで心拍数を落ち着かせ、そしてまた歩く。休むタイミングは登山者それぞれだが、くれぐれも心拍数が危険ラインに達する前に休むことをお勧めしたい。

話を戻すと、冒頭に書いた2千メートル未満の山、4座は登山口からの距離は短いものの、標高差はそれなりにあるし傾斜も決して緩くはない。
といってこれを登るのに丸一日、費やすのはなんだか勿体ない。
そこで、1座だけでなく、他と組み合わせて登りたいという欲が出てくる。

たとえば半月山と社山を組み合わせるとか、社山と黒檜岳を組み合わせれば一日が充実したものになる。
ではもう1座の高山はなにと組み合わせるのがいいか、難易度の順に言えば、
1.戦場ヶ原と小田代ケ原
2.西ノ湖
3.赤岩滝
4.赤岩滝と西ノ湖
となるであろう。

10年前、管理人は上記4をやったことがある→こちら
26キロという実にハードな山行だったし、もはやその気力も体力もない。
だが、女峰山挑戦を目指し、そこそこ体力を使う歩きをしたいし15キロは歩きたい、そんな気持ちから今日は高山と西ノ湖と組み合わせる山行を試みることにした。
女峰山ほどの累積標高は稼げないにしても、15キロは確保できる。
なによりも一部重複はあるものの、退屈しない周回コースになるのである。
心拍数はおそらく危険ラインに達するであろう。
それも女峰山に登るための心肺能力強化の一環としてとらえている。

直近の山行は20日の那須連峰だった。
その後、24日と25日には自宅でスクワットを中心とする筋トレをおこなった。
山行中、その疲れが出るようならば西ノ湖を往復するだけ、疲れがなければ帰り道に高山を、という計画を組んだ。

メモ(地図アプリはGeographicaを使用した)
・歩行距離:17.2キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:5時間36分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:973メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

西ノ湖へは赤沼から低公害バスで行くのが楽。
西ノ湖入口で降りれば15分で着く。
だがそれでは観光になってしまう。
せっかくだからもっと自然を楽しまなくては。
というわけで竜頭滝に車を置いて中禅寺湖に沿って歩くことにする。


竜頭滝を横目でちらっと眺めて中禅寺湖へ向かう。


国道を横断して中禅寺湖へ向かうとこんな道標がある。
中禅寺湖の西端、千手ヶ浜へ行く遊歩道である。
わずかなアップダウンはあるが中禅寺湖を眺めながら歩ける。
千手ヶ浜まで3.8キロとある。
これまで西ノ湖へ行ったり中禅寺湖を1周したりするときもここから歩き始めているが、ちょうど1時間で行っている。
体力低下の今年、はたして1時間を切れるかどうか、それが最大の心配事となっている。


歩き始めるとすぐ、開花寸前のヨツバヒヨドリの群落と出合った。


整備され、歩きやすい遊歩道を湖に向かう。


中禅寺湖と出合う。
対岸にこれから行く千手ヶ浜が見える。


木製の階段を登ると地理院地図にある「赤岩」。


階段の最上階、赤岩からは中禅寺湖を一望できる。


高山の登山口、熊窪を通過。
帰りはここを山側に入っていく(元気が残っていれば)。


千手ヶ浜に着いた。
かろうじて1時間を切ることができた。
例年通りの所要時間なので体力はまだ大丈夫のようだ。


観光船の桟橋の向こうに男体山が見える。
ここへは低公害バスでも来ることができる。
ここに来るたびに思うのは、体力が低下して山歩きもできない身体になったら、バスに乗ってここへ来て、持参した椅子を組み立てて、本を読みながら過ごしたいということだ。本に飽きたら顔を上げ、男体山を眺めながら傍らに置いたこれも組み立て式のテーブルに置いたコーヒーを飲みたい。
けど、無理でしょうな、管理人の性格としては。


中禅寺湖に流れ込む「外山沢川」にかかる橋を渡ってクリンソウの群生地で知られる伊藤家へ向かう。


伊藤家の手前のこの道標を入る。


マルバダケブキの群落の間を歩く。
ここを抜けるとミズナラが生い茂る、実に気持ちのいい千手ヶ原に変わる。


千手が浜の外れ、西ノ湖手前の四差路にかかる吊り橋を渡る。
橋の下を流れるのはこれも中禅寺湖に注ぐ柳沢である。


西ノ湖は水位の変化が激しくて満水状態のときが少ない。
ここから見てすぐ、少ないことがわかる。


ここは湖畔、というより湖底である。
満水時にはこの草原が水で満たされるが、それには大雨が何日も続いて近くを流れる南沢、柳沢川、外山沢川の氾濫水が流れ込んでこなければ望めない。地理院地図にはカクレ滝と南沢の流れが直接、西ノ湖に流入しているに見えるが、流れは途中で伏流してしまい西ノ湖まで届かない。
したがって渇水している時期のほうが長いということになる。

西ノ湖はかつて中禅寺湖の一部であったと言われている。
それが日光連山の噴火によって中禅寺湖の一部が噴石や土砂で埋まって独立した湖として誕生した、そんな経緯があるようだ。遺留湖とも呼ばれている。

中禅寺湖の西の外れ、千手ヶ浜よりさらに西にあり、バス便はあるが特に見るべき観光資源はないことから訪れる人は少ない。
まさにさいはての湖である。

貴重な画像があるのでご紹介しておきましょう。
満水時の西ノ湖(2004年6月2日)
カメラはフジのFinePix F-401(記憶ではたしか400万画素)
このころ、管理人は低公害バスを西ノ湖入口で降り、赤岩滝と西ノ湖をかなり頻繁に訪れていた。
初めて西ノ湖を訪れたのは2001年6月だったが、そのときも渇水で湖底が露出していた。


渇水時には渇水時の良さがある。
湖底にはイトキンポウゲが多く生育している。
おそらくこれがそうであろうと思う。
開花は8月と遅い。
イトキンポウゲは5ミリに満たない黄色い小さな花を咲かす→こちら


西ノ湖をあとに、別の道で千手ヶ浜まで戻る。


純白の花が美しいバイカウツギ


市道1002号線、低公害バス専用路と出合う。
右へ行くとバスの終点、千手ヶ浜に着く。
一般車両は通行できないが例外として自転車はOK。栃木県ではここをサイクリング道路として積極的に活用するよう一般に勧めている。
傾斜もカーブもあるので、そのうち、ロードレースのコースとしても使われるようになるのでは、という予感がする。


ハルカラマツも群落を作っているが花はほとんどが終わっていて実になっている。
これは遅れて咲いたのかまだ見頃だった。


水辺にはクリンソウが咲いていた。
周知の通り、日光全域シカが多い。
奥日光に限らず、市内のどのエリアにもシカはいて、植物に大きな被害をもたらせている。
にもかかわらずクリンソウはシカに食われることなく繁茂している。
クリンソウにフラボンという毒があるため、シカが菜食しないのが繁茂の理由ではないかと言われている。
ところが、ある研究機関が柵を設けてシカの菜食を調査したところ、柵の内外で差があったとの結果を出している。
今後も調査を必要としているが、毒への耐性がシカに強まりつつあるのかもしれない。
そうなると日光に生育しているクリンソウもいつかはシカの食害に遭う日がくる、そんな気がする。


千手ヶ浜に咲いていた白いクリンソウ。


本日、2回目の男体山
日差しの位置が変わったためか朝より輪郭がハッキリしている。


高山登山口の熊窪から眺める中禅寺湖。
中禅寺湖は1周する遊歩道があるが、ここのように砂浜に降りられる場所は限られている。
ここに寝そべって昼寝でもしたい気分だが、次の目的地、高山が待っている。


朝はサッと通過した高山登山口の熊窪。
歩き始めてからここまで11.4キロとスマホに表示されている。
朝と同じく、湖畔に沿って戻れば残り3.6キロ、ほぼ平坦路を歩いていけばいい。
楽を選ぶか苦を選ぶかで苦悩した(んなわけないか・笑)
ここは当然、高山だ。
高山を経由して車を置いた竜頭滝まで戻ろう。
とはいえ、高山へはここから400メートルの標高差を一気に上らなくてはならない。
心拍数が上がるのはこれからだ。


こう見えても結構な傾斜です。


高山峠に到着。
三叉路になっていて直進すると市道1002号に出て、歩いて赤沼に行ける。
あるいは低公害バスに乗ることもできる。
高山へはここを右へ折れる。


地理院地図を見るとわかるが傾斜がきつく、そのため登山道はジグザグについている。
とはいってもそれなりにきつい。


空が見えるようになるとそこが山頂。


高山峠で家からの電話とLINEで10分ほど費やしたが、熊窪から72分、高山峠から40分で山頂に着いた。
さあ、下山のエネルギー補給に、ここで昼飯にしよう。


菓子パン1個、355kcalを補充し、15分ほど休憩して下山にかかった。


下山路はひとつのピーク(1565m)を除いて尾根道の快適な下りが続く。


右手に中禅寺湖が見えるが木々が多いため、観賞というわけにはいかない。


1円玉大の丸く小さな葉を持つ花。
花名はわからない。


注意すべき箇所はいくつかあるが、歩きやすい。


もうすぐ咲くまでに成長したバイケイソウの群落の中を行く。


シカ避けのゲートを開けて柵の外へ出ると、、、


そこは国道120号線。


国道沿いから見る竜頭滝の始まり部分。


流れに沿って遊歩道を下っていく。


中段の観瀑台からの眺め。
ここは龍の胴の部分でしょうね。


春はツツジ、秋には紅葉で賑わう竜頭滝。
梅雨の最中なので日本の観光客は極少で、インバウンドが圧倒的に多い。


竜頭滝から歩き始めて西ノ湖で折り返し、高山の登山口までほとんど平坦だが、距離は11キロある。
軽い疲れはあるが高山に登るのに差し支えはないようだったので登って下った。
女峰山の次に目指すのは中禅寺湖1周25キロ。
高山登山口までの11キロに加えてあと14キロある。
高山でへばっていては中禅寺湖1周は望めない。

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