2024年10月21日(月) 晴れ
管理人が古賀志山に初めて登ったのは2014年10月だから、今月で丸10年になる。
紅葉が見ごろになるこの時期、日光は平日でも道路の大渋滞が避けられない。
そんなときに奥日光の山に登ろうと思って車を走らせようものなら、登山開始は午後になってしまう。
2千メートルの山でなくてもいい、時間も労力も奪われることなく、標準時間で登山口へ行くことのできる山はないかと思って地図を眺めていたところ、日光市と接する宇都宮市に古賀志山という低山(583m)があるのを見つけた。
さっそく下調べを始めた。
古賀志山をキーワードにして検索したところ、宇都宮市森林公園のホームページに、登山口から山頂へのアクセスが写真付きで詳しく解説してあるのを見つけた(現在は消滅)。
なになに岩場を鎖を頼りに登る、とそんなことが書いてある。
なにやら怖い気もするが山に登りたい一心で行ってみることにした。
古賀志山の登山口となる宇都宮市森林公園へは自宅から35キロなので、湯元温泉へ行くのとほぼ同じ距離。
この時期、湯元へは渋滞のため3~4時間かかるが古賀志山は奥日光とは反対に向かって走るので1時間で着くはずだ。
決行日は10月27日とした。
27日に特に意味はないが、このころ管理人は週に2・3度の山行を課していたため空いている日は27日しかなかったというのが理由である。
登山口手前の駐車場に着いたとき、幼稚園バスが駐まっていたり犬を連れた夫婦がいたり、家にいるのと同じような服装でのんびり散歩を楽しむ人がいたりで、およそ登山口のイメージとはかけ離れた光景に、そうかここは森林公園というだけあって宇都宮市民の憩いの場として利用されているのだなと思った。
富士見峠からの急登を息を切らしながら上がって行くと古賀志山山頂と東稜見晴(とうりょうみはらし)とを分ける鞍部に達し、右に古賀志山山頂が見える。
がその前に、ホームページで紹介されている東稜見晴に行くことにした。
南面が開けていて宇都宮市街が一望できるそうだ。
なるほど、市街地が手に取るようにわかるいい眺めである。
県庁所在地だけあって宇都宮市はさすがに広い。
日光の山で市街地を見渡せるのは我が霧降の丸山(1689m)か外山(880m)、鳴虫山(1100m)くらいしか管理人は知らない。
しかも市街地は申し訳ないくらい狭い。
東稜見晴からの展望に比べたら猫の額ほどだ。
東稜見晴で木々に遮られないように眺めを楽しむには大きな岩の上に立つといい。
だが足下は断崖で、覗き込むには大きな勇気を必要とする。
その断崖のすぐ脇の木々の間から人が出てきた。
なんと、そこには登山道があるようだ。
怖いもの見たさの欲求に駆られてその道の行く先を確かめるため、管理人も降りてみることにした。
踏跡はしっかり付いていた。
踏跡を辿って5分ほど歩くと踏跡は消えてなくなり、そこは茶色に錆びた鎖と古いトラロープがかかった垂直の岩場だった。
そうか、さっきの人はここを上がってきたのか、と腑に落ちた。
でもどうやってこの垂直の岩を上がったんだろう。
もちろん鎖かロープをつかんで上がったのだろうが、なにしろ相手は垂直の岩だ。
手が滑ったら落ちるだろうに、落ちる先は岩だ、痛いだろうに、いや痛いじゃ済まない話だ。
そんな想像が広がってきて足が竦んだ。
退散しよう。
けど、なんだか自分の可能性を引き出せそうな気がする。
そんな印象を持って初めての古賀志山登山を終えた。
岩場に挑戦したのは古賀志山3回目となる翌年4月であった。
以来、取り憑かれたかのように古賀志山にのめり込み、100回までは数えたがそれから今日まで何回登ったのかは定かではないものの、いまでも飽くことなく登り続けているのは10年前の印象が強烈で、そして自分の力量を試すことができる魅力がこの山に備わっているからだろうと思う。
いつのころか、初めて登った10月を古賀志山記念日とし、毎年10月には必ず登ることが管理人の古賀志山への敬意として定着するようになった。
さて話は変わる。
当ブログをご覧になってくれている読者はとっくにお気づきのことと思うが、管理人の今年の山行回数はそれまでと比べて激減している。
その理由は5月30日のブログにも書いたとおり、元日に起こった能登半島地震の災害ボランティアに行くようになり、その時間確保のため山歩きを抑えているからである。
4月から始めて先月までの5ヶ月間、延べ21日を災害ボランティアの活動に費やした。
ただし、日光から活動現場となる能登半島の珠洲市までは、管理人がどう頑張ったって移動に2日かかるから、40日をボランティア活動に費やしている。
その上、雨の心配のない日しか山歩きはしないと決めているから、山に行ける日は限られる。
問題は、山歩きをしていないと体力が著しく落ちるということだ。
近所を早足で10キロほど歩いたり、気が向くと自宅で筋トレをするものの、山歩きの体力を養うにはとうてい及ばないという深刻な現実がある。
結果を先に書くと、本日の山行は最悪であった。
ボランティア活動で痛めた腰の痛みを引きずっている上に、持病ともいえる腸脛靭帯炎を発症して辛かったし、極度な疲労で脚が前に進まなかったりと、昨年と比べて明らかな体力の低下を感じた。
もちろん、加齢による体力の低下は否めないが、それはウォーキングと筋トレで最小限に抑えているはずで、根本は山歩きという、山歩きのためのトレーニング回数の低下が原因とみている。
山を疲れず快適に歩くには日頃の体力作りが大切で、それには山歩きがベストなのである。
山歩きに勝る山歩きのためのトレーニングはない、ということである。
古賀志山は3月以来なので、無理をせず歩こうと思って森林公園の駐車場に早めに着いた。
ところがどうしたことか、駐車場は一般車進入禁止、車道側にはテントが並んでいて、車を駐める場所がない。
昨日で終わったはずの自転車レース(ジャパンカップサイクルロードレース)の名残か、会場がまだそのままになっている。
しかたなく、この奥、芝山橋の手前まで進むことにした。
そこは駐車場にはなっていないが数台置けるスペースがある。
平日だし紅葉にはまだ早いので地元の人も少ないだろうと考えて車を駐めることにした。
芝山橋の少し先に膳棚林道という長さわずか200メートルほどの林道があって、そこが古賀志山の登山口となっている。
ここからは3つの登山口が利用できる。
もっとも多く利用されているのがスタンダードな北コース、隣接して東稜コース、難易度の高い中尾根コースである。
古賀志山記念日の今日、管理人が予定しているのは東稜コースで古賀志山に達しその後、御嶽山、赤岩山、北ノ峰で終わる古賀志山主稜線を歩き、北主稜線で戻る約12キロのアップダウンあり岩場ありという変化に富んだコースである。
登山口は北コース入口のすぐ手前にある。
東稜コースは北コースに比べて傾斜がきついが標高を一気に稼げるので管理人のお気に入りである。
四差路となる鞍部に達するとここからが東稜コースの真髄、急斜面を登っていく。
東稜コースはここで左からくる東南稜コースと交わり、いよいよ岩場へと変わる。
最初の岩は落差5メートルほどだが斜度が60度もある。
鎖がかかっているし足場もしっかりしているので安全ではあるが、ここは鎖に頼らず登る。
途中で下を覗く。
鎖に頼らずとも身体は安定しているが高度感はそれなりにある。
一番目の岩をクリアすると視界が開け宇都宮市街地とその奥に筑波山が見える。
ずっと眺めていたい気分だがここは岩の途中、景色に見とれて落ちるといけないので写真を撮って再び岩を登り始めた。
3つ目の岩は落差1メートル半と小さいがほぼ垂直。
ここも鎖を使わないで登るが管理人、久しぶりの古賀志山は勘を取り戻せずやたらと時間がかかった。
フー、3つとも無事にクリアした。
登るときは緊張さが勝って怖さを感じなかったが、クリアして上から覗くと足が竦むほどの怖さに襲われる。
東稜コースを終えるとやや広い岩の上に出る。
東稜見晴と地元の人が名付けた休憩スポットである。
平らな稜線を5分進むと古賀志山。
道はここから古賀志山主稜線と名を変えて北ノ峰まで岩場の繰り返しと厳しいアップダウンが続く。
次の御嶽山へ行くのに一旦、鞍部へ降りてから登り返す。
御嶽山へ行かず赤川ダムへ行くエスケープルートはここを左へ行く。
余談だが、10年前はここを左に折れて赤川ダムへと下山した。
実はこの先に赤い大きな鳥居が建っていて、そこが御嶽山(御嶽神社)だと思いそれ以上先へは行かずに帰路についたのだ。
その後、鳥居は群馬県に本拠を置く新興宗教のもので、御嶽神社とは縁もゆかりもない神社であることを知った。
10年前の様子→こちら
鳥居は現在、撤去されていて社跡だけがある。
御嶽山は弘化3年(1846年)、古賀志村から請われて木曽の御嶽神社が勧請されたものといわれている。
不思議なことに立派なピークでありながら地理院地図には山名も標高も描かれていない。
標高560メートルの御嶽山山頂は東から南に向かって西面がほぼ180度開けていて実に眺めがいい。
古賀志山山頂ほど広くはないが管理人としては我が日光連山を一望できる展望が気に入っている。
日光連山の展望をカメラに収め、すぐ先に進んだ。
これはコバギボウシかな?
地元でカミソリ岩と呼ばれている5メートルほどの岩。
ここはホールドもスタンスも目で見てわかるので鎖は不要だった。
ただ、上部は狭いV字になっているので大きなザックを背負っていると通り抜けるのに苦労する。
おぉ、そうだ!そんな季節だった、今は。
今日、初めて見る花は咲いたばかりのコウヤボウキ。
写真を撮る以外、歩きづめだったのでここで10分の休憩を取る。
朝食が早かったので空腹感もあった。
セブンで買ったチュロッキーを2ヶ、286kcalを腹に収めた。
クリアしなければならない岩はまだ残っている。
鎖がある岩ない岩、古賀志山はいろいろな岩を取りそろえて、登山者を楽しませてくれる。
主稜線の終わり近くにコウヤボウキのミニ群落があった。
はて、コウヤボウキの蕾というのは初めて見るような。
古賀志山主稜線の最後のピーク、北ノ峰(433m)に着いた。
四等三角点がある。
木々に遮られて視野角は狭いが西面に日光連山が見える。
ここまで来て、かなり疲れを感じている。
心配していた太ももの痙攣こそないが、その兆候を感じるので芍薬甘草湯を服用し、いざというときに備えた。
それよりも右膝外側に軽い痛みを感じるようになった。
ここ数年、潜伏していた管理人の持病ともいえる腸脛靭帯炎の初期症状である。
痛み出すとその山行中、痛みが引くことはなく、針で刺されるような激痛に耐えながら歩かなくてはならない、厄介な症状だ。
ここから20分ほど、急傾斜を下っていかなければならない。本格的な痛みにならないことを祈るばかりだ。
北ノ峰を後に林道内倉線に向かって下っていく。
途中、岩場がある。
広葉樹林はやがて檜林へと変わり、ある目標物に向かって進むが、鬱蒼とした桧林で方向がわからなくなるのはいつものことだ。
目標物とはこのプレハブ小屋のこと。
なにかの工事の際に設置されたのが今では廃屋となり、荒れ果てている。
曇天下で薄暗い中、ここを歩くのは勇気を必要とする。
何のことかわからない方へは是非ここを歩いて体感してみるのをお勧めしたい。
檜の斜面を下り切ると林道に出合う。
その林道を突っ切ると別の林道と出合う。
これが林道内倉線で、宇都宮市と日光市との境界となっている。
直進して腰掛岩、ピーク444へ向かうのが予定していた馬蹄形ルート(の北半分)だが、北ノ峰からここまでの下りで腸脛靭帯の痛みが本格的なものになってきた。
痛みは平坦路や登りでは生じない。
が、下りだと膝を少し曲げただけで痛む。
さあて、どうすっかな。
馬蹄形に入るとアップダウンが増えるので痛みに耐えられないはずだ。
よしっ、ここは潔く、馬蹄形を諦めてショートカットでスタート地点に戻ることにしよう。
林道は弁天岩を経てピーク559に達する。
そこまで平坦路と登りなので腸脛靭帯の痛みは我慢できないほどではないはずだ。
ピーク559から先はずっと下りだが、そこまで膝を休ませることができる。
林道内倉線はつい最近まで斜面の崩落を防止するための土留め工事をしていたので、整備されていて歩きやすい。
ずっと奥に見えるコブコブの山、弁天岩を目指して膝を休ませながら歩いて行く。
途中、2つの分岐があるので間違えないように三本枕木橋(これも地元での名称)まで行き、そこから左へ小径を入る。
このルートも岩場が続くが、疲れがピークに達しているせいか10歩歩いては立ち止まりの連続で、少しも先へ進まない。
日光連山が一望できる展望の良さから、地元の人はここで昼ご飯にするそうだ。
そこで弁天岩転じて弁当岩と言われるようになった。
遅い昼食となったがセブンの海苔巻き弁当500kcalで空腹を満たすことにした。
20分の休憩を取り、帰路につくことにしたが、ここにこのルート最後の岩が待ち構えている。
もちろん、鎖を使わないで降りるつもりだが、休憩を取ったとはいえ体力の回復には至っていない。
なんども上り下りしたことのある岩だが、今日はとうとう一度だけ鎖をつかんでしまった。
疲れにくわえてやはり勘が鈍っているのであろう、ホールドを探せなかったのである。
まっでも、これですべての岩場は終わった。
これからスタート地点まで下る一方だが、危険な箇所はなく、あとは腸脛靭帯の痛みに耐えればいいだけだ。
ここでピーク559(直進)と古賀志山(右)へのルートに分かれるので、右へ折れて膝に優しい中尾根に向かう。
中尾根の四差路を北コース目指して右へ下る。
左はピーク559に戻る別の道で、直進は中尾根の続きで知らずに進むと大変なことになる。
北コースを芝山橋へ向かう。
腸脛靭帯炎の痛みは辛い。
だが、長年の経験で痛みを生じさせないような歩き方を習得した。
下りで膝を曲げると痛むので、膝を曲げないように歩けばいい。
すなわち、痛む方の足を真っ直ぐにした状態で先に下ろし、その横に後ろ足を着くようにすれば膝を曲げずに歩くことができる。
この階段はそのようにして下りた。
古賀志山は山域全体、水が豊かだ。
日光のように湖や滝こそないが沢がいくつかある。
ここは伏流水を引き込んだ水場で、美味い水が飲める。
長い距離を流れる露出した沢ではないので病原菌の心配はなく安心である(と管理人は思い込んでいる)。
7時間強という長い山行を終えた。
例年であれば古賀志山記念日には馬蹄形ルートと鞍掛山ルートを組み合わせた16キロを7時間台で歩くが、今日はそれより5キロも短い距離なのに同じ時間かかった。
しかも疲れ果て、痛い思いをしながら。
冒頭にも書いたが、山を快適に歩くには日頃の体力作りが大切で、それには山歩きがベストなのである。
山歩きに勝る山歩きのトレーニングなし、という己に課した言葉をつくづく実感した一日であった。
赤いラインがGeographica(地図アプリ)で記録した本日の軌跡。
本来の馬蹄形コース(青いライン、赤いラインと一部重複)を約700メートル短縮するショートカットコースを辿った。
岩場が好きな人には赤いラインがお勧め。
結果(記録にはGeographicaを使用した)
・歩行距離:12キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:7時間11分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:1575メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)←この数値は大きすぎて実態と合っていない気がする。