古賀志山で見る花たち・スミレを極めたい(2022/04/16)

2022年4月16日(土) 晴れ・風やや冷たい

きょう観た花(順不同)
タチツボスミレ、マキノスミレ、マルバアオダモ、オトメスミレかシロバナタチツボスミレのどちらか、ツボスミレ、フモトスミレ、マルバスミレ、チゴユリ、オトコヨウゾメ、アオダモ、ヤマツツジ、トウゴクミツバツツジ

本日の古賀志山探訪はタイトル通りずばり、スミレを探しに行くのが狙いである。
古賀志山にスミレは12・3種類あることが古賀志山に頻繁に通っている人が書いた本でわかる。
しかし、スミレの専門書すなわち図鑑ではないためスミレの名前を特定するのに必須となる特徴にまでは言及されてなく、スミレの特定に役に立つとはいえない。

そこで現地で観て、写真を何枚も撮り、自宅に帰って図鑑と照らし合わせるという方法で名前を調べているが、ただ漠然と観て写真を撮っているだけなのでよくわからないというのが実状である。

管理人が古賀志山をどこの山よりも多く歩くようになって今年で8年目になる。
当初は100本以上もあるとされるバリエーションルートすべてを歩き尽くすことを目標としていたがそれもほぼ達成したので、次なる目標として古賀志山に生育している植物を覚えることに視点を移した。
中でもどれを見ても同じに見えてしまうスミレが対象である。

スミレの名前を当てることの難しさは誰もが認めるところであり、それはスミレだけを掲載した専門書があることでわかる。
日本には品種でいえば220種類ものスミレがあるというからすごいスミレ大国である。
だが植物全般に言えるように地域によって生育しているスミレが決まっていて、古賀志山でいえば12・3種類である。
その数だけ覚えれば困ることはない。

ではどうやって覚えればいいのか、それが問題である。
先日、「日本のスミレ類早見表」というチェックリストを入手した。
花の色や大きさ、葉や托葉の形、茎の有無など6項目を調べると9つの類(仲間)のどれかに行き着くので、それを元に類別の図鑑で名前を特定するという方法があることがわかった。
手間のかかる作業だが確実に名前の特定にたどり着く。

さっそく試してみたのがきょうのブログである。
きょうは管理人でも知っているスミレ5種類を上の方法で観察したが、なるほどこれはいいというのが実感だった。

これは古賀志山全域に生育しているタチツボスミレだが、細かくチェックするには場所が悪いため写真を撮るだけで立ち去った。


チゴユリが咲き始めた。
チゴユリは長倉山や鞍掛山エリアに多い。


ヤマツツジも咲き始めた。


花と葉っぱの形から察してオトコヨウゾメと思うが地面すれすれに延びたこの枝に惑わされる。
樹高3メートルくらいになるはずなのにこの枝の低さはなんなのだろう。別の植物だろうか?


以前、血眼になって探し歩いたツルリンドウ。
実は古賀志山全域に生育していることを知った。


ヤブレガサ


新緑の明るい緑と朱色のヤマツツジの取り合わせで華やかになった林内。


長倉山に到着。
ここまでの間に見たスミレはタチツボスミレだけだった。


長倉山山頂から鞍掛林道に向かって2本の尾根がほぼ並行して延びている。
どちらも緩い下りだが鞍掛山に登るには右の尾根を下る方が少しだけ近い。
きょうは鞍掛山の予定がないので西側の斜面を伐採して日差しが良く当たる左の尾根を下ってみることにした。
いかにもスミレに好まれるような環境ではないか。


まず始めに見つかったのがこれ。
名前はまだわからない。
まず冒頭で紹介した「日本のスミレ類早見表」を使って各部を細かく観察し、それを元に「類=仲間」を特定する。


花は小さく、1円玉くらいの大きさ。
雌しべ先端の「柱頭」をルーペを通して見るとカマキリの頭のような形をしている。


葉は細長く(長披針形)、垂直に近い角度で立つ。
茎はなく、花柄や葉柄は地上から出ている。

花の色、大きさ、葉の形、茎の有無、生え方を「日本のスミレ類早見表」にあてはめると、ミヤマスミレ類に分類された。
ここまでわかったら現場での作業を終えて次は帰宅後、図鑑を開いてミヤマスミレ類の中から該当する種類を調べる。

使った図鑑はヤマケイの「日本のスミレ(Kindle版)」と文一総合出版の「スミレハンドブック」の2冊。
花と葉の特徴から、ミヤマスミレ類には「スミレ」と「マキノスミレ」が該当する。
両者、花の違いは管理人にはわからない。
大きな違いは花の位置である。
花が葉よりも低い位置ならマキノスミレと図鑑にある。
あらためて現場で撮った数枚の写真を見ると花と葉の高さが同じか、花の方が低いことがわかった。
実は早見表にその項目がなかったので現場では確認しなかったが、花と葉の位置関係も名前を特定する要素のひとつであることがわかる(スミレとマキノスミレだけにいえることかもわからないが)。

答はマキノスミレで間違いないであろう。


次はマキノスミレの近くにあった白い小さなスミレを同じ方法で類を絞ってみた。


花は小さく1円玉大。
唇弁の先は尖り濃い紫条が入っている。
また、唇弁が上弁に比べて小さいという特徴がある。
柱頭をルーペで見るとカマキリの頭をしている。


花柄は紫色ですくっと延びていて茎はない。


葉は卵形で濃い緑色をしていてやや厚い。

以上、・花の色と大きさ ・葉の形 ・托葉の形 ・茎の有無 ・花と葉の生え方 ・柱頭の形からこのスミレはミヤマスミレ類に属することがわかった。
あとは帰宅して図鑑で名前を特定することにした。

答はフモトスミレ


あぁ、疲れた(笑)
わずか2つのスミレを観察するのに30分を費やした。
疲れの原因はその間、ずっと座り続けたためである。
立ち上がって前方に目をやると全体が薄い緑色に染まった山が見えた。
鞍掛山である。
鞍掛山の登山道にもスミレが多いがあの斜面を登る気力はもう失せている。
きょうはこの尾根の下の林道でスミレを見つけよう。


トウゴクミツバツツジ


これはひときわ色の濃いヤマツツジ。


遠くからでも真っ白な綿帽子が目立つマルバアオダモ。
同じモクセイ科にアオダモがあるが、葉っぱの縁の鋸歯と呼ばれるギザギザの有無の違いがある。
アオダモにはギザギザがあり、マルバアオダモはギザギザがない。
葉っぱの形が丸いから “マルバアオダモ” というわけではない。


山菜が好きな人にとってなくてはならないコシアブラ。
袋一杯収穫した人を見かけた。


ドライフラワーと化したコウヤボウキ。


チゴユリ
短い尾根ながら植物は多彩で楽しめる。


林道に降り左右に目を配っていると白いスミレが目にとまったのでこれも同じ方法で類別してみることにした。
花は大きく500円玉大で、雌しべの後の「距」は長く、花と同じく白い。
後者は分類には関係ないが名前を特定するのに役に立つ。


葉は大きく心形で葉脈が紫色(これも分類に無関係)をしている。


有茎で托葉に切れ込みがある。
以上の観察からタチツボスミレ類であることがわかったので帰宅して名前を調べることにした。

図鑑で調べるとタチツボスミレ類で花が白いのは2種類見つかった。
しかしここで見たスミレはその2種類のどちらの特徴も合わせ持っていて、判別が困難だった。

具体的には、
オトメスミレ:5枚の花弁は白で紫条はない。また距と葉脈が紫色。
シロバナタチツボスミレ:唇弁に紫条が入る。
管理人が調べたスミレはシロバナタチツボスミレの特徴である唇弁の紫条とオトメスミレの特徴である紫色の葉脈とを合わせ持っている。

結論
オトメスミレかシロバナタチツボスミレのどちらか、という曖昧な答えになってしまった。
まっでも、ここまで絞れたのだから良しとしようではないか。


次は小さいスミレだ。
早見表の分類項目には花の大きさが「ワイシャツのボタン程度」というのがあり、まさにその大きさに該当する。
雌しべの先端「柱頭」をルーペで見るとこれまで見てきたカマキリの頭ではなく、先端に膨らみがある。
唇弁には濃い紫条が入り、上弁は反っくり返っている。
また、側弁の基部は有毛。


托葉は大きく切れ込んでいる。


葉は心形で有茎。
6つの項目を調べたので早見表を使って分類するとニョイスミレ類に属することがわかった。

帰宅して図鑑を調べるとニョイスミレ(別名ツボスミレ)が答だった。

山ではありふれたスミレで、小さい花と濃い紫条からツボスミレであることがすぐにわかるが、こうして早見表と図鑑を使って調べるとこれまで丸暗記していたのは良くないことだと反省した。
スミレは細部にわたって観察して始めて名前を特定すべき、奥の深い花なのである。


またまた白いスミレの登場である。
大きさは500円玉大で唇弁に薄い紫条があり、柱頭はカマキリの頭。
側弁の基部に毛が生えている。


葉も大きく、心形というより円形に近い。
また、肉眼でも毛がたくさん生えていることがわかる。


葉だけでなく花柄にも毛が密生。


葉柄にも毛が密生し地上から出ている。
托葉が歯の根元に付いていて茎はない。

以上の特徴を早見表にあてはめるとミヤマスミレ類に属していることがわかる。
あとは帰宅して図鑑で調べれば良い。
「全体に密生した毛」が名前を特定するキーワードになるであろう。

答はマルバスミレ


2時間かけて5種類のスミレの分類が終わったところで長倉山まで戻って昼食とした。
オトメスミレかシロバナタチツボスミレかの特定は知識不足でできなかったのは残念だったが、このへんにスミレの難しさがあるのだろう。
だが、これまでの丸暗記方式に比べてより科学的な方法で取り組んだきょうのスミレ探索は一応の成果があったと思う。
古賀志山に生育するスミレの残り7・8種類も同じ方法で名前を調べることにしよう。


観察に使った用具
・日本のスミレ類早見表(使い方は冒頭のリンク先を参照)
・柱頭の形状や毛の有無を見るための高倍率ルーペ(20倍)
・花の大きさを見るための500円玉(1円玉もあった方がいい)
・筆記具(左のサインペンの方が書きやすいがキャップを取るのが面倒)
・これらを入れて首からぶら下げて持ち運ぶストラップを付けたナイロン袋


オマケ
山に行く時間がないときなど近くを流れる大谷川河川敷を歩いたり走ったりして脚力の衰えを防ぐようにしている。
そこで見つけた大柄で紫条が目立つこのスミレ、管理人が今まで見たことのないスミレだった。
気になったので思い切って図鑑(ヤマケイ「日本のスミレ」)を総当たりしたところ、外来種の項に「ヴィオラ・ソロリア」というのが見つかった。
この画像のと見比べると実によく似ている。
そこで次にググってみるとヴィオラ・ソロリア プリセアナという園芸品種のスミレに行き当たった。まさにそれだった。
野鳥や獣の糞に種が混じっていたのかそれとも近所の人が鉢植えを捨てに来たのかわからないが、人里に近い公園内だからこその植物である。