評判に違わず見事だったみかも山公園のキツネノカミソリ。

2024年8月2日(金) 快晴・猛暑

昨年に続いて雨の少ない梅雨だった。
レジャーや山歩きにはいいとして、やはりこの天候は異常だ。
人間社会では野菜の生育や水源が心配になるし、山では野生動物の餌となる植物にも大きな影響が生じる。
異常気象は冬の降雪量にも影響する。
冬、スノーシューツアーの売上げを生活の糧としている管理人には、降雪の少なさは経営上、死活問題である。
今年の冬(2024年の)など、ツアーの問い合わせはあったものの雪がないとの理由で断ったケースが数回あった。
来冬も同じ傾向になりそうな予感がするが、10年前までだったら考えられなかったことだ。

さて、今年も猛暑である。
管理人の住まいは霧降高原の麓、標高820メートルにあるから都心に比べれば3~5度、気温が低いはずだ。
だが、日中はさすがに暑い。

この環境でさらに涼を求めるには2千メートル以上の山なら期待できるが、その労力を考えると気持ちが萎える。
そして万が一、コース途中で熱中症にでもなったらレスキュー隊の世話にならなければいけない。
それだけは避けたいというのが管理人の正直な気持ちだ。

では低山ではどうかを熱中症の観点で考えてみると、そりゃぁ2千メートル級の山に比べれば格段に暑いので熱中症のリスクも高い。
低山の暑さは古賀志山(583m)で経験している。
きょう予定している三毳山山域は古賀志山よりもさらに低く、最高標高は229メートルだからどれほど暑いかは想像に難くない。
だが行かないわけにはいかない。
日光ではお目にかかれない夏の花、キツネノカミソリが管理人を待っているのである。

熱中症への備えは万全にしたつもりだ。
飲水で言えばナトリウムとマグネシウム、カリウムを成分とするタブレットを溶かした飲み水と、火照った身体を芯から冷やすよう氷水を入れたボトルをザックに入れた。
他にも脱水で起こる痙攣を抑えるタブレットと漢方も常備している。

さてさて、ではこれから、自宅から600メートル低い山頂を目指して出発することにしよう。
「飛んで火に入る夏の虫」ということわざの如く、気分は夏の虫である。
だが、焼け焦げて死ぬことのないよう、細心の注意をはらうことは忘れまい。

行き先は栃木市と佐野市にまたがる栃木県営の「みかも山公園」である。

栃木県営みかも山公園の東口に着いた。
なにかとやることがあって出発が遅れたので、きょうは禁を破って高速道路を使ってここまで来た。
最寄りの日光ICから入って佐野藤岡ICまで、1620円かけて来たのでその分、見返りを得なくてはならない。
お目当てのキツネノカミソリの群落を観てそして、10キロのハイキングを楽しんで、セブンで買った普段は食べることのない海苔巻き弁当を食べる、それくらいの見返りなら1620円の元は取れそうだ(笑)。
はたして大きな満足を得て気分良く帰宅できるのか、とにかく歩き始めよう。


まずは管理センターに寄ってイラスト地図を入手。
三毳山山域も古賀志山と同じように低山特有の地理院地図にない道があるため、地理院地図を手にしていても歩き慣れないと目的地へ行くのに大回りをしなくてはならないという不自由を強いられる。
ここは手っ取り早く、イラスト地図にしたがう。


さて今日予定しているルートだが、東口(地図上)をスタートして①→③→中岳→大田和群生地→④→⑤→⑦→⑪→⑫→東口という、推定10キロを歩くつもりだ。
お目当ては大田和群生地(という地名)に咲くキツネノカミソリを観ることである。
今年3月、常連さんと歩いたとき、そこにキツネノカミソリが群生していて、花期は8月であることを調べておいた。
標高300メートルに満たない三毳山は古賀志山よりも低く、なおかつ古賀志山より南に位置しているので8月の暑さは想像に難くない。
だが、そこに花があると思えば暑さなんぞ苦にならない(んなわけないか)。
まっ、とにかく塩分をたっぷり含んだドリンクをきちんと飲みながら歩こう。

イラスト地図左端に青竜ヶ岳(229m)として描かれているのが三毳山。
地理院地図では三毳山となっているので管理人もそう呼んでいる。
ちなみに、きょうは登る予定はない。


いやぁ、暑いですな!
笑っちゃうくらい暑い。
3月に来たときは家族連れや散策する人、ハイカーがいっぱいいたのに閑散としている。


一番の四阿(あずまや)のある分岐。
車道はここで左へカーブするが三番の四阿へは右へ行く。


緩やかな階段を登っていったところが三番の四阿。
道はここでも分岐していて、右へ行くと十二番の四阿へ行く。
が、ここは中岳を目指して左に折れる。
予定では十二番の四阿は帰りのルートで通過する。


ここでザックから防虫ネットを取り出して帽子の上からかぶった。
一番の四阿で車道から分かれるとすぐ、小虫(※)の大群に囲まれ、鬱陶しくてしかたがなかったのだ。
一番と三番の間は沢になっていて、水流こそないが地面は多くの水を含んでいる。
それに30度を超えるこの暑さだ、小虫にとって絶好の生息環境といえる。
露出した腕にもまとわりつくが腕を振って歩いていれば小虫の餌食になることはない。
問題は顔と首筋である。
身体はすでに汗をかいているし、昨夜飲んだビールの匂いが小虫を呼び寄せる。
小虫は容赦ない攻撃を仕掛けてくる。
耳の穴といわず鼻孔といわず、目の中にも飛び込んでくるから始末が悪い。
こういうとき、防虫ネットは効果絶大である。
夏の低山の必需品といえるだろう。

さて、冒頭にきょう予定しているルートを紹介した(11:49の画像)。
だが、最後の写真にあるとおり、歩いた軌跡は往復とも同じになった。
距離も時間も、予定の半分で終えた。
防虫ネットをかぶったことで予定を大きく変更せざるを得ない事態となったのである。


小虫は小バエの仲間で「メマトイ」というらしい。
涙に含まれている成分を好み、それで目の周りに集まる習性があることから名がついているそうだ。
ブユと違って刺すことはないが鬱陶しいのは同じだ。


おっ、早くもおキツネ様のご登場。
管理センターでもらったパンフレットには大田和群生地での写真が掲載されているが、ここは三番の四阿からほんの少し行った斜面で、春はカタクリが咲く場所だ。
キツネノカミソリは園内広範囲に分布しているのかもしれない。


中岳へ向かって進む。


ほう、なかなかですな!
この辺りでこれだけの数だから、大田和群生地ではどれほどの数になるのだろう?


ヤブラン(たぶん)
コース上に生えている。


ここで道は分岐する。
管理人は画像の右から来て左、中岳へ向かうが、大田和へはここを左(画像手前)に折れる。


とうちょ~!
標高209.8メートルの中岳に着いた。
三毳山山域で三毳山(229m)に次ぐ高さだ。
管理人の自宅(日光霧降)の標高が820メートルだから600メートルも下にある山頂なのである。
暑い、とは言うまい。
暑くて当たり前なのである。


12:23の画像の分岐まで戻っていよいよ次はキツネノカミソリの群落地、大田和へ向かう。



ここが大田和。
柵の左側が橙色になっていることがわかる。
なるほど先ほどよりもキツネノカミソリが密集している。


あの色がもしも赤であればヒガンバナかと思うほど、ヒガンバナの群落地とよく似た光景だ。
種類も同じヒガンバナ科で、群落を作ること、直立した花茎の上に花をつけること、有毒であることも同じだ。


お~、遠くからでも目立って見える、見事な橙色。
名前の由来は幅狭の葉っぱがカミソリのように見えることからついているそうだが、その葉っぱは今はない。
葉っぱは花を咲かせるための養分を球根に運ぶとなくなってしまい、地上に出ているのは茎だけになる。
それにしても「キツネ」とはどんな意味をもつのか興味深い。

葉っぱのころのキツネノカミソリ


緑と橙の取り合わせがいい。


他の植物の間から30センチほどの茎を伸ばし、先端に数個の花をつける。


斜面を埋め尽くすキツネノカミソリ。


今朝ほど防虫ネットをかぶった三番の四阿が見える。
話は前後するがこの四阿は朝、防虫ネットをかぶるために立ち寄った場所である。
当初の予定では大田和を上から下へ向かって歩いて車道に出て、公園の大外を右回りに歩くつもりでいた。それなのに、朝も通過した三番の四阿を見ることになったのは管理人の大きなミスが原因している。

防虫ネットは虫除けにはいいが写真を撮るときなどカメラのモニターがかすんで見づらい。
それに吐く息がこもって意外と暑いものだ。
そこでメマトイが少ないときはネットをキャップのツバまでまくり上げて歩くことにした。
中岳から大田和のキツネノカミソリが終わるころまでその状態で歩き、間もなく車道というところまで来て防虫ネットを外そうと頭に手をやると、かぶっていたはずの防虫ネットがないのである。

中岳からキツネノカミソリの群落が終わるまでの道程で落としたのは間違いない。
そこで同じ道を中岳へ戻りながら防虫ネットを探すことにした。
すれ違ったハイカーは男性1名だけだ。
男性が管理人の落とし物に気づかなければどこかに必ずあるはず、と確信しながら中岳に向かったが、ない。

往路、中岳までの間、なんどか頭を手で触れて防虫ネットの存在を確かめながら歩いたので、落としたのは中岳から大田和の間であるはずとの確信はあったものの、念のためにと思って往路と同じ道をスタート地点の東口に戻ることにした。
三番の四阿を二度見ることになったのは以上の理由による。

う~ん、とうとう山のゴミにしてしまった。
防虫ネットなどかぶらなければよかった、まくり上げなければよかった、なんども頭に手をやってその存在を確かめればよかった、そんな後悔の念に縛られて気分は沈むばかりだった。
そうだ、男性に拾われてゴミ箱に捨てられたことにしておこう、それならいい。
そんな想像をすることで気持ちを軽くした。


スタート地点の管理センターまで戻り、誰もいない広場で遅い昼食とした。


というわけで、距離も時間も予定の半分で終わった。
気分を変えるため、この後、10キロ離れた渡良瀬遊水地へ向かった。
お客さんを案内するのに相応しい環境なのかどうかをこの目で確かめるためだった。
その渡良瀬遊水地は広大なヨシの原で全貌を見ることはできなかった。
その場所はあるのかもしれないが、全体像がつかめないまま帰路に着いた。
次は下調べをした上で訪れよう。


捕捉したいことがあるのであらためてイラスト地図を掲載。
イラストでわかるとおり、中岳を中心にハイキングコースが多数ある。
公園は東西南北に入口があり、どの入口を利用しても公園の中心部に位置する中岳へのアクセスはいい。
公園の外周はアスファルト道路になっていて散策ができるし、アスファルト道路から一歩中へ入ると整備の行き届いたハイキングコースになっていて10キロ以上のコース設定ができまた、決して楽な道ばかりではない。

こんな環境が身近な場所にあれば毎日でも通いたいところだが、管理人の自宅から70キロ、2時間もかかるため、行くにはそれなりの覚悟が必要である。
とはいえ、行けば必ず満足できるほどコースは充実している。
県内の低山では古賀志山山域、大平山山域とならんで楽しめる山域と言える。

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