お客さんの特別なリクエストに応えて奥日光・高山へ。

2016年3月4日(金)

暖冬、小雪を見込んで早々にスノーシューツアー終了宣言を出すとアウトドアツアーの需要はぐっと減り、申し込みはガイドたる管理人を悩ますツアーばかりとなる。
管理人がホームページに紹介していない、なにもこの時期に、というちょっと厄介な注文が入る。

map今回は2千メートル峰が聳える日光連山から外れた場所にある「高山」だ。
標高は1667メートル、登山口の龍頭滝からの標高差でいうとわずか320メートルなので誰でも登れる山、そんな印象を受ける。
事実、バスを降りたところが登山口になっている便利さから、花の季節になると大勢の人で賑わい人の花が咲いたようになる。古賀志山とほぼ同じ標高差だが、ここで事故が起こったという話は聞かないから安全なのであろう(20数年前、雪崩で登山者が亡くなったことはある)。

雪が少ないとはいえ、まったくないわけではない。数十センチは積もっているからそれなりの装備は必要である。だが、なにを揃えればいいのかというと正直言って前日に下見をしなくてはわからない。要はこの時期の高山は積雪が中途半端なのだ。
雪が深ければスノーシュー、浅ければチェーンスパイク、凍結していればアイゼンという具合に使い分けるというのがいいのだろうが、すべてを持っていくとなると重くなるのでどれかひとつに絞りたい。しかし、身の安全を考えるとアイゼンは必要だろうな、でも雪が少ないと歩くにくいしな、と悩むのがこの時期のツアーのやりづらさと言える。

なぜ、今日のツアーは高山でなくてはいけないのか?
それには理由があった。

申込者のHさんは昨年6月にクリーンハイキングに参加してくれて、次に今年1月、鳴虫山に登った。登山経験は浅いがとても前向きで熱意が感じられる女性である。
ご両親がアウトドア派で子供の頃から山の話を聞かされて育ったというから、いずれ山に取り組む運命にあることを潜在的に自覚していたのかもしれない。

Hさんからこの時期お薦めの山は、と問われていくつか提案した山のひとつが高山だったのだが、高山はお母さんが登ったことがありその印象が良くて、管理人のお薦めと合致したということだ。娘として母親の足跡を追ってみたいという気持ちも手伝ったのであろう、そういう理由であれば即決。
理由が純粋な気持ちからであれば、どんな注文でも受けて立つ覚悟の管理人である。ただし、管理人の能力を超えるご注文は参加者よりも先に管理人がバテてしまいかねないのでお断り(笑)


高山はバス停・赤沼から低公害バスに乗って高山入口で下車、歩き始めるのがポピュラーである。短い登りと長い下りを歩いてバス停・龍頭滝上に至る、歩き易いコースだ。
が、この時期、低公害バスは走っていない。
もうひとつはバス停・龍頭滝上で下車して目の前の登山道を歩き始める方法。実は同じバス停なのに登山口がふたつあり、ひとつは低公害バスの運行路と合流するので意味がない。
よって自ずともうひとつの登山道、長い登りを選ぶしかない。
長い下りを選ぶか長い登りを選ぶのか、という選択になるが、どちらも雪の上を歩くのは避けられないので安全を考えて、登りを長く下りを短くした。
装備はHさん、管理人ともにチェーンスパイクを履き、チェーンスパイクが利かなくなったときのためにアイゼンを携行。急傾斜の上り下りができなくなったときのためにロープをザックにくくり付けてある。

駐車場から登山道を見ると目の前にとても大きな山があることに気づく。
これは高山への尾根の始まりとなる標高1506メートルの山で、急すぎるためそこへの登山ルートはない。北へ巻きながらP1506の西側、1470メートルに辿り着くようになっている。

P1506の巻道は北へ向けての斜面なのでかなりの雪が残っている。

いずれどこかでP1506と高山を結ぶ尾根に乗らなくてはならないが、この辺がもっとも厳しいところ。

ここで急登から逃れられ、1480メートルの尾根に乗った。山頂まで標高で180メートル。ここからは緩やかな登りが続いて最後に急登して山頂、地図はそのように読める。

南に中禅寺湖が大きく見えるようになってきた。

アズマシャクナゲ

管理人、実はこちらのルートから登ったことがなく地図で知っているだけなのだが、山頂直下は等高線が詰まっている。30度くらいの傾斜だ。ここがそうなのだろう。
足を滑らすと危険な傾斜なので片足を雪にしっかり踏み込み、滑らないことを確認してから反対の足を出す。傍目にはかっこ悪いけれどお尻をぐっと下げ、がに股で歩くイメージだ。
Hさんにもそれを強いることになるが、誰も見ているわけではないのでいいでしょう。

ほっ、やっと平らな面に出た。
戦場ヶ原の向こうに日光連山が聳え眺めのいい場所だ。
山頂は近い。

お母さんもきっと同じ場所に立ったのでしょう、山女へと一歩、近づいたHさんである。

景色を眺めたり昼ご飯を食べたりして時間を費やし、下山の時間になった。
下山路は南西を向いていて日当たりがいいので雪はないはず、、、、

と思ったのだが予想に反してこんな怖い場所があった。足を滑らすと谷底へ、ということはないか(笑)

下りだから登りよりは緊張するものの、無事に高山峠まで降りることができた。
ここから車を置いた龍頭滝上まではほとんど平坦だ。
したがって今日のツアーは終わったも同然、と思うのはまだ早い。実はここから高山路の楽しさがある。

ミズナラとシラカンバの広大な林の中をのんびり歩けるのがこのルートのすばらしさだ。
正面に見えるのは太郎山。男体山はこの右に見える。

Hさんが歓声を上げた。木の上に大きな鳥の巣があるという。
木の高さは10メートルに達する。
そうか、Hさんにとって初めて見る光景か。

木はミズナラ。根本の雪は解けていて幹を取り囲むようにドングリの殻が落ちている。
樹皮に3本の深い傷跡がついている。
10メートルもの木に登ってドングリを喰う、鋭い爪を持つ動物とは?
リス?、ムササビ?、テン?、タヌキ?、、、、
種明かしはしない。なぜなら管理人の商売ネタだから(笑)
いや、このような自然の営みを想像するのは各自の自由というもので、答はいろいろ出てくるでしょう。
管理人は参加者の想像力を喚起して答を導き出すのが仕事。

平坦ながら展望がいいし発見もあった。
この辺で雪道歩きも終わりとなる。

ここで市道1002号線となり、しばらくの間、アスファルト道を歩く。

グリーンシーズンはここを低公害バスがゆっくり走る。新緑がとても美しい場所だ。
このまま進むとバス停・赤沼に至るが途中の「しゃくなげ橋」を湯川に沿って下ると龍頭滝上だ。