奥日光・三岳。たかが10キロ、されど10キロの難コース。迷走しながらなんとか漂着。

2015年02月25日(水) 奥日光・三岳(みつだけ)

10年来のリピーターであるWさんから、スノーシューで奥日光の三岳(みつだけ)に登りませんかというお誘いがあったのは1月末であった。

国道の戦場ヶ原脇を車で走っていると正面に3つこぶの変わった形をした山を見るが、それが三岳であり、実際には4つのピークすなわち1882M、1883M、1901Mそして三岳本体の1944.8Mからなる山の総称である。三角点を有する。

奥日光に数ある山の中では珍しく、登山道がない。だから管理人はまだ登ったことがない。
いや、それだけが理由ではない。地図(正確には地形図)に道がない場所にはずいぶん行ってはいるが三岳に登る気にならなかったのにはワケがある。地図を見るとそれほど広くないエリアの中に4つのピークが平行四辺形の頂点のように並んでいて等高線を見ても尾根と沢の区別がつけにくい。他にも地図には描かれない小さいピークや凹地がたくさんあって地形が複雑すぎるのだ。これが男体山や白根山であったなら地図を見れば地形が頭に浮かぶが、三岳はどうにもピンとこない。
刈込湖へのツアーの際、三岳を仰ぎ見るようにして歩くが木が密生しているし傾斜があまりにも急なのも、物好きを自称する管理人の足を遠ざけている。

そんなへんてこな山に登ろうというのだからWさん、慎重派のくせにずいぶん大胆なお誘いである。
一度目はノラリクラリとはぐらかしそのときは霧降高原の赤薙山(2月4日の記事を参照)へと予定を変更したのだが、今回は二度目のお誘いである。管理人もさすがに真剣に検討しなくてはならなくなった。

二度目のお誘いの後、地図を子細に眺めながら取り付き点を探したがどれも一長一短がある。
距離は短いが35度もある急斜面を登るかそれとも、緩斜面だが距離が急斜面の3倍もあるルートを登るか、管理人ひとりで考えても答えが出ないので昨夜、作戦会議と称してWさんと飲みながら打ち合わせ、今回は緩斜面で行くことにした。決まるまでわずか5分とかからなかった。
他の時間はどうしたかって? 酒と山登りが好きなWさんと管理人との話である、次は錫ヶ岳がいい、その次は奥鬼怒まで縦走しようなどと話はとりとめもなく、深夜まで続いた。

管理人にとって未知の山であるがWさんも管理人もコンディションの良い雪道なら20キロ以上、歩ける体力がある。急斜面の上り下りも問題ない。心配は道迷いであるが地図とコンパス、GPSを駆使すればなんとかなるであろう。
ということで決行となった。3日前のツアーで森の神様、フクロウを目の前で見たのでその写真に掌を合わせ、無事を祈っての出発である。


IMG_9601地形が読めない、時間が読めない上に推定10キロの急斜面の山行なので、負荷を軽くするためにも普段、スノーシューツアーで携行している備品で今日の山行に不要なものは思い切って省くことにした。
ザックもスノーシューツアーで使っている40Lから単独行で愛用している28Lに替えた。
ただし、ツェルトにレスキューシート、無線機、ヘッドランプ、非常食3日分などなど、万一のことがあってもなんとか生き延びられる、最小限の備品は詰め込んだ。それでも5キロほど軽量化できたのでかなり楽だ。


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湯元の源泉から急斜面を10分上がって金精道路に出ると夏道と冬道とに分岐する。
今日は湯元温泉を起点に一周する予定なので雪が積もって歩きづらい夏道を避け、歩きやすい冬道を使って蓼ノ湖経由で小峠まで行くことにした。


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無雪期は入って来れない幻の湖、蓼ノ湖に到着。
ここから小峠までは長い登りだ。


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小峠直下に1メートルほどの雪の固まりが。小規模の雪崩と考えた方がいい。


IMG_9618進行右の斜面から落ちてきたようだ。ここ数日、高温が続いているので気温が上昇するこれからは、雪崩にたいする注意が必要である。
特に蓼ノ湖から小峠へ上がる斜面は管理人の経験から、雪崩の巣と呼んでもおかしくないほど大小の雪崩が発生する。


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小峠の道標の上に立つ管理人。
支柱の上面は地面から230センチあるので今年の雪の多さがわかるというもの。


IMG_9627小峠のすぐ先に刈込湖への道を示す道標があるが、ここでも夏道は冬道と分岐して刈込湖で合流する。
三岳への取り付き点を探すため、夏道の刈込湖方面に進む。


IMG_96302本の赤い線が机上で作成したルート。
上側の線の方が距離は長いけれど易しそうだ。
蛇足だが画像で管理人は、地図の北を上に向けて持っているが必ずしも北を上にするとは限らない。これから進む方向を上にして持つのが基本であり、進むべき方向が西であれば90度向きを変え、地図の西を上にして持つ。


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入れそうな斜面が見つかったのでWさん、どんどん登っていく。
ただし、この先がどうなっているのかは未知。


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なんとか先に進めそうなのでここでコンパスをセットしてコンパスが示す方向に従って歩く、、、のはずなのだが行く手はコメツガの密林である。
積雪は1メートルくらいあるので身体は枝に近く、まるで藪こぎのようだ。雪がない季節であれば苦労はしないのかもわからない。


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地図には凹地がたくさん描かれている。要するに斜面の中に窪みがたくさんあると考えていい。窪みに下りては這い出る作業を繰り返しながら斜面を登っていくのだ。
この山がいかに登山に不向きなのかがわかる気がする。
それに巨大な岩があちこちにあり、それらを迂回しながら進んでいかなければならない。


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おぉ、こんなところに目印となるリボンが、、、
物好きはいるもんだなぁw
しかしリボンに頼らず、自分で設定したルートを辿るのが管理人の一貫したスタイルというものだ。ルートファインディングの面白みもそこにある。特にこのような複雑な山では。
ちなみにリボンは2本見ただけなのでリボンが示すルートと我らのルートは異なっているはずだ。


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管理人の前を行くWさん。今日の山行は管理人がガイドされる側だ。
管理人はコンパスの指示する方向を見ながらWさんに伝えるだけなので楽である。
Wさんとはこうして、ガイドされたりしたりといった山行をしている。
ちなみにこのような未知の山を管理人より先に歩いてもらう場合、相手を信頼しているからこそできることだ。


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尾根だかなんだかつかみ所のない斜面を登っていくが、コンパスの指示を信用するしかない。
長年の勘によるものだが順調に山頂に近づいている、という感じがする。


IMG_9647シャクナゲの群落地帯に突入した。すでに花芽を付いている。このあたりのはアズマシャクナゲであろう。開花は6月末?


IMG_9652ルートに設定したところの多くは深い樹林帯であるがところどころにこのような開けた部分があり、気分が和らぐ。


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こういう密林が多く、そのたびに進路を阻まれ大きく迂回する。
一度、密生した枝の下を腹ばいで進んだことがあった。
ザックを小さい方に替えてきて良かった。


IMG_9656地図にある尾根にしっかり乗って歩いていることがわかる。これだけ尾根がハッキリしていれば迷う心配はない。
空が近くなってきて間もなく山頂であることを思わせる。


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やったー! 山頂に着いた。
が、そこにはなんと山名板があるではないか。こんな山に山名板があるとは驚きである。しかもこの木のすぐ隣にも。
山頂に着いていつも思うのだが、ひとつの山に山名板がいくつも存在する違和感。なぜ一枚ではいけないのか。


IMG_64942014/10/24 火戸尻山山頂の山名板

ひとつあれば足りるのに、これだけ多くの山名板がついているというのは登頂記念のつもりで山名板を残して帰る登山者(個人ではないと思うが)がいるということであろう。
昨年登った火戸尻山(左)など、狭い山頂に5枚もの山名板があって見苦しいことこの上なかった。親切心どころか単なる無秩序、目立ちたがり、露出癖としか管理人には思えない。
火戸尻山の山名板の密度を富士山に換算すれば、数千枚もの山名板が富士山頂に存在することになってしまうのではないだろうか。


IMG_9660この山には2枚の山名板があった。
某省の見解として国立公園内にこのような人工物を設置するには許可がいるそうだ。が、申請など上がったためしがないとのこと。

まっ、そんなことを考えていても仕方がないのでここで昼飯にしよう。
ウエアは途中までアンダーとミドルの2枚構成だったが、気温が下がってきたのでフリースとジャケットを着て4枚でちょうどいい。


IMG_9665麓から見上げる三岳は深い樹林帯なので山頂からの展望は期待していなかったが予想は当たって、展望はゼロに等しい。
西の方角に木々の間から蓼ノ湖が望めたのが救いだ。
ちなみに展望がいい山であれば多くの人が登り、自然と登山道ができるはずだ。


IMG_9666三角点
が、等級まではわからない。


IMG_9669さて、帰りはどうするか。というより、どんなルートで帰るか。そこまで計画はしてこなかったのだ。状況次第といえば聞こえは良いが、行き当たりばったりw
Wさんと協議の末、山頂から東に下って南下、さらに南西に進んで三岳林道に出るというルートを設定した。
設定したルートは等高線の間隔が狭いので急斜面を下ることになるのであろう。
画像は急斜面を下って次に三岳林道へのルートを設定しているところ。


IMG_967014:19
それにしても凄まじく急な斜面を下って、ようやく鞍部まで来た。写真など撮る余裕などなかったというのが正直なところだ。
ここに来る間、最短距離で下ろうと考え別の尾根に入ったのだがあまりにも急すぎてあきらめ、ノーマルルート(実際にはそんなものないのだが)に引き返した。


IMG_967314:26
三岳の南西に位置するピーク1752を正面に見てこの斜面を下って行く。Wさんも管理人も絶賛した素晴らしい大斜面である。いいな~、こういう地形。管理人の大好物である(^^)

ピーク1752の麓に出たら西に進路を変えてトラバースするのが地図から見て正しいようだ。


IMG_967414:33
見通しの良い斜面まで下りたのでこのへんから斜面を横切ることにした。
これまで深い樹林帯を歩いたのでこの斜面は実に気分がいい。
しかし傾斜もそれなりなので雪崩の心配をしなくてはならず、万一の場合の回避ルートを考えながら歩く。


IMG_9677スノーシューで斜面を横切るのは結構むずかしい。場数を踏んでいるWさんは軽快な足取りだ。


IMG_9733次は管理人。
このあと再度、深い樹林帯に入ると三岳林道と合流するはずだ。


IMG_976315:00
三岳林道だ~。帰って来れた~。ビールだ~(^^)

写真は撮らなかったがここで湯元ビジターセンターの職員と遭遇。林道に付けられている目印のリボンの点検に来ていたのだ。彼らは国立公園内の整備に携わる自然公園財団の職員なのだが、公園を守るための仕事は多岐にわたる。私たちが自然を楽しむのになくてはならない、隠れた存在である。


IMG_9767林道は緩やかな下りなのだがこれがまた、長い。
昔の工事用の車道だったので急な斜面を迂回するように造られていて、管理人はこのような平坦かつ単調なコースが苦手だ。面白みがない。


IMG_977015:22
林道の終点に到着。
国道120号線が金精道路に名前を変えさらに、湯元温泉に入る道との分岐点だ。


map湯元温泉を起点とし三岳を経由して湯元温泉に戻る、右回りルートにした。ポイントは取り付きをどこにするかだが、小峠を過ぎたあたりに比較的緩やかな斜面があったのでそこから入って、南東の三岳を目指した。
帰りは湯元温泉への最短コースである三岳南面の急斜面を下り三岳林道へと出た。
この急斜面、なかなかのもので楽しめる(^^)


未知の山から無事に帰ることができ、正直ホッとしている、これも森の神に祈ったおかげかww
ルート設定には気を遣った。まず、地形図上に机上で大まかなルートを描き、そのルートを基に現場では地形図とコンパスを使って目標地点を設定。目標地点に着いたらそれが正しいのかどうかをGPSに表示される緯度経度で確認し、再度、次の目標地点を設定するという、細かい作業の繰り返しであった。
しかし、こぶが無数にあるし大きな岩があちこちにあり、それらは地形図上に描かれていないことから回避しながら歩くため設定したルートの再変更を余儀なくされたというのが正直なところだ。

ところが終わってGPSのログを地形図に反映させてみるとそれほど無駄な動きはしていないことがわかった。未知の山しかも、深い樹林帯にもかかわらずかなり効率的に歩いたことがわかり、冷静さは保っていたようだ。
ただし、もしも今日の山行が管理人単独であったなら、不安が焦りに転じて冷静にはなれなかったはずだ。10年来のリピーターであり、信頼できる山友(兼酒友)であるWさんといっしょだったからこそ為しえたことは言うまでもない。


最後になりますがこのブログは管理人自身の備忘録とデータの収納庫代わりとして運営しているものであり、管理人が歩いたコースが正しいわけではなくまして、推奨するものではありません。三岳は登山やスノーシューの経験が豊富でも、地形図とコンパスが使えなければ道迷い必至というのが正直な感想です。また、急斜面での滑落も起こりえます。
年寄りの迷走日記として読み流してくだされば気持ちが楽というものです。

奥日光・三岳。たかが10キロ、されど10キロの難コース。迷走しながらなんとか漂着。」への2件のフィードバック

  1. 悪児

    こんばんは。

     悪児(ことW)です。
     26日はありがとうございました。
     スノーシューの様々な可能性を試し、満喫できた素晴らしいツアーでした。前日節酒したおかげか、足は最後まで軽く、ちょっとスリルも味わえて本当に楽しかったです。そして、今後の課題も見つかりました。今年こそ、横着していないで、GPSをしっかりマスターして、自分でルートを見極められるようにする(そして、できたら単独でもう一度三岳に挑戦する)。
     では、次はアカヤシオの季節にお世話になります。(^^)(^^)

    1. 亀歩き 投稿作成者

      こんばんは。
      私こそ楽しい体験をさせてもらいました。
      ルート取りに神経を使いましたが、うまくいったので私も満足しています。
      今回の三岳は「案ずるより産むが易し」、でしたかね(^^)
      アカヤシオの季節、ぜひお越しください。

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