お客さんの要望で案内した鳴虫山は雪が深く、思った以上に苦戦を強いられた。

2016年1月22日(金)
志度淵川堰堤~岩屋観音~P1058~(一般ルート)~鳴虫山~(一般ルート)~P1058~(一般ルート)~神ノ主山~有料道路下~志度淵川堰堤

これまで積雪ゼロだったのに今週だけで50センチ以上もの深さとなり、スノーシューも万全となった。明日、明後日はスノーシューツアーの予約が入っているのだが、実は今日もツアーだ。
ただし、スノーシューではなく、チェーンスパイクでの鳴虫山登山。

この時期だからスノーシューをお勧めしたのだが鳴虫山への強い思い入れがあるHさんのたっての依頼で、図らずも雪の鳴虫山に登ることになった。Hさんは昨年6月、クリーンハイキングに参加してくれた宇都宮在住の女性で、職場の同僚から“鳴虫山の良さ“、おそらくツツジの季節のであろうと思うが、を聞きどうしても登ってみたくなったそうだ。

鳴虫山は東武日光駅から800メートルという便利な位置に登山口がありまた、“ツツジの山“としての知名度があるため、ゴールデンウイークをはさんでハイカーがどっと繰り出し賑わうが、ツツジの季節以外は登る人は少なく、静かな里山登山を楽しめる。
あっ、里山と書いてしまったが登山口からの標高差は540メートルありこれは丸沼スキー場のゴンドラ終点駅から白根山に登るのとほぼ同じで侮ってはいけない。それに今日は一般ルートの内側にある尾根を歩くバリエーションルートを予定している。一般ルートの内側だから距離は短いのだが傾斜はきつい。
その代わり、一般ルートとは違った面白さがある。大きな洞窟の中に観音様があったり山頂よりももっと開けた展望地があったり、修験道として使われていた時代の石の祠があったりして、それらを見ながら歩けるのがバリエーションルートの楽しさだ。厳しいけれど。

ツツジの季節の鳴虫山はこちら


9:14
一般ルートとそれほど離れていない場所にバリエーションルートの取り付き点がある。
ちょっとわかりにくいが、一般ルート登山口手前の志度淵川を上流に向かって歩いた堰堤が登山口。

参加者のHさんは登山歴は少なくほとんどゼロといってもいいくらいだが、若さと熱意と根性と体力にものを言わせて雪の鳴虫山に挑戦する。

この尾根は取り付き点の急登を終え、傾斜が緩やかになったところ。
急登時は管理人が息絶え絶えで登ってるから写真など撮る余裕がない(^^)

この尾根の雪はすでに締まっていてとても歩き易いがいくらなんでも登山靴のままでは厳しい。
といってアイゼンは大げさだしスノーシューだと急傾斜は歩きにくい。ここはチェーンスパイクが威力を発揮する。

9:56
山頂よりも眺めの良い絶景ポイントまで来た。男体山から始まる日光連山が丸見え(^^)
厳しいバリエーションルートならではの特典である。

里山でも小動物は活動しているようで、これはリスの足跡。他にはキツネとシカの足跡が見られた。

10:27
鳴虫山と岩屋観音の分岐にある古い道しるべ。修験のために使われた道であることが石柱の古さからうかがえる。
三角形の石柱には左いわやのかんのん、右なきむし山と刻まれている。

観音様の洞窟は道しるべから見て南東の尾根の末端にある。
が、そこが洞窟であることは近づいてみなければわからない。ここにバリエーションルート歩きの際の読図の必要性がある。

ありゃ、なんだこれは?
小動物の足跡はいくつか見たが、これは動物にしては珍妙だ。
あんた、1本足のお化けかい?(^^)
小動物以外、といえばあとは鳥しかない。キジバトかカラスか?

ピーク1058直下になると傾斜はより厳しくなる。
この辺で積雪は30センチ。膝まで潜る雪に一歩、足を出すのに数秒かけて苦戦しながら登っていく。
Hさん、きっとへこたれるだろうと思っていたのだが、なんら問題なし。

12:26
ようやくピーク1058に達した。このロープの先が一般ルートで鳴虫山山頂へはもう少し。

一般ルートには新しい踏跡が付いている。
踏跡の大きさから察して靴は男女のものだ。ただし、歩いた時間差まではわからない。
管理人とHさんが山頂を目指して登っていると下ってくる女性とすれ違った。小さい踏跡の主であろう。独りだ。
踏跡があると登るのが多少楽になる。その女性にお礼を言って別れた。

13:19
思いの外、深い雪に手こずったがなんとか山頂に立てた。
低山とはいえ、ここまで標高差で540メートル登った。Hさんにとっては本格的な登山しかも、紛れもない冬山に登頂し、喜んでもらえたのは言うまでもない(写真の人物は管理人)。

さて、下りをどうするか?
山頂から西へ下って修験道にある化星宿を経由して戻るかどうか、重要な判断を迫られる。
急な下りが続くし尾根は細い。危険性は上りどころではない。
管理人ひとりならいざ知らず、お客さんがいるので安全第一でいきたい。
時間が迫ってきたことだし一般ルートで神ノ主山(こうのすやま)経由で下山することにした。

鳴虫山は展望に恵まれていない。
バリエーションルートの展望地→山頂→神ノ主山という順で、他は木々の間から日光連山が拝める程度。これは神ノ主山からの眺め。
女峰山と赤薙山は見えるが男体山は木にじゃまされて頭しか見えない。

神ノ主山は下山ルートの中間に位置するのでこれより下は積雪がぐっと少なくなる。
そこでHさんに断り管理人のわがままで、雪がなければ歩けないルートに付き合ってもらった。こみ入った桧林を強引に突っ切って志度淵川堰堤に出ようというものだ。
急な下りがあったり斜面のトラバースがあったりで、Hさんには怖い思いをさせた。

宇都宮と日光を結ぶ有料道路まで来た。
ここまで来ればもう安心。

15:50
堰堤のすぐ近くに出た。地図を見ないでかなりいい加減に歩いたがなんとか無事に下山できた。

GPSで今日の記録を見ると、歩行距離6.25キロメートルに対して所要時間は7時間。なんと、時速1キロに満たない。あえてゆっくり歩いたわけでなく、一生懸命努力した結果がこれだ。
膝まで潜ってしまうほどの雪山登山ゆえ、これで十分、満足すべきであろう。

管理人の予想よりも雪が深く下山ルートに考えていた化星宿へは行けず、山頂からは一般ルートで帰ってきた。それでも7時間というのはツアーとしては長すぎだ。脚力の弱い人であれば耐えられるものではない。

自転車通勤に加えて趣味でヒップホップをやっているというHさんは、脚力も心肺能力も抜群で、管理人でさえ厳しいと感じている鳴虫山のバリエーションルートを、楽しみながらやってのけたのには感服する。
あそらく今日、覚えた感覚はHさんの一生を左右するであろう予感が管理人にはする。より高く、より難しい山に挑むHさんの姿を想像してしまう。