絶景の奧白根を湯元から周回ルートで楽しむ。が、下山は辛かった。

2021年9月24日(金) 晴れ

8月4日の女峰山を最後に山から遠ざかっていた。
その間、本業であるペンション業務と事務仕事が重なって、身体は鈍る一方だった。
仕事が一段落ついたのを見計らって出かけたのが上高地と能登の海だった。
穂高連峰をバックにたおやかに流れる梓川の眺めは仕事で溜め込んだストレスをきれいさっぱり洗い流してくれた。

軽貨物車エブリイを車中泊仕様に改装して初めての3泊4日、千キロを超えるロングドライブは腰の痛みを伴ったが、車をかっ飛ばす(制限速度+10キロ未満です)爽快感と車中泊という日常とは異なる不自由感を味わうことが出来、それもストレス解消に一役買ってくれた。

溜め込んだストレスが解消できたのでそろそろ福島県の山に復帰しようと思ったものの、時は栃木県のみならず、多くの県で緊急事態宣言が延長されている。
上高地へ行った際、北アルプスでは手頃な山として目に留めたのが焼岳だが、飛騨地方で起きている群発地震の影響が拭えない。

行き場を失った管理人だが、こんなときこそ地元、日光の山に目を向けようと思った。
女峰山は管理人が特別な思いを寄せる山であり、日光の山では女峰山の他に目が向かないが、先月登ったときの余韻がまだ残っている。別の山にしようと思う。
長い距離とそこそこの傾斜が楽しめ、展望がいい山を求めて地図を眺めていたところ、白根山を湯元から登ってみる方法が思い浮かんだ。
このルートは2016年の残雪期に一度経験したことがあって、その達成感は今もって忘れることが出来ない。

身体は鈍ったままだが2016年の成功体験が先に立ち、このルートは残雪期よりも無雪期の方がハードであることも忘れて計画に突き進んだ。
 ※2016年の湯元~白根山ピストン山行

所要時間(計画)・・昭文社「山と高原地図」を参考にした。
湯元スキー場(7:00)~外山鞍部(9:10)~天狗平(9:30)~前白根山(10:00)~避難小屋(10:30)~山頂(11:30/12:00)~弥陀ヶ池(12:45)~五色山(13:35)~前白根山(14:05)~天狗平(14:30)~外山鞍部(14:45)~スキー場(15:50)

結果(GPSはGARMIN Instinctを使用した)
・歩行距離:14.4キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:10時間4分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:1704メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

今日の山行の起点は湯元温泉スキー場。
ここから白根沢に沿って外山鞍部へ上がり、前白根山を経て白根山に登るというもの。
ただし、帰路はピストンではつまらないので弥陀ヶ池を経て五色山と前白根山に上がり、そこからは往路と同じコースで戻ってくる、かなりハードなものになる。
ちなみに画像に映っている三角屋根はキャンプ場の炊事場。無雪期はスキー場の一部がキャンプ場として利用される(ただし、傾斜地であるのとシカ糞に注意)。


まずはスキー場内の緩やかな傾斜を白根沢へ向かって歩く。
道はスキー場の管理道路で最後のリフトの降り場まで続いている。
なお、スキー場内は冬季の白根山登山者に配慮して、スキー場営業時期でも歩ける。


スキー場が尽きると白根沢にかかる堰堤と出合う。
そこが外山鞍部への急斜面の取り付き口となる(画像は3つ目の堰堤)。


外山鞍部への道は急斜面の上、その多くは露出した木の根と浮き石で成り立ち、悪路と言っていい。


大きな石なら避けながら歩けるが、ほとんどが中くらいの浮き石。
これと木の根の繰り返しが外山鞍部まで、これでも喰らえというほど長く続いている。


外山鞍部へは1時間40分かかった。
ひとまずこれで安心、というのが正直な感想である。
ここから前白根山に向かって稜線歩きとなるのだが快適に歩けるようになるのは天狗平から先。


ナナカマドが色づいていた。


アズマシャクナゲに奇妙なものが付いているのを見た。
触れるとブヨブヨした球状のものだがアズマシャクナゲの実ではない。
1本の木に5・6ケ、付いていた。
このようなきれいなピンクのもあれば真っ白のもあった。


ひとつ取って割ってみると中はスポンジのようだった。
これは「虫こぶ」の一種でアズマシャクナゲの葉や新芽、花を好んで付着するらしい。
虫の種類は分からないがアズマシャクナゲにとっては病気(モチ病というらしい)のようなものなのだろう。


緩やかな稜線の向こうに白錫尾根が見える。


もうほとんど終わりに近いシロヨメナの中でこの一群だけが新鮮だった。


天狗平に到着。


こんな歩きやすい道が山にあっていいのだろうかと思うほどの快適さ。
管理された日本庭園を歩いているような気持ちにさせられる。


間もなく前白根山だが、その前に目に飛び込んで来たのが白根山だった。


次に見えたのがこんもりと優しい姿をした前白根山。


おぉ、人がいますなぁ!
白根山と前白根山は東西の位置関係にあり、円上に周回できる。
登山者の多くは丸沼高原スキー場からロープウェイを利用して白根山に登り、前白根山と五色山を巡ってロープウェイで帰るといったルートを歩いてくるようだ。


前白根山からはなんら遮るものなく白根山を見ることができる。



前白根山頂の広場を少し先へ進むと麓に五色沼を従えた白根山がで~んと構えている。男体山もデカイが白根山もデカイ。
手前に白根山への登山道が見える。
右へ分岐した先は五色沼。五色沼へ降りてから白根山に登ることもできる。
直進するとそのまま白根山に続いているように見えるがそうではない。
画像に見える道の終わりから避難小屋へと急降下してそれから白根山に登り返すことになる。


前白根山からガレ場を注意深く降りると道は平坦になり、分岐と出合う。
管理人は直進して避難小屋を経て白根山に登ることにした。


進行左(東南)に男体山とそのすそ野に中禅寺湖が見えた。
男体山は雲がかかってこの日、これ以上の展望が得られることはなかった。


ダケカンバの向こうに白根山の山頂が。
白根山は噴出した溶岩が固まって今の形になったもので、なんとも形容しがたい荒々しさだ。


地図に描かれている登山道はここから避難小屋へ向かって続いている。
実際にはさらに尾根に沿って道は続いている。
この登山道は白錫尾根といって白根隠山、白桧岳他いくつかのピークを経て錫ヶ岳に向かっている。


前の画像の分岐を降りると五色沼避難小屋と出合う。


小屋の中はこんな様子。


すごい数の寝具が置かれている。


土間にはカセットコンロやガス、鍋まで備え付けられている。
これら炊事道具や寝具は小屋利用の常連が揃えたのかもしれない。


小屋の前の岩に腰をかけ、コンビニで購入した5ケ入りのミニあんぱんのうち、2つを食べて白根山東斜面の取り付き口に向かった。


東斜面は捉えどころがないくらいに広大で荒々しいが道はちゃんとある。
この時間の東斜面は上がる人よりも下ってくる人の方が多かった。
ロープウェイで白根山に登り、東斜面を下って前白根山あるいは五色沼を廻ってロープウェイ駅まで行くのだと思う。


東斜面からの展望は山頂に立たなくても雄大そのもの。
女峰山は雲に隠れて見えず。


山頂を遠望すると多くの登山者で賑わっているように見えた。


火口を左に見ながら山頂へ向かう。


岩をよじ登って山頂に。
山名板の前にいた多くの登山者を押し退けて(笑)、写真を撮る。
次から次へと到着する登山者のじゃまにならないよう場所を移動してミニあんぱん1ケで腹を満たした。


山頂を北に向かって岩場を下りていく。
遠くに燧ヶ岳、ずっと手前に丸沼、右隅に菅沼が見える絶好の場所に来た。


登山道をさらに降りると今度は弥陀ヶ池が見えるようになる。
登山道は岩場から変わってザレ場となる。


やがてアズマシャクナゲ群に突入。
ナナカマドが真っ赤な実をつけていた。


ロープウェイ駅と弥陀ヶ池との分岐を右へ行く。


弥陀ヶ池に数人の登山者が見える。
彼らもロープウェイを降りて周回ルートを歩いてここへ来たのであろう。


静かな佇まいの弥陀ヶ池。
左に見える木道は白根山の登山口としてロープウェイに次いで人気のある菅沼への道。


弥陀ヶ池から五色沼へ向かう道を途中で分け、五色山へ向かうことにした。


なんと、ハクサンフウロが。
夏の花なのにこんな時期まで頑張っていたんだね。


弥陀ヶ池から分かれた道は一旦、鞍部へ向かって悪路を歩かされるがやがて快適な道に変わる。


 

眼下に五色沼を眺めながら順調に標高を上げていく。


背の低いミヤコザザの中の快適な道を歩いて行く。


五色山に到着。
道はここで前白根山と金精山とに分岐する。
管理人はここから朝通過した前白根山に向かうが、金精山の方に行くと途中、国境平分岐から湯元温泉に降りることが出来、金精山まで行けば金精道路の金精トンネルに降りることが出来る。
前者は背丈ほどある笹をかき分けながら急斜面を降りなければならず、後者も楽ではない。管理人が予定している前白根山からの下山もまた厳しい。
日光側からのアプローチはどれをとっても苦を覚悟しなくてはならない。


眼下にこれから降りる湯元温泉と湯ノ湖。


一周して前白根山に戻ってきた。
谷底から上昇気流に乗って雲が湧きだし、天気の悪化を予兆している。


場所を替えながら食べた5ケ入りのミニあんぱんの最後のひとつをここで食べた。


天狗平を通過。
この頃から右膝の外側が痛む腸脛靭帯炎の兆候が現れた。
大事に至らなければいいのだが。


外山鞍部。
さあ、これから厳しい下りが始まる。
右膝は兆候を通り越して紛れもない腸脛靭帯炎であることを自覚した。
腸脛靭帯炎は発症するとその場では治らない。
上りはここまで1時間40分要したが、下りは同じかもっと長い時間を要するだろう。
痛みとの長い闘いが始まろうとしている。


右膝をかばいながら、上りよりも遅いペースで、ようやくスキー場の上部ゲレンデが見えところまで下ってきた。


白根沢にかかる3つめの堰堤を通過。


ようやくスキー場の管理道路まで降りることができた。だが、下り斜面はまだ続く。

腸脛靭帯炎になると膝を曲げるたびに膝の外側に鋭い痛みが走る。
特に段差のある下り傾斜だと膝を曲げる角度が深くなるため痛みが激しい。
膝を曲げないよう、右足を真っ直ぐにした状態で地面に着き、次に左足を右足と同じ位置に揃えて置く。これを繰り返す。
つまり、普通なら右足左足の2ステップで歩幅を稼ぐところをその1/2の歩幅で歩いて行くわけだ。倍の時間がかかってしまうが、現場での対処はそれしかない。

以前のようにストレッチを欠かさず行うとともに週一の山行を実行していれば腸脛靭帯炎の発症は抑えることができるのだが8月4日以後、何もせずに過ごした報いが来た。
日常生活で感じない下半身の筋肉の硬縮は、日常生活の数倍というハードな動きで症状として現れる。山を歩いている時にしか発症しないから気づきにくい。

腸脛靭帯炎は2017年以来、4年ぶりの発症である。
それより前にもなんども経験しているので治し方は知っているが喉元過ぎれば熱さを忘れるのたとえ通り、熱さすなわち痛みを忘れるとストレッチもサボり気味となってこの一年もの間、ほとんどやっていない。
帰宅後、さっそくストレッチを再開しようと決めたが、今日の痛みをいつまでも意識の中に置いておく方法を考えなくては。

同じ痛みで苦労している方に、腸脛靭帯炎についてもう少し詳しく説明しているので参考になれば。
また、YouTubeには情報がたくさん出ているので自分に合った対処方法を探すのもいいかも。


白根山山頂へのアプローチはその難易度は別にしていくつかあって選ぶことができる。
もっとも人気があるのが丸沼高原スキー場のロープウェイを利用する方法で、山頂の標高2578メートルに対して2千メートルまで一気に運んでくれる。
次は菅沼登山口からのルートで、3時間ちょっとで登頂できて道も悪くない。
この2つのルートは群馬県側にあるが、他に日光側の登山口として湯元温泉から2つのルートがある。金精トンネル入口からのルートもある。
しかし、群馬県側を登山口とするルートに比べて日光側のルートは傾斜が急な上に荒れていて、気軽にというわけにはいかない。
その手の歩きがお好きな人向けといった、そんな特徴がある。
自分の背丈もある笹を延々とかき分けながら歩かなくてはならない「中ッ曽根」ルートもそのひとつ。

百名山として日光では男体山と人気を二分する白根山だがルートの選び方によっては、もう二度と登りたくない、といった結果になるのが日光側からのアプローチかもわからない


GPSのログを基にGoogle Earth Proで再現したもの。
5分26秒のロングバージョンはこちら
日光湯元から奧白根山周回ルートをGoogle Earth Proで再現


所要時間(実績)
湯元スキー場(7:35)~外山鞍部(9:15)~天狗平(9:43)~前白根山(10:09)~避難小屋(10:47)~山頂(12:06/12:20)~弥陀ヶ池(13:08)~五色山(14:09)~前白根山(14:41)~天狗平(15:06)~外山鞍部(15:28)~スキー場(17:35)

スキー場~外山鞍部は上り1時間40分に対して下りは右膝の痛みに耐えながら歩いたため2時間7分と、上りよりも27分も多く要した。
計画は上り2時間10分、下り1時間15分だった。