2025年5月21日(水) 猛暑
管理人、事前予約制という仕事(宿泊業)を営んでいる立場上、予約の入っていない日は基本、フリーだ。
だからソロで山歩きをするときは好天の日を選び、雨の予報の日は行かない。
会社勤めで有休もままにならないというサラリーマン、OL諸氏からすれば羨ましがられるかもしれないが、山へ行くのも管理人の仕事、そんな義務感がある(少し)。
下山したらそれをSNSにアップしたり、このようなブログとして発信し、情報提供をおこなうことで管理人の仕事(宿泊業とガイド業)に対する意識を知ってもらうことになるし、理解してもらうことになる。
それが結果として宿の集客につながるから、怠ることはできない。
今回のブログは実は6月8日に書いたものだ。
山行を終えて2週間以上も経ってからだ。
タイムリーとは言い難く、花の情報などすでに色あせたころになってようやく、読者の目にふれるという始末だ。
家族経営の事業で、なにからなにまで責任持って管理人がおこなっているため、予約はなくても忙しくててんてこ舞いする日が多いのである。
その間隙を縫って、さらには好天の日を選んで山へ行くとなると日が限られる。
雨の予報の日は行かないが、行く日が今日のような命を危険にさらすような猛暑日となってしまうことも多々ある。
とにかく暑かった。
水は飲んだがすべてが汗となって蒸発していき、脱水が激しくて熱中症に近い状態で下山した。
雪解け水が流れているのを見つけたので冷たい水が飲めると思って手ですくったところ、地表を流れてきたためゴミだらけで、口の中を冷やしただけで飲み込むことはしなかった。
あぁ、冷房の効いた事務所で仕事をしていたサラリーマン時代が懐かしい、そんな思いに駆られた一日であった。
メモ(地図アプリはGeographicaを使用した)
・歩行距離:12.6キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:6時間37分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:915メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)
人気のある那須連峰は平日でも登山者が多い。
一般に知られている登山口、峠の茶屋駐車場はこんな山日和の日は満車が予想される。
そこで今日は茶臼山や朝日岳、三本槍岳から遠い沼原(ぬまっぱら)から歩き始めることにした。
目的とする南月山のミネザクラを観るにはその方が近い。
ただし、峠の茶屋からのルートにくらべると荒れて段差だらけの道を延々と登って行くため、それなりの覚悟を要求される。
駐車場のすぐ脇、車道の終点から入っていくとそこが白笹山の登山口。
このルートは2017年に下りで、2018年に登りで歩いたことがあって、今日が3回目。
2018年の登りでは段差だらけの荒れた道で、とても辛い思いをした記憶がある。
沢を渡る簡易的な橋。
前はもっとしっかりしていた記憶があるが、大雨で損壊したのかもしれない。
檜が根元から倒れて道を塞いでいる。
よく見ると枝先の方に踏跡が見つかったので迂回した。
アズマシャクナゲの蕾が多数あった。
咲いてるのはないかと先へ進んだところ、、、
二輪だけ、咲いているのを発見。
日光だと湯ノ湖南岸に群生していてそれは圧巻だが、ここも多い。
太さ1センチほどの篠竹がコースを塞ぐようにして横たわっている。
刈払いはされているが、太いので手強い。
林間のすき間から福島県境に連なる流石山から三倉山へ続く、美しい稜線が見える。
ニッコウキスゲの群落があるそうだが、管理人はまだ行ったことがない。
栃木県との県境にありながら、福島県側からでしか行くことができないのだ。
歩き始めからの距離2.8キロを休憩なしで歩き、1時間40分かかってようやく、白笹山に着いた。
ここまで傾斜の平均は20度近くあり、決して楽とはいえなかった。
上半身から流れ落ちる汗でパンツの尻までびっしょり濡れた。
ここまで来て、この暑さの中、このコースを選んだのは失敗だったと思った。
峠の茶屋から歩き始めた方が、どれほど楽だったか、そんな思いが頭をよぎった。
白笹山を抜けると一気に視界が開けて南に黒尾谷岳、北に南月山と茶臼岳が望めるようになる。
気持ちはいいが、登りはまだ続く。
手前に南月山、中央に茶臼岳が見える。
かつてはこのルートで茶臼岳そしてさらに北に位置する朝日岳まで行ける元気があったが、今はせいぜい茶臼岳までであろう。
それもエネルギーの残量と相談の上でだ。
今日の目的とするミネザクラと出会えた。
これなくして今日の山行は無駄足になってしまう。
ここまで2時間近く、写真を撮る他に休憩なしで歩き通した。
したたり落ちる汗で脱水気味なのと、体熱を下げるために木陰で休憩することにした。
発汗によって失われた塩分の補給に「塩熱サプリ」と、それだけでは足りないので岩塩の粒をかみ砕いて飲み込んだ。
高血圧で苦しんでいる人からすれば卒倒しそうなほどの塩分量だが、猛暑の中の山歩きでは水分と塩分の摂取は欠かせない。
平野部で見る桜は高木で、見上げるようにして眺めるが、那須連峰は風が強く、南月山で生育するミネザクラはせいぜい人の高さから3メートルくらいにしか成長しない。
だからこうして目の前で見ることができる。
山頂にある古い神社の祠。
長い年月、ここで風雪に耐えてきたのだろう、趣がある。
南月山から茶臼岳を眺める。
あの麓は「牛ヶ首」といって那須ロープウェイからすぐの場所。
ベンチがあるのでそこでランチとし、その後の予定を考えよう。
ミネザクラを楽しみながら牛ヶ首に着いた。
暑さ疲れが頂点に達している。
今日はここが折り返し点だな、どう頑張ってもここから先へ進むのは無理だ。
う~ん、美しい。
惚れ惚れするような実にいい稜線だ。
いつか必ず歩こう。
牛ヶ首は四差路になっていて右へ行くとロープウェイの乗り場、左は姥ヶ平、直進すると朝日岳、茶臼岳へは右か直進のどちらかの道を進む。
ここから沼原へ戻るには姥ヶ平を経由する。
日本庭園を思わせるような風情ある姥ヶ平。
火山による噴石でできたとされている。
那須連峰を構成する山は昔、噴火があって、南月山には現在、火山の兆候を監視する機械が設置されている。
茶臼岳の麓の登山道脇からは水蒸気が立ちのぼっているし、那須連峰は100パーセント安全とはいえないエリアなのである。
ひょうたん池(画像下部分)と茶臼岳。
ここから眺める紅葉がいい。
小さな沢に雪解け水が流れ落ちている。
冷たい水が飲めるものと思って手ですくってみたが、ゴミが混じっていて飲む気にはなれなかった。
だが、口に含んだだけでも身体を冷やす効果はあった。
沼原と三斗小屋温泉とを分ける分岐、姥ヶ平下まで降りてきた。
三斗小屋温泉はここを右へ、沼原は直進する。
段差の多い道を下っていくとやがて笹原に変わる。
ときおり、奥の方からガサガサという、笹が擦れ合う音が聞こえる。
熊かイノシシが移動しているのであろう。
熊鈴を付ける習慣のない管理人はザックにくくりつけてあるホイッスルを鳴らしながら足早に通り抜けた。
沼原駐車場と沼原湿原とを分ける分岐まで来た。
湿原まであとわずかだが、やはり疲れたのであろう、ここまでが果てしなく長く感じた。
沼原湿原入口のゲートを開けて中へ入る。
どこかで休憩しよう。
ザックを下ろすとショルダーベルトに白い粉が。
昨日に続いて使うのがまだ2回目の新品のザックだが、汗をたっぷり吸い込んでそれが乾いて塩となったのだ。
水をたっぷり蓄え湿原らしさを醸し出している場所に来て、やはり水のある場所は気持ちが癒される、としみじみ思った。
湿原を一周して出口まで来た。
ここを右へ、斜面を登れば駐車場に戻る。
今日こそ行き倒れてレスキューの世話になってしまうのではないかと思うほど、暑さ負けしたが、なんとか無事に戻ることができた。
これでまた、管理人の年間目標としている中禅寺湖1周と女峰山、古賀志山大外周りにすこし近づいたかもしれない。