落とし物を探しに古賀志山へ。帰りは道を間違えてあの「小マラ岩」へ行ってしまった。

2016年5月18日(水) 天候:晴れ

15日に仕事の合間をぬって古賀志山の未踏ルートを歩いた際に、ザックにくくり付けておいた20メートルの補助ロープを落とした。

実はこの日、赤岩山に達したときにこれまで見たこともない踏跡が木々のすき間に見えたので魅力的に思え、踏み込むことにした。
その踏跡は赤岩山山頂から真北に向かって急降下していて、地図で見ると尾根伝いに下って林道に出られるようになっている。もちろん、古賀志山のことだから地図に道など描かれていない。あくまでも地図という平面上のことだ。そこは藪になっているかもしれないし、大きな岩が待ち構えているかもわからない。どちらも地図を見ただけではわからない。

急斜面を下りきると倒木や折れた枝が横たわる広葉樹の林に入った。藪ではないが横に延びた枝がじゃまになった。
目の前の枝を避け光の具合で突然、現れるクモの巣を払いながら歩いていると、後ろからザックが引っ張られるような感じがして足が止まった。
バリエーションルートとはいえ誰もいない道を歩いていると時折、何かの気配で背中がゾクッとして足が止まることがある。それに似た気配をここで感じた。
後ろを振り向く気持ちの余裕はなく、とにかくすぐにでもこの気配から抜け出たかった。ザックを背負う身体を左右に振って相手の手から逃れ、急かされるようにして先へ進んだ。
それからのことはよく覚えていない。背丈ほどの藪に突入し、沢を渡り、急斜面を登って稜線に出た。そこは御嶽山の西側から北へ延びる西尾根と呼ばれる稜線であった。時間はすでに午後3時になっていた。

時間が遅かった割に予定外の行動をとったことに加えて、あのゾクッとする気配でよほど冷静さを欠いていたのであろう、自宅に戻ってザックを部屋の壁に戻したときに、くくり付けておいたロープがないことに気づいた。念のため車の荷室を調べたが見つからない。車内をくまなく探しているうちにふと、もしかすると足が止まったあのとき、あれは気のせいではなかったのだということに思い至った。
木々の間をぬうようにして歩いたときにロープを木の枝に引っかけてしまい、それで足が止まったのだ。それを強引に進もうとしてザックからロープが抜け落ちたのだ。
なんだ、考えてみれば馬鹿馬鹿しい。自分の臆病さを晒しているようなものではないか。

でもね、みなさん。
誰もいない深い林の中を歩いていると、実際にあるんですよ。
すぐ後ろで人の声が聞こえたり、ザックをつかまれたりということが。
管理人はそのような現象を安全を守ってくれる守護霊がついた、とありがたいと思うようにしているが中にはイタズラな霊もいて、声を出して脅かしたりザックや足をつかんだりして遊ぶのもいる。15日のがそれだ。

さて、落としたロープを古賀志山のゴミにしたくない。といって、探しに行って見つかるものなのか。しかし、見つかるかどうかは結果だ。やはり落とした責任は負うべきであろうと自分を納得させ今日、同じルートを辿ることにした。
落として3日経つが、拾われることは絶対にないと確信している。なぜならそこは、道の入口が見つからないし、その先はロープも鎖もない急斜面を下らなくてはならない。バリエーションルートの中でも一般化することはあり得ないからだ。


赤岩山に行くにはいくつかのアプローチがある。
順当なルートだとまず古賀志山に立ちそれから御嶽山を経て赤岩山へ至る、古賀志山主稜線といわれるメインルートだ。標高500メートルの稜線は大きなアップダウンがなく(その代わり岩場が多い)、また、迷いにくい(迷わないという意味ではない)。滑落事故が起こるのもこのルートであることを書いておく。
次は主稜線の南に並行する、岩下道という昔の参道から主稜線へ向かって急傾斜を上っていくルート。ただし、これはどこから上るのかが難しいのでお勧めはできない。
次は岩下道のさらに南に並行する林道を歩いて岩下道へと上り、岩下道から上に書いた方法で主稜線に乗る方法だが、これはより難しくなる。
ふざけてるんじゃないの? と言われてしまうかもしれないけれどガイドブックによくあるルートの説明など、古賀志山に関しては難しくてできるものではない。それだけ複雑怪奇、道が入り組んでいるのが古賀志山の特徴と言える。

で、今日は落とし物を捜すのが目的なので余計な時間と労力を使わなくてもいいように、南登山道から入って猪落を通り主稜線に出て赤岩山を目指した。


明るい桧林の道、これが地図にある南登山道というやつだ。


やがて階段となり、このまま昇っていくと古賀志山と御嶽山を結ぶ主稜線に出る。ただし、この階段、長いですよ。


階段を昇り始めてすぐ、左へ分岐する道があるので暗い林へと入っていく。その道が主稜線に平行して東西に走る岩下道、岩下道に入ってすぐ北への分岐を入ると猪落(ししおとし)という岩尾根(画像)に乗る。
地面はほとんどなく、岩の上を歩きながら標高を稼いでいく。気をつけて歩けば危険はない。
ここから振り返った眺めは素晴らしいのでお勧め。


猪落の最上段に出たので次に、落とし物が見つかることを祈願するため古賀志山大神(こがしさんおおかみ)に立ち寄るという信仰心を見せる管理人である(^^)


古賀志山大神から主稜線に乗ったら御嶽山はすぐだが、その前に地図にある鳥居記号の脇を通過する。
古賀志山に通い始めて間もなく、この鳥居こそ御嶽山の入口なのであろうと思ったのだが、後で知り合ったNPO法人「古賀志山を守ろう会」理事長の池田さんから、これは群馬県に本部を置く新興宗教のもので、御嶽山とはまったく関係ないことを知らされた。


鳥居の脇を抜けると次に大きな岩が立ちはだかるのでそこは左へと巻くのが常道。
そして、最後にこの梯子を昇ると御嶽山だ。


主稜線を歩くと古賀志山~御嶽山は10分ほどの近さ。
古賀志山の山頂は広く、地元の人が造った丸太のベンチがあるので休憩に適しているが展望は良いとは言えない。南面が開けているがそこから見えるのは鹿沼市街と宇都宮市街だけで遠くの山並みを眺めるというわけにはいかない。
その点、御嶽山はほぼ360度の展望といってよく、我が日光連山がよく見える。


御嶽山の山頂には古賀志山を守ろう会によって山座同定盤が設置され、遠くに見える山の名前が特定できるようになった。正面に見えるのが男体山から始まる日光連山。
さらにその奥に白根山や錫ヶ岳、皇海山といった日光を代表する山並みが見える。


御嶽山から赤岩山へ向かって進むと間もなく、カミソリ岩と呼ばれる大きな岩が道をふさいでいるのでロープにすがって登る。
管理人、この岩を何度も繰り返し通過しているうちに、次第に手足をかけるホールド(岩の凹凸)がハッキリ見えるようになってきた。そうするとロープを使わなくても上り下り出来るようになる。要するに力任せに登るのではなく、自分の体重を支えるホールドをしっかりとらえれば、そう簡単に落ちるものではないという確信のようなものが生まれた。恐怖をいだきつつ確信も得る、古賀志山のおもしろいところだ。


次は主稜線の中間に位置する中岩。
ここからの見晴らしもよく、東から西へと180度の展望が得られる。
ちなみに主稜線は古賀志山と赤岩山まで東西に走っているが、中岩から南に岩下道へ降りる道、というよりは「カニの縦ばい」という岩場があって、技術があればスリルを楽しみながら岩下道へ降りられる。


中岩から西を見るとこれから行く赤岩山(右手前)とその奥に広がる鹿沼市の山並みが見える。
赤岩山中腹に見える茶色の屋根のようなものはパラグライダーの古い離陸場。左奥に見えるふたこぶの山は二股山。


中岩を過ぎると落差5メートルほどの垂直に近い岩場を下るようになる。ロープはある。
上から覗くと足がすくむが冷静になってよく見ると、岩には足を乗せるホールドがあるし木の根が飛び出していて手でつかむことが出来る。落ち着いて行動すれば絶対に事故は起こらない(たぶん)。


この岩場は心ないハイカーによりロープ外しがおこなわれその都度、別のハイカーの善意で補修がおこなわれるといったことを繰り返した、いわくつきの場所だ。現在は落ち着きを見せている。
新しいロープは鋼のワイヤーに巻き付けられるように付けられている。どうかこのまま無事であってほしい。


ロープ発見。
赤岩山山頂のこれも古いパラグライダーの離陸場から北へ降りる道がある。道は木々に遮られて見えないが15日に偶然、発見したもの。
15日はその道を進んでいった途中でロープを落とした。今日はその道を忠実に辿ってロープを探したところ割とすんなり見つかった。この先、藪になっていてその手前だから見つかったようなものだ。藪の中だったら見つからなかったと思う。
よかった。これで古賀志山のゴミにせずに済んだ。


ロープを無事に回収し気持ちに余裕が出たのでまたぞろ悪戯心が湧いた。
15日は途中から藪に入ってしまったので今日は藪を回避するルートを探してみた。すると、こんな場所に出た。昨年9月の豪雨で崩壊したピーク444直下だ。桧を植林した山の斜面が大規模な崩落を起こした。
土砂はこの沢を埋め尽くし、それでも勢いが治まらず沢の下流へと600メートルも流れて県道を塞ぎ、人家にまで達した。
さあ、ここからどこへ行こうかな?


崩落の現場を東へ向かっていくと静かな林道に出たのでこれをさらに東へと進む。林道は枝分かれしていてつい歩き易い方に進みがちだが、コンパスを見ながら東へと進んでいく。


林道が尽きるときれいな水が流れる沢と出合った。
沢を渡ると山道となったが道はふたつに分岐している。
さて、どちらの道を行ったらいいものか。
地図で見るとこの辺りからふたつの尾根が並行に南へ延びていて、いずれも古賀志山の主稜線に向かっている。ということはひとつは西尾根で、もうひとつの尾根は小マラ岩に行くようだ。どちらの道を行っても主稜線の御嶽山に近い場所に出られるはず。
とはいえ、この沢は地図にないし道も地図に描かれていない。それに、今いる場所はこれまで見たこともないので確たる自信がない。
まぁ、どちらの道を行っても主稜線に出ることはわかっているのであまり深く考えないことにしよう。
でもあの小マラ岩へ行くのは腰が引けるなぁ。できることなら西尾根を進みたい。


分岐から15分ほど歩いただろうか、西尾根は15日に歩いているがこの道はどうも雰囲気が違う気がする。


うむ、西尾根にはこんな場所はなかったはずだ、と不安が募る。


うふぇ、どうもおかしいと思ったら、あの小マラ岩に来てしまったではないか。
昨年の6月、そのときはネットで見て興味を持ち、この岩を目指して来たのだが、この岩の手前で道がなくなっていることがわかった。周囲を見回しても巻き道らしきものはない。どうやらこの岩を登らなくては先へ進めないらしい。
地図には岩記号として描かれているが古賀志山によくある鎖場であろうくらいの軽い気持ちで来たために、鎖やロープもないこの岩を前に恐れをなして、後戻りしようと思ったくらいだ。両手両足を使って必死になって岩を登り終えたときはあまりの怖さに膝が震えていたことをまだ覚えている。
そこへ再び来てしまった。
鎖やロープが付いていればそれほど危険な岩ではないような感じがするけれど、頼りになるものがない岩はさすがに怖い。下から岩を見上げ手足をかけるホールドの位置を確かめ、頭の中で予習をする。
その後、岩に取り付いたら動かしていいのは両手両足のうちどれか1本だけ。3本はそのまま岩をしっかりとらえておく。そうやって、時間をかけてゆっくりと丁寧に登っていく。


無事に小マラ岩の上に立つことができ、下を眺める。
古賀志山山域にこの高さの岩は数多くあるがロープも鎖もない岩というのはさすがに怖いねぇ。とても降りる気持ちにはなれない。

昨年6月の小マラ岩恐怖体験のブログ


今日、二度目の御嶽山。
小マラ岩を乗り越えて主稜線に出ると御嶽山はすぐである。
これまでそしてこれからの無事を願って手を合わせた。


御嶽山の山名板の裏に回り込むと小マラ岩とそれに続く岩がよく見える。中央に2段になって見えるのが小マラ岩だと思う。
いずれ機会があれば二人以上で行ってみて、ここから同行者に動画でも撮ってもらうとよりハッキリすると思う。


御嶽山からの下りは久しぶりに観音岩へ寄ってみることにした。
滝コースと呼ばれるガレ場の下り斜面を途中で左に登り返すと岩尾根と出合い、そのもっとも南に位置するのが観音岩である。怖い場所だが眺めがいい。
右の木にぶら下がっているのは観音岩をクライミング場として使っているクライマーのもの。だが、クライマーの姿は見えない。持ち主が現れるまでこのままにしておくべきか回収すべきか、こういうのは迷う。


観音岩から降りるには御嶽山から登ってくる道の反対側についている道を下って岩下道に降りるのがもっとも安全なのだが、今日は別のルートで岩下道に降りることにした。
観音岩からの岩尾根は古賀志山大神に向かっている。踏跡はあるが幅30センチくらいしかない危険なルートだ。途中、古いロープがついたこんな岩場がある。以前はここもクライミングで使われていたらしいが現在は瀧神社がクライミング場に変わり、ここは当時のロープがそのまま放置されている。
岩下道に出るにはこの岩を左手に見て通過すればいいのだが昨年、古賀志山大神に行くにはこの岩を通過すればいいのだろうという軽い気持ちで登ったのはいいがその先に行けなくて、やむなく降りた。
その際、足がかりになる凹凸が探せずとても怖い思いをしたのでその原因を突きとめるべく、同じことをしてみた。凹凸は足が届く位置に見つかった。気が急いていて昨年は見逃していたのだ。登る前に岩をよく観察することの大切さを感じた。

前回の恐怖体験のようす


これが岩下道に降りる最後の岩場。
落差は5メートル以上あるだろうか、ロープがやけに長く見える。ここも難所だ。


距離は短いながら変化に富んだ実に楽しいルートだった。
でも時速は1キロにも満たない(悲)
日光の2千メートル峰でさえこれほど遅いペースを強いられる山はない。
管理人の足が遅いのではなくて古賀志山が手強い、そいうことにしておこう(^^)


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です