栗山の月山はツツジの山に疑いの余地なし。だがとても怖い思いをした。

2016年3月25日(金) 晴れ/強風

スノーシューツアーで丸山を北斜面から登ると高原山がよく見える。
高原山は栃木県北にあり鶏頂山、釈迦が岳、中岳、西平岳の総称で、山頂部は日光市と塩谷町との境界線にあるから広い意味では日光の山と言っても差し支えないと思う。
丸山から眺める高原山は雄大で一度の山行で4つの頂に立てることから、いつかは必ず登ってみたいと思っている(写真中央の右手)。

高原山と丸山を直線で結ぶと、その中間よりやや手前に三角形をした雪原とその奥に水面が見える。東電の水力発電、栗山ダムである。
その栗山ダムを挟んで右に月山、左に夫婦山が構えている。
高原山を奥に控え、このふたつの山はまるで高原山を守る仁王門のように管理人には見える。

スノーシューツアーをしているとよほどの悪天候でなければこれらがよく見えるので、お客さんに説明してあげるのだが、管理人は実は高原山にも月山にも夫婦山にもまだ登ったことがない。したがってそれらはどこから登るのか、傾斜は緩いのかきついのか、どんな花が咲いているのかと突っ込まれると話題を変えて逃げるしかない(^^)
もっとも、スノーシューツアーに参加するお客さんに、あそこに見える山が月山ですなどというと “え~、山形県の山も見えるんですか?“ などと言われてしまうから、説明する管理人にそれらの山の知識がなくても差し支えないというものなのだが、、、

それはさておき、月山も夫婦山も地元ではツツジの山として知られている。
日光の山の多くはツツジが豊かで、季節になるとアカヤシオやシロヤシオ、トウゴクミツバ、ヤマツツジ、コメツツジで彩られる。
ツツジの花はどれをとっても美しい。日光はサクラの木がないためツツジがその代わりを務める。ツツジが咲いて春の訪れを知る、というのが日光での季節感だ。

ふと思い立ち、両山のツツジを見に行くことにした。とはいってもいくらなんでも時期が早い。下見のためである。いずれお客さんを案内することもあることだろうから、その前にツツジの密度やルートの難易度、危険箇所の確認をしておきたい。


日光市内にある山とはいえ、ここに至る道のりは遠い。霧降高原道路でキスゲ平を通り過ぎて大笹牧場から栗山に出てさらに川治温泉に向かって走り、途中、日陰牧場に進路を変えたどん詰まりの栗山ダムが月山の登山口となる。
ガイドブックによるとトイレや四阿(あずまや)を備えた広場があると書いてあるのでここがそうであろう。
ではダムはどこに?
そうか、向こうに見える巨大な石積みがダムの堰堤らしい。

南西の方角に日光連山が見える。
ここから見ると霧降高原が手前側になる。

ダムの管理道路に出て登山口を探したのだがここで最初の間違いを犯した。
この道でいいのだろうと思ったらすぐに行き止まりとなり、その先はダムの堰堤であった。戻るのも面倒なので堰堤をよじ登ることにした。

ダムの入口にでんと構える栗山ダムの名板。
地図を見るとここまで大幅なショートカットをしたことになる。

ダムの脇に管理棟があるのだが人っ子ひとりおらず、うら寂しい光景が広がっている。
でもこういう荒涼とした雰囲気っていいなぁ、気が引き締まるもの。

10:54
ダムを左に見ながら管理道路を進んでいくと、今は使われていない資材置き場みたいに荒れた場所に出た。
管理道路はダムに沿って左にカーブしているから、登山口はここに間違いないのであろう。
それにしても冬でこの草だからツツジの季節は雑草が生い茂って大変だろうなぁ。

おっ、案内板があった。
ここを右へ行ったのだがどうやら雪の下に側溝があったらしく、踏み抜いてしまった。

突き当たりを左へ曲がると傾斜が始まった。
積雪は10センチほど。傾斜はかなり厳しい。

なるほどねぇ、登り始めたらすぐヤシオツツジだ。

尾根は明瞭なので道間違いの心配はなさそうだが、道幅は狭い。
これだと追い越しやすれ違いが難しそう。

やがて尾根が広がったが雪がかぶっているため正しい道がどこなのかわからない。
それにしてもこのツツジの数は尋常ではないな(^^)

管理人の今日のいで立ちはチェーンスパイクを履いて手にはピッケル。雪道はこれが一番いい。

北東側が開けて高原山が一望できる。
一度の山行で4座の上に立てる。気力が最高潮に達したら必ず登ってみよう。
実は今日、あの山に登ろうとして家を出たのだが、、、いややめておこう。老醜を晒すことになるから親しい人だけに話しをしよう(^^)

あれが山頂であろう。石の祠が見える。

11:41
山頂に到着。
登山口から50分もかからず登頂できてしまった。しかも道中、ずっとヤシオツツジだ。これなら人気にならないはずはない。
ヤシオツツジが咲く5月は相当な混雑になりそうだ。

山頂に二等三角点の石柱が埋め込まれている。
山頂は狭く10人も立つといっぱいになると思う。また、回りを木に囲まれているのでグリーンシーズンはいまほどの景色は望めないであろう。

駐車場から見た日光連山がより近くに見えるようになった。
肉眼では男体山や女峰山も見えた。

南西の方角に筑波山が見えるが、これも木々に葉が茂ると見えなくなりそう。
総じていえば月山は葉が落ちて見通しが良くなる冬と葉が出る前に花が咲く、ツツジの季節が登山に向いているような気がする。
ただ、冬は果たして駐車場への道が除雪されるのかどうか、わからない。

登山口から50分で登れたのなら下山は40分とかからないはずだ。
それでは面白くないので地図にある南西への尾根を下ってみることにした。
等高線の間隔は登りと同程度なので厳しくはないと思う。

ほう、古賀志山並の岩場ではないか(^^)
高さが1メートルくらいあって短足の管理人は乗り越えるのに苦労したw

眼下に見えるのは今市ダム。
栗山ダムと月山山頂の下を通る地下水路でつながっていて、途中に地下発電所があることが地図に描かれている。
水路はこの急斜面の下を通っているらしい。

12:22
尾根は細く両側が深い谷になっているが注意しながら歩けば滑落の心配はない。ただ一カ所、こんな岩と出合って面食らった。
地図を見るとどうしてもこの岩の先に行かなくてはならない。岩の左に30センチ幅の踏跡があるので辿ると、踏跡は切れて下は谷になっている。とてもではないが怖くて降りる気にはなれない。岩の上にも乗ってみたがそこから先には進めそうもない。岩の右も切り立った谷だ。
この尾根は管理人のような素人の手に負えるものではない、と決断し引き返すことにした。
元来た道を戻りながらも、どうしても腑に落ちない。現在地を確認してもルートは間違っていないわけだし、なにか見落としているのではないだろうか。もう一度、確認してみよう。それでわからなければ諦めて引き返そう。

先ほどの岩まで戻り時間をかけて、今度は岩の右の谷側を子細に眺めてみると、雪に覆われて見えないがここから岩の基部に降りられそうな感じだ。ただし、急傾斜。
高齢ハイカー、下山中に滑落して重傷、というニュースが頭をよぎる。
ピッケルで身体を支えチェーンスパイクを履いた足を雪面にしっかり食い込ませて慎重に下っていくと、尾根との落差が2メートルほどの太い木の根に達した。
なんと、そこにロープが下がっている。ただし、ロープを下りに利用するには短くて役に立たないので、両手両足を使って降りた。

無事に尾根の上に降り立ち振り返るとこんな感じだ。なるほど、こんな仕掛けになっていたのかぁ!
わかってみればなんと言うことはないしまた、こちら側から登っていけばすぐにわかることなのだが、山の表と裏はまったく異なる顔をしている。
一度は引き返すところだった。

再び尾根を下り始めるとこんなところにも山名板がある。もちろん山頂ではないからきっと矢印があったのだろう、消えて見えない。

13:02
尾根はここでふたつに分岐している。
正しいのは北西に向かって延びる尾根だ。その尾根は道路に出るはず。

この尾根もヤシオツツジばかり。

2メートルほどの鎖場があった。
雪がなければ前向きのまま下れそうだがこの雪でそれをすれば確実に滑る。
ここまで来て怪我などしたら元も子もないので、後ろ向きになって慎重に。

傾斜が緩やかになりツツジの向こうに道路が見えてきた。

13:34
道路の行き止まりに降り立った。
そこに尾根を利用したトンネルがあった。地下発電所に続いているのかもしれない。
今日は同じ道を降りればよかったものを下りは別の道にしたために、怖い岩と出遭ってしまい巻道を探すのに手間取った。そこは深い谷へ向かっているので緊張もした。
まっ、でも、ツツジの多さに驚きそれなりに楽しめた月山であった。

マイカーでないと来れないという難点はあるが、駐車場から登山口まで近いし山頂まで1時間未満で達することができるお手軽な山だ。
ツツジの季節は見事だろうと思う。ツツジが咲く5月に登ってみたいがお手軽だけに混雑は避けられないだろう。
いや待てよ、今日下りに使った南西へのルートは距離が長いしわかりづらいので穴場かもしれない。もう1本、別のルートもあるようなのでダム脇から登る混雑しそうなルートは避けられるかもわからない。
いずれにしてもこの5月の様子を見てから決めよう。