20登目の女峰山は生涯の思い出となる素晴らしい天気と展望に恵まれた。

2019年10月23日(水) 快晴

画像説明
山頂からの日光連山。右から帝釈山、小真名子山、大真名子山、男体山。帝釈山の奥隣りは太郎山、そのずっと奥に白根山(Argoさん提供)。

不安定な天候が続いている中、期待もせずに22日夜発表の天気予報を見ると明日すなわち、今日23日は終日晴れとなっている。
一昨日見たときは曇りだった記憶があり、今週も秋晴れは望めないと思っていただけにこの予報の変化に小躍りした。
もしも予報が当たれば、通算20登目の女峰登山秋晴れの下で実行できるのだから。

女峰山に初めて登ったのは管理人の登山歴の中では割と早く、2002年のことだった。→こちら
2008年までの7年間で4登、その後2014年までは度重なる怪我でゼロ。再開し、本格的に登るようになったのは2015年からだった。
以後、2017年までに11登、2018年から今年にかけては福島遠征が多くなったため4登と少ないが、通算で19登している。目標は年に5登だ。

今日で20登目かぁ、、、あの女峰山によくぞこれまで登ってきたものだ、と我ながら感心する。
気に入った山であればなんどもなんども繰り返し登る傾向のある管理人は百名山巡りに興味はなく、ひたすら同じ山に登り続ける。
古賀志山は2015年から数えて70登に達し、会津駒ヶ岳は2016年から10回登った。

冒頭の「秋晴れの下で」を強調表示したのはこと女峰山に関しては天候の変化が激しくて予報が当てにならず、行ってみなければわからないという女峰山特有の気象条件があるからだ。
登山口が雲ひとつない快晴であっても、標高が2千メートルを超える辺りから濃い霧に包まれて寂しい思いをすることがよくある。むしろ山頂が晴れているのは稀であるといっていい。
だが、気圧配置の関係で今日は期待がもてる。
20登目の女峰山登山を女峰の神様に祝福してほしい。ぜひとも快晴の山頂であってほしい、そんな神頼みをする管理人である(笑)

今年は今日で3登目。
過去2登は歩き始めて山頂まで4時間後半というタイム(休憩と300~400枚の写真撮影を含む)だったが、これが毎回5時間を超えるようになったら危険信号と思うようにしている。
なぜなら、日頃の食事や体重管理、筋トレや有酸素運動はすべて女峰山に照準を合わせているからである。そうしておけば他の山は女峰山ほど疲れずに登れる、そんな考えなのである。
自己管理をしても5時間を超えることになれば、それは加齢による体力の衰えであることを自覚しなくてはならない。女峰山はそこで諦めるつもりだ。
所要時間の長さ、アップダウンの多さ、累積標高の大きさ、急変する天気のどれをとっても体力が衰えていればマイナス側に働く。女峰山がそれほど甘くない山であることは知っているつもりだ。

予期しなかった天気予報に急遽、身支度を始めた。
往復15キロという長丁場なのでザックの中に行動食をたっぷり詰め込んだ。
しかし、昼食にできるようなものはない。
女峰山以外であれば登山口までの間にコンビニがあるので調達に不自由しないが、女峰山の登山口となる霧降高原キスゲ平は我が家から車で15分。その間、なにもない。
カップ麺は常備しているものの湯を使って調理することは長時間の日帰り山行ではしないから、無調理で食べられるものがほしい。
そうだ、アルファ米にしよう。
アルファ米は非常用として大量に備蓄してある。使いみちは小屋泊まりや車中泊の際にレトルトのカレーや親子丼を載せて食べるくらいなのでなかなか減らない。
熱湯なら15分待てばホカホカの美味しいご飯になるが、水でもかまわない。
いろんな種類がある中で「しそわかめ」を選んでザックに入れた。
途中で注水しておけば女峰山の山頂で食べられる。

一昨日は沼原を起点に約7キロ歩いた。
昨日は一昨日の距離不足を補うために自宅で筋トレと有酸素運動をおこなったが、今日の女峰山を視野に入れておけば昨日のトレーニングは余計だった。休むのが正しかった。今日になって疲れが出なければいいのだが。

昇ったばかりの太陽がキスゲ平を赤く染め上げている。
日の出はずいぶん遅くなりちょうど6時だ。
来月後半になるとこの時間はまだ暗い。今年は10月後半になっても気温が下がらないが、少しずつ冬に向かっていることがわかる。


天空回廊を少し上がって振り向くと鹿島灘から昇ったばかりの太陽が眩しい。


80キロ離れた筑波山が薄墨で描いたように美しく浮かび上がって見える。


キスゲ平のカエデやゴヨウツツジの葉が朱色や真紅に染まっている。


天空回廊の中段、700段目から上を見上げる。
さあ、これから女峰山へ向かうのだと思うとそのルートの厳しさに気持ちが引き締まる。


天空回廊の終段には26分かかってたどり着いた。
700段から上は100段ごとに休憩しながら歩き、体力を温存した。


ここで雨具とスパッツを装着。
ここから先の笹原は朝つゆがびっしりついていてズボンを濡らす。
夏であればすぐに乾くから問題ないがこの時期だと濡れて重たくなったズボンのまま歩かなくてはならない。気持ちのいいものではない。


日光市内を流れる大谷川(だいやがわ)が太陽に向かって昇っているように見える。


うひょ~、富士山が見える。
空気の澄む真冬に見ることはあるがまさかこの時期に、、、
しかも肉眼では見えてもカメラでは捉えられないことが多いのに今日はコンデジではっきり写った。
台風19号による大雨と強風で空気が洗われ、冬以上に空気が澄んでいるのかもわからない。


小丸山に出るとまず目に飛び込んでくるのが赤薙山であり、赤薙山への美しい稜線である。
稜線の南(左側)に木々はないので展望が素晴らしくいい。
歩いて1時間未満という手軽さなのにこのような素晴らしい展望が得られるのは貴重だ。


木々がまったくないわけではない。
背丈1メートルほどのコメツツジが密生している。
とはいえ、それらは展望を妨げるものではない。


北西に展望が開けた焼石金剛に着いた。
ここで先ほど装着した雨具とスパッツを外す。
高原山(鶏頂山、釈迦ヶ岳、中岳、西平岳の総称)は雲に隠れて全貌を見ることができなかった。


稜線が樹林帯に入る手前に絶景ポイントがあった。
赤く染まったゴヨウツツジを手前にして筑波山を撮ることができた。


赤薙山頂直下の厳しい上り。


歩き始めて1時間52分で山頂に到着。
前回9月10日は1時間36分だからかなり遅いが、今日は特に軽量化を図らなかったのと雨具の着脱に20分かかったから実質同じ時間。


鳥居の奥のビューポイントから女峰山を覗く。
雲ひとつない快晴、秋晴れの下、女峰山がよく見える。
とはいえ、それはここまでのことで、これから1時間先、2時間先はどうなるかわからない。
それが女峰山特有の天候なのである。


男体山もくっきり。


富士山も見える。
赤薙山から富士山を見たことなどこれまで記憶にない。
今日はそれほど空気が澄んでいるのだ。


この青空の素晴らしいこと。
つい最近、台風が来たことさえ忘れてしまうような空だ。


赤薙山からアップダウンを繰り返しながら2時間53分で奥社跡に到着。
ペースは遅いが、それよりも今日は女峰山に登れる楽しみを噛み締めながら、安全第一を心がけている。
ここから次のピーク(2209M)への標高差はわずか6メートルだが、それには55メートル下って61メートル上がって得られる。決して楽ではない。


奥社跡の次のピークから派生する稜線に乗るとすぐ、「ヤハズ」。
ここから次のピーク、一里ヶ曽根(2295m)まではほぼ平坦で歩きやすい道が続いていて息が抜ける区間。


いつもならここでペースを上げることが出来るのだが台風19号の強風によるものだろう、いくつもの倒木が道を塞いでいて、そのたびに迂回しなければならなかった。
倒木は決まったようにすべてオオシラビソだった。


ピーク2295の一里ヶ曽根に到着。
女峰山(中央のピークから右に下がった小さなピーク)まであと2キロに迫った。


ここでも富士山じゃ(笑)


一里ヶ曽根から次のピーク2318へ向かってまずは急なガレ場を下る。


鞍部から登り返すところに水場がある。


んっ、水量が少ない。
大雨が降ったはずなのにやけに少ない。
地中から滲出するのに時間がかかっているのかな?


ピーク2318
道はここで南に転じて山頂に向かってガレ場やザレ場、ロープがかかった岩場を上って行く。


北に切れ落ちた斜面につけられた幅30センチほどの道。


ロープのかかる高さ3メートルほどの岩場。


スリル満点の道が終わると女峰山のひとつ前のピーク2463に到達。
三角点がある。


ここまで来ると女峰山の山名板が目視できるようになる。
先着者が2名いる。


女峰神社の祠が見えた。
20回目の登頂が目前となった。


この素晴らしい青空と富士山が見える澄んだ空気は、きっと女峰の神様が管理人の20登目を祝って用意してくれたに違いない。
今日はここでじっくりと喜びを噛み締めよう。


右から帝釈山、小真名子山、大真名子山。
帝釈山の奥に太郎山、そのずっと奥は白根山。


雲がかかっているのは男体山。
その右は大真名子山、その右が小真名子山。


白根山をズームで。


雲海の上に富士山。


歩いてきた稜線を振り返る。


景色を撮り終えて気持ちが落ち着いたところで昼メシを。
赤薙山で注水したアルファ米は規定の1時間を大きく経過し、ややボソボソになったが山頂ではすべてがゴチソウである。
大展望をオカズに残らず平らげ、下山時のエネルギーとした。


昼メシが終わったが下山の前にもう一度、山頂からの素晴らしい眺めを心に焼き付けておこう。
雲がとれた燧ヶ岳。


キスゲ平から女峰山に至る長大で美しい稜線。


先着の登山者がいなくなったのを見計らい、セルフタイマーで20登目の記念とする。


40分という長い休憩をとり、下山を始めた。谷底から上昇気流に乗って雲が湧いてきた。
天気はこれから下りに向かうようだ。


足場30センチの細い道を注意しながら歩く。


ピーク2318まで降りて女峰山を振り返る。


水場のある鞍部を一里ヶ曽根のピークへ向かう。


一里ヶ曽根のガレ場を上がる。


長く平坦な稜線に出てピーク2209へ。
シャクナゲが早くも来年の花芽をつけている。


次はいつ来られるかわからないため、いつもならこの平らな稜線でスピードアップを図るところだが、20登目を果たしたのを噛み締めながら今日だけはゆっくり歩いた。


奥社跡でひと休み。
行動食として持参した「干し納豆」をかじる。


岩場を通過。


赤薙山の手前で左へ折れて山頂を巻く。


小丸山への稜線からは丸山がよく見える。


コメツツジの群落を縫うようにして下っていく。


笹原が平らになるとそこは小丸山。


振り返ると赤薙山そして稜線は濃い霧に包まれて見えない。


さあ、天空回廊の下りだ。
ここまでの下りで膝を苦使したので足がもつれて転げないように慎重に。


こうして10時間に近い女峰山の20登目は無事に終わった。
帰ったら風呂に入り、それから祝宴を始めよう、一人でだが。