2020年1月30日(木) 快晴 適度な気候
たとえ身体が疲れ果てても実りある山行であったなら、心の充実が得られるというものだが昨日は違った。
南岸低気圧がもたらせた水分をたっぷり含んだ雪は足にまとわりつき、まるで泥濘の中を歩いているかのような感覚に襲われた。
足が重いのは当然だとしても気分まで重く、この泥濘から早く抜け出して身も心も解放されたい、そんな気持ちでいっぱいだった。
雪はどこまで歩いてもその質に変わることがなく、それでもようやく小峠までたどり着いたときにはこれ以上先に進む気持ちになれず、最初の目的地とした刈込湖などもうどうでもいいという思いに変わった。
刈込湖まであと30分もあれば着くのにだ。
客観的な判断から自分の意志で撤退を決めるなどという潔さとはほど遠く、戦意喪失という言葉の方が相応しい。
帰りを急ぐ必要などなかったが買ってきたパンを飲み込むようにして食べ、小峠を立ち去った。
雪が締まって落ち着くまであと数日はかかるだろう。
それまで刈込湖コースはツアーに組み込むことはしないでおこう。
開けて今日30日は1日に予定しているツアーを前に場所を替えて霧降高原を歩いてみることにした。
昨日、ライブカメラに映った駐車場への進入路の画像は一面の雪だった。
ところが時間をおいてもう一度見ると雪は跡形もなく消えていた。
レストハウスの職員による除雪のおかげであることは間違いないが、ここもやはり南岸低気圧による溶けやすい水雪なのかもしれない。
ところが実際に来てみると、進入路の雪は確かになくなっていたが、これから歩く斜面には十二分にあるように見える。
天空回廊に積もった雪は凍って硬くなっているからこれはやはり昨日降った水雪によるものだろう。
斜面に近づくと、雪はクラスト状には至らないものの固く締まっているように見えた。
まず初めにスノーシューを着けて歩いてみることにした。
昨日の刈込湖コースは静止状態でも15センチくらい潜ったが、ここは雪が管理人をしっかり支えて潜らない。
これなら快適に歩けるかもしれない。
ここ霧降高原キスゲ平は標高を上げなくても好展望が得られる。
日の出も見られるし下山が日没になったときなどは夜景もきれいだ。
今日は関東平野の先に80キロ離れた筑波山がよく見える。
ほんの少し標高を上げると高原山(鶏頂山、釈迦ヶ岳、中岳、西平岳の総称)が見える。
日光連山に劣らず美しい山容だ。
緩やかな初級者コース(ここは元スキー場だった)を快適に歩いて行く。
北に管理人が主催するスノーシューツアーの定番、丸山がどっしり構えている。
ここから傾斜がぐっときつくなる。
この元スキー場はゲレンデこそ1枚しかないが、上級者コースも備えていた。
ここまでスノーシューで潜ることなく快適に歩いて来た。
傾斜が厳しくなるので足の負担を少しでも軽くするために、ここでスノーシューを脱いでチェンスパイクに替えることにした。
ゲレンデ最上部、天空回廊の終段まで来た。
スノーシューを着けなくても潜ることなく歩けたので体力の消耗はなかった。
ゲレンデ最上部から少し上ったところが小丸山。
道はここで赤薙山方面(直進)と丸山方面に分岐する。
ツアーは丸山が主体であり今日はそのコンディション確認のために訪れたのだが、この光景を目にしては行かなければ悔いを残しそうだ。足は自然と赤薙山へと向かった。
立ち止まっては雄大な景色に魅入りしながら、1時間かかって焼石金剛に到着。
ここからの眺めもまた素晴らしいのである。
赤薙山がぐっと近づいた。
山がごま塩頭のように見えるがあれは針葉樹のコメツガの上に雪が付着しているからに違いない。
大きな尾根をゆっくりと山頂に向かって歩いて行く。
踏跡はワカンだが、いつのものだろう?
深さは10~15センチあるから一昨日の積雪量に相当する。
昨日、歩いた人がいるのかもしれないな。
赤薙山は冬でも安全に登れる2千メートル峰だが、1箇所だけ気をつけなくてはならない場所がある。
南に向かって30度以上の勾配がついているこの斜面である。
広大な笹の斜面だが雪が積もるとスキー競技のジャンプ台の傾斜に変身する。
試しに尾根から下を覗いてご覧なさい。足がすくんでしまうから。
恐怖のヤセ尾根を過ぎるといよいよ赤薙山直下の急斜面に突入する。
焼石金剛から見上げたあのごま塩頭がこの樹林帯である。
山頂までの距離は短いがここもまた楽しめる。
う~ん、いいですな~、この雰囲気!!
コメツガの枝に付着した雪は凍っていてそれで全体が白く見えていたわけだ。
苦節3時間弱、赤薙山山頂に到着。
雪はそれなりの量があった。
鳥居の奥から女峰山を拝む。
行ってみたいが無事に帰れる保証はない。
最近定着している管理人のランチ。
炭水化物たっぷりで460kcalある。
山頂で十分な休憩をとった。
さあ、これからどうしようかな?
昨日のストレスを解消したいが、、、
焼石金剛まで下ると足は自然とあの山に向かっていった。
スノーシューツアーのコースに組み込んでいる以上、視察は必須である。
丸山山頂でも十分な休憩を取った後、下山を始めた。
締まった雪の上にキツネの肉球。
天空回廊終段の小丸山まで、それほど長い時間はかからなかった。
ここでチェーンスパイクからスノーシューに履き替える。
ここからの下りはゲレンデを使わず林間を歩くためだ。
無事に下山。
5時間強だったが久しぶりにずいぶん歩いたという気持ちになった。
疲れはしたがそれよりも気持ちはことのほか軽かった。