2024年12月21日(土) 晴
太平山山域の廃道歩きも残り1本になった。
ネットショップで言えば残僅少といったところ。
昨年3月に初めて太平山に登ってからというもの、それから2年近く、太平山の面白さに魅了されて足繁く通っている。
近場の低山といえばそれまで古賀志山がメインだったが、山域に100本以上あるとされるバリエーションルートを歩き尽くしてからは足が遠のき、いまはもっぱら2時間かけて太平山を目指すようになった。
心拍数を限界まで上げて歩く登山よりも、傾斜の緩やかな低山を、心拍数を上げずにゆっくり歩くことの快感に目覚めたとでもいうべきか、ピークハントへの意欲が薄れてきたのは加齢に伴う自然な現象であろう。
太平山の魅力は6キロにおよぶ長くそして緩やかなアップダウンの縦走が楽しめることに尽きると管理人は考えている。
その前後を含めると15キロという長い距離を周回でき、ピークの都度広がる展望と相まって、十分な満足感と達成感が得られるのが魅力である。
しかも、心拍数を上げることなくだ。
さて、その太平山(太平山山域)だが、地理院地図を見るとわかる通り、楕円形を左にやや傾けた形の周回ルートの上辺と下辺とを結ぶショートカットルートが数本ある。
それらをすべて歩こうと思い立ち、昨年4月に挑んだことがある。→そのときのブログ
大変な苦労を伴って歩き、疲れはしたが収穫もあった。
「謎」という収穫である。
管理人、未体験の山を歩くのに他者の山行記録を見ることはしない。
参考にするのはあくまでも地理院地図である。
近年のネットの時代にあってヤマレコやヤマップといった他者の山行記録を載せたサイトの存在は知っているし、管理人もその会員となって機能の一部は活用(計画書作成が簡単、駐車場把握に便利他)している。
ヤマレコにしてもヤマップにしても、サイトに掲載されている言語情報と画像だけだと、これから歩こうとしている山の地形が浮かんでこない。
登山を前に、これから歩こうとする山の情報を得るには、地理院地図(地形図)が訴えてくる無言の情報の方が役に立つ。
傾斜の緩急、岩や崖の有無、目印となるピークや分岐など、山の地形のイメージが浮かんできて、実践への心構えができるようになるのが地理院地図というわけだ。
話が逸れた。
太平山山域の「謎」のこと。
周回ルートの上辺と下辺とを結ぶ登山道のことである。
縦走歩きの途中で疲れたらその登山道で下山すれば林道に出ることができ、駐車場に近くなる。
いってみればショートカットルートである。
ショートカット可能な登山道が地図に7本ある。
そのうちの6本を昨年4月に歩いたので残り1本となった。
それを歩くのが本日の目的である。
「謎」のひとつは林道と桜峠を結ぶ並行した2本の登山道である。
昨年4月に歩いた。
片方を登りで、片方を下りで歩いたのだが、両者とも半分はまともな道だが半分は酷い藪の中を歩くことになった。
地理院地図に描かれている登山道を歩いたにもかかわらずだ。
どこかにまともな道同士を結ぶ接点があるはず、それが謎として残った。そして、今年になって謎の解明に成功した。→謎を解明したブログ
もうひとつの「謎」は清水寺(せいすいじ)の前を通る林道と馬不入山(うまいらずさん)を結ぶ登山道だ。
スマホに映る現在地から、ここが地理院地図にある登山口だと確信して登ったはずだったが、それは地理院地図に描かれていないルートであることが、帰宅後にGPSのログを再現して初めてわかったのである。
地図にある登山口から入ったにもかかわらず、なぜ意図していなかったルートを歩くことになったのか、それが謎だった。
気持ちが落ち着かない、背中がゾワゾワしてならない。
年末を迎え、師でなくても忙しく走り回る時節だが、その「謎」の解明をせずには正月を安心して迎えることなどできそうにない。
地理院地図に描かれている登山道とは一体、どのようなものなのか、探しても見つからない登山口はどこにあるのか、それを確かめたい。
メモ(記録にはGeographicaを使用した)
・歩行距離:7.0キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:3時間35分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:824メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)
本日、お目当てのルートは林道西山田線・立花から馬不入山への2本の直登ルートのうち、立花尾根を歩くことである。
尾根ルートに並行する立花沢ルート(青い線)は昨年4月そして今月6日の2回、いずれも登りで歩いたことがある。ただし、地理院地図に道は描かれていない。
あと少しで青入山と馬不入山を結ぶ稜線に出るというところで馬不入山から林道に向かって派生している尾根とぶつかる。そこに立っている立花沢ルートの標識の支柱に、「立花尾根コース」と手書きされているのを見つけた。
間の抜けたことに、そこで初めて違和感が解消された。
ここまで管理人は地図に描かれている登山道を歩いてきたつもりだったが、実際には道として地図に描かれていない「沢」を歩いてきたのである。
いま振り返ると、始めからおかしかった。
地図にある尾根道を歩いているにもかかわらず斜面をトラバースしていることの違和感、歩けどもなかなか尾根に乗らない違和感である。それらの違和感がありながらスマホに映る現在地を確認しなかったのは管理人の不覚であったとしか言いようがない。
いつかは地図に描かれている登山道を歩いてみよう、そんな反省がきょうの山行につながったのである。
林道西山田線の清水寺を起点に歩くことにした。
清水寺から青入山(あおいりやま)への直登ルートを歩き、青入山から桜峠、桜峠から馬不入山まで縦走し、馬不入山から立花尾根ルートで林道に下る予定だ。
推定距離7キロと短い。
距離を延ばしたければ太平神社の階段下あるいは大中寺から歩けばいいのだが、今日は慎重さを求められるルートを歩くため、あえて距離を短くした次第だ。
清水寺の境内に入ると晃石山へのルートと青入山へのルートの分岐があるので、まずは展望台へ向かう。
ここに青入山を示す表示がないのは苦戦を強いられるルートゆえに、あえてそうしていないのであろう。
昨年4月に青入山からの下山でこのルートを歩いた際にそう感じた。
展望台は歩き始めて数分で着く。
ここまで来るにはなんら問題はない。
雲の上に浮かぶ筑波山。
展望台の標高はわずか140メートルにすぎない。
なのに実に素晴らしい展望が望める贅沢が味わえる。
ここに限らず、太平山山域は展望のいい場所がいくつもある。
太平山神社、晃石山、青入山、馬不入山、縦走中の稜線からの眺め、これらの場所を巡ると東西南北の景色が堪能できるのが太平山山域の魅力であろう。
地図でおおよその傾斜はわかるが、30度はあるはず。
地図に道として描かれてはいるが歩く人などいないのであろう、枯れ葉が厚く堆積し、靴が滑って足に力が入らない。
昨年4月、青入山からの下山でこのルートを歩いた。
その際、斜面の上に積もった枯れ葉で滑って転倒し、パンツの膝部分からくるぶしにかけて縫い付けてあるジッパーのスライダーで左脚にやや深い傷を負ったことがある。
重心を下げて慎重に歩いた結果がこの始末だった。
標高389.5メートルの青入山山頂。
晃石山から桜峠を経て馬不入山へ向かう縦走路の1/3の地点となる。
立派なピークにもかかわらず地図に山名も標高も描かれていないのがなぜか不思議。
正面に青入山と書かれた太い柱が見えるが、おそらく柱を設置した工事業者のミスであろう、向きが180度違っている。
青入山という文字が見えるのは管理人が登ってきた傾斜30度、落ち葉が堆積して歩く人が少ないマイナールートからだけ。
多くの人が利用する晃石山と馬不入山を結ぶ縦走路で青入山に達し、この先のテーブルあるいは展望地、その先の桜峠へ行くには柱の向こう側を通る。
そして人が通る側にはなにも書かれていない。そんな位置に柱が設置されている。
それだけだと柱の向きが180度違っていることの根拠にならないかもしれないので、確たる証拠を示そう。
晃石山からここに来ると、柱に大きく縦書きされた「晃石山方面」という文字が目に入り、” えっ、どうして? おいら、いま晃石山から来たんだけど ” となる。
たしかに、来た側に戻れば晃石山なんだが、晃石山から来た場合はこの先にある「桜峠方面」となっていてほしい。
そうすれば、そうかこの先は桜峠なんだなとわかる。
桜峠から来ても同じで「桜峠方面」ではなく、「晃石山方面」となっていてほしい。
柱の向きを180度変えることで円満解決となるのだがね。
欲を言えば、縦書きであれば上を向いた矢印があると、よりわかりやすいと思う。
とはいえ、セメントで固定されている柱なので今さら直すことなどできないと思うし、上に書いたカラクリがわかれば気にはならないかも、だ。
今日もいい眺めと出合えた。
山頂は西に向かって開けており、ほどよい距離にきれいな山並みが見える。
管理人、栃木県南の山は太平山山域と三毳山山域しか知らないので帰宅して調べると、画像の山並みは諏訪岳(右端)から唐沢山(左端)に至る稜線であることがわかった。
いつか歩いてみたいものだ。
休憩もそこそこに馬不入山へ向かった。
次の通過点は桜峠だが、長く急な下り階段が待ち構えている。
その前に、冬枯れで葉の落ちた見通しのいい平坦路を味わいながらゆっくり歩いた。
こういう感じ、日光では味わえないだけに好きなんだよな。
桜峠への長い階段が始まった。
長い階段を下っているとき、足下しか見ていないためか階段があたかも平面に見え、足がもつれておっとっとという経験をすることがある。
そんなときは一旦立ち止まって目を前方に向け、ここは階段なんだ、と頭に思い込ませるようにしている。
これが桜峠。
四差路になっていて直進するとこれから目指す馬不入山へ、左は清水寺への林道へ、右は集落のある林道を経て大明神山に行く。
昔であればここは東の大平町と西の岩舟町を結ぶ交易のための道として利用されていたのではないだろうか、そんな雰囲気が漂っている。
大きな荷物を背負って行き来する老若男女の姿が浮かんでくる。
桜峠から馬不入山への縦走路もまた緩やかなアップダウンの繰り返しで、実に快適に歩ける。
馬不入山が目の前というところに林道に降りる分岐(親指が指す方)がある。
過去2回、馬不入山への登りに使ったことのある登山道である。
2回とも「立花沢ルート」を使ったのだが、並行して「立花尾根ルート」があることも知った。
今日はその「立花尾根ルート」を使って林道に降りる計画でいる。
馬不入山への登りではなく下りに使う理由は前回のブログに詳しく説明している。
早い話が登山口のない登山道なのである。
「立花尾根ルート」で下山する前に、分岐とは目と鼻の先にある馬不入山の山頂へ行ってランチタイムとしたい。
山頂からほんの少し北に下ると2ヶ所の展望台がある。
どちらも眺めがいいが向いている方角が違っていて異なる景色が楽しめる。
ここは第2展望台。
正面に日光連山が広がっている。
ここでエネルギー切れを起こさない程度の軽いランチをし、本日のお目当てである「立花尾根ルート」へ向かった。
12:17の画像の分岐まで戻ってチェーンスパイクを装着した。
過去、「立花沢ルート」を歩いた経験から、尾根ルートの枯れ葉の堆積が予測できたからだ。
斜面に積もった枯れ葉はどれほど注意して歩いても滑る。
登山靴であろうがトレランシューズであろうが、靴の種類を問わずとにかく滑る。
対策はこれに限る。
少し下ると沢ルートと尾根ルートとの分岐がある。
沢ルートはここを一旦左に進み、90度向きを変えて林道へ向かっている。
立花尾根は直進する。
尾根の傾斜は20度であることを事前に調べておいた。
これは雪崩が自然発生する傾斜に等しい。
そこに枯れ葉が分厚く堆積していれば足を乗せたときに滑るのは自明である。
枯れ葉を雪に見立てればチェーンスパイクの効果は大いに期待できる。
地図によれば急傾斜は林道に近いところで一旦緩む。
だがそれも長くは続かないことも地図でわかる。
尾根はほとんど平坦になった。
おそらく等高線が天狗の鼻のように長く伸びた場所であろう。
ということはこの先で傾斜がこれまでの20度を超えて30度になるということだ。
先へ進むと尾根の様相はこれまでから一変し、荒れ果てた密林となった。
傾斜は地図が示す通り30度はあり、その上に枯れ葉が堆積している。
地図の登山道を忠実に歩こうにも木々に阻まれて進めない。
二・三歩歩いては次ぎに足を置く場所を見定めながらジグザグに進む、その繰り返しだった。
反対に藪であることは幸いだった。
野生のリスのように敏捷に(笑)、木から木へと伝って歩くことができた。
地図に描かれている登山道はここに間違いないのだが、ここを「立花尾根ルート」とするには無理がありそうだ。
おそらく先ほどの平坦な場所から沢ルートに抜ける道があるはず、そんな確信が生まれた。
その場所まで引き返そうか、そんな気持ちも起きたが初志貫徹、地図に描かれた登山道を最後まで歩こうと決めた。
荒れた林はなおも続く。
平坦地から歩き始めてまだ20分に満たないが実に長く感じられた。
救いはこの尾根の終わりに車を置いた清水寺に戻る林道があるという希望だった。
地理院地図に描かれている登山道を忠実に歩き、林道が見えるところに出た。
やはり、という感じだ。
下見で林道にあるはずの登山口を探したものの、高さ1メートルほどのイノシシ避けの長いフェンスが張り巡らされていて、人が入るすき間さえなかった、そこに出た。
地図に忠実に歩けばフェンスのすき間に辿り着けるのではないかと考え、立花ルートを歩くのがきょうの目的だったが、結果は事前に調べた通り、尾根末端に出入口はない、という結論に至った。
まっでも、予想通りの結果となった。
さて問題は、フェンスから林道へどうやって出るかだ。
フェンスを傷めることなく乗り越えられる場所を見つけて林道に降り立った。
ここは現在、使われている馬不入山への登山口。
過去2回、ここから歩き始めた。
前の画像の登山口(ただし、地図上の)とは10メートルと離れていない。
それが災いして、昨年4月はここが地図にある尾根の入口だと思い込んだのである。
林道から眺める筑波山方面。
この辺りで標高140メートルほど。
これまでの苦労を忘れてしばし魅入っていた。
清水寺に戻り、本日の結果をブログにどのように反映するかを考えながら帰路に着く管理人である。
地理院地図に描かれていない「立花沢ルート」が現在、使われているルート。図の青い線がそれだが、枯れ葉の堆積具合から察して歩く人は多くはなさそうだ。
一方、地理院地図に描かれているのが「立花尾根ルート」。赤い線がそれだが、登山口がないのと急な傾斜と荒れ放題の尾根(末端部分)から察して、沢ルートよりもさらに歩く人が少ないという印象をもった。
帰宅して早々、次回の課題を決めた。
立花尾根ルートには登山口がない。
であれば立花尾根ルートと立花沢ルートはどこかで必ず交わっているはず、との仮説を立て、交わっている場所を見つけるというものだ。
さあどうなることやら、課題は来年のお楽しみにして、本日をもって2024年の山行を終えることにする。
読者の皆さまへは今年も管理人の稚拙なブログにお付き合いくださいまして、誠にありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。