新年初歩きの霧降高原丸山は雪深く、苦労三昧だった。

2022年1月6日(木) 晴れ、無風

ここ数年の顕著な気候変動は日光の降雪にも大きな影響を生じさせ、せっかく積もったのにその後の高気温によって溶け出したり、真冬というのに台風のような大雨によって跡形もなく消滅したりと、ここ数年の冬の状況は不安定としかいいようがなく、スノーシューツアーの売上げを冬場の糧としている管理人としては気持ちが休まることがない。

昨年すなわち、2021年で言えば1月初旬は降雪が順調で早々にスノーシューツアーの開幕宣言を出したが、その1週間後の16日に台風並の大雨が降りフィールドは壊滅的なダメージを負った。
すでに予約済みの参加者には状況を説明し、ツアーを中止にする始末であった。
来年こそは昔のように安定して積もって欲しい、毎年そんな願いを込めてシーズンを終えるのだが、自然相手のアクティビティで商売をしている以上、このようなリスクは覚悟しなくてはいけない。

今年は如何に?

日本海側に大雪をもたらせた年末寒波のおかげで日光は昨年末から元旦にかけて雪が降り、スノーシューのフィールドに十分な積雪をもたらせてくれた。
とはいえ、昨年も一昨年も寒波は一時的なものでその後の大雨のせいで雪がなくなったことも記憶にあるので安心するのは禁物である。
が、とりあえず「今」ならばスノーシューができる。
この機会を逃したら明日はない、そんな気持ちで出かけてみた。

場所は管理人の地元、霧降高原丸山で、赤薙山の東に位置する小高い山1689メートル)である。無雪期なら3時間あれば十分に楽しめるお手軽な山である。
すぐ近くにある赤薙山は尾根を別にするため縦走するのは面倒だが、この山を単独で登るだけでも楽しめるのが特徴と言えるだろう。
丸山の良さを挙げると、日光の山には珍しくラウンドコース、早い話が周回できるコースがあることだ。
それと積雪期でも安全に登れる(ただし、鉄則を守れば)山であることも特徴に挙げてよく、管理人は好んでこの山を登っている。

結果(GPSはiPhone7を使用した)
・歩行距離:5.8キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:5時間54分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:635メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

自宅から霧降高原に向かう道路の途中に一カ所だけ、赤薙山を正面にとらえる場所(車を停められる)がある。
画像中央に見える逆三角形の雪面の左が赤薙山でそこから右へ続いているのが赤薙尾根。
今日、予定している丸山は赤薙尾根の末端近くに見える標高1689メートルのこんもりした山である(画像右端)。


丸山周回左回りコースの入口。
持参した道具はスノーシュー、チェーンスパイク、アイゼンの3点だったがここで雪の深さを確かめ、迷うことなくスノーシューにした。


天空回廊と並行した昔からある登山道を進んでいく。
年末から元旦にかけて降った雪は5日を経過してすでにフカフカの状態ではなくなり、といってまだ十分に締まっているわけでもなく、スノーシューを着けていても潜ってしまう重たい雪だ。20センチは潜る。
今日は苦痛を味わうことになるかも知れない、そんな予感がした。


深く潜るスノーシューを雪の中から抜き出すのに苦労して、八平ヶ原分岐まで20分もかかった。


分岐から夏道を沢へ下りるがここは注意を要する場所である。
今日の積雪くらいであればここが道であることがなんとなく分かるが、積雪が多くなると急斜面と化し、道の存在がわからなくなってしまう。
そうなると滑落の危険も増す。


沢から這い上がり、次ぎに丸山の東斜面を八平ヶ原に向かってトラバースするようにして進む。
その道も雪が積もれば隠されてしまうわけだが目をこらせばなんとなくわかる。
ポイントは標高を上げもせず下げもせず、同じ標高を保つようにして歩くことだ。
それが地図に描かれているコースなのである。



足下を見つめる目を遠方に向けると塩原の高原山(鶏頂山、釈迦ヶ岳、中岳、西平岳の総称)が見える。


トラバースも最後になり一旦、沢に降りて登り返すとほとんどシラカンバしか生えていない雪原と出合う。ここが八平ヶ原。
標高はまだ1500メートルに満たないが塩原方面の山並や宇都宮市街の先に筑波山まで見える、展望抜群の場所である。


八平ヶ原からの展望を楽しみながら行動食を食べ、丸山の北登山口までやって来た。
ここから約190メートル上が丸山山頂だが、無雪期であればなんでもない傾斜がこの時期はかなり厳しく感じる。
北斜面に積もった雪は深く、重い。
登山は久しくご無沙汰をしていたので時間を気にせず、ゆっくり登っていこう。


積雪期の丸山の危険性についてはこのブログでなんども書いているが、丸山北斜面の登山道は尾根から5メートルほど東に下がったところにあり、麓に向かって急斜面になっている。
無雪期はなんということのない道だが、積雪期は足を滑らせると急斜面を滑って立木にぶつかって停止する。
そのとき、運悪く頭でもぶつけると死に至る。
リボンに誘われて夏道を歩くのは絶対に避けなければならない。


夏道は始めのうち、尾根上についているが、上の画像辺りで尾根から外れてやや左に向かう。
木に取り付いた地衣類のサルオガセ(とろろ昆布のように見える)がその分岐である。
夏道はこの辺りで左斜めに向かっているが滑落の危険を回避するならサルオガセのある尾根の真上を歩くべきである。
正しい道ではないため木々の枝が邪魔をするが通り抜けることは可能である。


振り返ると県境を越えて福島県の山並が望める。


尾根上から左(東側)を見下ろすと人工物が見える(画像中央)。
夏道に敷設されている木製の階段で、階段を上るといま管理人がいる場所(尾根上)と合流する。
そしてまたすぐ、夏道は尾根から外れる。


夏道はこの左斜面につけられている(画像左端あたり)。
冬山を多く経験している読者であればおわかりだと思うが、安全な夏道も積雪期は危険な道に変わるというのが管理人の経験則である。
地図に忠実に歩いたり、リボンの通りに歩けば安全だなどと思わず、積雪期の山では自分の目で安全を確かめながら歩く技量が求められる。



丸山山頂が目前となった。


標高は低いながらも冬山の山頂に達したという満足感が得られるのが丸山のいいところ。


最近、セブンで見かけなくなったと思ったら復活したのか、行動食として最適な5ケ入りのあんぱんが今日はあった。
1ケで94kcalのエネルギーが得られるので重宝している。
ただし、余ったものを持ち帰っても自宅では食べる気がしない(笑)。


八平ヶ原からは高原山や筑波山が望め、丸山山頂からは赤薙山と赤薙山から女峰山へ続くいくつかのピークが見られる。
奥日光では山頂に立たなければ見ることのできない展望が丸山コースでは労せず(でもないか?)得られるのである。


登山から久しく遠ざかっていて脚力の衰えを心配したが、深い雪に難儀しながらも丸山までなんとか登ることが出来た。
とくれば次に目指すのは赤薙山の麓にある焼石金剛である。
焼石金剛はツアーに健脚の参加者がいる場合に丸山とセットで歩くことにしているため、管理人の体力測定を兼ねて行ってみることにした。
ツアー参加者を前に管理人が先にバテてしまったのでは話にならないからね(笑)。
この雪原は一見歩きやすいように見えるが雪の下にコメツツジが隠れていて、ときおり踏み抜くことがあるから気を抜けない。
それに雪はまだ締まってなく、スノーシューでさえ20~30センチ潜るから疲れる。


焼石金剛に到着。
標高1800メートルからの眺めは抜群で、この時期は福島県の山まで見える。
雪の着き方の違いで福島県の山であることがわかる。
ちなみに、ここまで来ると赤薙山へは1時間とかからない(無雪期なら30分ほど)。


さあ、折り返して帰ることにしよう。
一昨年の9月に帯状疱疹を患ってからはその後遺症の神経痛に苦しみ、昨年の今頃は満足に身体を動かすことさえ出来なかった。
神経痛の次は胃潰瘍にかかり、それも出不精の一因となった。
今年はトレーニングの甲斐あって体力が戻りつつある。
今日が今年初めてのスノーシュー登山だったが、天候に恵まれていい景色を眺めることが出来た。
体力の衰えから一時は山への関心をなくしていたが、今日の山行結果を肯定的にとらえ、今年は山に戻ることにしよう。


稜線を小丸山まで下山。
アップダウンの連続で筋肉痛寸前まで追い込まれたのでここから先はゲレンデを使い、楽して駐車場まで降りよう。


天空回廊のトップからあらためて高原山を眺める。
鶏頂山を中央に右奥が釈迦ヶ岳、左奧にハンターマウンテンスキー場のある明神ヶ岳が見える。


ゲレンデに足を踏み入れて驚いた。
地肌が剥き出しになっている。
丸山の積雪とは大違いだ。
この辺りは風が強いため着雪しないのであろう。


赤薙山稜線もこのゲレンデも、正月休みに多くの利用があったためか荒れていて、スノーシューで歩くには不向きであった。
8日からの3連休は雪の降る気配がない。
3連休で多くの人が訪れるだろうからコンディションのさらなる劣化は否めないであろう。
次ぎに雪が降るまでゲレンデを歩くのはやめておこう。
今年も雪乞いの年になるのだろうか?