古賀志山のニリンソウ探しは謎解きゲーム。

2020年3月6日(金) 快晴

古賀志山に関する管理人の主たる情報源はNPO法人「古賀志山を守ろう会(以下、守ろう会)」であることはこのブログで再三、紹介している。
設立は2014年6月で、管理人は同じ年の10月に初めて古賀志山を訪れているが、守ろう会の存在を知ったのは翌2015年だった。

初めて訪れたときに古賀志山の面白さに取り憑かれ、ならばこの山を徹底的に探索しようという思いが高じ、今日に至るまでその作業を続けているわけだが、その情報源が守ろう会のホームページなのである。
守ろう会のホームページには古賀志山に関する情報が溢れるほど詰まっているから、古賀志山を探索しようと思ったら必見だ。

管理人の冬の収入源であるスノーシューツアーは先月24日で幕を閉じ、単独で歩ける季節となった。
とはいえ女峰山に登るには時期的にまだ雪が深く、危険を伴うため、3月と4月は古賀志山がいい。歩くだけでも楽しいが花が多彩だ。

前の日、新しい情報を得ようと守ろう会のホームページの活動記録にアクセスすると、一覧の2020/01/16付「臨時定例会・倒木伐採及び仮橋設置」が目にとまった。
「仮橋」というからには登山道のどこかに橋を設けたのであろう。
管理人のこれまでの古賀志山探索の経験だと、橋が架かっている箇所は北コースの「水場」付近しか思いつかない。
ただし、その橋は数年前からあったし、正月に訪れたときは真新しい橋につけ替えられていた。
したがって管理人が見た活動記録の「仮橋」は別の場所を指しているはずだ。
そう思って活動の詳細に目をやるとやはり、水場にかかる橋とは別の場所であった。

100本以上あるとされる古賀志山のバリエーションルートをすべて歩き尽くすことを目標にしている管理人にとって、未踏のルートを探索するのは宝物探しに匹敵するほどの、心躍る作業なのである。
是非、行ってみなくてはなるまい。
管理人の気を引いたのはそれだけではなかった。
ニリンソウ」という記述に目を奪われたのだ。しかも「群生」と書いてあるではないか。
よっしゃ、これで明日の目的は決まった。
ニリンソウの群生地とされる、未知の場所を訪ねるのだ!!

今日の接触者
・コンビニ(店員と・客は少ない)
・登山中は近接者なし

古賀志山を歩くのにもっとも多く利用されている、宇都宮市森林公園の駐車場に車を置いて歩き始めることにした。
メインとなる駐車場はこの車道の左にあるが、利用時間が決められているため戻りが遅いとゲートがしまってしまう。
今日は探索に何時間かかるか見当がつかないので時間制限のない道路脇に駐めた。


赤川ダムから古賀志山を見上げる。
湖面は波ひとつなく、実物をそのまま映し出している。


北コースと東陵コースの入口となる芝山橋。
登山者の7・8割は安全な北コースを進んで行く。
どちらも古賀志山へ行けるが面白さで言えば断然、東稜コース。

守ろう会のホームページによれば、ニリンソウの群生地は白石川と並行する内倉林道を詰めて行くとある。
その内倉林道は県道70号線の日光市側から始まる。
白石川下流の右岸に駐車場があるのでそこから歩き始めるといい、と書かれている。
なのに管理人は、林道の始まりから遠く離れたここ、芝山橋を起点にして歩き始めようとしている。
林道を歩くのは面白くないし目的地にすぐ(のように地図で読める)着いてしまってはつまらない。
あえて遠回りしようという魂胆があるのだ。


東陵コースの取り憑きもとい、取り付き部分。
この先で北コース入口からの登山道と交わる。


道はすぐ広葉樹の中の平坦路に変わる。
陽射しが心地よい。


どんな理由でつけられたのか、「反省岩」。


反省岩の上に立ち、北側を走る岩稜の「中尾根」を見上げる。
北コース、東陵コースと同じ場所を起点とし、中尾根も歩ける。


班根石山(ピーク559)。


広葉樹林はこれまで。
ここから先は見通しのきかない桧林となる。


東陵コースの踊り場部分まで来ると十字路になっている。
直進すると途中、岩を3つ乗り越えて見晴台へ行く。
ここまで来て、カタクリの成育状況を知りたくなって進路を南へ変えた。群落地があるのだ。


ほう、蕾を持っているカタクリがあるぞ。
今年は早いのかなと思って他のを見ると、蕾はこの1株だけで他は葉っぱだけだった。
まっ、それでも蕾があるということは他のカタクリも今月半ばから下旬には蕾を持ち、咲き始まるはずだ。
しばらくの間、目を離せない。


カタクリの群落地を過ぎると東南稜と交わる。
古賀志山にたくさんある岩場では横綱クラスの難易度高の岩が連続するのが東南稜である。


まずはここを乗り越える。
鎖は使わず、両手両足で上るのが本日の課題。
とはいえ、東南稜の大岩は難しい。


辛くなるとつい目の前にある鎖をつかみたくなるが、我慢だ。
落ちれば大怪我必至なので3点支持の原則を忠実に守って上がって行く。


2つある岩のこれは2つ目の途中で下を覗き込んだ図。
怖いですね~、と他人事のような感想を漏らす管理人なのである(笑)。
いや、笑い事ではありません。


古賀志山の岩の多くには、冒頭で紹介した守ろう会によって鎖が取り付けられている。
鎖は太く、支点には岩深くアンカーが埋め込まれているので切れたり外れたりする心配はない。
この鎖は2016年に取り付けられたものだが1年に一度、安全確認がされていて、アルミのタグを見ると最新は2019年2月になっている(丸いタグの2枚目)。


巨大な2つの岩をクリアすると東陵コースと交わり、ここからさらに3つの岩をクリアする必要がある。
古賀志山山頂を仰ぎ見ながら息を整える。


東稜と交わって最初の岩は高さ5メートルほど。
この岩はホールドがしっかりしているのでそれほど苦労せずに上れる。


2つ目の緩やかな傾斜の岩をクリアすると3つ目の岩が出現。ここは垂直。
落差は1.5メートルくらいしかないがここもホールドが弱く、足の置き場を考えながらでないと鎖に頼ることになる。


すべての岩を上がり切ると東稜の突端に出る。
東陵見晴台と呼ばれ、広場になっていて地元の人の憩いの場だ。
これで今日の課題の「鎖を使わず岩を上る」はクリアした。


見晴台からの眺めはいい。
北に高原山(鶏頂山、釈迦ヶ岳、中岳、西平岳の総称)が、、、


西に日光連山が見える。


見晴台から古賀志山へはほんの数分の距離。
ここも多くの人が集まる場所だ。


なんともおおらかな注意書きだこと。微笑ましい。
ティッシュペーパーは水に溶けにくい性質があり分解に長い時間がかかるから、管理人としては土に埋めないで持ち帰って欲しい。


次に御嶽山へ向かった。


御嶽神社


いい眺めだ。
独立峰の古賀志山(広義には古賀志山山域)は近くに展望の妨げになる山がないから、数十キロ離れた遠くの山がよく見える。
中でも御嶽山からの眺めは抜群である。
北から南へほぼ180度の展望が得られる。
中央は大真名子山と小真名子山、右が女峰山から赤薙山への稜線、左に男体山その奥に白根山。


高原山(鶏頂山、釈迦ヶ岳、中岳、西平岳の総称)。


皇海山(中央)と庚申山(手前左)。


中央の白い米粒状の山は赤城山(たぶん)。


御嶽山を西へ向かって下りると西尾根の入口が見つかる。
ニリンソウの群生地があるとされる内倉林道への近道であることを前夜、地図で確かめてある。
過去3回、2015年と2016年に歩いたことが記録として残っていて、今日で4回目になる。


記憶が薄れていて不安だったが、地図にあるピーク371まで無事に来ることができた。
このピークを越えると内倉林道と出合うはずだ。


傾斜は急になり桧林を通してこの先が平坦になっていることがわかる。
あそこが内倉林道であろう。


無事に内倉林道と出合うことが出来た。
右(南)に白石川が流れている。
あとはこの林道を詰めて行けば目的とするニリンソウの群生地に着くはずだ。


なんだか様子がおかしい。
林道上に50センチほどの枯れ草が生えていて、この林道は使われているようには思えない。
内倉林道は分岐を繰り返していることを昨夜、地図で調べてあった。
ニリンソウの群生地へ行くのは分岐した別の林道だろうか?


歩き始めた場所まで戻り、林の中を北へ向かって突っ切ると間もなく、別の林道に出た。よく整備されている。
今度はこの林道を詰めてみよう。


そうそう、この丸太橋が守ろう会のホームページに出ていたアレだ。
倒木を加工して架けたそうだ。
守ろう会の記録によるとこの作業には12人もの会員が携わったとある。


林道は道幅が狭くなりまた、傾斜が急になった。
4駆の車でも上がれそうにない。


最後に階段。
これも守ろう会の労によるもの。


鬱蒼とした桧林はまるで線を引いたかのように、明るい広葉樹林に変わった。
ここがニリンソウの群生地であることに疑う余地はない。


大蛇を思わせるようなぶっとい蔓にギョッとした。
夜であれば驚いて逃げ帰ることだろう。


なんだ、これは??
まるで動物園から逃げ出したサイがそこにいるかのようだ。


肝心のニリンソウはまだ見つからない。
北登山道の水場のニリンソウが咲くのは4月だ。
植物は気温の上昇に伴って冬の眠りから覚めて成長する。
いくらなんでもまだ早いのだ。
まっ、でも場所が特定できたので良しとして、ここで昼メシにしよう。

ところで管理人、今日は軽量化を図って臨んだ。
加齢に伴って体力が衰えているので登山のパフォーマンスを向上するためには身体も荷物も軽量化したい。特に、どこへ行くにも重さに変わりのないザックは年老いた身に堪えるようになった。
昨年9月から始めた減量化計画、具体的には一日あたりの摂取エネルギーを1500kcal以下とし、一日当たりタンパク質を体重(除脂肪体重)の1.5~2倍摂る(※)。それと筋トレをおこなっている。
体重は1キロ落としたので次は背負う荷物の軽量化に取り組むのが課題である。
ただし長い間、山行をともにしてきた荷物とは分かれがたい。見直すには勇気と慎重さが必要だ。
体重は単位を外した数値のみで計算し、タンパク質量はグラム。

昨日は半日かけてザック内の荷物を見直し、必要最小限にした。
雨の心配はないから傘とカッパは置いてきた。
遭難してビバーグと相成っても、古賀志山であれば凍死の心配はないからツェルトもいらない。トレッキングポールは岩の上り下りのじゃまになる。
現在地確認だが、10時間程度の山行ならスマホの地図アプリで十分なのでGARMIN(GPS)も不要だ。
デジカメと携帯電話、それにヘッドランプの予備電池も置いてきた。
中味だけでなく、ザックもペラペラの生地でなおかつ、フレームを内蔵していない20リットルのサブザックにした。水のボトルを収納するポケットはないから、水はハイドレーション用のウォーターバッグに1.5リットル入れてザックの中に収納した。
これで総重量は5キロになった。

いつも携行している装備を持たないのはやや不安だが、なんでもかんでもザックに詰め込むのは管理人の精神面の問題が大きい。
今日の装備が管理人のウルトラライトトレッキングの始まりになればいいと思う。


今日の山行はじつは靴の慣らしも兼ねている。
履き慣れたハイカットの靴は安全だが重くて脚に負担がかかる。
4・5年前にモンベルのローカットを履くようにしたところ快適で気に入ったが、ひとつだけ難点があった。
典型的な幅広甲高でなおかつ、足のサイズが左右で5ミリも異なるといった特殊な足型の管理人には、日本人の足形に合わせた設計とされるモンベル製品でも長距離を歩くと苦痛を感じることがあった。
時間の経過とともに左足の親指が靴のアッパーに当たるようになるのだ。歩くに連れて足底筋に力が入らなくなり、扁平足が進むのかもしれない。
1サイズ大きくすれば解消されると思うが、そうすると小さい方の右足がガバガバになってしまうから困る。

先月、数年ぶりに石井スポーツを訪れて履き心地を試したところ、SPORTIVA TX4 GTXというアプローチシューズが足全体をすっぽり包むような感じがして、期待を込めてその場で購入を決めた。
とはいえ、わずか数分の試し履きでの印象だったので、管理人の足に馴染むかどうかは実際に山を歩いてみなければわからない。
それで歩き慣れた古賀志山で筆下ろし(死語・笑)をしようと考えたわけだ。
結論を述べるには早すぎるが、ここまでの行程では特に違和感はない。


昼メシを終えて歩き始めるとまず、カタクリの葉が目に入った。
ニリンソウだけではなく、ここはカタクリも成育しているのだ。
で、肝心のニリンソウはというと?


おぉ、あったぞ。
紛れもなくニリンソウだ。→花はこちら
規模のほどはわからないが、見たのはここだけだった。
花の時期にも来ないわけにはいかんだろうな。


目的とするニリンソウの群生地は見つかったので今日の目的は果たしたと言えるが、帰りに同じ道を戻るのは味気ない。
この斜面を上り詰めれば北主稜線に乗ることができる。
そうすれば古賀志山あるいは鞍掛山に行ける。
どちらにするかは稜線に乗ってから考えることにして、今はこの急斜面に神経を集中しよう。


落ち葉に被われた急斜面の素地は一面の砂利。
足に力を入れるとズルズル滑るという厄介な斜面だ。


これは一体?
一見したところニホンジカの糞と思ったが、古賀志山山域にはまだシカの侵入はないと聞いている。イノシシかもわからない。


稜線まであとわずか。
気を抜かずに上がっていこう。


ズルズル滑りながらもなんとか無事に稜線に乗ることができた。
さてと、ここから先のことだが、時間はたっぷりあるので鞍掛山へのルートを歩くことにした。


北主稜線と馬蹄形ルートの分岐となる手岡分岐へ来ると日光連山が一望できる。
御嶽山からの眺めと同じく、ここもいい。


ここで鞍掛山と北尾根コースに分岐する。
さて、どっちへ行こうかと迷ったが、久しぶりに北尾根コースを歩くことにした。
したがってここは直進(南下)する。


北尾根コースから見上げる鞍掛山。


北尾根は起伏が緩やかなまま長倉山へと続くとてもいいコースだ。


一旦、林道と出合うので突っ切って斜面を上がる。


のっぺりとした長倉山山頂。
地理院地図に山名も標高も描かれていないがここがピークであることは一目瞭然。


長倉山から駐車場へは30分もかからない。
開放的な広葉樹の中を気持ちよく歩ける。


駐車場前の車道に降り立ち終わりとなった。


今日、管理人が歩いた軌跡を載せておくが読者においてはこの図からニリンソウの群生地を特定することはできるだろうか?
古賀志山を守ろう会のホームページに比べればその数倍ものヒントを盛り込んだつもりである。
当地図を傍らに、ブログを読み進めればきっとわかることでしょう。
どうか謎解きにチャレンジしてみてください。

☆☆
今日、管理人はニリンソウの群生地とされる斜面を歩いたわけだが、規模は花が咲いている時期にならなければわからない。
斜面全体に生育しているのだとすれば、管理人はまだ地中に眠っているとはいえこれから芽を出そうとしているニリンソウの上を歩いたことになる。
次は4月の花の時期に行ってそれを確かめてみたい。