奥日光の幻の湖・蓼ノ湖へ、この時期だからこそ行ってみた。

  • 2023年4月17日(月) 強風、雪チラつく

スノーシューツアーを終えて一ヶ月半が経過した。
日光の山は今、残雪期を迎えて、歩くにはアイゼンやチェーンスパイクが必須で、ウエアはまだ寒い日もあるからなにを着ていったらいいのか迷う季節である。

かつてはそんな山をスノーシューツアーの延長で登ったりしたが、古賀志山に咲く花の魅力にとりつかれてからというもの、残雪を楽しむこともなくなり、花を求めてせっせと古賀志山に通うようになった。

とはいえ、この時期を逃したら次の年まで待たなくてはならないという、期間限定の見所というのが奥日光にあって今日、そこへ行ってきた。
記録を見ると実に8年ぶりだった。
8年前は腰高の笹やシロヨメナ他の草が生い茂り、それらに行く手を阻まれて苦労したが、できるなら時期を少しずらして苦労せずに目的とする「見所」へ行きたい。
それを可能にするのが雪解けが進みなおかつ、笹などが生い茂る前のこの時期なのである。

目的は刈込湖へのスノーシューツアーで必ず立ち寄る蓼ノ湖(たでのうみ)の現在の姿を見ることと、もうひとつはその昔ハイキング中にかすかに耳にした、どびん沢の流れの元を探り当てることである。

メモ(GPSはiPhoneSEを使用した)
・歩行距離:11.3キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:5時間12分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:812メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

刈込湖へのスノーシューツアーの起点となる湯元温泉の源泉。
ここから湯元の旅館に温泉が供給されている。
物珍しさから観光で訪れる外国人も多い。


急な斜面を10分上ると今は閉鎖中の金精道路と出合う。
刈込湖への実質的な登山道はここから始まる。
地理院地図にある登山道は斜面を横切るようにしてついている。
ただし、雪が深くなるとその道は斜面と一体化して危険なため、雪が積もって初めて歩ける道が推奨される。
それが蓼ノ湖へのルート、いわゆる冬道である。
もちろん、地理院地図には描かれていない。


冬道の入口部分。
冬の間、雪の重みで倒れていた笹が起きだしている。
あとひと月もすれば笹は腰高から人の背丈まで大きくなるとともに他の植物も生長し、入ってはいけなくなる。


雪はこの倒木を覆い隠すほど積もる。
積雪期がどれほど歩きやすいかがわかるというもの。


蓼ノ湖に到着した。
水深が浅いため透明度はあまりよくない。
真冬は沢の流入部分を除いて結氷する。
スノーシューツアーで見る蓼ノ湖は結氷した姿であり、水面を見ることはない。
先ほどの画像のように笹などが生い茂るとここへ到達するのは困難なことから、蓼ノ湖の生の姿は解氷が始まって笹が茂るまでのわずかな期間しか見ることはできない。
それが蓼ノ湖が幻の湖と呼ばれる所以である。
さて、刈込湖へ行くには対岸に渡らなければならない。
積雪期であれば湖岸に積もった雪の上を歩いて対岸に行けるが今は水面が斜面に達し、歩くことはできない。


対岸に渡るためには湖の右側を反時計回りに進んでいく。
それは8年前も同じだったと記憶している。


斜面を横切るようにして歩き、瓢箪を右へ90度寝かせたような形をしている蓼ノ湖の右の端まで来た。
ここからだと蓼ノ湖の東端から西端まで見渡すことができる。


蓼ノ湖に流入する沢を追ってみると流れがかなり強いことがわかる。
流れをさらに辿って行き着いたところは斜面からの噴出口であった。
帰宅してその場所を地図で特定すると蓼ノ湖の北西に位置する温泉ヶ岳(2333m)の麓であることがわかった。
伏流してきた流れの噴出口が管理人が行き着いたところだ。


中継地点の小峠へ行くには北に向かって進む必要があるが蓼ノ湖に流入する沢を追っていくと西に進んでいた。
ここらで軌道修正。
獣道があったのでついて行った。
獣たちも山の中を無闇に歩き回るわけではなく、歩きやすいところを選んでいるである。
獣道は人にも優しいし、人が行きたい方に導いてくれる(個人の感想です・笑)
だが、それも今のうちで、これから笹や草が生い茂ると背は腰高になり、どこを歩いたらいいのかわからなくなる。


自然のことを解説する説明板が見えた。
これが見えるのは小峠のすぐ手前である。
ここで夏道と合流したわけだ。


この道標は高さ2メートル30センチ(昔、メジャーで測ったことがある)。
雪が少ない冬だと「小峠」の文字が見えるが、雪が多い年は道標を埋めてしまうことがある(近年はない)。
なお、冒頭にも書いたが、この時期に着ていくウエアの選択は迷う。
真冬とは言えないまでも標高1500メートルを超えると下界にいては想像もできないほど気温が下がる。
だが、傾斜を登るようなときは身体が熱くなり、汗をかくことがある。
そのへんを見越してウエアを選ぶ必要があるが、今日の管理人は下半身はTRIMTEXというノルウェーの会社の厚手のロングパンツとその上にモンベルのバーサライトパンツ(雨具)。上半身はfinetrackのドライメッシュの上にモンベルの薄手のハーフジップシャツ、その上に薄手の防風ジャケットと防風パーカー、さらにその上にバーサライトジャケット(雨具)という出で立ちである。
早い話が下半身2枚重ね、上半身5枚重ねである。
どれも薄手かつ軽量なので身体への負担はない。
こうすることで空気の層をいくつも作り真冬並みの寒さに対応する一方で、身体が熱くなったら1枚脱ぎ、2枚脱ぐというように気温すなわち体温の変化に即座に対応するようにした。


小峠を少し進むとまた道標がある。
刈込湖への方向を示す道標である。
スノーシューツアーの季節は刈込湖への道(地図に描かれた道)の他に、雪が積もって初めて歩ける道が出現する。
道標の左側を行く冬道で、進んで行くと最後に夏道と合流し、そこが刈込湖である。
どちらも楽しめるが管理人が主催するスノーシューツアーでは往きに夏道、帰りに冬道を歩くようにしている。
その方が同じ道を往復することがないので変化があって楽しめる。

管理人の今日のもうひとつの目的は冬道の「ドビン沢」を歩くことにある。
そして刈込湖に到達した後、ここへは戻ってこないで山王峠を経て光徳に下るつもりなので冬道しか通らない。


ドビン沢へ向かう冬道。
残雪がたっぷりあるので苦労せずに歩くことができる。


あった、あったぞ!
ついに見つけた!
ドビン沢の入口にある池をである。
もう何年前かは忘れたが、無雪期に刈込湖に向かって夏道を歩いているとき、足下に水が流れるかすかな音を聞いたことがある。
空耳ではない。
今の管理人であれば空耳、幻聴を疑うが、当時はまだ正常だったはずだ(笑)
冬道は夏道よりも下にあるが木々が重なって夏道からは見えない。
見えないがドビン沢の流れであることを直感した。
それをいつかこの目で見てみたいと思っていた。
それから数年を経た今日、見つけたのである。

南北に20メートルほどの細長い池にドビン沢の流れが入り、出ていく。
それが管理人が聞いた水音であろう。
入口と出口は雪でおおわれていて流れは見えなかったが、山の雪が解けて雪解け水が流れ込むようになるとドビン沢に流れが戻ってくるはずだ。
管理人が聞いた水音はその頃のものであろう。

地理院地図に名前が描かれていないので命名権は管理人にある(笑)
なんという名前にしようか?
「どびん池」、「ドビン沢池」、「幻の池」、屋号をとって「はじめのいっぽ池」。
どれもイマイチでピンとこない。
まっいいか、名前などなくても。


解氷した蓼ノ湖を見て、次ぎにドビン沢の池を見た。
今日の2つの目的を果たして気持ちが高揚している
だが、行程はまだ1/3にも達していない。
気持ちを落ち着かせるとともに、引き締めて先に進もう。

池を過ぎて間もなく、木々がない場所を管理人は歩いている。
温泉ヶ岳から派生する沢の末端、ドビン沢である。
ここだけ幅3メートルほど盛り上がっていてまるで道路の上を歩いているようだ。
形状から察して自然の力でできたものではない。
林道なのだろうか、100メートルほどの長さがあった。
こうなると考えないわけにはいかないのが管理人の性分である。
頭の中で地理院地図を広げ、考える。
これはもしかすると三岳林道の一部なのではないだろうか、そんな考えが頭をよぎった。
三岳林道は金精道路の始まり(湯元温泉との分岐)から派生する、今は廃道になった工事用の林道で、小峠で登山道と交わって終わっている。
20年ほど前の積雪期に三岳林道を歩いたことがあるがやはり幅3メートルほどの、今でも車が通れそうな様子の林道だった(今でも残っている)。
小峠に道標やベンチがあるのは三岳林道を利用して工事が行われたのであろう、きっと。
その三岳林道が終わる小峠と、管理人が今いる場所はそれほど離れてはいない(帰宅して調べると300m)。
そう考えると三岳林道は小峠で終わっているのではなく、ここまで続いていると考えても不思議ではない。
だがこの先、刈込湖まで、人の手を加えたような場所はない。
ではなぜ林道が、と疑問は尽きない。
考えられるのはドビン沢の植林伐採のために設けられた林道かもしれないということだ。
そんなことを考えていては刈込湖にたどり着けないし、ブログも先へ進めない。
一旦、ここで考えるのを終わりにしよう。


ドビン沢を抜けると刈込湖までもうすぐだ。
ここから先は注意を要する。
刈込湖まで緩やかに下っていくのだが大小さまざまな岩の間、岩の上を歩くことになる。
雪が積もっていれば岩の存在など気にすることなく歩けるが、残雪の今は雪の踏み抜きが怖い。
岩の隙間に足を入れてしまうと捻挫や骨折の恐れがある。


およっ、この足跡はもしかすると、、、
管理人のこぶし大の足跡の先に深い爪痕が見える。


着いた~
歩き始めて2時間半。
無雪期よりも、スノーシューで歩くよりも長かった。
だが、解氷した蓼ノ湖とドビン沢の池という2つの大きな宝物を得て、満足感は大きい。


刈込湖は雪原と化しモノクロームの景色よりも、解氷し、湖に色が戻ったときの方がいい。
ゆっくりしたいところだが、ここまででまだ行程の1/3強、残りの行程の方が長い。
スノーシューツアーの際はここでランチタイムにして折りかえすが、今日は光徳へ抜けるロングコースなので休憩はなし。
腹が減ったら歩きながら行動食を食べることで時間の短縮に努めるつもりだ。


刈込湖を足下に見ながら水路続きの切込湖へ向かう。


切込湖は湖畔に下りることができない。
だが、上から見下ろすだけでも十分きれいだ。


切込湖と涸沼の中間辺り。
於呂倶羅山が見える。


涸沼の南端まで来た。
積雪期、ここは急斜面と化し、滑落の危険がある。
この辺りで一旦、涸沼に下りて展望台の手前まで行った方がいい。


強風吹きすさぶ荒涼とした涸沼。
早く林に入って風から逃れよう。


ここから山王峠まで、標高差100メートルながら急傾斜を登っていく。


斜面は階段が多い。
階段でないところは岩ばかり。


車道の山王林道と並行するようになった。
山王峠は近い。


ここを左へ抜けると山王林道と交わり、そこが山王帽子山と太郎山の登山口。


山王峠を通過。
ここからは下り一方で光徳まで行く。


このルートの嫌らしさは階段がずっと続くこと。
これさえなければいいのにな、といつも思う。


光徳に近づくと傾斜は緩くなり、脚への負担もなくなる。


光徳園地に着いて任務完了。
後半、気が緩んだが目的を達成し良い気分でトレッキングを終えた。


花の季節であれば光徳から車を置いた湯元まで、花を探索しながら5キロの道程を歩くところ、今は何の楽しみもない。
アストリアホテル前でバスの時刻表を見ると10分待ちで湯元行きが到着する。
いいタイミングなのでバスに乗ることにした。
湯元行きのバスは14:45発になっているがそれより5分以上も前にバスが到着した。ギリギリの時間にバス停に到着していたらバスには乗れなかった。
デジカメのタイムスタンプは狂っていない。


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