70代男ふたり、暑さ続く古賀志山鞍掛ルートを労りながら歩く。

2022年10月3日(月) 晴、暑い

宿泊業を28年も営んでいると常連さんも増える。
登山やハイキングの起点として利用してくれる宿泊客が多いことから常連さんも自ずとそれ系の人が多い(女性が多いのも特徴)。

2006年に管理人が主催するスノーシューツアーに参加してくれたWさんは今年で17年目という、「超」がつくほどの長い常連さんで、これまでスノーシューツアーだけでなく多くの山行を共にしてきた。
Wさんと出会った17年前といえば管理人が57歳のときだから体力にものを言わせて怖いもの知らずに日光の山を徘徊していた時期である。
4つ違いのWさんは働き盛りであると同時に管理人と同じく怖いものに興味をそそられるタイプであり、当時まだ誰も行くことのなかった冬の庵滝と緑滝、美弥古滝の探索、帝釈山北ルートからの女峰山登頂といった冒険(我々にとってささやかな)をしたのが思い出として残っている。

さて、早3年となる新型コロナは感染者数は減っているものの未だに収まる様子はなく、自己管理の徹底さで共通するWさんと管理人にとってストレスの溜まる大きな問題である。
お互い、生活スタイルはコロナによってそれまでとは大きく変化した。
管理人でいえば山行回数を減らしてそれを車で寝泊まりしながら観光地を巡る旅へと振り向けた。その方が人と接触、言葉を交わす機会が減る。
Wさんでいえば無上の楽しみとしているワインと食事のための外食が減った。また、滞在時間も短くなったと聞く。

生活スタイルの変化は体力の低下にもつながり、管理人は8月の女峰山のとき、両太ももの激痛(痙攣)を経験したしWさんも同じような経験をしたと聞いた。
お互い、日頃から体力の維持に努めているとはいえ、登山で使う筋肉を維持するには実践で鍛えるしか術がなく、その実践の機会が減ってしまってはどうしようもない。

そんな折り、Wさんから、山へのお誘いの電話があった。
このブログを見て山行回数がめっきり減ったのを懸念してのことかも知れないし、女峰山での痙攣のその後を心配してくれているのかも知れない。長引くコロナ不況で管理人が経営するペンションの経済状態を心配しての電話だったのかも知れない。
その昔、Wさんが泊まりに来る日に限って他に客が来ないことから、管理人はWさんのことを密かに貧乏神とか疫病神と称したことがあったが、本当は管理人を心配してくれる心根の優しい人なのだ。
お誘いを受けたのはもちろんである。
場所は人の少ない古賀志山とした。

(GPSはiPhoneSEを使用した)
・歩行距離:12.6キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:6時間46分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:1245メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

鞍掛ルートの登山口は森林公園駐車場の出入口のすぐ脇にある。
この登山口からのルートは植物の種類が多くまた、古賀志山へのルートに比べると歩く人が少なく、さらにはアップダウンの数が多いので管理人が好んで歩いている。


10月になったとはいえ低山の古賀志山は紅葉にも落葉にもまだ早く、秋とはほど遠い風情だ。
春はスミレやシュンラン、マルバアオダモが見られる。


実にのんびり歩いたつもりだが30分で長倉山に到着した。
道はここで真北へ向かって降りる2本のルート(林道で合流する)と北西へ向かう北尾根コースに分岐する。
鞍掛山へは真北へ向かう。


鞍掛山への登山口(鳥居をくぐり抜けたところ)。
鞍掛神社から流れ落ちる滝が鳥居のすぐ脇を流れている。


登山道から50メートルほど逸れた行き止まりが大きな岩壁になっていてそこに小ぶりながら形のいい滝が流れている。
鞍掛神社は滝のすぐ左、昔の人が女陰として崇めたであろう岩の割れ目に納められている。
が、中は真っ暗で何も見えない。


ホオノキの枯れ葉と朽ちた実。


鞍掛神社を発って鞍掛山へ向かうが今は見るべき花がなく黙々と、、、


今日初めて見た花だが、これはなんだろう?
花弁の数枚が落ちて形が崩れているがシロヨメナとは葉っぱがまったく違うし、ユウガギク?


キバナアキギリ


オクモミジハグマ


ヤマハギ?


歩き始めて一方的な登りはここ、大岩まで。
鞍掛ルートは樹林帯の中を歩くので展望が開けるのは大岩に着いてからだ。
今日はお互い無理をせず、身体を労りながら歩こうと決めて歩き始めたので1時間45分かかった。


正面(南西)に古賀志山主稜線が見える。
ピークでもっとも高く見えるのは最高峰の古賀志山(583m)である。
右へ御嶽山、赤岩山、北ノ峰と続く。


鞍掛山山頂は周りを桧に囲まれて展望はないが山頂は広く落ち着ける。
さて、ここから鞍掛ルートの核心というべきアップダウンが始まる。


短いながらも急登を強いられるのがこのルートの面白さなんである。


道はここで左から来る北尾根コースと合流するので右へ行く。
古賀志山(画像右側)から来る場合、この分岐を左へ進む(カメラの位置)と鞍掛山だが疲労が激しいときは直進(左)すると鞍掛山を回避して長倉山へショートカットできる。
ちなみに現在、ここにはNPOによる道標が設置されているが、道標がない頃、ここは読図の勉強に最適な分岐だった。


アップダウンは嫌というほど続く。


「手岡(ちょうか)分岐」と管理人が呼ぶ馬蹄形ルートの入口まで来た。
管理人が古賀志山に熱中し始めた2015年、馬蹄形なるルートがあるのを知って挑戦してみた。
古賀志山のことだから地理院地図にルートなど描かれていない。
そこで地図を印刷し、ピークとピークをカラーペンでつないで進むべきルートを明示して実踏に望んだことがある。→当時の地図
そのとき、地図上でもっとも分かりづらかったのがこの分岐だった。
地図上で分かりづらいのは実際の場でも同じだった。
ここが分岐などとは誰も思わない、実に分かりづらい場所だ。
その後、NPOによって道標が設置されたのでこの分岐を見落とすことはなくなったが、地図とコンパスを手に古賀志山山域を歩き回ったのが懐かしい。


上の画像の分岐をすぎるとすぐ丸太のベンチがあり、そこは西の視界が開けていて日光連山が一望できる。
朝のうち晴れていたがこの時間は薄雲がかかり、まるで墨絵のようだった。
ピークは左から男体山、大真名子山、女峰山。
ちなみに、向こうに見える3つのピークはともに2千メートルを超えるがここは標高500メートル。相手の山頂が目線に見えるのが面白い。


まるで階段のような整った形の岩、おそらく柱状節理によるものであろうと思うが管理人はここを階段岩と名付けてルート上の目印としている。


アブラツツジ


10:52の画像と同じだがユウガギクということにしておこう。


ピーク559(班根石山)


ピーク559からの日光連山もまたいい眺めだ。
先ほどの大岩と同じく南には古賀志山がよく見える。
古賀志山山頂や御嶽山山頂は混むと言う理由でここを昼食の場に選ぶ地元の人も多い。


時間が遅くなったため古賀志山へは寄らず、ショートカットして中尾根5差路(※)から北登山道の広場へ降りることにした。
※直進は中尾根の続きで岩場へ、左はピーク559裏ルート、左斜めは二枚岩、北登山道へは右へ斜面を下りる。


地元の人の憩いの場、北登山道の広場が見えてきた。
ちなみに、ここは2015年の豪雨によって土砂に埋まったが、地元の有志や関係者によって復旧された経緯がある。


ツリフネソウ


伏流水が湧き出る水場。
大量の汗をかき、干からびた身体には文句なしの旨さだった。


赤川に架かる芝山橋まで来て高齢者同士、お互いに労りながらの鞍掛ルート歩きが無事に終わった。
Wさんは早朝に自宅を出発し、新鹿沼駅で管理人と合流し古賀志山まで来た。
今夜は管理人が経営するペンションに泊まるので反省会を兼ねた慰労会を予定している。
飲み過ぎないようにしよう。
いや、久しぶりの快感にそうはいかないだろうな(笑)


鞍掛ルートはこれ単独でも楽しめるが手岡分岐から西へ進んで北ノ峰、赤岩山、御嶽山、古賀志山を結ぶ古賀志山主稜線を歩く、「馬蹄形ルート」と組み合わせて歩くのも面白い。


この図でお分かりいただけるだろうが、古賀志山山域はアップダウンの多さが特徴といえる。
わずか4キロ四方の狭い山域ながらピークがいくつもあり、それらを結んでいくと累積標高は2千メートル級の山に匹敵する。
決して侮ってはいけない山なのである。

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