2016年1月1日(金) 天候:快晴、気温:プラス3~5度
志度淵川堰堤~展望地~岩屋観音~P1058~鳴虫山~合峰~化星の宿~銭沢不動尊~鉄塔~愛宕の猪像
新年早々、古賀志山の岩場で怪我でもしたら縁起が悪いと思い、元旦の今日は近場の鳴虫山をおとなしく歩くことにした。
幸い、これまで古賀志山では事故を起こしていないがテンション上昇ぎみの管理人ゆえ、今後、どのような事故を起こすかわからない。そこで安全祈願を、とは思うものの神社やお寺に事欠かない日光に住んでいて、東照宮などは大混雑するのを知っているからわざわざ出かける気にはなれない。そもそもこの歳になるまで安全祈願などやったことがないのだ。やり方もわからない。
昨年は100日ほどを山で過ごした。今年も同じくらいの日数を費やすつもりなので、万一に備えてこのへんで安全祈願をしておきたい。
で、どこでなにをすればいいのだろう?
古賀志山にはあちこちに祠や社、石仏があって信仰の対象になっている。そこで手を合わせればいいのだろうか。でもせっかくなら地元の山にあるそれら信仰物の前に立ってやりたいものだ。
身近なところでは鳴虫山に観音様や修験僧が崇めた祠がある。そこなら観光客は来ないので混雑はない、というか管理人の他に人は絶対に訪れっこないと自信をもって言える(^^)
観音様へ行く途中、鳴虫山に1カ所だけなにも遮るものがなく日光連山を一望できる、お勧めの場所がある。昨夜は管理人が住む霧降の麓でも数ミリほど雪が積もったので、もしかすると日光連山は冠雪しているかもしれない。
観音様はそこからさらにバリエーションルートを登ったところにある。もちろん、観音様に安全を祈っただけで引き返すつもりはない。鳴虫山の楽しさはそこから先の急登、修験道を歩くことにある。
では天気もいいことだし、年の初めだから良い思いをして帰ってこよう。
最後に地図を掲載しておいたのでご参考に。
08:13
正月で行政機関が休みなのを利用して車は旧日光市役所の駐車場に置き、登山口の志度淵川堰堤へ歩いて向かう。この駐車場は下山口とした。
おそらくこれから初詣の車で満杯になるであろう。
08:20
昨年、工事が完了した志度淵川(しどぶちがわ)の巨大堰堤。ここにも駐車スペースがある。
今日は鳴虫山のバリエーションルート歩きなのでここから正面に見える山に入る。道は地理院地図に描かれていない。
昨日の降雪で1センチほど積もっているので、ここで早くもチェーンスパイクを着けた。
また、ルートは部分的に霜柱が立っていたり凍結しているから滑り止めは必須。厚く堆積している落ち葉も斜面では大敵だ。
チェーンスパイクはこの後、山頂直下の階段を除いて着けっぱなしだった。
かつて鳴虫山が修験の場として使われていたことはこれまでのブログで紹介してきた。
池田正夫著「日光修験・三峰五禅頂の道」によれば管理人が写真を撮っている場所はすでに修験道で、ここから見える鬱蒼とした杉林(昔はそうではなかったはず)へと続いている。
同じ場所から帰路に使う尾根が見える。
あの鉄塔の下をくぐって駐車場に戻る予定。
08:50
歩き始めて20分で展望地に着いた。
尾根の北側が伐採されていて遮るものなく日光連山を眺めることができる。
鳴虫山ではあとにもさきにもこれだけの展望が得られる場所はここ以外にはない。
中央やや左が女峰山で中央が赤薙山からの稜線、右端が赤薙山。
男体山。
この山の裏手が戦場ヶ原や湯元といったスノーシューのフィールド。
この分だとまだスノーシューができるほどの積雪には至っていないと思う。
今日、最初の目的地の「岩屋観音」への尾根道。
緩からず急からず、息が上がらない程度の傾斜だ。
09:05
道はやがて別の尾根、「中ソネ」と合流する。
そこに道しるべがある。
これがそう。
池田正夫著「日光修験・三峰五禅頂の道」によれば
道しるべには「右なきむし山」、「左かんおん堂」と刻まれているとある。
そんな予備知識で見てみるとたしかにそう読める。
かんおん堂とは、これから訪ねる岩屋観音のことだ。
道しるべのある尾根を左(東)に少し進むと右へ別の尾根が張り出している。その尾根は短く杉の木の奥にある広葉樹のあたりが盛り上がって見える。
あの地面の下に大きな岩が隠れていて、その岩が洞窟になっている。
初めてここに来たときはそれがわからず、ウロウロしたことがある。
広葉樹の右手から斜面を左回りに下ると岩の全貌が明らかになる。
この岩の谷側が洞窟の入口で、中に観音様が鎮座している。洞窟は大人が立って入れるくらい大きい。
洞窟は真南を向いていて陽がよく当たるので、内部は明るい。灯りで照らさなくても奥に鎮座している観音様が見える。
台座の上に座っているので正確には「観世音菩薩座像」というようだ。奉納は江戸末期と同著に書かれている。
ここで昨年の無事を感謝するとともに、今年も事故なく山を歩けるようにと手を合わせた。ここへはこれまで何度も立ち寄っているので観音様は管理人の顔を覚えてくれているはずだ。
洞窟内から外を眺める。
観音様はなにを見ているのだろう。
管理人、特に信ずる宗教はないが“神頼み”はよくする。古賀志山の岩場から降りられなくなった場合など、神頼みすると気持ちが落ち着くから不思議だ(^^)
ちなみに、正面に見える稜線が地理院地図にある正規のルート。
観音様をあとにして鳴虫山へと向かうことにした。
中ソネまで戻って南下して、御幸町からの一般ルートへと向かう。
葉が落ちて見通しが良くなった中ソネ。
さあ、これからが往路のハイライトとなる(^^)
30度もある傾斜をずり落ちないよう、自分自身の力で支えながら一歩一歩着実に登っていく。
ハイライトというのはその斜度だけでなく、春はこのルートにカタクリが咲き、ヤシオツツジが咲くことも指している。
10:03
ここで御幸町を登山口とする一般ルートに合流する。ロープがあるが一般ルートを歩いてここまで来た場合の、こちら側への立ち入り禁止用のロープだ。
一般ルートはところどころ、視界が開ける場所があって日光連山を拝むことができるが、展望地からの眺めのようなわけにはいかない。
それにグリーンシーズンは葉が茂って視界は悪くなる。
10:20
着いた。
歩き始めて1時間50分。岩屋観音で時間をつぶしたのを含めるといいペース。
鳴虫山山頂に人は、、、もちろんいない。
元旦だものな(^^)
菓子パンをかじって次の目的地、化星宿へ行こう。
山頂の向かい側(北北西)のルートは合峰を経由して憾満ヶ淵へと下山する。いきなりこのような急な階段が待ち受けている。
次の目的地、化星宿は合峰から分岐するバリエーションルートを進む。
合峰手前の尾根に先ほどと同じようにロープが張ってある。
このロープから先も修験道になっていて滝ヶ原峠へと向かっている。いつかは歩いてみたいものだ。
ロープを左に見て一般ルートを進んでいく。
青空と落ち葉の道、冬のトレッキングルートらしくて管理人、好きだなぁ。
11:00
合峰に到着。
石の祠がある。祠は男体山を向いて建っている。男体山も修験の場であったから、祠は修験者を見守る位置にあり、修験者が祈る向きがこの祠だったのかもしれない。
ここで一般ルートと別れてバリエーションルートで次の目的地、化星宿に向かう。
バリエーションルートの入口には注意を促す表示とともにロープが張り巡らされている。
新しい「山と高原地図」にはこの先の銭沢不動尊へのルートが書かれているため、歩く人が多くなったのかもしれない。
ここを下っていくと枝分かれするいくつもの尾根があるので、たしかにわかりづらい。本来歩く尾根と違う尾根に入るとそれは途中で切れ、必ず沢に落ち込むことになる。
銭沢不動尊への方向を示す道標。現地までこれと同じものが3つある。
11:36
修験の跡とされる「化星宿」の金剛堂。夏と冬の修行の場になっていたらしい。稜線上にある。
ネットの情報では化星宿の化星は“かせい“、“きせい“、“きしょう“、宿は“しゅく“、“やど“などと表記されていて管理人にもどれが正しいのかわかっていない。
いずれも「日光修験・三峰五禅頂の道」を基にしてネットに広がったものと思う。
また、同著には化星宿と同じ場所を「気生ノ宿」とも記載してあるので修行の年代や季節、修行僧によって呼び名が違うのだろうか。
ここが宿の跡。
金剛堂のすぐ先に平らな面があってそこが修行のための宿だったらしい。左側(西)が斜面になっていて日光連山から吹き下ろす風を避けられるような立地だ。
11:51
化星宿の稜線を北に向かって歩くとやや東に分岐する尾根がある。そこを300メートルほど下ると広葉樹に隠れて石祠の屋根が少し見える。
木の反対側に回り込んで全体を見るとそれも金剛堂だ。
中には浮き彫りされた像がある。観音様ではないようだ。
なお、この金剛堂の手前にそれほど大きくはないが、鳴虫山には珍しく露岩がある。同著によるとそれは馬頭岩というそうだ。
12:06
元の稜線に戻って北上すると合峰で見たのと同じ銭沢不動への道標があるので、本線から外れて尾根を降りていく。
尾根を降りていくと右手に深い沢があってそこを降りるよう、道標の指示がある。道標の手前にも深い沢があるがそこではない。
落ち葉が厚く堆積し、その下には大小の石と枯れ枝が隠れている。不用意に足をつくと滑って尖った石の上に尻餅をつくことになるから、慎重すぎるほどゆっくり降りたほうがいい。
これが銭沢不動尊。
火防(=ひぶせ、防火のこと)の神様だそうだ。
ここでこれから先のことを考えて大休止とする。
ここに至るまでガレた沢を落差にして110メートル降りた。元の稜線に戻るのにその沢を登り返すのは苦痛なのでどうせなら別のルートで稜線に戻りたい。
それもまた苦痛を強いられることから、ここで力を溜め込んでおく必要がある。
ちなみにこの沢沿いはネコノメソウの宝庫になっている。花好きの方にはぜひお勧めしたい場所だ。
銭沢不動尊は防火の神様にふさわしく、不動明王が祀ってある。
よくある不動明王像は鬼のようなとても怖い顔をしているが、この像は丸顔でどちらかといえばユーモラス。
さあ、これから30度もある傾斜を登って元の稜線に乗ることに。写真だと再現できないがそれはものすごい傾斜。
13:54
元の稜線に乗ったらピーク869の松立山を経由して稜線をずっと辿っていく。
やがて朝、登山口から見上げた送電線の鉄塔にぶつかる。ここも眺めがいい。
このまま下っていけば迷わず旧日光市役所に着く。いや、その前に見ておきたい場所がある。
14:15
旧日光市役所裏手の愛宕山。
ここに馬に乗った勝軍地蔵が祠の中に祀られている。
前に見たときは祠の脇に置かれている仁王象は祠を守るように前面に置かれていたが、工事が始まるのかここに寄せられている。
猪の狛犬。
仁王象と同じく本来の場所から移動して祠の脇にある。
狛犬は犬や獅子とは限らないようでこのように猪のこともあるようだ。
14:22
愛宕山から5分ほどで下山口の観音寺薬師堂に着いた。
ここは目の病を治してくれる薬師如来が祀られているそうだ。目ではなく頭ならいいのにな(^^)
今日のルートは地図に描かれた一般ルートの内側を歩く、いわゆるバリエーションルート。一般ルートに比べると距離が短い分、傾斜が厳しい。最大斜度は30度にもなる。
健脚の方には満足できるものと思うが、脚力が普通レベルの方だと泣きが入るであろう(と思う)。特に下りは滑落に注意。
※赤い線が歩いた軌跡。地図に道が描かれているわけではありません。
登山口から山頂までの標高差527メートルに対して、ルートのアップダウンのうち上昇分を足した、累積標高は1123メートルになる。
鳴虫山は日光山域では低山(1100M)だがなかなかどうして、厳しさの点では他に負けていない。
日光で最高峰の白根山の標高は2578メートル。しかし、一般ルートの菅沼口から山頂までの累積標高は1111メートルだから今日、管理人が歩いた鳴虫山と変わらない。
山を楽しむには標高だけで選ぶべきではない、とつくづく感じる年の初めの山歩きであった。