茶臼岳(那須岳)。茶臼名物の強風に気力が萎えたが遭難覚悟で登ってみた。

2018年1月11日(木) 快晴、強風

昨年から始めた那須連峰登山のうち、茶臼岳は冬でも登れるという感触が得られたので一昨日9日、その下見に訪れた。
今日はその実踏である。

加齢とともに仕事への情熱を失いつつある管理人は反対に山への情熱はますます高まっている。登山歴20年のほとんどを日光の山(※)で過ごすという偏り方は山で出会った人に変人扱いされるが一昨年、日光の山にも飽きたので見聞を広げるべく初めて登った県外の山、会津駒ヶ岳に魅せられこれまでに5回も登った。
とにかく雄大なのだ。中腹まで行くとなだらかで広大な斜面が広がり、遠くの山の稜線まで望めるほど展望がいい。一度登っただけで病みつきになってしまった(※)。
※日光のお隣、宇都宮市の古賀志山はある目的があって60回登っている。
※この辺の経緯については別の記事に詳細→こちら

今日これから登る茶臼岳は那須連峰に属して栃木県の山だが、登りやすさと展望の良さは会津駒ヶ岳に似て福島県の山に近く、管理人を惹きつけるには十分な要素をもつ、とても魅力的な山である。
福島県の山へ行くには3~4時間かかるから、もっと短時間で福島県の山のムードを味わいたいと思って昨年、目をつけたのが那須連峰なのである。動機は不純だがその目的は十分に達している。
懸念はこの時期になるとたえず強い風が吹き荒れて登山者を悩ませるということ。強風は日光の山、特に女峰山で慣れているが果たしてどんなものなのか、身をもって確かめてみたい。


大丸からは茶臼岳がくっきりここ大丸(おおまる)駐車場から見上げる茶臼岳は雪をたっぷり頂いてじつに堂々としていて魅力的な山容を見せつけている。雪は1メートルくらいあるのだろうか?
日光の山だとこうしてすぐ間近から見られるのは男体山くらいで、しかも大きすぎて美しいという感じはしない。なんかこう、気持ちがわくわくするものがないのだ。
遠くから眺めて美しいのは女峰山だが冬は厳しすぎて登れない。冬の女峰山は指をくわえて眺めるに限る。
ではここに車を置いてさっそく歩き始めることにしよう。


茶臼岳への冬道は駐車場のすぐ脇から始まる。
雪は締まっていて歩きやすい。


茶臼岳へのロープウェイ発着場冬道は車道をショートカットするようにして車道の終点、峠の茶屋駐車場までつけられている。何度か車道と交わりながら標高を上げていき、6回目に交わったところがここ、那須岳山頂へ人を運ぶロープウェイの発着場。
冬は運休しているしここまで車も入れない。


ますはチェーンスパイクで歩く初めての冬の茶臼岳ということもあって様子がわからないため、チェーンスパイクにアイゼン、スノーシューを持参した。
ところがここまで来て気づいたのはピッケルを車に置いてきてしまったこと。今さら戻る気にもなれないのでよしとする。

冬道は50センチほどの積雪だが適度に締まっているのでまずはチェーンスパイクを装着して歩いたが深く潜ることはなかった。
これから先、潜ってしまうような深い雪になったらスノーシュー、アイスバーンになったらアイゼンと、状況に応じて使い分けるつもりだ。


峠の茶屋駐車場ロープウェイの発着場から最後の冬道を上がると峠の茶屋がある駐車場に到着する。
駐車場の山側が峠の茶屋、雪が深い。
ここは深い雪を避け、駐車場内を歩いて登山口へ向かうことにする。


駐車場端にトイレがあるがこの時期、閉鎖中。
驚いたのはトイレが使えるようになるのは4月下旬になってからだ。日光ではヤシオツツジが咲くころである。そんなに遅くまで雪が残るのだなぁ、那須は。


登山指導所無雪期であれば駐車場の最奥に階段を見るが雪で斜面と化している。見上げると登山指導所の建物があってここから登山道が始まる。


登山届けを投函ここで登山届けを投函。
自宅を出発するのが遅くなりここを通過するのは42分の遅れとなった。

ちなみに当初の計画は次のようなものである。
9:00/大丸駐車場~10:00/峠の茶屋登山口(※ここのこと)~11:00/峰の茶屋~12:00/茶臼岳~13:00/峰の茶屋~13:40/峠の茶屋登山口~14:10/大丸駐車場


那須岳神社の鳥居建物のすぐ先に那須岳神社の鳥居がある。
雪面と鳥居との間は120センチに合わせたトレッキングポールの長さ。積雪は1メートルくらいあるのだろうか?


無雪期に3回訪れているがここは深い樹林帯だった印象だ。
木々の葉が落ちて見通しがいいのであろう。


茶臼岳が見えてきた前方にこれから登る茶臼岳が見えてきた。


剣ヶ峰と朝日岳右を見ると朝日岳の前峰、剣ヶ峰が。
朝日岳(画像右)へはあの雪の斜面を左から右へ横切らなければ行くことができない。


朝日岳全景これは朝日岳。
今日の目的のひとつはこの時期、朝日岳に登ることが可能なのかどうかを見極めることにある。


茶臼岳のすそ野を「峰の茶屋避難小屋」に向かって歩く。
風が強く冷たい。
しかも前方の避難小屋の方から吹いてくる。
ときおり身体がフワッと浮き上がるような強い風が吹く。
ここで身体がもっていかれたら下手をすると沢側に転倒する恐れがある。
これは心してかからないといけない。


避難小屋に近づくにつれて朝日岳への関門となる剣ヶ峰の斜面がよりいっそう、厳しく見えてきた。あの雪の斜面をトラバースしなくては朝日岳へは行けないのだよ。


峰の茶屋避難小屋避難小屋へは1時間35分で着いた。
机上では2時間と計算した。


避難小屋内部避難小屋の内部。
ここまでアンダーシャツと中間着、アウターの3枚構成で歩いて来たがあまりにも強い風で身体が芯から冷えている。ここで持参したフリースを着込んだ。下は厚手のタイツの上に冬用の防風防寒パンツをはいている。
避難小屋は窓を通して日差しがあるため中は暖かく、人心地がつく。
それにしても凄まじいのはどこから入り込んだのか、土間に堆積しているこの雪だ。建物の構造上、ほんの僅かなどうしようもないすき間から強風によって押し込まれたとしか言いようのない状態だ。
我が安普請の家がもしもここにあったなら部屋という部屋、すべて雪で埋もってしまうだろう。

5時半の朝食、しかも残り飯の雑炊はすっかり消化してしまい空腹となったのでコンビニで調達した菓子パンをかじり、ポットのミルクティーを飲む。


これから茶臼岳へ避難小屋から茶臼岳を見上げる。
茫洋としていてここからだと山頂がどこにあるのかわからない。
さあ、行ってみっか。
風が強くて気力が萎えるがここまで来たからには行くしかないでしょ。
吹き飛ばされないことを祈るばかり。


コースはバリバリに凍っている歩き出しの雪の量からは想像できないほど、茶臼岳は雪が少ない。
降ることは降るのであろう。しかし、管理人が体感したあの風が吹きつけるとあっては飛ばされて積もらないのであろう。

さてこの程度の雪ならば普通の靴で歩ける、とはいえない。雪が日差しで解けてそれが凍ったのかコース上はがちがちになっている。
とはいえアイゼンが必要なほどではないしスノーシューだと歩けない。チェーンスパイクは正解であった。


お釜の手前斜面の向こう側が見えないからここを登れば向こうは平坦なようだ。この上が山頂かな?


斜面を登り切るとここで道は分岐し山頂直下の噴火口をぐるっと回るように一周できる。
左回りで山頂を目指すことにした。


噴煙を上げる茶臼岳立ち上る噴煙。


茶臼岳山頂に到着岩だらけの荒涼とした平坦部が山頂である。標高は1915メートル。
昨年来たのは6月だった。そのときは無数のコバエが飛び交っていた。
この時期は周りに緑も見えず荒涼としているが虫も越冬中でうるさくはなく、極寒を楽しむ気持ちさえあれば快適と言える。


那須岳神社山名板というか柱のすぐ脇に那須岳神社と彫られた真新しい石の祠がある。
ここから見える山並みは福島県。


福島県境の山並み栃木県の山とは雪の量が違って白さが際立っている。
画像中央の白いピークは大倉山でその先、稜線は右へ方向を変え、大倉山の右奥に見えるのが三倉山。
稜線を戻り南からの尾根と交わったなだらかなピークが流石山でニッコウキスゲの見所だそうだ。一番右の稜線が落ちたところが大峠で昨年、通過したことがある。


関東平野も一望東には福島県南部と茨城県の平野部がよく見える。


那須岳三角点山頂から少し離れた見晴らしの良い場所に四等三角点がある(石柱はこのすぐ脇にある)。


吹きっさらしの風から身を守るためのんびりする間もなく下山することにした。
凍った下りの道はチェーンスパイクを着けていても怖い。スリップしないよう慎重に歩いたのはもちろんである。
画像中央の稜線が剣ヶ峰で朝日岳へは右斜面をトラバースする。剣ヶ峰の稜線を乗り越えて朝日岳へ、という手もあるのかな?


避難小屋まで降りて二度目の昼食で菓子パンをかじりミルクティーを飲む。
朝日岳の前に剣ヶ峰が立ちはだかっている。
右(東面)の斜面をトラバースしなくては朝日岳へは行くことができない。斜度は目視で30度を超えている。雪が多いと雪崩れる傾斜だ。
危険性を確かめるために近くへ行ってみることにした。


朝日岳へのトラバース道雪の斜面は下方に100メートルほど続いていてその先は砂礫が露出している。
10数歩、進んでみたがチェーンスパイクは雪にしっかり食い込んで安定している。
万一、スリップしても凍ってはいないので雪の抵抗により途中で止まりそうな感じだ。
さあ、進め。と心の中の悪魔の声がする。
おい、なんてことを。ちょっと待てよ。
大丈夫だよ。これまでずいぶん危険な場面をくぐり抜けてきたじゃないか。と再び悪魔の声。
オイラ、歳は取ったけど、まだ登ってみたい山がたくさんあるんだ。今日は止めておくよ。予定にない行動は心の準備も装備も足りないので事故を招く結果となるからね。
きわめて常識的な判断で踏みとどまることができた。
ここで引き返して次回のために作戦を検討しよう。


振り返って茶臼岳を見上げる避難小屋から下山するにあたり、もう一度茶臼岳を見上げて今日の印象を強く刻みつけることにした。
それにしても雪が少ないな。
これが1月初めの本当の姿なのか、2月になればこんなものじゃないのかな、それも確かめてみたくなった。


雪は麓の方が多い下山につれて雪が多くなるというのも妙な感じだがこれが茶臼岳というものなのであろう。


鳥居まで戻った登山口の鳥居が見えてきた。
ほっと一息、と行きたいところだが冬はさらに1キロ歩いた先が駐車場である。


峠の茶屋駐車場から振り返って朝日岳(左)を眺める。
無雪期ならここから車で帰れるところだがあと30分ほど行程を残している。


駐車場の2本手前の車道と交わった。


無事に大丸へ身体が温まる頃になってようやく大丸駐車場に戻った。


往復9キロ、約5時間の旅が終わった。
それにしても先ほどの強風には参った。
むかし、登山者が強い風にあおられて転倒し、大怪我を負ったという新聞記事を読んだ記憶があるが、今日はそれを実感した。
ここ大丸の標高は1261メートルで雪はたっぷりある。それが標高が上がるにつれて少なくなっていくという現象は風による影響が大きいとみて間違いはないようだ。
この事実を頭にたたき込み次回に備えよう。