2014年11月13日(金)
灯台もと暗し。
地元の身近な山、鳴虫山はツツジを見るためや適度なトレーニングができる山として、割と多く利用してきたと思う。
去る9月26日、鳴虫山を経由して火戸尻山に向かったがルートを見失い撤退し鳴虫山から登山口の御幸町へ戻る途中で、あろうことか違う尾根に入り込んでしまうという、普通のハイカーでもあり得ない凡ミスをやってしまった。
火戸尻山に向かう途中、二度も転倒し足に大怪我を負ったショックで、放心状態で帰路についたのがミスの原因、と自分自身に言い訳をしたが本当の原因はもちろん、そんなことではなく、知り尽くしていると思っていた鳴虫山の地形をまったくわかっていなかったのだ。
一般ルートを使えば2時間たらずで登れてしまうこの山は、地形図を子細に眺めるとわかるのだが一般ルートから派生する尾根と沢がそれぞれ10数本もある、実に複雑な地形をしているということである(最後のルート図を参照)。
標高差にしても登山口から530メートルもある立派さである。これは奥白根山に登るのにゴンドラを使って標高2千メートルまで行き、そこから登るのとほぼ同じだ。自戒を込めていえば、標高わずか1103メートルなどと馬鹿にしてはいけない山なのだ。
そんなことを考えるにつれ、この山に畏敬の念さえ抱くようになった。
これを機会に鳴虫山を極めよう、地元のハイカーとして鳴虫山に通じよう、そんな想いから今年4回目の挑戦となった。
とはいえ今回は山頂に立つのが目的ではなく、ネットの情報を頼りに
・猪像に会う ・銭澤不動尊を訪ねる ・化星の宿を探す ・岩屋観音を訪ねる、ことを目的とした。
上に書いた目標物を巡るには一般のルートである御幸町登山口~含満淵登山口ではなく、地形図には記載のないいわゆるバリエーションルートを歩く必要がある。
私が歩いたルートは最後の画像を参照されたいが、今回は最後の最後でルートを見失い大幅な時間延長サービスをしてしまった(まあ、よくあることですが)。
スタートは日光総合支所(旧市役所)裏手の瑠璃堂となる。右に見える杉林が登山道(地形図に記載なし)。
歩き始めて15分で石像が安置された広場に出る。
ここは今から430年前、日光を火災から守るために本尊の他に仁王象、猪象などが置かれたという。
正面の本尊の中に将軍地蔵が祀られている。
お目当ての猪像があった。神使だそうだ。なんとも愛嬌のある猪である。苔むしていて時代を感じさせる。
調べると日光にはこの他にも猪象がいくつかあるらしいので時間がある折にでも探索してみたい。
この先、進むべきルートは事前に調べてきたが念のためコンパスをセットする。
展望が開けると鉄塔に到着。市街地や遠く雲海の上に筑波山が見える好立地である。
今日のゴールとなる(はずの)志度淵川堰堤も見える。
このようにノンビリしている場合ではないのだが高みから眺める風景とはいいもんだ。
こんな平坦な尾根歩きも楽しめる。が、尾根は細いので転落注意である。
P869の手前の急登。ここまで90分と相変わらずの亀歩きぶりである。
やせ尾根はさらに続く。ここまでくると広葉樹林帯なのでいまは葉が落ちで遠くの景色がよく見える。
間もなくP897。このへんに銭澤不動尊へ行くルートがあるはず。合峰から来る場合は標識があるらしい。
P897を過ぎて間もなく、おっ、これがそうかな。反対側に回って確認すると間違いない。
北西への尾根を約250メートル下ると小高い山に進路を遮られるが、そこで進路を北東に変えて沢をどんどん下っていく。標識があるのでこのへんは迷うことはない。沢にはトラロープが。
落ち葉の上だから気持ちよく歩けると思うでしょう? しかし、落ち葉の下には大小様々な石が隠れているので細心の注意を払って歩かねばならない。
行く手に建物が見えてきた。あれが銭澤不動尊に違いない。なかなかいい雰囲気の佇まいである。すぐ脇を流れるのは銭沢というのだそうだ。
ところで、ここに来るには私が歩いたルートを辿らなければ到着しないのでしょうか、という疑問が当然ながら湧き上がるが不動尊に隣接する納屋(のような)の前に北へ続く小道があり、600メートルほどで含満淵に近い水力発電所に出るようだ。次回あらためて探索しよう。
さて、ここからP897へ戻るわけだが時間もだいぶ食ってしまったので短縮する意味でP897へ直行してみようと、写真の急斜面を登り始めたのはいいが、途中で大きな沢にぶつかり断念。左に見えた尾根に乗ることにした。
そして本ルートに出たのだがそこはP897の200メートルも手前で、さっき通過した位置なのだ。とんだ寄り道をしてしまったものだ。
本日二度目のP897を通過して「化星の宿」に着いた。名前の由来はよくわからないが修験に使われた場所であろう。
化星の宿を過ぎてしばらく行くと木々の間に男体山が見えたが雪雲がかかっている。もうそんな季節なんだなぁ。
さらに進むと前方に、いま歩いているルートと一般ルートが出合う合峰が見えてきた。
合峰に到着。ここまで4時間50分。いくらなんでもかかりすぎではないのか、キミ~。
ふ~、ようやく鳴虫山に着いた。合峰から20分かかったので歩き始めてから5時間20分。鳴虫山山頂までの最長記録である。山頂には単独の若い女性と中高年男性2名、中高年夫婦が先着し、食事中であった。
最近、昼飯はコンビニのオニギリやあんパンなど、手軽なもので済ませる傾向にあったので今日は袋ラーメンにしてみた。しかも、ネギとシイタケ、ニンジン入りという豪華版である。
強風下ではあったが気長に待って十分な旨さのラーメンを堪能した。
さて、腹が満たされたところで次なる目的地である岩屋観音に向かうことにした。入口となるP1058にはロープが張ってある。
真北に向かって約100メートル下ると尾根はやや西に向くが、その尾根(枝の落ちた太い木の向こうから左に伸びている)が見えたら進路を北東に変えるのが正解である。
ここまで比較的なだらかな傾斜で歩きやすかったがここを北東に入ったとたんに急な下り傾斜となった。おまけに落ち葉が深く堆積しているので踏み跡も見えないし、とにかく滑る。木立につかまりながらへっぴり腰で慎重に下る。
やがて平坦な尾根歩きとなりあとは自動的に岩屋観音に到着するはず、、、と思いきやここでルートを見失った。
下の写真のところまではよかったのである(※)。例の黄と赤のプレートがあったのでそのまま尾根を直進したがやがて尾根は私の足では降りられそうにない、崖のようなところで行き止まる。
翌日の新聞に「立ち入り禁止無視の老ハイカー、転落して意識不明の重体。鳴虫山で」となりかねないためこの時点で岩屋観音を諦めて撤退を決意。いま来たルートを戻ることにした。
実はここに到達する前、歩きながらGPSを操作していたら誤ってルートを消去、私にとって太い綱が断たれたことで自信喪失に陥っていたところである。
やめよう!歩きスマホとGPS。
いま考えればGPSに表示される緯度経度で現在地を特定すればよかったのであるが、予想外の展開に冷静さを失ったようだ。
※右下に見えるプレートの左に、斜め左に降りる50センチ幅の小径がある。もしかするとこれが志度淵川の堰堤に出るルートかもしれないが、どうみても尾根には見えなかった。
上の写真の場所まで戻って再考。進むべきはこの尾根しかないはずと思いもう一度、地形を点検するとすぐ先に南へ出っ張った尾根の一部が見つかる。ダメ元と考えそこへ行ってみると、、、プレートに手書きで岩屋観音の文字と矢印があった。
しかし、直進となっている矢印の先はこれもまた急な下り。落ち葉が深く積もって踏跡は見えない。
どこからか降りられないものかとぐるっと見渡したところ偶然見つけたのが、大きな岩の下にある一坪ほどの平らな場所である。ここだっ、と思って一段下りてみたところ、そこは間口が3メートルほどもある大きな洞窟なのであった。
大きな岩をくりぬいてつくったと見られる、岩屋観音。名前の由来通りだ。
ここまで来れたことに感謝し掌を合わせたのは、信心深くもない私でも当然の所作である。
結果として行き止まりの尾根に乗ったから岩屋観音が見つかったわけであり、志度淵川堰堤へのルートにすんなり入っていたとすれば見つからなかったといえる。
志度淵川堰堤への下山を諦めたものの、ここから元のP1058へ戻るのは気が重いがやむを得ない。危険を冒して進むよりも安全第一が怪我の常習者である私の選択である。志度淵川堰堤は次回の課題としよう。
P1058を経由して神ノ主山に到着したのは出発してから9時間10分後の15時40分であった。
御幸町側の登山口に到着。このすぐ下を流れるのが志度淵川でこの日はまだ紅葉が盛りであった。
本日のルート図。
この画像はGPSの軌跡をDAN杉本氏によるフリーソフト「カシミール3D」に取り込んで作成しました。
なお、駐車場からのルートは省いています。
データ
日 時:2014年11月13日(金) 6:32~16:33
天 候:晴れ、強風だがおかげで汗かかない
目 的:猪像、銭澤不動尊、化星の宿、岩屋観音を訪ねること
距 離:15.15キロメートル(GPSの記録より)
積 雪:なし
ルート:地形図に記載なし。ネットの情報に基づき自分で設定