爆風の安達太良山、すさまじい風に千鳥足ながら楽しく下山

2020年8月17日(月) 曇り/爆風

管理人が日光でペンションを営んでいることはこのブログでなんども書いているし、プロフィールでも紹介しているが、日光という観光地でありながらペンションの客層は観光を楽しむ人よりもむしろ、登山やハイキング、スノーシューといったアクティビティ系の人の方が多い。
それは管理人自身が山歩きを趣味としていて、ブログに山行の記録を紹介していることが理由とし挙げられるであろう。ブログを見て予約する人が多い。

そして、日光は登る山に不自由しないからそれらアクティビティ系の人は次は別の山に登るために来てくれるという好循環を生んでいる。
埼玉県に住むKさんもそのひとりで、きっかけは管理人がガイドを務めるスノーシューツアーに参加したことだ。その後、スノーシューツアーへの参加はもちろんのこと、それが発展してこれも管理人がおこなっている読図講習会に参加、さらには管理人がここ数年、恒例の如く登るようになった福島県の百名山に大変な興味をもってくれるようになり先日、電話で安達太良山と磐梯山の情報を求められた。
管理人の知りうる限りの情報を提供した上で日程を聞いたところ、お盆明けの17日と18日に予定しているとのことだった。

ここまで書けばもう読者にはおわかりだろう。
そう、この山行記録はKさんと管理人が一緒に登っている内容である。
安達太良山が初めてのKさんのために電話ではもどかしく、頼まれもしていないのに現地まで行って情報提供してきた、というのが今日のブログのオチということになる。

行程表(各地点は地理院地図と昭文社「山と高原地図」に基づく)
沼尻登山口(8:00)~船明神(10:25)~安達太良山(11:00/13:10)~鉄山(14:00)~胎内岩(15:03)~沼尻登山口(17:05)

メモ
・歩行距離:15.4キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:9時間5分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:1540メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

安達太良山の西玄関、沼尻登山口には7時に着いた。
管理人の目覚めは早い。
加齢に伴い深夜3時、4時には目が覚める。
寝不足は感じない(寝るのも早いからね)ので寝床でネットのニュースを読んだり天気予報をチェックしたり、最新ブログの誤字脱字をチェックしたりしているうちに朝を迎える。

この日は4時に車内で目覚め、天気予報をチェックした後、午前中のエネルギー貯蔵のためにお湯を沸かして炭水化物たっぷりのカップうどんを作って食べ、7時過ぎに出発すれば間に合うところを、気にかかることがあって6時過ぎに「道の駅猪苗代」を発ち、沼尻登山口へと向かった。

山頂で待ち合わせることになっているKさんは埼玉から郡山まで新幹線で行き、郡山からこの時期だけ運行する(しかも1日1便)バスで安達太良山の東玄関、奥岳登山口に9時頃、到着する予定になっている。
奥岳登山口から山頂へはくろがね小屋を経由するルートを勧めておいた。
東側からだとロープウェイを降りて歩き始めるルート、スキー場を経由するルート、勢至平ルートというように4つのルートがあるが、管理人の経験ではくろがね小屋を経由するルートが安達太良山らしさを味わうのにもっとも相応しいように思えてKさんに勧めたのだ。
Kさんが奥岳を9時半に歩き始めたとして、くろがね小屋ルートだと山頂には12時半に到着するはずだ。
それに合わせて管理人も出発すればいいがそれにはKさんと同じく9時半にスタートすればいい。
ここでふと、Kさんが予定を変更してロープウェイを利用した場合どうなるか、ということを考えた。そうすると奥岳登山口から山頂まで1時間半すなわち、11時に着いてしまい、Kさんは管理人の到着を待たなくてはならない。

じつはこの日、山の天候を示す指標、いわゆる「てんくら登山指数」は登山に不適な「C」になっていた。
雨が激しく降っている場合、Kさんがロープウェイを利用することは十分に考えられる。
雨風の中、遮るもののない山頂でKさんを1時間半も待たせるわけにはいかない。
ここは安達太良山をよく知る管理人が待つべきであろう、そう判断し、沼尻到着から1時間待機して8時に歩き始めた。
11時には山頂に着くからKさんを待たせることはないであろうというのが管理人の読みである。

今回の山行はKさんの希望もあって同じルートのピストン山行ではなく、東の奥岳登山口から上り始めて西の沼尻登山口へ降りるというもの。
それには管理人は沼尻登山口に車を置いて歩き始めるという方法がベターだ。
奥岳登山口から山頂へのルートに危険箇所はまったくなく、それにKさん自身の登山歴からも問題はないと判断した。

初っぱなから長文になってしまった。
画像は67枚アップしてあるので先を急がなくては。


沼尻登山口に建っている鎮魂の碑。
詳しいことは過去のブログを→こちら(8時50分撮影の画像)


緩やかな斜面を登っていくと白糸ノ滝展望台と出合う。


硫黄川が流れ落ちる滝だが庵滝は400メートル先に小さく見えるだけ。


ホツツジが盛りを迎えていた。


シラタマノキ


沼尻登山口からのルートはある地点までなだらかな傾斜で歩きやすく、花が多いのもいい。


赤い実をつけたオオカメノキ。


霧が立ちこめ視界不良の中を進む。
雨が降ってこなければいいのだが。


道はここで分岐する。
左へ行くと鉄山への近道だがKさんと出合ってからの下山ルートに決めてある。


同じ場所から下を覗き込む。
晴れていれば硫黄川と昔の湯の花採取場、麓の旅館に温泉を供給する湯導管が見える。


先ほどの分岐から先はギャップが大きくなおかつ、泥濘んだ箇所が多く、とても歩きにくい。


期待に違わずツルリンドウを見つけた。


アキノキリンソウも多い。


ゴゼンタチバナ


ノリウツギ


シラネニンジン


相変わらず霧の中を歩く。


マイヅルソウの実。


アキノキリンソウの群落。


再びツルリンドウ。


イタドリ(たぶん)


泥濘はいたるところにあって靴を汚す。


マイサギソウ


ここで樹林帯から抜け出すと崖の上に立っていることがわかる。
沼尻ルートの面白さはこの辺りから始まる。


管理人が初めてツルリンドウを見たのがやはり安達太良山であった。
花は紛れもなくリンドウなのだが蔓性であるのが他のリンドウと際だった違いであり、蔓性ゆえに花は上を向いていたり横を向いていたり下を向いていたりと定まらない。
中には絡む相手がないために地面に沿って生長し、地面の上で花を咲かすものもある。


上に向かって咲いたり下向きに咲いたりと、面白い特徴を持つ。


花の付け根から斜め上に向かって延びているのが蔓。


コケモモ


リョウブ


ネバリノギラン


歩き始めから降りそうで降らないという微妙な空模様だが、「てんくらC」すなわち登山に不向きな天候でないことに助かっている。


このルートは硫黄川への分岐を過ぎると障子ヶ岩の上を歩き一旦、岩を下って再び岩に乗り、安達太良山に至るといった変化があって楽しめる。
ここは岩を下って次の岩に乗る手前にある小さな沼(画像左)。といっても霞んで見えないが。→晴れていれば


ヤマハハコ


小さな沼を過ぎ、再び岩の上を目指す。


ここが入口。


岩の上に乗りしばらく歩くと船大明神。
山なのに「船」と名のつく神社というのが面白いが、本殿は福島県本宮市の安達太良神社で、船大明神は1147年にこの場所に勧請されたとある。→こちら


安達太良山を象徴する沼ノ平。
安達太良山は今も活動している火山群で、沼ノ平は火口のひとつ。1996年9月に噴火。その際に硫黄性の有毒ガスが発生したことでそれまでここを横切る登山道があったが以後、立入禁止となった。


沼ノ平まで来ると安達太良山がすぐ目の前に迫ってくる。
山頂にいる人の姿も見える。
先ほどから風が強くなってきているのを感じる。
やはり「てんくらC」なのかな?


強風が幸いして雲が切れ、遠くの景色が望めるようになった。
中央に見える尖ったピークは篭山(1548m)。


山頂(乳首)へは予定通り11時に着いた。
それにしても風が強い。
カメラを構えた身体が右へ左へと揺れ動く。
写真を撮り終えるとすぐ乳首から降り、手近の大きな岩に身を隠してKさんの到着を待つことにした。もしもロープウェイを利用するならそろそろ着く時間だし、くろがね小屋ルートであれば到着は12時半だ。
それをいちいち確認はしない。面白みがなくなるからね。


12時25分。
Kさんが登ってくるのが山頂にいて見えた。
やはりくろがね小屋ルートにしたのだ。
ベテランのKさんらしい選択だと思った。
合流してまずは山頂で記念撮影とした。
管理人は防寒用に雨具を着ているがフードや手首、裾から風が入り込み、着ぶくれをしたような様相。


Kさん(中央)は友人のOさんと写真を撮り合っているが、近距離にいても風の唸りで話し声がかき消されて聞こえない。


先ほどの管理人と同じように乳首を降りて岩陰で昼食とした。
これが本来の安達太良山からの展望。


さて、これから鉄山に向かって歩き、胎内岩くぐりを経て沼尻登山口に下山するわけだが、この風は手強い。


風の強さは凄まじく、こうして身を低くして耐えること度々、数歩歩いてはまたしゃがんで風に耐えるといった繰り返しだ。
幸いなことに雨をもたらすような気圧配置でないが、この風に雨が加わったとしたら低体温症は間違いなかった。


左に沼ノ平を見ながら爆風の中を進む。


鉄山が見えてきた。
風さえなければ快適な稜線歩きが楽しめるはずだ。


はるか遠くに下山で通過する硫黄川が見える。


東にくろがね小屋が見える。
くろがね小屋は老朽化のため今年3月31日で営業を終え、新しく建て替えると聞いていたが、Kさんによると、人の気配はなかったものの営業しているのは間違いないとのことだ。
後日、くろがね小屋のホームページで、工事の都合で営業が一年間延びたことを知った。
風情のある人気の山小屋なので取り壊すのに忍びなく、営業期間が延びたのはくろがね小屋ファンにとっては朗報だろう。→建物内部


尾根が細くなり風で飛ばされたらひとたまりもない。
早くあの茂みの中に入りたい。


鉄山直下の急登。
茂みの中は適度な風除けとなりホッとする。


茂みから抜け出し鉄山に到着。
風は再び強くなる。
それにしてもKさん、この強風の中、ピースサインで写真に収まるとは元気だ。


おぉ、避難小屋だ。
安達太良山山頂から強風にさらされてきたのであそこで休憩し、体力を回復しよう。→建物内部


避難小屋脇のハクサンフウロ。
植物の生活の知恵なのか、ちゃんと風の来ない場所に生育している。


避難小屋で10分ほど休憩し歩き始めると不思議なモニュメントと出合う。
これも慰霊碑である→こちら(13:42の画像に詳しく)


見えてきたぞ。
沼尻ルートの面白さのひとつ、硫黄川と旧硫黄採掘場の荒涼とした光景だ。
ここからしばらくの間、平らな稜線を歩くと道は急降下してあの硫黄川に出る。


岩壁の上の道を進んでいくとここで道が途切れる。
一昨年、初めてこのルートを歩いたときなど道がないことに戸惑い、右往左往したことがあったが今は大丈夫だ。


途切れた場所から左下を覗くといくつもの大きな岩が積み重なっているのが見える。
これが胎内岩くぐりだ。
積み重なった岩に抜け穴があって身体を横にして通り抜けるようになっている。

胎内岩を抜け出すとこれまで歩いて来たルートが一望できる。
あんな岩の上を歩いて来たのだなぁ!
風は完全におさまった。


急降下がしばらく続き、いよいよ硫黄川への下りに差しかかる。
地面は細かい火山礫なので滑る。


硫黄川に降り立つと幾本もの沢と出合う。
沢は無色透明で美味い水が飲める、ということはなく、地中の硫黄分を含んだ水は酸っぱく、飲み込むことはできない。


硫黄川本流と源泉を旅館に運ぶ湯導管が見える。
荒涼としてなんともいい雰囲気ではないか!


熱い源泉は湯温を下げるのと同時に硫黄臭を取り除くため(管理人の推測)一旦、木桶に貯めて、次の湯導管に流すようになっている。


硫黄川で十分な時間を費やし、沼尻登山口に向かう。
急斜面を這い上がると朝歩いた道と合流するのでここを右へ歩いて行く。


強い風の影響で稜線上を千鳥足で歩いたこともあり、山頂から4時間弱かかって下山した。
KさんとOさんは裏磐梯のペンションに泊まるため、このすぐ下の田村屋旅館で別れることになっている。
明日は安達太良山と並んで地元の人に人気のある磐梯山の予定だ。
天気は今日とはガラッと変わって「てんくらA」となっている。
どうか当たりますように、と神頼み!!