しゃりバテ覚悟で朝食前に丸山と赤薙山へ(無事に生還)

2021年8月1日 晴れ(午後は雨?)

新型コロナが昨年以上に深刻である。
オリンピックが開催されてから激増している。
国がお祭りをやっているのに国民がそれに参加できないのはおかしい。それなら緊急事態宣言なんぞ無視して自分たちもお祭りをして楽しもう。コロナに感染した人たちの心のうちはきっとそんなものだろう。
国がデタラメなことやっている以上、彼らを責められるものではない。
町の飲み屋をターゲットにした緊急事態宣言など効果がないことはずっと前に指摘されていた。
さらにはウイルスは生き残るために変異を繰り返し、より強くなっていくことも周知のことである。20代、30代の若い人への感染が急増しているのがそれを証明している。

過去の冤罪事件を見てもわかることだが証拠が得られないまま先に犯人を作り上げることに地道を上げるのが国の常とう手段であり基本構造である。それと同じ構造がコロナ感染拡大のターゲットとして飲み屋になっているということである。実に単純かつ、お粗末な犯人作りの構図である。
ワクチンの確保数といい根本策が見いだせない状況といい、日本はどうしてこれほどまで国力が低下してしまったのだろう。

こんな状況だと今年は福島遠征を諦めなくてはならないかもしれない。
東京の感染拡大に連れて栃木県も感染者が増え、31日に過去最大となる170名の感染者が出た。
5日連続で100名を超え、間もなく「まん延防止等重点措置」が適用されるであろう。
そんな状況で福島などへは行けない。
管理人は二度目のワクチン接種を終え、感染する確率も感染させる確率も少ない。
だが、気持ちは暗く重い。
日光の山に比べて福島の山はその雄大さ、展望の良さ、湿原の素晴らしさが管理人を惹きつける。
管理人の性癖として、気に入った山ならなんども繰り返して登る。
福島の山にもそれは言えて、会津駒、燧ヶ岳、磐梯山、安達太良がそうである。
これらは言わずと知れた深田久弥「日本百名山」として人気があり、平日でも登山者が多い。
どうしたって気が臆する。
地元の人にである。
管理人はここ数回の山行がそうであるように、せいぜい近場の山を楽しむことにしたい。

管理人、先月29日で齢七十三になった。
厚労省が最近、日本人の平均寿命が男81.64歳になったと発表した。
管理人は平均寿命に着実に近づいているわけだが問題は、健康的に生きられる「健康寿命」はそれより10歳も早いということである。
ということは日本人の健康寿命は現在、72歳。
管理人の健康寿命は尽きているということになる。
昨年は帯状疱疹とその後遺症の神経痛で登山から4ヶ月ばかり遠ざかったし、今年は胃潰瘍を経験した。睡眠障害があるし腎臓も悪化傾向にある。
それほどに加齢というものは人間の身体をむしばんでいくのだということを実感した。
とはいえ、足腰の衰えはまだなく、病気の合間合間ではあるが山にはまだ登れるということも実感している。

実は七十三になって最初に登る山は女峰山に決めてあった。
ガイド登山を除きここ数回の山行は女峰山を視野に入れたものであった。
7月29日以後、天気予報を欠かさずウォッチしているが、好天の下で女峰山に登れる見込みがないことは各社の予報を見比べてもわかる。この夏の天候もまた、不順と言っていいだろう。
これまで21回、女峰山に登った経験から、女峰山が一日中、晴れていたという日は稀だ。
それがこの山を特徴づけるものであり、それを承知で登る覚悟が必要なのである。
だが、齢七十三の記念に登るのであればせめて山頂では晴れていて欲しい。
予報を見る限りその日が訪れるのはいつになるのか、まったく見当がつかない。
であるなら、女峰山を視野を入れたシミュレーション登山をおこない、いつでも登れる身体にしておこう。

スタミナを要求される女峰山登山はその日の体調によって成功するかどうかが決まる。
そのためにはシミュレーション登山はできるだけ過酷な状況下で行った方がいい。
女峰山と同じ状況を設けるのは無理だがここはひとつ、より長い時間スタミナを持続させるための方法として、朝食を食べずに山に登ってみてはどうかという考えが浮かんだ。
スタミナを持続させるには食べるものを食べなくては、というのが普通の考え方なので矛盾していると言えようが、胃の中を空っぽの状態にしておいて、運動のエネルギーを体脂肪から得ようというものである。
エネルギー源として無限とも言えるほど蓄えている体脂肪を効率よく使えばそれが可能なのではないか、最近、そんな虫のいい考え方をするようになっている。
食べ物からエネルギーの元が入ってこなければヒトは体脂肪をエネルギーに変換して使わざるを得ない。
それを今日、試してみようというわけだ。
荷物の軽減にもなるしね。

結果(GPSとカメラはiPhone7を使用した)
・歩行距離:8.3キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:3時間10分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:893メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

丸山、赤薙山、女峰山の登山口となる霧降高原キスゲ平へ向かう高原道路からの赤薙山の眺め。
もっとも高いピークが赤薙山で女峰山はあの稜線のずっとずっと左(西)、赤薙山を1つ目のピークとすると女峰山は7つ目。
丸山は右端のスロープ(キスゲ平)の右奥に位置する。


我が家から登山口となるここキスゲ平まで、車で20分弱。
地の利を生かしてここへはよく来る。
天気はいい。よく晴れている。
好天の日曜日とあって人出は多い。
この時間、駐車場は8割がた埋まっていた。

レストハウスの奥に見える大きな塊が丸山(1689m)で、登るのに普通は天空回廊の終段、小丸山から赤薙山分岐を分け入る。
しかしねぇ、あの階段1445段もあって、管理人には苦痛でしかない。
だから管理人は昔からある登山道を使って丸山を北斜面から登るようにしているのだが、そうすれば階段を回避できるだけでなくルートが変化に富んでいて楽しめるのである。
昨夜の夕飯後、12時間経過して腹がグーグー鳴いているのを我慢して歩き始めた。


丸山北斜面の登山口。
レストハウス手前から入っていく。
周りから大量の雨水が流れ落ちてきたのだろうか地面が抉れているのがわかる。


泥濘んだ斜面を歩き次ぎに沢へ下り、それから岩場を上がって丸山のすそ野をぐるっと歩くと八平ヶ原に出る。
一面の笹っ原にシラカンバが疎らに生育する開放的な場所である。


北東の方向に高原山(鶏頂山、釈迦ヶ岳、中岳、西平岳の総称)を望む。
ここは管理人が主催しているスノーシューツアーの定番コースだが展望が良く、奥日光であれば2千メートル級の山に登らなければ望めない展望がいとも簡単に得られる。


八平ヶ原を丸山北登山口へ向かう。
左に並んだ2本のシラカンバの向こうに見えるのが丸山で、山頂の右が北斜面、左が南斜面。


丸山の北斜面。
緩急の傾斜の中を登って行くが前方に展望はない。


丸山の北登山道は尾根上ではなく、尾根から一段下がったところに敷設されている。
そのためところどころに階段があってそれによって高度を上げるようになっている。
階段は手摺り付きのが2基、丸太を這わせただけのが3基ある。
推測だが尾根は木々が込み入っていてそこに登山道を敷設するのは困難で、そのため木々の少ない斜面を削って道にした、そのように管理人は思っている。
問題は積雪時だ。
地図を読んであるいは、過去の経験で夏道を忠実に歩こうとすると雪が積もって急斜面と化した階段を下ったり、木々のない斜面をトラバースするように歩かざるを得ない。それは滑落と紙一重の危険な行為なのである(2020年に滑落して亡くなるという事故があった)。
積雪時に丸山北斜面を歩く場合は夏道は無視して、尾根上を歩くことを強くお勧めする。


振り返ると八平ヶ原で見た高原山や福島県境の山並が見える。


丸山山頂へは1時間弱で着いた。
今のところ空腹感はなりを潜めている。
昨夜の夕飯からすでに13時間半経過していて胃の中は空っぽのはずである。
血流の多くは筋肉に供給され、内臓に流れていないことが空腹を感じさせないのであろう。
したがってここまで来るのに必要なエネルギーは筋肉に蓄えられたグリコーゲンと体脂肪から供給されているといえる。
ただし、筋肉内のグリコーゲン量は微量であり、アスリートであれば200メートルを全力で走ると枯渇する程度の量らしい。
であれば朝食抜きでここまで来ることが出来たのは体脂肪からエネルギーが供給されていたとみるのが順当である。
これで登山自粛によって蓄えられた管理人の体脂肪は盛大に燃えたであろう。
と思って計算してみる。
ここまで来るのにエネルギーを1000kcal使ったとする。
脂肪は1グラムあたり9kcalのエネルギーを発生するから1000kcal消費するのに体脂肪は111グラム減った、、、げっ、、、オニギリ半分の大きさの体脂肪しか減っていない。
お腹にたっぷり蓄えた脂肪がたった111グラムしか減っていないのである。
管理人の体脂肪は現在、体重の14パーセントだから8.12キログラム、つまり73080kcalものエネルギーを蓄えている。
そのうちのわずか1.4パーセントしか使われなかったとは、、、これが現実なのである。
体脂肪を理想とする10パーセントに落とすには運動によって20880kcal燃焼させて、2.32キログラム減らす必要がある。
一日1000kcalの運動を20日、500kcalの運動であれば40日、100kcalの運動だと200日。
なんとも気の遠くなるような話だ。


丸山山頂から赤薙山と、女峰山へと続くピークを眺める。
これから最初のピーク、赤薙山へ向かう。
もちろん何も食べずにだ。
丸山山頂から赤薙山へ行くため丸山を一旦下山して、小丸山との分岐まで行く。


コバギボウシ
丸山からの下山道すなわち南斜面の登山道は植物が多い。
今は夏の高山植物が数多く見られる。


ノコンギク


シラネニンジン


シモツケソウ


シロバナニガナ


ハナニガナ(ピンボケ)


間もなく丸山の下山が終わって赤薙山へ登り返すようになる。


小丸山から延びている赤薙山尾根と交わるので右(西)へ行く。


緩やかな稜線が赤薙山へ向かっている。
この辺りまで来て、なりを潜めていた空腹感が現れるようになったがそれを無視して上がって行く。


コメツツジ


先ほど下山した丸山を眺める。
標高はすでに丸山よりも高い。


コバギボウシ


ソバナ


先ほどから気になっていたが赤薙山山頂に雲が出てきた。
天気の変わり目なのかな?


コバノコゴメグサ


標高1820メートルの焼石金剛に着いたときは福島方面に灰色の雲が出ていた。


赤薙山山頂を見やるとこちらにも灰色の雲が。
あれだけの青空だったのが歩き始めて1時間半にしてもうこれだもんね。午後は雨になるのかね?


その数分後には上昇気流によって谷底から湧き出た霧が赤薙山を隠すようになった。


山頂直下の急登。


ふ~、なんとか登頂。
先着の男性が先に向かって歩いて行ったのと入れ替わりにトレラン姿の男女3人組が到着した。
彼らはにわかトレランの管理人と違って経験を積んでいるようだった。


鳥居の奥に女峰山と男体山が見られるポイントがあるのだが今日はこんな具合だ。


今日、持参した食べ物はカロリーメイト似の商品でベイシアグループで販売している。
しゃりバテになった場合に備えて持ってきた。
味はカロリーメイトと同じでカロリーもほぼ同じだが価格が安い。
2袋が箱に入っていてエネルギーは350kcal。
軽いのでザックに入れても負担にならない。
空腹感はピークに達しここで食べたい欲求に駆られたが初志貫徹、水を一口飲んだだけで下山することにした。


ちなみに今日の管理人の出で立ちは短パンにコロンビア・モントレイルのトレランシューズ。
ザックもトレラン用の小型のもので水は500ミリのペットボトル1本。


ノコンギク


コバギボウシ


天空回廊の終段、小丸山が見えてきた。
多くの人で賑わっているように見える。
山頂からここに来るまで大きな段差や木の根が露出しているがここから先は障害物もなく(※)、安心して歩ける。
※注意すべきは地面に露出した笹の茎だ。道を横断するように笹の茎が這っている箇所がいくつかある。靴のつま先が茎と地面のすき間にあるのを気がつかないまま足を前に出すと転倒することがある。


赤薙山山頂からここまで時速4キロペースで下ってきた。
汗はほとんどかかなかった。
涼しいわけではなかったが身体は脱水状態になっているのである。


水は100ミリほど残しておいたが飲まなくても大丈夫そうだ。


天空回廊から下を覗くとピンクのシモツケソウが一面に咲いていた。


さあ、ここから駐車場まで走って下ろう。


700段目まで下ると園内を散策するための遊歩道があるので、人で混み合う階段から逃げる。
遊歩道の左右は夏の高原植物が咲き乱れ、本当ならゆっくり鑑賞したいところだが、走る。


小丸山を見上げると斜面一面シモツケソウで埋め尽くされている。


イブキトラノオ。いやっ、オカトラノオだな。


ヨツバヒヨドリ
走りながらも目はつい花に向いてしまう。


マルバダケブキ
大きな葉を持つが笹をかき分けて探したが見つからなかった。


ノリウツギ


タマガワホトトギス


オオバギボウシ


駐車場に下りたって見上げると丸山山頂には灰色の雲がかかり、赤薙山は厚い雲に覆われて見えない。もちろん、女峰山も同じであろう。


焼石金剛から駐車場まで、危険のない場所はできるだけ走った(平地を歩く速度でだが)。
帰宅してシャワー後、朝食を摂ったのは11時だったから昨夜の夕飯を食べ終わって16時間、食べ物を口にしなかったことになる(読者の皆さまにおいては真似はしないよう願います)。
飲水は400ミリリットルと少なく、赤薙山から下山する際は脱水症状に近く、ほとんど汗をかかなかった。
女峰山に登るシミュレーションのため過酷な状況を作り出したつもりだったが、しゃりバテ(エネルギー切れによる運動停止)にならずに済んだのはやはり体脂肪がうまく使われたのではないかと思う。
それほどヒトの身体というものは自己防衛機能がしっかりしているのであろう。
100キロを超えるような山岳レースの場合、一部の選手は最初のエイドステーションは無補給で通り過ぎてしまうそうだ。
体脂肪率が10パーセント未満である彼らのエネルギー源は口から摂取する食べ物だけのはずなので、次のステーションまで数十キロの距離を水の他は口にせず、走り続けるというからその身体能力に驚くばかりだ。

野生の肉食動物は空腹になって狩りをする。
食べたものが胃の中にある限り狩猟本能が働かないからであり、飢餓状態の方が集中力が高まるのかも知れない。
狩りが成功しなければ空腹のまま何日も何日も獲物を求めて歩き回るのが肉食動物の日常である。
獲物が無事に得られるまで体脂肪が活動エネルギーになっているのは間違いない。
野生動物に肥満体がいないのはそうした理由からであろう。
ヒトの身体もそうなればいい。

空腹になってからの行動をどうするか?
すぐ食事にするか間食にするか、それとも運動で空腹感を紛らわすかの違いで健康寿命が左右される、管理人はそう考えている。
体脂肪という無限のエネルギー源がヒトには備わっているのだから、それを活用しない手はない。
但しその前に、体脂肪のエネルギー変換効率を高めるための身体作りというものが大切になってくる。
管理人の目下の関心はそこにある。