古賀志山の難ルート、中尾根で二枚岩からピーク559へ

2018年12月13日(木) 快晴

標高583メートル。
古賀志山は東京の高尾山よりも低い、紛れもない低山である。登山口から山頂までの標高差だって高尾山の方が大きい。独立峰なので周りに山はなく、3.5キロ四方の範囲に収まってしまう箱庭のような山域である。
多くのハイカーが利用する昭文社「山と高原地図」にも収録されていないほどだから、一般のハイカーへの知名度は低い。主観的には登山者の8割くらいは地元の愛好家であるように見える。
遠方からわざわざ(車でないと来れない)古賀志山にやってくる人はきっと岩登りのスリルを味わいにやってくる人であろう。だって遠方からやってきてスタンダードなコースを歩くのでは面白みに欠けるものね。

管理人は2014年10月に初めて訪れて以来、62回を数えた。
2016年には目的をほぼ達したので今では訪れる回数がぐっと減ったが、それでもまだ通い続けている。管理人が住む日光には魅力的な多くの山があるにもかかわらず、古賀志山を目指すには明確な理由がある。

日光の山では不可能な、岩登りのスキルと読図能力の向上という、登山に欠かせない技術の習得が古賀志山では図れるというのが理由である。
古賀志山は山域全体が岩で構成されていると言っても過言ではない。地図にある道から少し外れると岩尾根と遭遇する。初めはロープや鎖を利用して岩場に慣れ、やがてはロープや鎖を使わず登れるようになるのが望みだ。古賀志山で得た岩登りの技術はきっと他の山でも通用するであろうと思う。

地図にないバリエーションルートを歩くには国土地理院の地図とコンパスが必須である。嫌でも読図能力が高まっていく。
ちなみに、読図能力を養うには基礎学習→町中で練習→地図に道がある山で実践→雪が積もって道が見えない低山で実践というのが早道ではないかと思う。

このブログになんども書いているように、古賀志山(広義には古賀志山山域)には地図に描かれていない、いわゆるバリエーションルートが100本以上ある。
それらは必ずしも古賀志山山頂につながっているわけではないが、目的を古賀志山登山に限定しないのであれば、バリエーションルート歩きの方が断然面白い。

管理人は古賀志山の面白さに取り憑かれ、バリエーションルートのすべてを歩き尽くすという目標をたてて2015年からそれを実践し、2年と少しかけて歩き尽くしたつもりだ(ただし、アスファルトの林道や踏跡のない沢や斜面を除く)。

いまはこれまで歩いたバリエーションルートの中から管理人お気に入りのルートを選んで歩くようにしているが、今日は難易度でいえば東南稜ルートと肩を並べ、古賀志山山域の最難関ともいえる中尾根を歩く計画を組んだ。
ここ数十日もの間、飲んでばかりいて心身ともにデレッとなった我が身にカツを入れたいと思う。

登山を楽しむには遅い時間だが古賀志山なら日没前に下山できるからこんな時間でも差し支えはない。


駐車場の一角に北コースに向かう道があるので進んで行く。
土日はここに野菜の直売所が設けられ、多くの買い物客で賑わう。
ここ、宇都宮市森林公園は古賀志山の登山者だけでなく散歩する人、自転車乗り、トレイルランナーなど使われ方がさまざまで、保育園の園児たちが遠足に来ることもある。


駐車場から数分歩くと赤川ダムと出合う。
堰堤の中程まで行くと正面に主峰の古賀志山がよく見える。さすが独立峰、低山とはいえ堂々たる姿だ。
今日は風もなく穏やかなので水面に映る逆さ古賀志が美しい。


赤川ダムの左岸に沿って進んで行くと赤川にかかる芝山橋があるので、ここで赤川を右岸に渡る。しばらく来なかったら右岸には斜面を切り取って総距離220メートルの「膳棚林道」ができていた。以前は斜面の際を赤川に沿って行けば北コース入口になっていたのだがこの林道の目的がわからない。
ちなみに沢や川に沿って歩く場合、上流から見て右側を右岸、左側を左岸という。下流から上流へ向かって歩くときは沢、川の右側を左岸、左側が右岸となる。


林道の終点は古賀志山登山のスタンダード、北コースに接続している。
このまま進んで行くと富士見峠を経て古賀志山山頂に至るが、今日の管理人の予定は古賀志山に直接行ける北コースではない。中尾根を歩いて二枚岩、次にP559が目標なのだ。
その中尾根の取り付きはここを右に折れ、桧林の中を細野ダムの堰堤まで行く。


細野ダムの堰堤まで来て左斜面を仰ぐと桧の向こうに巨大な岩が構えているのが見える。中尾根一番岩である。


中尾根は尾根全体が岩で構成された岩尾根である。
古賀志山山域全体が岩でできているといって過言ではないが、中尾根はその最たるものである。
これが中尾根一番岩。さらに二番岩、三番岩と続いている。
まずはこの一番岩を上る。久しぶりなので慎重に。


管理人、できるだけロープや鎖を使わないで上るように心がけているのだが、中尾根の取り付き部分はどうしてもロープを使わざるを得ない。
地面と岩との段差が大きくていくら大きく股を広げても短足の管理人には足が届かないのだよ(悲)。


続いて二番岩。
まず大きな一枚岩を滑らないように慎重に上り、次に1メートルほどの段差のある岩を上る必要がある。一番岩よりも難易度が高い。


続いて三番岩をクリアするとようやく平坦部に出る。
そこには軍艦岩と呼ばれる特異な形の岩がある。ただし、先へ進むのにこの岩を上る必要はない。もちろん上ってみるのもいい経験。


軍艦岩に上って宇都宮市街を俯瞰する。
う~ん、いい眺め!!


北には鞍掛山の稜線とその向こうに高原山(鶏頂山、釈迦ヶ岳、中岳、西平岳の総称)が見える。


一時的だが岩場が終わって地面の上を歩ける。
気が休まるひとときである。


緩やかな斜面を上っていくと2本(角度によって1本しか見えない)の桧が立っている場所に出合う。ここが二枚岩の入口。
中尾根と分かれてここを右に折れる。


木につかまりながら急な斜面を下っていくとやがてはっきりした尾根になる。


二枚岩のすぐ手前まで来ると道は分岐するので二枚岩と書かれた方へ進む。


これが二枚岩。久しぶりに来た。
ひとつの巨大な岩が真っぷたつに割れてそのまま並んでいるように見える。
どこかの山の噴火によって宙を飛んできた岩が落下の衝撃でふたつに割れたあるいは、この岩は氷河期からここにあったもので岩の隙間に溜まった水が凍り、膨張して岩を割ったのに違いない。と、誰も見たことがないことだけに勝手なことを言っているが、想像をかき立ててくれる岩だ。
ここにはNPO法人「古賀志山を守ろう会」の手で「二枚岩」の道標が設置されている。


ここには10人ほどが休憩できるスペースがあり古賀志山を守ろう会が設置したテーブルとベンチがある。
ここらで昼メシを。
袋麺を鍋に入れ、あらかじめ用意してきた椎茸と長ネギ、生卵、ウインナを投入。豪華(笑)な昼ご飯になった。
なお、ここまで来る間に下着と中間着は汗を吸い込んでぐっしょり。それほど今日はいい天気なのだ。気温は低いが。


ヒカゲツツジの紅葉した葉がまだ残っていた。


30分という長い休みを取った後、二枚岩を北へ向かって下りるとアスファルトの林道にぶつかる。先に紹介した古賀志山を守ろう会により昨年、道標が設置された。
右へ行くと林道のまま細野ダム、赤川ダムを経て駐車場に至る。
管理人はこれからピーク559へ向かうので左へ行くことにする。


アスファルトの林道が尽きると桧林に変わるのでそのまま踏跡を辿っていくと、、、


鞍掛山から延びている尾根と交わるとそこは日光市との境界線、「手岡峠」。
これからの進路は尾根を左(南)へ向かう。しばらくの間、境界線を歩くことになる。


「手岡(ちょうか)分岐」着。
ここは馬蹄形ルートをやるときの重要なポイントになっていて、気づかないで進むと古賀志山に行ってしまう。馬蹄形ルートを目指すにはここを右斜め、道など見あたらない方へ下っていく。
なお、「手岡峠」も「手岡分岐」も地理院地図に描かれているわけではなく、識別のために管理人が勝手に名付けたのだが、3つ前の画像にある道標には「手岡峠方面」と書かれているので、「手岡峠」という呼び名は正しいようだ。


小さなピーク540からの眺め。
北から西にかけての展望がいい。


再び桧林の中を歩く。


幅30センチしかない、もはや登山道とは言えないほどのアブナイ道を歩く。


アブナイ道を脱するとはっきりした尾根に変わる。
ピーク559はここを左へ行く。
右には弁天岩という巨大な岩が立ちはだかっていて道はない(岩の上に上がることはできるが)。


ここは古賀志山への道とピーク559への分岐。


地元の人の間では「ごーごーきゅう」で通用する、ピーク559。
展望がいいのでランチタイムでよく利用されているが、この時間になるとさすがに人の姿はない。それに気温4度と寒いしね。


ピーク559からは東へ延びる尾根と南へ延びる尾根がある。
東の尾根は岩場を下って中尾根につながっている。南の尾根は富士見峠を経て古賀志山へ行く。どちらの尾根もかなり急傾斜。
管理人はこれから南へと進む。


南の尾根はここで再び東と南に分岐する。
東へ進むとピーク559が中尾根とつながる場所に出る。
南は先ほどと同じで富士見峠を経て古賀志山へ行く。
今日は古賀志山をパスして朝歩いたのと同じく、中尾根(のここは終点)を行くことにする。


といっても中尾根をそのまま進むと二度歩くことになって面白くないので、途中、進路を南(右)に変えて北コースの「広場」と呼ばれている場所に出るようにした。
このルートもバリエーションルートのひとつだが、もともと踏跡が薄い上に今は落ち葉が堆積していて踏跡も見えない。傾斜も急だからもっとも安全なところを選んで歩くようにする。


北コースの中間にある「広場」に出た。
地元の愛好家らが造った丸太で組んだベンチが多数ある。


北コースは荒れている。
2015年の大雨によって斜面が崩れてそのときに大量の土砂がコースを埋め尽くしたのだ。
一時は歩けないほど土砂が堆積していたが、愛好家らの尽力で整備が進み、元通りとまではいかないがずいぶん歩きやすくなった。


憩いの場となる古賀志山の水場だが2本ある出口の1本は涸れ(これはだいぶ前から)、もう1本も出が細い。このまま涸れてしまうのかそれとも一時的な渇水なのかわからないが心配ではある。


北コースが終わって膳棚林道


日が沈みかけた赤川ダムの畔を駐車場へと向かう。
正面に見えるこんもりした山は「多気山=たげさん」。


朝、あれほど並んでいた車はなくなり、閑散とした駐車場。
地元の人は朝早く来て午後は早めに帰るのだ。
ちなみにこの駐車場は17時でゲートが閉まるから下山が遅くなりそうな場合はゲートの外、道路に面した駐車場を利用するのがいい。遅くなってからだと手遅れになるから登山計画は綿密にね。