快適なトレッキングが楽しめる赤薙山稜線はツツジが見頃。眺めも最高。

2016年5月20日(金) 薄曇り

日光でもっとも低い2千メートル超えの山、「赤薙山=あかなぎやま」は、男体山から始まる日光連山の北西に位置しているので、エリアで区分けするなら霧降ということになる。

アプローチはいい。
日光駅からバスで約30分、バスを降りたところが即、登山口というアプローチの良さだ。
登山口の標高が1340メートルで、山頂は2010メートルだから標高差は670メートルというのも手頃である。特筆すべきは山頂直下まで緩やかな稜線が続いていて、振り返ると関東平野が一望できることだ。空気が澄んだ日であれば遠く、富士山や都心の高層ビル群、スカイツリーが見える。雲海の上に筑波山がぽっかりと顔を覗かせる日もある。

厳しい山じゃないと登った気がしないという人を除いて、ちょっと頑張れば2千メートルの頂に立てる達成感と眺望が楽しめる赤薙山は、2千メートル峰入門編としてうってつけだと思う。
ただイヤな点を挙げるとすれば登山口から標高1582メールまで、階段を1445段も昇らなくてはならないこと。標高差670メートルのうち、階段だけで標高差240メートルにもなる。これが実に辛い。

この階段はニッコウキスゲの群落として有名なキスゲ平に設置されていて、キスゲ平は元々スキー場として利用されていたくらいだから、初中上という異なる傾斜がある。それに合わせて階段が造られているため傾斜は一様ではない。
管理人のように心肺機能の衰えている老ハイカーが連続して昇れるのはせいぜい700段くらいがやっとで、傾斜が急になる700段以後は100段おきに休憩をとらなくては心臓が爆発してしまう。
過去になんどか、荷物を持たずにランニングシューズで昇ったことがあって最短時間は25分だったが、そのときは心臓がバクバクと音を立て本当に死ぬかと思った。

階段トップから先、赤薙山や女峰山に行く場合は荷物を10キロ以上背負うから、時間をかけてゆっくり昇っていくのがバテないコツだ。その場合、目安は40分というのが経験値である。
ちなみに、地図でわかる通り階段の北側に登山道があって、階段ができるまで赤薙山へ行くにはリフトで小丸山まで行くか、その登山道を利用するしか方法はなかった。
そのように以前からあまり利用されていなかった登山道だけに階段ができてからはなおさら、道は荒れて現在は道の大部分が笹藪と化してしまっている。

もうひとつ強いて欠点を挙げれば山頂は樹林帯の中なので眺望が悪い。木々のすき間から男体山や女峰山が見えるが山並みを眺めながら昼メシ、というわけにはいかない。
まっ、それらを差し引いても稜線からの眺望の良さは奥日光の山々では味わえないくらい素晴らしいし、春から夏にかけてはカタクリから始まってツツジやニッコウキスゲ他の花が次々と咲き、登山の楽しさを存分に味わえる山でもある。

今日は宇都宮市のTさんを赤薙山へご案内する日だ。
Tさんとは昨年、管理人が主催するツアーのクリーンハイキングに参加して以来のお付き合いでその後、鳴虫山、高山と登り今日で4回目、登山としては3回目となる。
お母さんの影響もあるのか本格的な山女を目指し、着々とスキルアップに励む努力家である。

参考
2016年1月22日・・・鳴虫山
2016年3月04日・・・高山


雲を突き抜けて天に向かって昇る階段をイメージして設計したという「天空回廊」。
標高1340メートルから始まり、1582メートルまで1445段もある。
この階段脇に現在、シロヤシオとトウゴクミツバツツジが咲き誇っている。


天空回廊の最終段に立って振り返ったところ。
スキー場の上級者コース部分なのでかなり急に見えるでしょ?


ここからいよいよ稜線のトレッキングが始まる。
道標に丸山・赤薙山とあるのはこの先で道が分岐していて直進すると赤薙山と女峰山、右が丸山へと行く。


お~、まだ咲き始まったばかりのトウゴクミツバツツジだ。
葉っぱがまだ出ていないので見応えがあるね。


ここは階段の終段と目と鼻の先の小丸山。モデルは2千メートル峰初めてのTさん。
地理院地図だと小丸山という表記はなく、1601メートルの標高点として描かれている。
登山をするのに地図をよく見る人ならわかることなのだが、ここに建っている木の柱には「キスゲ平 標高1635メートル」と刻まれていて地理院地図とは一致していない。謎である。


小丸山から焼石金剛まで1本の尾根なのだが道は幾筋にも分かれてついている。どの道だったか、薄紫の可憐な花を見つけたのでTさんに尋ねると、即座に「サクラソウ」と返ってきた。
実際にはユキワリソウなのだがサクラソウ科サクラソウ属なので、サクラソウの仲間だ。あながち間違いではない。


焼石金剛に近づくにつれて大小さまざまな石でガレ場となっているところを通過する。
ここでは浮き石に注意して歩くのがポイント。


焼石金剛を示す古い道標。
名前の由来はわからないが推察として、昔の人にとって夕日に照らされて真っ赤に染まったこれらの大きな岩が、まるで焼けた石のように恐れ多く見えたのではないか、そんな想像をする。


開花したばかりのミネザクラ(タカネザクラ)。
焼石金剛を過ぎたあたりから多くなる。


これはオオカメノキ。
葉っぱが亀の甲羅に似ているのが名前の由来で花はアジサイに似て、小さな花の集まり(本花)を取り囲むように装飾花を付ける。写真で白く見えるのが装飾花。


赤薙山と女峰山を分ける道標まで来ると樹林帯となり、眺めはよくない。
また、急登が始まるのもこの辺りから。


地面から木の根が飛び出していたり倒木があったりで決して歩きやすいとは言えないが、それもすぐに終わる。


2千メートル峰初登頂の喜びで笑みをうかべるTさん。
ではここでお昼ご飯にしましょう。あっ、二度目の昼ご飯だった。


昼食に30分ほど割いて同じ道を辿って帰ることにしよう。


焼石金剛まで戻って水分補給、そして小丸山へ。


小丸山からは天空回廊ではなく荒れた登山道を歩いて下山することにした。
手入れは一切していないので道は荒れ放題。雨で道はえぐられ大きな段差があるわ笹藪はあるわ泥濘状の部分があるわ木の根は露出してるわ傾斜は急わで決して歩きやすいとは言えない。
にもかかわらずなぜ、古い登山道を歩くのかといえばツツジを見るのならこの道が最善の選択なのだ。それに階段に比べれば歩く楽しさというものがある。
ただし、安全を第一に考え、チェーンスパイクを装着して万全を期すことはいうまでもない。


シロヤシオとトウゴクミツバツツジが同時に見られた。


ミネカエデ(だと思う)。


シロヤシオ近撮。


霧降高原の麓ではとっくに終わっているヤマツツジがここではまだつぼみだった。


登山口まで降りてきて、トウゴクミツバツツジとシロヤシオとヤマツツジ(つぼみ)という、ツツジのトリオを見ることができた。