山王峠越え、ハードツアー。とうとうやってきた管理人泣かせの超ハードなツアー。

2015年2月09日(月)
湯元~刈込湖~山王峠~光徳(女性2名)

遠く静岡県からお越しの仲良し親子Aさんの強い希望で、管理人が主催するツアーの中でもっともハードなコースをご案内した。
なにがハードかというとコースを2/3行ったところに斜度35度、標高差にして110メートルの峠越えがあり、なまじっかな脚力では挫折すること間違いないのだ。
もしも挫折しようものなら元の道を引き返すには距離が長すぎて完全にバテる。したがってこの峠は是が非でもクリアしなくてはならず、それがガイドにとって強いプレッシャーになる。
これまで、管理人の目から見て健脚と思った人でさえ、この峠越えに根を上げる始末だったから管理人のツアーに初めて参加するAさんにはハードルが高いのではないかと思った。
しかし、時間はかかったものの強い意志と粘り強さで無事に峠に到達できたのはやはり、これまでの多くの山行経験がもたらせたものであろう。
それにしても深い樹林帯にもかかわらず、木々の間を縫って襲ってくる強風に手こずった。
また、ゴールとなる光徳温泉から、車を置いた湯元までバスで戻らなくてはならないのに、その時間が迫っているのと強風と寒さでここでの昼食はあきらめ、行動食の立ち食いで済ます。
山王峠から光徳温泉へはスノーシューで駆け足だ(結局、5分遅れで予定していたバスには間に合わなかったが)。

9:20湯元源泉~10:30小峠~11:10刈込湖~12:55涸沼~15:00山王峠~15:51光徳温泉


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刈込湖への道は長いが往復する場合なら夏道と冬道を使い分けることができる。
今日のツアーは刈込湖を通り抜けて山王峠を経由して光徳温泉に下りるので、時間を短縮する意味で、湯元から小峠、小峠から刈込湖ともに冬道を歩くことにした。
ここは金精道路から下った幻の湖、蓼ノ湖。無雪期は道がないので来ることはできない。

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蓼ノ湖から小峠は距離約600メートル、標高差120メートルの勾配が続くのでここで足を使い切らないようにゆっくり登るのがコツ。
にしても小峠直下の急斜面は厳しい。

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小峠に到着。
この道標の支柱は地面から230センチの高さがあるが、露出しているのは60センチほど。
これからもっと埋まるはずだ。

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小峠から刈込湖への通過点であるドビン沢を歩くお嬢さん。実に気持ちのいい林間だ。
雪は深かったがわかんのトレースがあったので遠慮なくいただいた。

IMG_9089最後は雪に覆われた岩場を下る。

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刈込湖に到着し氷上に立ったおふたり。いつもならここで折り返すところだが今日はさらに先に行く。

IMG_9093雪をどかして氷の状態を確認する。氷上の雪は30センチほどなので氷1平方メートルあたり300キロの重量がかかっている計算だ。氷は3人の体重を支えるに十分、厚いと判断した。
なぜそのような計算をするかというと、、、

IMG_9096湖に沿った夏道を歩くよりも氷上を歩く方が断然早いからだ。
それにしてもすごい風だな。氷上の雪が舞っている。

刈込湖とその先の切込湖は細い自然の水路によって結ばれている。そこで一度、岸に上がってから切込湖に乗るはずであった。
管理人の後にお嬢さん、お母さんと続きまず管理人が岸に上がったが、振り返るとお嬢さんの下半身が水に浸かっている。岸辺の氷は歩いてきた部分に比べて薄く、3人の体重を支えきれず二番手のお嬢さんがいたところが割れたのだ。
慌てて引き上げたときには靴の中に水が侵入し、靴下を濡らしてしまうといった致命的な結果を引き起こしてしまった。幸い、靴の中の水は靴下が吸収してくれたので、管理人の靴下に替えることでツアーを続行できたのだがまさしく薄氷を踏む結果となり、ガイドとしてこのときばかりは参加者の安全管理のまずさを反省するばかりであった。
Aさん親子にはお詫びのしようもないほどの危険な目に遭わせてしまったが、これまで多くの山行経験で場数を踏んでいるからであろう、寛大な気持ちを見せてくれたのがとてもありがたかった。

IMG_9097気を取り直して先に進むことにして峠越えの手前、涸沼を見下ろす斜面に着いた。

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涸沼は昔であればお花畑であったそうだが、いまでは鹿に食い尽くされて高山植物は絶滅状態とのことだ。
ただし、立ち入りができないエリアなので実態はわからない。
時間も迫ってきているので本来ならここで昼食にするとことだが風は相変わらず強い。
峠に出て、風が遮られる場所を探そうということになり、空腹を我慢して先へ進むことにした。

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涸沼から山王峠へは無雪期なら階段を登るが、ここで想像していただきたい。
登山道に階段が設けられているというのはその場所が急傾斜になっているということだ。
ここでいうなら35度の傾斜を標高で110メートルも登らなくてはならず、本来ならアイゼンとピッケルを使って登るのが正しい。
それをスノーシューでというのは管理人でも厳しいのだから、並の脚力ではとうてい無理だ。
さて、Aさんである。
お嬢さんはさすがに若いので脚力がある。小柄で華奢なお母さんが心配であった。管理人が先に進み、上から眺めると二歩進んでは一歩後退を繰り返しながらも着実に登ってくる。樹林帯なので立木をうまく利用している。
管理人のツアーの最短時間より30分は遅かったがなんとか峠に立てたときは管理人でさえ目頭が熱くなった。頑張った。本当に頑張った。

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林道を少し歩くと山王峠手前の広場に出る。風がなければここで昼食なのだが、、、、
なお、林道の山王峠と登山道の山王峠は別の場所にあって、太郎山へ行くには広場にあるこの道標にしたがって進む。

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15:35
山王峠からは新雪の上を駆けるようにして光徳温泉に下った。光徳温泉から車を置いた湯元までバスで戻らなくてはならないがバス停に着いたのが15時51分と、わずか5分遅くなったために次のバスまで1時間待つ結果となった。
しかしこの寒い中、1時間も待つのは辛いので話し合いの結果、歩くことにした。
Aさんは三本松にある茶店に、管理人は湯元までだ。三本松まで3.3キロ、湯元まで5.5キロもある。
湯元や中禅寺湖に知人がいるので助けを求められなくはないが、山をやっているAさんも管理人もそれをやっては山行記録に汚点を残すことになる。バスに乗り遅れたからといって遭難死するわけではない。
湯元温泉から光徳温泉まで10.5キロだからAさんは計13.8キロも歩いた。これは無雪期の20キロ以上に相当する。
いやあ、辛かったけれど思い出に残るツアーとなりました。ガイド役の管理人は反省しなくてはならないが。
ちなみに写真は予定のバスに間に合わないと判断し、それではとノンビリしているところ。

map当ツアーの軌跡。
なお、ゴールの光徳温泉から先は軌跡から除外してある。