古賀志山で見る花たち(2021/04/06)

2021年4月6日(火) 晴れたり曇ったり(風が冷たい)

今日見た花(順不同)
ヒメイワカガミ、ニリンソウ(一輪目)、ヒカゲツツジ、アカヤシオ、トウゴクミツバツツジ、ヤマツツジ、カタクリ(終わり)、エイザンスミレ、タチツボスミレ、ツボスミレ、アカネスミレ、マルバコンロンソウ、バイカイカリソウ

先月18日からスタートした古賀志山の花の探索は今日で4回目となった。
概ね週一のペースで通っているわけだが行く度に事前に予測した花を観ることができるという点で、過去の記録の積み重ねが奏功していると言って過言ではないようだ。
その年の気候によって咲き始める時期は前後するが初回、今年で言えば3月18日の様子で、次の週の予測ができ、その週を迎えるとその次の週の予測が可能になる。
今週の狙いはニリンソウとトウゴクミツバツツジである。
ニリンソウはその名の通り、ひとつの株にふたつの花が咲くのだが、同時にふたつとも咲き始めることはなく、ひとつ目が咲いてからふたつ目が咲き出すという面白い性質を持つ。

花は言うまでもなく、子孫を残すための植物の生殖器官である。
優良な子孫を残すためには近親交配を避ける必要がある。
ひとつの花、ひとつの株で雄しべと雌しべの成熟度合が異なるのはそのためである。
ニリンソウはその上にさらに、一輪目と二輪目の開花のタイミングを数日ずらす。花をふたつ同時に咲かせると近親交配の危険性がより高まるのでそれを回避するという念には念の入れようで、それが永続的に子孫を残していくための古来からの生活の知恵となっているのであろう(という、管理人の勝手な想像)。
そのニリンソウ、先週はひとつ目が固い蕾を持っていたのでそろそろ開花、ただしひとつ目の、時期だろう。トウゴクミツバツツジも固い蕾だったがもう咲いているだろう。
それに管理人がまだ目にしたことのない花も見つけられるかも知れない。
なにしろ4キロ四方という、決して広いとは言えない山域なのに200種類以上の植物が古賀志山には生育しているのだから。

では出かけることにすっか。

メモ
・歩行距離:11.1キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:5時間57分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:1206メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

9時半に着いたとき、森林公園の大駐車場はすでに満車だった。
そのため一旦出て、道路に面した柵外の駐車場に車を駐めて歩き始めた。

花に葉が混じり、やや精彩を欠くようになった赤川ダム脇の桜並木。
ダム周辺に限って言えば寂しくはなったが、山に入ればそんな気持ちも吹き飛ぶだろう。


今日は古賀志山登山のスタンダードルートとなる北登山道で古賀志山山頂に向かうことにした。
ニリンソウは登山口に入ってすぐのところに小群落を作っている。
一輪目が咲き始め、二輪目が小さな蕾となって葉の上に顔を覗かせている。
この分だと今週末あたりに二輪目も咲くのではないだろうか?
実はこの場所のニリンソウを見に来たのはわけがあって、こことは別の場所にニリンソウの大群落があり、そこの予測をするためだ。
そこはここよりもやや標高が高いので開花はここよりも遅くなる。
したがってここのニリンソウの開花状況を見ておけばそこのニリンソウがいつ頃咲くのかがわかるというわけだ。


ひときわ精彩を誇る山吹。


2015年の豪雨によって地形がすっかり変わってしまった北登山道だが、今ではすっかり見慣れた光景となった。


お馴染みのエイザンスミレ。


伏流水を引き込んだ水場。
水量は豊か。


古賀志山で初めて見たマルバコンロンソウ。


これも管理人が初めて目にするバイカイカリソウ。


遠目にはタチツボスミレかと思ったが、近づくと全体が毛だらけなのと距が細長く立ち上がっている特徴から、アカネスミレなのでしょう。


ここも2015年の豪雨で地形が変わってしまった、通称・広場。


これは紛れもないツルリンドウ。
この1株だけだった。
蔓は真っ直ぐ立ち上がっているが、絡みつく相手がいないとやがて自重によって地を這うようになる。


富士見峠直下で脇道に入ると満開のミヤマシキミが観られた。


そのまま進むとカタクリの群落地に行くが、見頃は過ぎたので最初の一輪だけ撮って引き返した。


富士見峠直下のトウゴクミツバツツジ。
岩が陽射しを遮っているためか標高は低いのに開花しているのはほんのわずかだった。


1時間かけて富士見峠に到着。
このルートはあまり歩くことはないが、たまに歩くと先ほど観たマルバコンロンソウやバイカイカリソウなど、管理人が初めて観る花と遭遇できる。
捨てがたいルートだ。


古賀志山だ~!!(笑)
いや~、何ヶ月ぶりだろう、登頂するの。
過去の記録を見ると前回は昨年5月となっているから10ヶ月のご無沙汰ということになる。
最近は周辺ばかりを歩いていて古賀志山に来る機会がなかなかない。
ここへはいつでも来ることができる、そんな気持ちも働いているのかも分からないが、バリエーションルート歩きの楽しさを教えてくれたのが、この古賀志山なのだ。
疎かにはできない。


10ヶ月のブランクで山頂の様子はすっかり変わっていた。
老朽化していたベンチは真新しいテーブルとベンチに替わっていた。
NPO法人「古賀志山を守ろう会」によって設置されたもので、テーブルとベンチのセットが4基とベンチのみが10基、山頂に設置されていた。
防腐剤の臭いがまだ新しい。
南面の見晴らしも良くなっている。
お次はアカヤシオの見所、御嶽山へ。
アカヤシオは間もなく終わる頃だろうが今年はまだ観ていないので、御嶽神社の参拝も兼ねて行ってみよう。


古賀志山と御嶽山は隣り合わせ。
稜線上から多くのアカヤシオを観ることができる。
なお、御嶽山へは大きな岩をふたつ乗り越える必要があるが鎖が付いているので今ではそれほどの危険はないが細心の注意をするのに越したことはない(過去に死亡事故や重傷事故が起きている)。


この階段でも滑落事故が起きている。
足を踏み外したらしい。


神社の脇に小ぶりながら咲いたばかりのトウゴクミツバツツジがあった。


山頂からの展望は良く日光連山の他に白根山が、連山の奥に福島県と接する田代山が見通せた。


真っ平らな山頂湿原を持つ田代山。
日光市との境界からほんの少し福島県側にあるため、日光市の山と言えないのが残念だが、それでも親しみを持てる山だ。


咲き出したヤマツツジとその奥にアカヤシオ。
アカヤシオは他にもあるが花の1/3は散って地面に落ちていた。


ツボスミレ
フモトスミレ


ニリンソウとトウゴクミツバツツジの開花状況がわかったところでさあ次はどこへ行こうかな、そんな気ままな山歩きの今日である。
久しぶりに西尾根を歩いてみようか。
西尾根を下って内倉林道に出て次に西尾根を登り返すと弁天岩に行く。
そうすれば周回コースで駐車場に戻ることができる。


西尾根の下りは尾根の分岐が多い。
分岐に差しかかったら大きい尾根を目指すのが正しい。


正しいのだが、、、そこは何度か歩いたルートだ。
分岐を右の尾根に入ってみた。
たぶん、管理人未踏のルートのはずだ。
行き着く先は正しい尾根と同じ内倉林道なのでなんの心配もない、たぶん。


未踏の尾根は最後に藪となったが無事に白石川源流近くに降り立ち、これからさらに藪を突いて林道を探し歩いた。


進むべき林道内倉線が見つかったので三本枕木橋まで来て、ここから西尾根を登り返して弁天岩へ向かう。


歩き始めは桧林の急登を強いられるがそれも短い距離で、やがて展望が開けると気持ちのいい自然林となって1本のヒカゲツツジの出迎えを受ける。
ヒカゲツツジは半日陰の岩場の急斜面に生育する性質を持ちながら、ここのは緩斜面でなおかつ廻りに陽射しを遮る樹がないにもかかわらず元気に生育している。
写真を撮るのに最適な1本である。ここで15分ほど費やす。


岩場の途中で垣間見た男体山とその右に大真名子山。


岩の基部の歩きやすい道だが、それはわずかな距離だけで、西尾根は全体が岩場だ。


おぉ、まだ早いと思っていたが、ヒメイワカガミが咲いてる!
咲いたばかりと見えて楚々とした白さが美しい。
ヒメイワカガミは日光の山で見ることはなく、日光のは花の色がピンク。
女峰山の霧降ルートに白いイワカガミがあるが、萼片がヒメイワカガミの薄緑色とは違ってイワカガミと同じ茶色だ。調べるとヤマイワカガミらしい。


岩場の突端にあるアカヤシオ。


西尾根から見る松島コースの恐ろしげな景観。
この先、間もなく松島コースと合流する。


昨年4月以来となる弁天岩に来た。
ここに来るまでの間、人の話し声が聞こえていたが弁天岩からではなかったようで誰もいない。
古賀志山山域を歩いていると、思いがけない方向から人の話し声が聞こえてくることがあるが、それは地形の複雑さによる反響効果なのであろう。
管理人の幻聴では決してない(笑)。
遅くなってしまったがここで昼飯を食いながら次の行動予定を考えよう。


その前に写真を撮っておこう。
色の濃いアカヤシオがあったので古賀志山を背景にして撮ってみた。


こちらはピーク540とその奥に高原山。
この左には日光連山がよく見える。


風を遮るもののない弁天岩は今日はとても寒く、ここに来る間に脱いだ防寒ジャケットを再び着ることになった。
その上で岩に腰を下ろしてコンビニ弁当を広げた。
今日は奮発してコロッケ付きだ。
これで約600kcal摂れるので下山までの十分なエネルギーとなる。
食べながらこれから先のルートを考えた。
先週の逆コースで班根石山から二枚岩に行ってヒカゲツツジのその後の様子を確かめ、細野林道に下ってみよう。


班根石山、通称ごーごーきゅー。
この時間、さすがに人はいなかった。
ここを訪れる地元の人は12時前後に着いて昼食を摂り、1時前には引き上げて、古賀志山方面に戻って富士見峠から下山するというパターンが多い。


前回、31日は黄砂が酷く、遠方がまったく見えなかったが今日はとてもクリアに見えた。


班根石山を東に岩場を下ると沢に出る。
そこは群落とは言えないまでもそれなりの数のカタクリが生育している静かな場所だ。
先週はちょうど見ごろを迎えていたが1週間後の今日はほとんどが枯れていた。


沢から斜面を這い上がって二枚岩に向かった。


二枚岩へのルートにもヒメイワカガミがあるが、ここのはようやく蕾をつけたばかりだった。


眼前にで~んと構える二枚岩。
ここから見ると名前の由来がよくわかる。


先週はまだ固い蕾だったトウゴクミツバツツジが開花していた。
あと数日もすればここも紫色の花で満たされるであろう。


ヒカゲツツジはまだ十分観賞に堪える状態だった。
向こうに見えるのは三角山。


二枚岩から元来た道を少し戻って北東へ下るルートで林道細野線に下ることにした。
下りルートにも幾本かのヒカゲツツジがある。
ヤマツツジは今まさに開いたばかりという鮮やかさだった。


林道に出るとあとはアスファルトの道を歩いて駐車場に向かうだけ。


林道沿いのマルバスミレ。


エイザンスミレ


タチツボスミレ


細野ダムを通過。


森林公園のシンボルとも言える枝垂れ桜は間もなく終わりを迎えそう。


今日の全行程は11キロだったが古賀志山山域で10キロ以上の距離を歩きたいと思ったら工夫が要る。
同じルートを往復しない、という当たり前のことを実行することである。
日光の山、たとえば男体山や女峰山、白根山といった有名どころの山の場合、歩行距離や所要時間、交通手段の都合で周回コースを設定するのはなかなか難しい。
しかし、箱庭的なコンパクトさの古賀志山山域ではそれが可能であり、10キロ以上の周回コースが設定できる。
森林公園を起点にしてもいいし、南駐車場を起点にしてもいいし、内倉林道駐車スペースや鞍掛山登山口の駐車スペースを起点にしてもいい、地図の尾根を蛍光ペンでなぞっていけば、それが周回コースになる。

ときに尾根がいきなり崖になったり目の前に巨大な岩が立ちはだかったりすることがあるが、その場合は引き返せばいい。しっかりした踏跡がついていれば先人が歩いた跡なので大丈夫だろう。
管理人はそうやって、これまでバリエーションルートを1本ずつ、潰していった。
どうせ4キロ四方の狭いエリアだ。
あれっおかしいな、と思っても4キロ歩けば林道に出るから安心していい。林道に出たら下る方向に歩いて行けば大丈夫。などと無責任この上ないことを言ってるが、読者におかれては管理人の言葉を鵜呑みにせず、古賀志山山域を歩く前に読図の勉強とスマホには地図アプリを入れておくことをお忘れなく。