ツツジが終わって静けさが戻った鳴虫山(ガイド登山)

2021年6月8日(火) 晴れのち曇り

昨年6月、女峰山に登りたいという女性からガイドの依頼があった。
自己申告のあった年齢から察しても厳しいのではないかと躊躇ったが、本人の強い希望なので無下に断るのは失礼であるし途中で折りかえすことも視野に入れて依頼を受けた。
御年74歳。
74といえば平均寿命にはまだ10数年あるものの、間もなく健康寿命に達する年齢である。
管理人の身に置き換えてみれば、齢71(昨年6月時点)の管理人が3年後はどうなっているかなど皆目見当がつかない。
それほどこの年齢に達すると一寸先は闇、身体にどのような変化が起きるかわからないものなのだ。

脚力の低下が原因での転倒や滑落による大怪我、死はもちろんのこと、内疾患による登山中の突然死もあり得るであろう。
高齢者が山に登るということは常にこれらのことを頭に置いておかなくてはいけない。
ガイドを依頼された管理人の立場で言えば、高齢のガイドが高齢の依頼者を山に案内するわけであり、危険はガイドと依頼者、ふたりの身に起きるということを想定しておく必要がある。
リスクは大きい。

女峰山登山の日を迎えて依頼者(Oさんとしておく)に会うと、小柄ながら身体は山で鍛え上げられているのか筋肉がしっかりついていることが衣服の上からでも察することができ、まずそれに安心した。
加齢に伴って運動量が減ると食欲が減退し、それが筋肉の減少になってやがて山登りができなくなる原因となるが、Oさんにその兆候はなく、自己管理がしっかりできているような印象であった。

歩みはゆっくりで先を行く管理人がなんども立ち止まってはOさんを待つことがあったが、それは脚力の弱さや疲れからくるものではなく、疲れずに歩くためのOさんの登山スタイルであると知った。
休憩で立ち止まったときに呼吸がほとんど乱れていないことがそれを示していた。

女峰山の山頂に立つのに実に6時間を要したが無事に下山を果たし、Oさんは自身の登山人生の一頁に、登山口からの標高差1140メートル、累積標高差2200メートルという誰に誇ってもおかしくない経験を付け加えたのである→詳しくはこちらの記事で。

来年は男体山に登りたい、それが帰り際にOさんが漏らした言葉であった。

そして今日、この日、明日の男体山登山を前に足慣らしとしてOさんが選んだのが鳴虫山であった。足慣らしとするなら丸山(標高差329m、累積標高437m)や高山(標高差300m、累積標高471m)といった登りやすい山が日光にあるが、それらよりも厳しい鳴虫山(標高差524m、累積標高701m)を選んだのはいかにもOさんらしい。
登山口からの標高差が1200メートルもある男体山に登るには、低山とはいえ前もってそれなりに厳しい山に登っておきたいという気持ちがあるのであろう。
それが男体山登山を翌日に控えて吉と出るのか凶と出るのか、管理人にはわからない。
いや、凶と出るのはむしろ管理人の方かもわからない。

結果(GPSはHOLUX m-241を使用した)
・歩行距離:8.8キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:4時間55分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:914メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

鳴虫山は登山口まで日光駅からわずか1キロという立地の良さに加えて4月下旬から5月半ばにかけていろいろな種類のツツジ、カタクリが咲く山として人気が高く、花の季節は賑わう。
が、花が終わってしまうと登山者の姿はパタッと途絶えて閑散とし、そのギャップに驚く。これほど明暗のはっきりしている山は他にないのではないだろうか。


登山口を入ると途中、神ノ主山(こうのすやま)を除いて山頂まで展望が得られないことを覚悟すべし。
道幅は狭くまた、この季節になると木が生い茂って日差しが遮られるほど林は深い。


コアジサイ


しっかりした足取りで着実に歩を進めるOさん。
安心して見ていられる。


神ノ主山(標高842m)に到着。


鳴虫山は緩やかながらアップダウンが連続する。
特筆すべきはその多くは木の根が露出していて歩きにくいのだ。
よそ見をしていると木の根に足をとらえられ、おっとっとということになるので注意を要する。


オトシブミの揺籃。
中に卵が入っている。


アップダウンの上りもこんな具合。


木の根が露出した尾根を慎重に下っていく。


山頂にはちょうど2時間半で着いた。
先着は中年のご夫婦2名。
展望は女峰山と赤薙山が見えるだけ。
男体山は木々の葉にじゃまされて見えない。


山頂で 時間をかけて昼食とした後、下山することにした。
鳴虫山は低山ながら地形は急峻で谷が深い。
また、尾根の分岐がいくつかあって迷い込みやすい。
ここなどロープがなければルートと違う尾根に入ってしまいそう。


ギンリョウソウ発見。


神ノ主山に戻ってきた。


歩き始めて4時間47分で下山。
駐車場(登山口近くのTIMESを利用/一日400円)まで3分という近さだ。
さて明日のための足慣らしになったでしょうか?