2019年8月26日(月) 曇天/濃霧
長梅雨そして、梅雨明け後の悪天候続きは管理人の山行計画を大きくずらす結果となって、今は未達成の計画を天気のいい日に持ってくることで少しずつ消化するようにしている。
今月1日と2日にかけておこなった常連さんとの安達太良山は7月初めの計画だった。花を見るのが目的なので雨の日は避けなくてはならない。二度の変更を重ねてようやく実行となったわけだが、他の計画も同じようなものだ。
山は逃げないから、というありきたりだが便利な言葉を雨で中止にせざるを得なくなった場合のお客さんへのトークとしてよく使いはするが、そうは言っても花の場合は次の年まで待たなくてはならず、その一年は花好きには辛い。
咲く花の種類が違ってもいいから今年どうしても見ておきたい。それが花を目的に山に行く者の心理なのである。
山に咲く花は8月にはほぼ終わって枯れるから、管理人における花を鑑賞する目的の登山は先週の会津駒ヶ岳で終わった。
これからは花がなくても楽しめる山に切り替えて、年内を過ごしたいと思う。
その第1弾として女峰山を選んだ。
なんといっても女峰山へは残雪期から新雪までの間に5回、登ると女峰の神の前で誓ってしまったのだ。約束を違えたらどのような仕打ちをされるのか、小心者の管理人は怖い。
お仕打ちの前に登っておきたい。
今年の初登なのでまずはご機嫌をうかがいに。
実に一年ぶりである。
ご機嫌よく迎え入れてくれるだろうか、それが心配である。
多くの登山者が利用している「てんきとくらす」によれば日光北部の天候は午前中、晴れるとある。これは平地の予報なので山だと割り引いて考えなくてはならないが、久しぶりに出た「晴れ」の予報だ。無駄にしたくはない。
ルートは管理人が大好きな霧降からにした。
女峰山へは他に行者堂、寂光神社、志津乗越から登ることができるが行者堂(東照宮裏の滝尾神社)あるいは寂光神社からだと標高差1700メートル、片道11キロというとてつもないハードな歩きを強いられる。累積標高に至っては2300メートルもあるから現在の管理人の体力ではムリというものだ。
志津乗越ルートはかつては女峰山のスタンダードなルートで人気があったが、数年前から登山口へ行く林道が通行止め(車では)になり往復10キロもの林道歩きを強いられるようになった。今では最も距離が長く、単調なルートになってしまった。
以上の3つのルートは昭文社「山と高原地図」に赤線で描かれているが、もうひとつ特殊なルートとして、女峰山の北に位置する「野門」から歩き始めて帝釈山に登り次に女峰山を目指すという方法がある。地図が読めないと道迷い必至なのに加えて激ヤブがあるのでお勧めできないが、マニアックな登山がお好きな方にはいいかも?
※行者堂から(2017年5月19日)→こちら
※寂光神社から(2016年7月4日)→こちら
※野門から(2016年7月20日)→こちら
行程表
キスゲ平(6:08)~小丸山(6:45)~焼石金剛(7:18/7:20)~赤薙山(7:48/7:53)~奥社跡(8:38/8:43)~一里ヶ曽根(9:29/9:35)~女峰山(10:48/11:15)~一里ヶ曽根(12:18/12:25)~奥社(13:04/13:15)~赤薙山(14:18)~焼石金剛(14:42)~小丸山(15:07/15:15)~キスゲ平(15:37)
メモ(記録開始が遅れたため距離と累積標高はやや少なめ)
・歩行距離:16.6キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:9時間29分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:1833メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)
うむ、天気は上々。
このまま下山するまで変わらないでほしい(それを考えが甘いという。こと女峰山の場合は)。
アサギマダラが好んで吸蜜するヨツバヒヨドリ。
キスゲ平を上って行く今日のルートは花の種類が多いのと変化に富んでいて楽し(苦し)める。
適期としてはツツジが咲く5月をお勧め。天候も安定している。
ノリウツギ
花は茶色に近く変色し、終わりであることを表している。
オオカメノキの実
野鳥に好まれないのかこれだけ熟しても残ったまま。
天空回廊終段の小丸山を見上げる。
ここキスゲ平は高山植物とニッコウキスゲの宝庫として知名度が高い。
階段の他にお花畑の中を歩く散策路があり、花を観ながら歩くことができる。
また、冬は積雪があるときに限り階段や散策路以外を歩ける。
今日は軽量化を目的に重い登山靴をやめてローカットにした。
パンツは動きやすいトレラン用(管理人はトレランをするわけではありませんが)。
ザックの中身ももちろん少なくしている。
階段の700段目にある避難小屋。
4面開放の小屋なので寝泊まりすることはできない。
霧降高原特有の突然の雨と雷の際に駆け込む小屋と考えたほうがいい。
ここまでは傾斜のゆるい階段なのでノンストップで上がってきたが、、、
キスゲ平はもともと市営のスキー場だったが経営難で閉鎖し、リフトを撤去した跡にこの階段(1445段)を敷設した。名付けて天空回廊。
元スキー場のゲレンデはここから本格的な上級者コースに変わるが、それに伴って階段も急になる。
1000段目
傾斜が急になった階段は管理人の脚力だと一気に上るには無理がある。
階段の途中で倒れている管理人が発見され、病院に運び込まれたが息絶えていた、などという事態が容易に想像できる。
冗談はさておき、トレーニングではないので心拍数を上げないように、一定段数(管理人は100段)ごとに休憩を繰り返しながら高度を稼ぐのが疲れないコツだ。
なにしろここは女峰山への入口にすぎないからね。
1445段をなんとかクリア。
上り始めて33分だから現在の管理人の脚力としてはまずまず。
昨年2回はともに30分を切ったのですがねぇ。
まっ、予想外に花が多く観察するのに時間がかかってしまったのだよ、と言い訳しておこう。
階段の終段から5分歩くと標高1601メートルの小丸山に着く。
空気が澄む冬であればここから富士山やスカイツリー、都心の高層ビル群まで見える。
正面に見えるのは赤薙山への美しい(晴れていれば)稜線。
赤薙山までは笹原の間を縫うようにして歩くとガレ場、つぎにまた笹原そして深い樹林帯の道と変化に富んでいる。
それにしても1時間も経っていないというのに登山口から見た青空から一転して濃い霧。これが夏の赤薙山そして女峰山特有の天候なんである。
男体山に登ったことがある人であればその厳しさを覚えておられると思うが、それに比べればこの開放感と優しさはいい。
稜線の南に並行して赤薙山に向かっている立派な尾根が見える。
中ノ沢とヒネリギ沢の出合いから立ち上がる尾根で、管理人は赤薙山南尾根と呼んでいる。
歩く人は極少といっていいが読図ができる人にはお勧めできる(強烈な藪があるので積極的にではありませんが)。
笹原は焼石金剛の手前でガレ場に変わる。
石のほとんどが浮いているので不用意に足を乗せると転倒するので要注意。
なお、この先で再び笹原となり踏跡がいくつもあるが、どれかを歩いていけば焼石金剛で集束する。
標高1800メートルの焼石金剛。
晴れていれば展望抜群。
管理人が主催しているスノーシューツアーでは健脚の参加者に限定してここまで来る。
標高差は460メートル、かなり厳しいですぞ!
霧が出ていなければここから赤薙山がハッキリ見えるが今はご覧の通り。
深い樹林帯を息切らせて上って行くと平坦になり、そこが赤薙山。
三等三角点のある赤薙山。
標高は2010メートルと日光の2千m級の山でもっとも低いが登り甲斐のある山だ。
計画ではここまで90分としたが10分の遅れ。
山での10分は誤差のうちといえるが、実はそうではないことがこれからわかってくる。
赤薙山と次のピーク、赤薙奥社跡まで距離約1.3キロメートル。
女峰山へのルートでこの区間がもっとも厳しいと管理人は考えている。
細枝尾根あり岩場あり、大きな段差あり、その上傾斜がルート中でもっともきついのだ。
この難局をいかにして楽しむか、それがすなわち女峰山を楽しむ術なんである。
おぉ、陽がさしてきたぞ!
これからの道中、期待していいのだろうか?
キオンとアキノキリンソウは花が似ているので遠目には区別がつかないが、よく見るとその違いは歴然としている。
キオンの葉っぱは茎から数センチおきに互い違いに横に出て(互生)花は茎の上にまとまって咲く。アキノキリンソウは葉っぱの付け根からさらに細い茎が出てそこにも葉っぱがつき、細い茎の上に花がつく。
花に見とれて今どこにいるのかすっかり忘れていた。
そうか、次は向こうに見える(霧で見えない?)赤薙奥社跡だったな。
赤薙奥社跡に到着。
ここにも計画より10分遅れで到着。
昔はここに修験のための建物があってその跡だそうだ。
次の目標は北に位置するピーク2209。
一旦、50メートル下って次に60メートル上がる。
ここはその鞍部。
ちなみに地理院地図にはピーク2209に向かって北上し、ピークで進路を西に変えるようになっているが実際にはピークへの道はなく、鞍部からやや西へ向かって斜面を上がっていく。道はちゃんとあるので積雪時(過去に道迷い遭難があった)を除いて迷う心配はない。
ピーク2209からの稜線に乗って初めに出合うのが「ヤハズ」という地名の岩場というかガレ場。
展望はいい。晴れていれば。
ヤハズから始まって一里ヶ曽根で終わる1.4キロメートルの緩やかな稜線はこのルートのハイライトとも言うべき、もっとも楽しめる区間である。
中高木の広葉樹林と石楠花の群落は視界を閉ざすほど密ではなく、日本庭園のようで美しく歩きやすい。
ここまでのアップダウンで疲れた身体を回復するのにちょうどいい。
緩やかな稜線もここ、一里ヶ曽根で終わり再びアップダウンが始まる。
まずはあのピーク2318へ。
それにしても笑っちゃうくらいすごい霧だ。
水場へは歩いて1分とかからない。
雪で埋もれてしまう時期を除いて管理人は水が枯れたのを見たことがない。
今日は荷物を軽減するために水を少なめにしたのでここで補給して先へ進んだ。
水場の脇で見つけたスギゴケ。
たくさんの蒴(=さく。胞子を蓄える袋)をつけている。
ガレ場を乗り越えると女峰山までルート距離でわずか480メートルの地点に差しかかる。
だが難関はまだ残っている。
岩場をよじ登る。
ここは足場がしっかりしているのでロープを使うよりも両手両足で上るほうが安全かも?
最後のピークは三等三角点のある2463。
ここまで来ればもうなんの心配もいらない。
この三角点、登山者の目から避けるようにひっそりと佇んでいる。さて、読者には見つかるかな?
ピーク2463から女峰山の山名板(柱)がはっきり見えるようになった。
標高差はちょうど20メートル。
山頂直下の女峰山神社に到着。
社には田心姫命(たごりひめのみこと)が祀られている。
女峰山神社から見上げた山頂。
西にやや青空が見えるが果たして眺めは?
おっ、今撮るしかない。
女峰の山名板を撮るよりも先に、稜線続きの帝釈山を撮った。
上昇気流のせいで谷底からものすごい量の雲が湧いてきている。
それでもここまで見えたのは幸いだった(左奥は小真名子山)。
三脚で自撮り。
花の写真を撮りながら、休憩を多めにとりながら4時間40分かかった。
計画は昨年より多めの4時間30分にしたが、それよりも10分のオーバー。
昨年6月が4時間1分、同8月が4時間12分だったからかなり時間がかかっている。
今日は荷を軽くしたにもかかわらず初っ端から足が重く、体力の低下を実感していたが、その通りになった。
悪天候続きで山行回数が少なかったのが一因としてあるが、そんなときこそ家トレで筋力低下を防がなくはてならない。アルコール漬けの身体で女峰山に挑むのにも程があるというもんだ。
女峰の神様のお怒りが今日の悪天候と足の重さを引き起こしたのだ、そうに違いない。
社の脇に腰を据えて昼メシを。
気圧低下のせいでパンが入った袋は膨れて今にも破裂しそう。
30分近い休憩をとり女峰山を後にした。
少し進むとこれまで歩いた稜線が一望できる場所に出る。
見よ、この長い稜線を!
雲の先にもまだ続いている。
これを見てしまうと戻る気力が失せるというもんだ。
ロープがかかっている岩場のミヤマダイコンソウ。
花は終わっている。
一里ヶ曽根へのガレ場の上り。
この上に出るとしばらくの間、平坦な稜線歩きが待っている。
快適な稜線歩きはヤハズまで来ると終わる。
この先は足場の悪い急な斜面を下って次に奥社跡を目指す。
こんな場所もあって上りも下りも楽し(苦し)めるのだ、女峰山は。
道は赤薙山の少し手前で二手に分かれるがどちらに行っても山頂の先で交わる。
積雪期はヤセ尾根に変わる危険な場所。
足を滑らせると止まらず、200メートル下の「中ノ沢」で水浴びということになる。
ここから先が天空回廊のあるキスゲ平。
シカ避けの回転扉を押して進入する。
さあ、下るぞ!
と勇ましい掛け声とは裏腹にふらつく足で慎重に下っていく。
スタートしたレストハウスはご覧の通り深い霧に包まれていた。
往きも帰りもほぼ同じ時間(今日は特に雨具の着脱ぎが数回)を要するのが霧降ルートの特徴である。
6つのピークを乗り越え、7つ目のピークがようやく女峰山という実に長い縦走路であるのに加えて、その間のアップダウンが激しく、よほど体調を整えて挑まなくては身体が保たない。
前の晩はアルコールを控え睡眠をたっぷりとって臨むのが女峰登山のオキテなんである。
管理人のように前夜、グラスになみなみ注いだワインを3杯も飲んで臨むのは女峰の神様に叱られるというものだ(要再挑戦)。
Geographicaで採ったログをカシミール3Dで処理し、断面図にしたもの。
グラフの頭が下山時と違っているのは記録開始が遅れたため。
なお、この日は軽量化のためにGarminは置いてきた。