恒例、誕生記念の女峰登山。給水の失敗で太ももに激痛が、、、

2022年8月16日(火) 晴れ/暑い

かつてあれほど足繁く通っていたのが嘘のように登山への熱が冷め、今では女峰山が唯一、管理人の山への欲求を引き出してくれる日光の山となった。

新型コロナによる自主的外出制限を続けるうちに山のことなどどうでもよくなり、代わりに若いころの旅行熱が再燃し、車を使ったひとり旅を楽しむようになったのが山への情熱が急速に冷え込むに至った理由である。

登山に比べれば費用はかかるものの、車の中で寝るのであれば、一日すべて込みで5千円あれば十分だし、旅先では会話もないのでコロナにかかる心配も、他人に感染させてしまう心配もいらない。
登山に比べて車旅は気持ちが楽なのである。

管理人の登山離れ(ただし、日光の)は加速するのかそれとも、一時的なものなのか、管理人自身にもわからないが、女峰山だけは別の次元においているというのが管理人の心の内である。
女峰山は管理人に登山の楽しさを教えてくれた山であり、その恩義から、忘れてはならない大切な山として体力が続く限り登り続ける気持ちがある。

ではいつ登るのか、それは誕生日が相応しい。
忘れることがないから、という単純明快な理由だ。
昨年は誕生日直後の8月4日に登ったが今年は悪天候が続いたために叶わず、今日までお預けとなった。
前々日になってようやく、雨の心配のない日が今日と決まり、前の日になって支度を始めたのだった。

結果(GPSはGARMIN Instinctを使用した)
・歩行距離:16.8キロ(女峰山と稜線続きの帝釈山を折り返し点とした)
・所要時間:11時間15分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:1843メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

女峰山の登山口、霧降高原キスゲ平には4時45分に到着した。
今日は女峰山を通り越してその先の帝釈山まで行く予定なので、女峰山から帝釈山までの往復1時間20分を考慮していつもより1時間早めにスタートするつもりでいる。
駐車場にはすでに10台ほどの車が駐まっていた。
とはいってもすべてが赤薙山や女峰山への登山者ということではなく、これから紹介する「天空回廊」を上がってパノラマの展望を楽しむ人も含まれている。
間もなく5時。
そろそろ日の出の時刻だ。
日の出に合わせて登り始めることにしよう。


5時に天空回廊を昇り始めた。
シカ避けの扉を開けて数段上がると園内の散策路と交わる。
そこから振り返ると今まさに太陽が昇り始めたところだった。
この日は東の空に雲がかかっていたため太陽そのものを見ることはできなかったが、雲が朱色に染まりとても美しかった。


天空回廊から外れて園内の散策路に移動し、別の角度から日の出を拝んだ。
日光市と那須塩原市、塩谷町にまたがる高原山(鶏頂山、釈迦ヶ岳、中岳、西平岳の総称)のすそ野から昇っていた。


散策路から天空回廊に戻って緩やかな傾斜の階段をゆっくり上がって行く。


今日は女峰山の先、稜線続きの帝釈山まで行くので花を観ている余裕などないのだが、管理人の長年の習性とでもいうべきか、気持ちはどうしても花に向いてしまう。
シラネセンキュウ。


もう一度、振り返って太陽の位置を確認する。
陽は雲間に入っていくところだった。


天空回廊の半分、700段目に達した。
ここには女峰山山系特有の突然の雨と雷に備えて避難小屋がある。
天空回廊が敷設されているキスゲ平はニッコウキスゲ他、高山植物の宝庫で登山者だけでなく散策でここまでやってくる人がいる。
当然ながら雨具や傘などは持っていないし、この辺りの気象の変化も知らないで来るから避難小屋は有効であろう。
花はゴマナ。


700段目から先は100段ごとに1分間の休憩を入れるのが管理人の天空回廊攻略法として定着している。
キスゲ平は今から10年前まで日光市営霧降高原スキー場として運営されていて一枚のゲレンデながらコースは初級・中級・上級まであった。
天空回廊700段目までが初級・中級ゲレンデで傾斜は緩やかだが、ここから先、傾斜が急にきつくなり心拍数は危険領域に達する。
最上段まであと745段を休みなしに登ろうとするのは若い人や健脚な人に任せ、後期高齢まであと一年と迫った管理人は身体をいたわりながら上がっていく。


天空回廊の最上段、標高1582メートルに達した。
休憩を挟みながら上がってきたので心拍数は100前後と安定している。


シカ避けのゲートを抜けて小丸山までくるとまず目に入るのが女峰山への長大なルートの最初のピーク、赤薙山である。
目指す女峰山は赤薙山の西方に位置しているが、西へ向かって真っ直ぐ進めばいいというわけではない。
女峰山へは赤薙山から北西に向かって半円を描くように稜線が続いていてそのために距離が長くまた、アップダウンが多い。


遠くから見ると気持ちよさそうに見える赤薙山への登山道(管理人は赤薙尾根と呼ぶ)だが、実際には笹が茂って道を隠している部分が多い。
危険はないが夜露、朝露で笹が濡れている場合など、靴とズボンを濡らすことになる。
が、今日はその心配はないようだ。


オヤマリンドウ
天空回廊のあるキスゲ平園地はシカの食害から植物を守るためネットを張り巡らしてあるが、小丸山から先はシカの出入りが自由だ。
それでも植物は逞しく育っていて花好きの管理人を楽しませてくれる。


オトギリソウ


ノコンギク


イタドリ


シラネニンジン


雲海に浮かぶ名のない山並み。


コバノコゴメグサ


標高1820メートルの焼石金剛に到着。
ここまで来ると赤薙山まで30分とはかからない。
なお、ここは展望がいいのでスノーシューツアーの際の折り返し点としている。


緩やかな笹原の間を歩いて行く。
この先で赤薙山斜面の急登に変わるが山頂へは20分で着く。


赤薙山にはほぼ計画通りの時刻に着いた。


コメツガに囲まれた赤薙山山頂は展望が悪いが、鳥居の奥へ進むとわずかな視野角ながら女峰山と男体山を拝める場所がある。
ここから眺める女峰山は周辺の山に比べると米粒の大きさにしか見えない。
そのはずで、赤薙山から女峰山までの道程を地理院地図で追うと、ここからさらにピークを5つ超え、6つ目のピークが女峰山なのである。
米粒大にしか見えないのも納得がいくというものだ。


苔岩(という名称があるわけではない)を通過。
スギゴケ他、数種類の苔が岩に張りつき、ロックガーデンの様相。


右側の岩に生育している苔(ではないのかもしれない)だが名前はわからない。
管理人は一時期、コケに興味をもって勉強したことがあったが名前を特定できるほどの知識を持つには至らずに終わってしまった。
勉強の対象としてコケは面白いが難しさもあり、とうとう先へは進まず諦めた。


ダイモンジソウ


今が盛りのアキノキリンソウ    キオン。
いや、キオンでもないな。
葉っぱが大きく裂けているのでこれはハンゴンソウだ。
なぜアキノキリンソウ→キオン→ハンゴンソウと訂正を重ねたか?
急いでいるときなど写真を撮るほんの数秒でその場を立ち去ることがよくある。
アキノキリンソウとキオン、ハンゴンソウの花はよく似ているから、そのときの印象であっ、これはアキノキリンソウだと決めつけてしまうことがままある。
帰宅してこうしてブログを書いていても花を見たときの印象で書いてしまうことがよくあって、それでアキノキリンソウとなった。
しかし、よくよく見るとアキノキリンソウにしては花の付き方が変だ。
アキノキリンソウは花茎の下の方から上に向かって段々状に咲き、それを動物のキリンの首にたとえて名が付けられている(たぶんね)。
この画像の花は花茎の上の方にまとまって咲いていてアキノキリンソウとは明らかに異なる。
その特徴からキオンとしたが、花から葉に目を転じると、1枚の葉が3つに裂けていることがわかる。
キオンの葉は単葉で裂けてはいない。
そうだ、この葉こそハンゴンソウの特徴なのである。
「木をみて森を見ず」、植物の名前を特定する際の原則を忘れていた。


シロヨメナ


奥社跡に到着した。
女峰山に行くまでの行程のちょうど半分の3.5キロ。
標高でいえばスタート地点から女峰山山頂までの標高差1140メートルのうち、ここまでで860メートル上がった。
これから先は残り距離3.5キロで280メートル上がればいい計算だが、それほど単純ではない。
なにしろ赤薙山から先の6つのピークのうち、ここはまだひとつ目なのだ。
ピークは残り5つ。
したがってその分のアップダウンがある。
ここからが女峰山ルートの核心となるわけで、奥社跡からピーク2209への下降と上昇、しばらく平坦路が続いたかと思うと一里ヶ曽根(P2295)から次のピーク2318への急下降と急上昇が待ち受けている。
だが、変化に富んでいて楽しめるのもこれから先といえる。


奥社跡と次のピーク2209とは標高差にしてわずか6メートルだが、それには50メートル下って56メートル上がる。これがなかなか厄介である。
画像はその鞍部。
56メートル上がる前に息を整えられる場所である。



地理院地図によるとピーク2209に達した後に方向を西に変えるように道が描かれているが、実際にはピークへの道はなくピーク手前を北西に向かうように道が付けられていて、画像にある「ヤハズ」の手前で2209からの稜線と合流する。


ヤハズから一里ヶ曽根までは緩やかな上り傾斜になっているが、ここまでの道程からすれば平坦路を歩くのに等しい。
アズマシャクナゲやコメツガ、シラビソの林の中の快適な稜線歩きが楽しめる。


大小の岩が堆積した一里ヶ曽根(P2295)に到着。
女峰山がぐっと近づき、赤薙山で見た米粒大から「オニギリ大」に変わった。


次のピーク(P2318)へは一里ヶ曽根のガレた斜面を下っていく。


一里ヶ曽根の斜面を下りきると広大な鞍部となり、次のピークへの変化点に水場がある。
水量は少ないもののこの流れが涸れたのを管理人はまだ見たことがない。
安心できる水場である。
ペットボトルに詰めてきたミネラル系サプリ(「Ultra Mineral Tablet」)の飲み水はまだ残っているがここでボトルいっぱい、沢水を補充した。もちろん、サプリ(粒)も追加した。
ちなみにここまでで距離約5.5キロ、所要時間は3時間10分かかっているが500ミリ入りのペットボトルには200ミリほど残っていた。
登山のような強い運動強度のスポーツは発汗量が多く、個人差はあるが、1時間当たり500ミリ以上といわれている。
単純な計算になるがスタートから3時間経過しているので管理人の発汗量は1500ミリ(自分では気がつかないが)に達し、それに対して給水は300ミリと少ない。
実はこのことが後から語ることになるが、身体に大きなダメージを生じさせる原因となったのである。


立ち枯れした木々が目立つピーク2318。
水場からここへ登るのがひと苦労する。
60メートル上るのに過ぎないが女峰山までの行程7キロのうち、水場までが5.6キロ。累積標高で見ると1100メートルに達しそれなりに疲労が溜まっている。
だが目標はすぐ目の前にあると考えれば頑張る気持ちになれる。


やっとの思いで60メートル上がって前方に目をこらすと女峰山山頂の山名板が目視でき、救われた気分になる(左から3つ目のピーク)。


滑りやすい崩落地帯を緊張感もって上がって行く。


ウメバチソウ
同じ場所のミヤマダイコンソウはすでに咲き終わっていた。


女峰山ルートらしさが楽しめる一場面。


女峰山のひとつ手前のピークに差しかかるとこれまでの苦労を忘れる。


三角点のあるピーク2463に到達。
女峰山山頂まであと10分とかからない。


山頂に手が届く位置までやってきた。
これが女峰山への最後の登りである。


神社が見えた。
祠には田心姫命(たごりひめのみこと)が祀られている。


登頂!
日の出を拝んだり写真を撮ったり水を汲んだりしながらも4時間半の目標を5分短縮し、4時間25分で到達。
齢74歳の初女峰山は疲れもなく極めて順調だった。
ちなみに、2002年の初登頂以来、今日で23回目となった。
余談だが、管理人は一度の山行で300~400枚の写真を撮る(今日はここまでで150枚)が、それがちょうど良い休憩になっていて、目標とする山頂までの行程で長い休憩というのはない。


さて、あまりゆっくりしている余裕はない。
ここから1キロ先の帝釈山が今日の折り返し点なのだ。
たかが1キロだが40分は見ておかなければならない。
10分ほどの休憩の後、帝釈山へと向かった。


帝釈山への気持ちの良い稜線。
帝釈山のすぐ先は太郎山。


太郎山の左には小真名子山、大真名子山、男体山と続く(右から順に)。


でわでわ、帝釈山を往復してきましょうかね。


このルート、ピーク2209から一里ヶ曽根間に似て楽しめる。


専女山という名の、札所になっている大きな岩を上がる。
鎖はあるが、古賀志山に比べれば易しく、鎖を使わずに上り下りが可能。


山頂が見えてきた。


2018年以来、4年ぶりとなる帝釈山だ。
コロナ禍で山行回数がめっきり減る一方でデスクワークが増え、体力は落ちた。
週に2・3回、往復9キロのウォーキングや軽い登山はしてきたが女峰山に比べれば運動量は圧倒的に少なく、女峰山に登る体力を養ってきたとは言いがたい。
それも前々日まで宿泊客がいてウォーキングもままならない状況だったし、9日には外作業中にスズメバチにやられて安静が必須となった。
とはいえ、8月はかき入れ時で次の仕事が迫っているし、運動不足ながら機会は今日しかなかったのである。
急仕上げながらなんとかこうして念願の、というよりも齢74の誕生記念に帝釈山まで来ることができたのは喜びでしかない。
これ以上、望むことなどなにもない。
オメデトウ、と自分を褒めて女峰山に戻ることにした。


余談だが、歳を重ねるにつれ荷物の重さを負担に感じるようになり、ここ数年は軽量化を課題に取り組んでいる。
まずザック自体を1キロ未満の軽い製品にした。クッカーやストーブは持ち歩かず食事はパンと行動食で済ます。靴はアプローチシューズまたはトレランシューズにして脚への負担を軽くした。
記録を採るのに重いGPS専用機はやめてスマホにした(今日はGARMINの腕時計と併用)。トレッキングポールは2本で500グラムもあるため普段は持ち歩かないが、今日は万全を期して折りたたみ式を1本だけザックにしまった。
女峰山は涸れることのない水場があるので持参した水は1リットルだけ。
これで2キロは軽くなる。出発前に計ったら総重量は5.5キロだった。

余計なものは省いたが省けないないものがある。
当然ながら雨具上下(傘もなにかと便利)は必須だし救急セットや山中で一夜を明かすことを考えるとヘッドランプや保温シートは山行の難易度にかかわらず必要である。

以前はなんでもかんでもザックに入れて10キロ前後を背負っていたのに比べたらずいぶん進歩したものだ。
この上、腹の周りにたっぷり付いている脂肪を1~2キロ減らすことができればより快適に歩くことができるはずだが、これは荷物の軽量化よりも難易度が高い(笑)


帝釈山から眺めた女峰山。
三角定規を立てたような独特の鋭い山容はキスゲ平からのルートからでは望むことのできない、息を呑むような美しさだ。


ここへ戻ってくるのに往路よりも20分も長い、56分という時間を要した。
それほど厳しいルートではないにもかかわらずにだ。
帝釈山から鞍部に下りるわずかな距離で管理人の身体に異変が生じた。
左太ももの内側に激痛が走り、ギャッと悲鳴をあげた。
筋肉の痙攣、攣りといった症状である。
痛みが引く間もなく今度は右脚の太もも内側に激痛が走った。
痛みは静止していれば1分ほどで治まるが、歩き始めると再発する。
その場に留まって痛みが引くのを待つしかない。

これは2020年の秋頃から発生するようになった症状で、今年は5月以後に2度経験している。
なんの前ぶれなく痛みがやってくるので予測がつかない。
筋力不足なのかとも考えて下半身を強化する筋トレをするようにしているものの、いまだに発症することから察して、一概に筋力不足とはいえないようだ。

これまでの傾向から、おぼろげながらではあるが、筋肉の動きをコントロールする「なにか」が異常を来しているのかも知れないと思うようになった。
真冬、スノーシューで歩いている時にも発症したし古賀志山のような短い距離(6~8キロ)でも発症した。
今日は距離が長くまた、高温下で発汗量も多かったから発症の条件は揃っていたのかも知れない。
一方で下半身強化の目的でおこなっている10キロほどの平坦路でのウォーキングでは一度も経験していない。
なぜ、登山時に限って発症するのか?

登山では、登りにしても下りにしても、太ももの伸展と収縮が何千回と繰り返される。心拍数も上がる。
心拍数が上がれば発汗が起こり、発汗によって体内の電解質のバランスが崩れて筋肉の異常な収縮となり、それが激痛を引き起こす。
この情報はネットを探せば簡単に見つかる(詳しいことは後述)。

対処法だが、前に書いたように発汗が1時間当たり500ミリとすれば、それに応じた水分を補給することに尽きる。
問題はそのタイミングである。
管理人はあまり水を欲する体質ではないし、喉の渇きを感じる方ではない。
だからよほど高温下の登山でない限り、飲水回数、量ともに少ない。
したがって、喉が渇いたから水を飲もうと思った時点で、身体が必要とする給水のタイミングを逃しているわけである。

この日は高温ながら適度な風が吹き、暑さを吹き飛ばしてくれたからなおさらであった。
計算上、2リットルほどの発汗があったものの、補給した水分はここまでに500ミリ程度と少なく、完全な水分不足に陥っていたのである。

そのことを知らしめてくれたのが両脚太ももの激痛であった。
喉の渇きは感じなかったが、ペットボトルの水(ただしミネラル成分を含んだ)を思いっきり喉元へ流し込み、痛みが治まるのを待って女峰山山頂に戻ってきたのである。
その結果が往路の35分に対して帰りは56分という時間となった次第だ。

登山時は発汗量に応じた量(夏場であれば1時間に500ミリ以上)を、発汗の前、喉の渇きを感じる前からチビチビと飲むのが脱水症による脚の痙攣を防止する策として推奨されている。
が、これがなかなか難しい。
身体に異常はないし、唾液がちゃんと出る状態だと飲む気にならない。
トイレのことを気にするとなおさらである。
しかし今回の管理人の失敗例でわかる通り、ことが起きてからでは遅い。
たかが給水、されど給水なのである。奥が深い。


激痛が治まって最悪の事態は避けられたが、再発を恐れる余り、帰りは慎重にならざるを得なかった。


ハンゴンソウの群落。


こんな道を歩くのも女峰山ならではの楽しみといえる。


こういった道もまた女峰山ならではだ。


見よ、半円を描きながら赤薙山へと向かうこの長大な尾根を!


水場への急な斜面を下り終えたが、十分な量の水分を補給したことで太ももの痛みの再発はなかった。
おそらくこれで再発は防げたはずと安心し、気持ちに余裕が生まれたところで水場の草地に腰をかけ、昼メシとした。


一里ヶ曽根へのガレ場を登る。


アズマシャクナゲが茂る中をゆっくり進んで行く。


シラビソの林間に咲くハンゴンソウ。
この画像はハンゴンソウの葉の特徴をよく表している。


奥社跡まで戻り、ここで5分の休憩をとった。


女峰山はこれで23回目のはずだが、なんど来ても飽きることのない風情があって管理人はこの山が大好きである。


赤薙山山頂の手前で道は分岐する。
直進すると山頂へ行くが帰りは迂回路を辿ることにした。
山頂からの荒れた登山道を歩かずに済むので下りが楽になる。


急斜面を下りきると小丸山へ続く美しい稜線が現れる。
5年前の9月、今回と同じく帝釈山で折りかえして下山し、ゴール目前のこの場所まで来たところ、あまりの疲れで幻覚に襲われたことがあった。
あれは実に不思議な現象だった。
不思議な現象なのにもかかわらず、それを受け入れてしまう精神状態こそが異常なのだということに気づいたのは家に帰ってからだった。→こちら


飽きることのないいい眺めだ。
この稜線が尽きたところが小丸山で、そこから先がキスゲ平。


シモツケソウがまだ残っていた。


スノーシューツアーの定番コースとなっている丸山(1689m)。


小丸山まで降りるとあとは階段を降りて今日の山行も終わりとなる。


ツリガネニンジン


小丸山のゲートを抜けたところの展望台で最後の食事を済ませ、これから天空回廊を下るところ。


遠くからでも真っ赤な実が目立つオオカメノキ。
野鳥には人気がないのか、これだけ目立つ実をつけながら残ってしまうのがもったいない。


天空回廊を下る途中から大山方向を望む。
それにしてもこの時間になっても霧が出ないとは珍しい一日となったものだ。
雨の心配もないので700段まで降りたら花の観察とクールダウンがてら階段を外れて園地内を散策しよう。


終わりに近いヨツバヒヨドリ


これもほぼ終わりかけのオカトラノオ


ヤマハハコ


ゴマナ


タムラソウ


ツリガネニンジン


トリカブト(ヤマトリカブト?)


シラネセンキュウ


シモツケソウとオヤマリンドウ


ワレモコウ
キスゲ平園地の花は今月いっぱい楽しめそうだ。


あれ以来、太ももの激痛の再発はなく、無事に下山することができた。
レストハウス周辺はまだ多くの人で賑わっていた。



太ももの痙攣(攣り)と給水(ミネラル補給)についての考察
発汗によって身体から排出されるのは塩分だけではない。
調べてみると、1時間に500ミリリットルの発汗があったとして、その汗には次の成分が含まれていることがわかった。
ナトリウム :0.4315g=431.5mg(食塩相当量:1.1g)
カリウム  :0.111g=111mg
カルシウム :0.008g=8mg
マグネシウム:0.00065g=0.65mg

これらは総称、ミネラルといってミリグラムの単位で表すほど微量だが、身体からの排出が過剰だとさまざまな症状を引き起こすとされている。
登山でいえばナトリウムとカリウムが汗とともに多量に排出されると熱中症になることが知られている。
そのときは水道水などもっての外、塩分量が少ないスポーツドリンクもダメ、大塚製薬のオーエスワンに代表される熱中症予防の飲み物が推奨されている。
オーエスワンにはナトリウムとカリウムが500ミリボトル中にそれぞれ575mg(食塩相当量1.46グラム)、390mg含まれている。
ナトリウムでいえば1時間にかく汗の中に含まれている量に相当する。

管理人が登山時に愛飲しているのはYouTubeで知った「Ultra Mineral Tablet=以下Ultra Mineral」という、水に溶かして飲む粒状のサプリだが、ナトリウムとカリウムはオーエスワンよりも若干多く、ナトリウム650mg(食塩相当量1.65グラム)、カリウム410mgとなっている。
粒状なのでペットボトルに入れやすく、水さえ手に入れば簡単に作れるのと、なんといっても安い。500ミリボトル当たり120円だからオーエスワン(パウダー)の1/3のコストで同等の飲み物が作れる。

管理人はこの日、3時間10分かかって水場に着いたわけだが、本来ならばそれまでに1500ミリの給水をおこなう必要があった。
しかし、水場に着いた時点でペットボトルにはまだ200ミリほど残っていたから、発汗量にたいして給水量は絶対的に足りなかったわけである。
意識障害や目まい、吐き気、だるい、動けないといった熱中症特有の症状こそ出ていないが脱水状態に陥っていたのは間違いない。

管理人の給水量はもともと少ない。
汗はもちろんかくが、それに見合った給水をすることなく歩き通してしまう。
猛暑の今年、ミヤマウズラの観察に古賀志山へ4回、通った。
ウエアは上下とも雨にあたったようにびしょ濡れとなり、脚を伝って流れ落ちた汗で靴下まで濡らした。
だが、給水は500ミリのペットボトルが余るほどだった。

そこに落とし穴があった。
4度の古賀志山における所要時間は各回とも4~5時間ほど、距離は6~8キロだった。
猛暑の中、この時間、この距離を歩いてなんともなかったという経験が今回の女峰山に引き継がれた。

太ももに激痛が走ったのは帝釈山から下山を始めた直後、歩き始めて5時間半、距離にして8キロだった。
古賀志山よりは時間、距離ともに多かったが猛暑の中の古賀志山での経験から、給水は少なかった。喉の渇きがなかったからだ。

しかし、古賀志山でのミヤマウズラ観察と今日の峰山とでは疲労度がまったく違っている。花を探し当てるために歩く速度は極端に遅くまた、なんども立ち止まっては木々の奥を見るの繰り返しで、そのため消費エネルギーは小さく、筋疲労はなかったといっていい。
発汗は多かったものの今日の山行とは疲労度がまったく違っていたのであろう。

さて考察の冒頭で、ナトリウムとカリウムが汗とともに排出されると熱中症になることが知られていると書いた。
ところがさらに調べていくうちに驚くべきことがわかった。

発汗に伴って排出されるミネラルにはナトリウムとカリウムの他にマグネシウムとカルシウムがあり、マグネシウムとカルシウムの欠乏は筋肉の痙攣を引き起こす、とある。
筋肉を酷使する登山であればマグネシウムとカルシウムの欠乏による影響はなおさら出やすいのであろう。

厚労省によるとそれぞれの摂取基準量は成人男子の場合で1日当たり、マグネシウム350mg前後、カルシウムは倍の700~800mgすなわち1:2の割合となっている。
マグネシウムは筋肉の弛緩、カルシウムは筋肉の収縮に関係し、発汗が進むと体内のミネラルバランスが崩れ、体内に残ったカルシウムによって筋肉が異常収縮し、それが痙攣や攣りという症状を起こすらしい。

この考察の冒頭で、発汗によって排出されるマグネシウムは0.65mg、カルシウムは8mgと書いたが、この比率でいえばマグネシウム:カルシウム=1:12.3となり摂取基準量の割合である1:2とは大きく異なっている。
ということは、体内に残っているマグネシウムとカルシウムの割合も1:2ではなくなっていると推測できる。
これが「ミネラルバランスの崩れ」なのではないかと管理人は思う。

そのように思うようになったのは帰宅して情報を探し当ててからだ。
11:26の画像の説明文で、ミネラル成分を含んだ水を喉元へ流し込んだと書いた。
太ももの激痛の原因として脱水症を疑ったからだった。
水はナトリウム650mg、カリウム410mgを含んだUltra Mineralを溶かしたものだった。
脱水症を治すには塩分が必要であり、そのための給水だった。

11:26の説明文には書かなかったがこのとき、実際にはUltra Mineralを溶かした水の他に、「2RUN(=ツゥラン、梅丹本舗)」というタブレットを同時に口にしている。
脚の痙り対策に有効との商品説明を頼りに常時携行しているサプリだが、ナトリウムとカリウムの含有量が少ないため本当に効果があるのかと疑問視し、これまであまり出番がないまま安心材料としてザックの中で眠っていたものだ。

2RUNのナトリウムとカリウムの含有量はUltra Mineralの650mg、410mgに比べて90.8mg、33.1mgと少なく、これで脱水症が原因の脚の痙りに効果があるのかと半信半疑に思って使っていなかったが、藁にもすがる気持ちで給水の際に飲んでおいたのだ。

2RUNはナトリウムとカリウムこそUltra Mineralに比べて少ないが、欠乏すると痙攣や攣りを起こすというマグネシウムの含有量がUltra Mineralの15mgにたいして8倍の124mg、カルシウムはUltra Mineral Tabletの含有ゼロにたいして250mgも含まれている。
この割合(量ではなく)は厚労省の摂取基準である比率1:2に対応している。
太ももの激痛が治まったのはまさに2RUNの効果だった、とこの考察を書いている今、わかったのである。

これまで長い間、マグネシウムやカルシウムの欠乏が痙攣や攣りを起こすということなど知らずに登山を続けていたが、ネットで情報を探している今、両者の重要性を知り、2RUNの有効性について身をもって理解したというわけだ。
これまで使うことなくザックに入れておいた2RUNだが、予防としてではなく、太ももに激痛(痙攣、攣り)が発生したその場で役に立つという、貴重な体験を管理人はしたことになる。

さて今回は、Ultra Mineralを溶かした水をがぶ飲みすると同時に2RUNも飲んだため、どちらの効果で太ももの激痛が治ったのか、正直言ってハッキリわかっていない。
ただし、給水量は少なかったとはいえナトリウムとカリウムを多く含むUltra Mineralを飲んでいて激痛が発生したところへマグネシウムとカルシウムの含有量の多い2RUNを飲んだことで痛みが治まったことから考えると、専門家の解説にあるように、発汗によるマグネシウムとカルシウムの不足、言い換えれば体内のミネラルバランスの崩れが激痛の原因だったに違いないという確信に至った。(2022/08/19)。

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