秋晴れに誘われて霧降高原丸山へ(シャリバテに追い込んでみた)。

2019年10月1日 快晴

先月26日から登山のパフォーマンスを向上するとともに体重を減らす目的で実験的に、普段の主食をオートミールの雑炊に代えた。

夏は仕事量が多いから食欲が増す上に、暑いので仕事しながら生ビールを飲んでしまうため体重が増える。
スノーシューツアーで絞れた身体は夏で盛り返してしまい、2~3キロ増になる。これは登山に致命的だ。
500ミリのペットボトルを4~6本ザックに入れて登山をするようなものだもんね。
毎年のことながら危機感を募らすものの減量への有効な手立てがないままスノーシューツアーの季節に突入し、シーズン初めは辛い思いをする。

そこでこの秋になって抜本的な対策として家でのトレーニングに加えて食事を見直すことにしたのだ。それがオートミールの雑炊というわけである。野菜数種類と蒸し鶏、鶏卵をトッピングしてもエネルギー計算すると約400kcalと少なく、カップ麺1ケと同程度だ。
カップ麺(管理人は「うどん派」)は登山で朝早く出発する際、出来上がるまでの5分の間に他のことができるので重宝しているが、三大栄養素のバランスで見ると表示されているエネルギーの6割を炭水化物が占めており、登山で大切な筋肉の疲労を軽減させるのに有効なタンパク質が少ない。そのタンパク質をもっと多く摂りたいと思ってのオートミール雑炊なのである。
ただし、炭水化物はエネルギー源として大切なので軽視するものではない。

オートミールはPFCのバランスに優れているがトッピングによってそれをさらに自由自在に変えることができる。
PFCとは人が生きてゆくのに必要な三大栄養素のことでたんぱく質(protein)、脂質(Fat)、炭水化物(carbohydrate)を指している。これのどれかひとつでも欠いてはだめだし、どれかひとつに偏ってもいけない。バランス(均等という意味ではなく)が大切なのである。
厚労省の推奨値は総摂取カロリーに対する割合でP=19~23%、F=20~30%、C=43~65%となっていて、年齢と活動量によって決める必要があるが管理人はタンパク質を多めに摂るようにしている。

代謝が盛んでなおかつ活動量が多い若年層はエネルギー源として炭水化物を多く摂らないといけないが、高齢になるほど衰えゆく身体の維持のためにタンパク質を多く摂らなくてはいけない。それを考慮してタンパク質をたくさん摂れるようトッピングに工夫を凝らしている。この日のは概算でP=38%、F=23%、C=32%なので厚労省推奨値とはかなり異なる。
厚労省の推奨値と異なり、なぜP > Cなのかについては根拠がある。ただし、説明が長くなるためここでは割愛。いずれ別のブログで説明します。
割合は他に4:2:4、3:2:5も考えられるが、いずれもトッピングで調整できる。
味付けは鶏ガラスープにしたり塩だけにしたり、和風だしにしたりと気分次第でなんでもいい。水は400~500ミリリットル使うから満腹感が得られるし、年寄りの脱水防止にもなるだろう。

三大栄養素についてまとめてみたのでご参考に。推奨摂取量の意味は上に書いた通り。
出典は書籍やネットなどいろいろで、つまみ食いしただけ(笑)。管理人の理解不足で間違いが多々あろうかと思うので、興味があればご自分でお調べください。

三大栄養素
タンパク質(Protein )脂質(Fat)炭水化物(Carbohydrate、主に糖質を指す)
エネルギー
(1グラムあたり)
4kcal9kcal
4kcal
作用食物が体内で分解されてアミノ酸になり筋肉や骨、臓器、皮膚、爪などの成分になる。
また、エネルギーとしても使われる。
糖質との同時摂取で糖質を優先的にエネルギーとして使える。
小腸で吸収されエネルギー源になったり細胞膜を構成したり、皮下脂肪として臓器を保護したり、体を寒冷から守る。
ビタミンA・D・E・Kの吸収を促進する。
食物が体内で分解されるときにエネルギーになるという即効性の性質をもつ。
登山における主エネルギーとして最適。
また、消化吸収されるとブドウ糖になり脳の大切なエネルギー源になる。
余ったブドウ糖はグリコーゲンとして肝臓や骨格筋に蓄えられ、血液中にブドウ糖が足りなくなれば肝臓から補充する。
摂取タイミング登山の前中後が望ましい。下山直後の摂取は筋肉への取り込みが活発になり筋肉痛の軽減や筋肥大に結びつく。炭水化物に準じる。摂取して分解されるまでの時間を考慮して、1時間前には摂取を済ませておく。
推奨摂取量19~23%20~30%65~43%
メモ過剰摂取して使われなかったタンパク質は体脂肪になるため使い切ることが大切。
摂り過ぎは肝臓や腎臓に負担をかける。
使われなかった脂質は、中性脂肪として体内に蓄えられる。
その場合、1グラムで9kcalと高いので減らすにも苦労が伴う。
炭水化物の摂取には米飯がもっとも簡単だが他の栄養素が少ないのが難点。
したがって少量のおかずでご飯をたくさん食べるのは薦められない。昔はビタミンB系の不足で「脚気」を引き起こした。

1週間経過して、体重が500グラム減った。
当然である。
  摂取エネルギー < 消費エネルギー
だからね。

これで登山のパフォーマンスが向上するとはまだ言えないが、長いスパンで見れば効果は確実に現れるだろう。
不思議なことにアルコールに手を出さなくなった。
コッテリしたもの、辛いもの、しょっぱいものが排除され実に淡白な料理(と大声で言えるものでもない)であることからアルコールを必要としなくなった、というよりも決して美味くないと思う、オートミールが肴では。
数日前の食事スタイルからは想像できない変貌ぶりに我ながらビックリ(笑)

今日の朝食も同じ、400kcalのオートミール雑炊だった。
ハードな登山をする前の食事として400kcalは本来であれば少なく、問題はこれを常食とした場合、はたして登山は成り立つのかどうかだ。
4年前のシャリバテ登山(※)は無知からくるものだったが今日はそれなりの知識に基づき、400kcalで何時間、身体が保つのかそれを確かめるつもりだ。
いつもの山行だと1~2時間おきに行動食でエネルギーを補給するのだが、今日はそれもしないつもりだ。果たしてどうなりますことやら。
※赤岩滝に行った帰りにシャリバテで動けなくなったことがある。→こちら

行程表
県道169号線(10:20)~キスゲ平レストハウス(11:53)~八平ヶ原(12:40)~丸山(13:10)~小丸山(13:49)~天空回廊~キスゲ平レストハウス(14:24)~県道169号線(15:38)

メモ
・歩行距離:16.3キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:5時間18分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:993メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

今日の目的地である丸山は霧降高原キスゲ平が登山口になるが、その6キロ手前の県道に車を置いて歩くことにした。
キスゲ平には大きな駐車場があって平日であれば満車になることはなく、丸山への赤薙山への、そして女峰山への登山口になるが丸山も赤薙山も距離が短くて物足りない。といって女峰山だとこの時間から登り始めたら帰りは日没になる。
今日は身体強化のトレーニングのつもりで歩くので、適度な距離が必要だった。ここからキスゲ平まで6キロ、そこから丸山を1周してここへ戻るようにすれば16キロになり、女峰山を往復するのと同じ距離を歩ける。所要時間は女峰山よりも3時間ほど短くできるのと非常時は路線バスでここまで戻ることができる。
それと足を大きく持ち上げないと上昇できない山道と違って、車道は水平移動するのに必要な筋肉が鍛えられるから効果がダブルで得られるはずだ。


歩き始めて30分で赤薙山(2010m)が目の前に迫ってきた。
至近距離で見る赤薙山は雄大で、この迫力は車で走っていても伝わってくる。


キスゲ平の入口にオヤマリンドウが咲いているのを見つけた。
8月に盛りを迎えていたはずなのにまだ衰えていない。


キスゲ平には1時間半で着いた。
赤薙山や女峰山に行くには正面に見える天空回廊を利用するが、丸山はそれも利用できるが管理人はいつもこの北(右)にある登山道を使うようにしている。特に、今日のように天気のいい日には。


丸山の入口。
ここから歩き始めると左回りコースで山頂に到着し、山頂を南に下って天空回廊で降りることになる。「ある目的」のためにはその方がいい。


キスゲ平から見上げる丸山(ズーム)。
山頂付近のところどころが赤っぽく見える。
ヤシオツヅジの紅葉だろうと思う。


丸山北登山道の入口付近。
笹が刈られていて歩きやすい。


道はここで八平ヶ原経由丸山と天空回廊の700段付近に合流する登山道に分岐する。


八平ヶ原に向かって岩場を上って行く。
岩は安定しているので危険はない(と思う)。


岩場はすぐに終わって普通の登山道に変わる。
ここからは丸山の裾野をトラバースするように八平ヶ原へ向かって歩いて行く。


八平ヶ原の入口に到着。
ここは広大な笹原でシラカンバの宝庫。
新緑の季節はとても美しい。


歩き始めて37分。
八平ヶ原でもっとも眺めのいい場所。
視界が広がって北東から南東にかけての景色(といっても山ばかりだが)が一望できる。
北東の方角に高原山(鶏頂山、釈迦ヶ岳、中岳、西平岳の総称)がよく見える。
冬はもっと美しい。


麓から見上げたときに赤く見えたのはこれと同じヤシオツヅジであろう。
丸山はツツジの宝庫で中でも純白の花を咲かせるシロヤシオは見ごたえがある。


ここが実質的な丸山の登山口。
傾斜はここから始まる。

今日の朝食は体重減を目的に先週からカロリー少なめにしている。ほぼ毎日3食、オートミールの雑炊である。
カロリーは1食あたり400kcalと少ないので食後3時間もすれば腹が減る。
7時半に食べたのでこの時間で5時間15分。
これまでだとこの辺で行動食を食べてエネルギー源とするところだが、今日は何も食べず、身体をシャリバテに追い込む作戦だ。
シャリバテ状態で歩き続けるなど登山の常識からすれば以ての外だが、400kcalの朝食で何時間、耐えられるのかをテストするつもりなのだ。
空腹で血糖値が低くなっているせいか軽いめまいが生じている。
そして足が重い。が、まだエネルギーが枯渇したようには思えない。もう少し頑張れそうだ。

そんなことして一体、なんの役に立つのか?
一言で言ってしまえば、食物によるエネルギーの供給が枯渇して、身体に蓄えた脂肪をエネルギーとして利用するタイミングを測りたいと思っている。
うまい具合に脂肪が燃焼してエネルギーになってくれれば空腹でも登山が持続する、そんな考えだ。
まっ、こうしていろいろなことを考えられる状態なので、身体は疲れていても頭は正常なのであろう。


距離は短いながら傾斜は急。
空腹が高じて足元がおぼつかない。
足を取られないように気をつけて上がっていかないと。


このルートは階段が多い。
つまりそれだけ傾斜が急であることを表している。
朝食で得たエネルギーは枯渇寸前のようだ。足のふらつきとめまいが止まらない。
階段を一段ずつ、転げ落ちないように丁寧に上って行く。
脂肪よ、燃えてエネルギーになってくれ! って、甘いか(笑)


山頂目前。
天空回廊終段の展望台が見える。
下山は展望台まで行き、階段を利用してキスゲ平のレストハウスまで降りる。


お~、山名板が見えた。


山頂は清々しい空気で満たされていた。


この素朴な山名板(柱)が管理人は好きだ。


山頂の西に赤薙山とそれに続く女峰山への山並みが見える。
とてもいい眺めだ。


視線を南に転じると日光市街と鳴虫山、鹿沼の山並みが見える。
墨絵のようで美しい。


山頂で展望を楽しんだ後、昼ごはんとした。
朝食の400kcalで5時間45分、行動食なしでよく耐えた。
エネルギーは枯渇しているようだがこのまま何も食べずに下山してみようか、という考えもなくはなかった。しかし、これまでの山行はどちらかといえば絶えず物を口にしながら歩いていたため、身体はそれに慣れている。エネルギーが枯渇したまま歩くのはもう少し経験を積んでからにしよう。
ここで食べて下山することにした。
持参したのはいつもの菓子パンや弁当ではなく、途中で食べるための行動食。これで昼ごはんとした。
ミックスナッツに自作のエネルギーバーそして干納豆という、カロリーこそ400kcalと少ないながらもタンパク質、脂質、炭水化物のバランスがとれた最強の組み合わせである。


食べたものの消化を待ち、下山を始めた。
ヤシオツツジがいい色になっていて赤薙山が引き立つ。


行動食が消化してエネルギーに変換され始めたのか、足のふらつきとめまいは収まっている。
シャリバテから脱却したらしい。


ガレ場を下って間もなく小丸山との鞍部に差し掛かる。


道はこの先で赤薙尾根と交わる。
するとすぐ、小丸山だ。


小丸山に到着。
前方にシカ柵の回転ゲートが見えてくると天空回廊はそのすぐ先である。


ヤマハハコ


天空回廊最上段の展望台とその向こうに高原山。


さあ、下ろう!
天空回廊は画像に見える爪楊枝状の部分でちょうど半分の700段。傾斜は急である。
それから先は傾斜がぐっと緩くなってレストハウスまで続いている。


下山した丸山を振り返る。


キスゲ平のヤシオツツジもいい色に染まっている。


700段目の手前からキスゲ平の中を歩く散策路が派生している。
ジグザグを描きながらレストハウスへと続いている。
初夏は沢山の種類の高山植物を観ながらキスゲ平の中を歩くことができる。
距離は長くなるが時間もたっぷりあることだし、散策路を歩いて下山しよう。
この時期になるとさすがに花は目立たないが、なんかしらの植物はあるだろう。


散策路は階段と交わりながらジグザグに高度を下げていく。
目を凝らすとところどころにオヤマリンドウが見つかる。
ノハラアザミも見つかった。
その気になって花に集中すれば結構、見つかるものだ。
丸山に登るのにここを下山のルートに選んだのはそんな理由があった。


ここからは階段で。


階段を降りきって無事にゴール、と赤薙山や女峰山からの下山であればそういうことになるが、今日は車を置いた場所まであと6キロ歩かなくてはならない。


レストハウスでトイレを借りて再び歩き始める。
これまで傾斜を上昇下降するため膝を曲げ、太ももを上下させる動作を繰り返してきたが、道路の場合は水平移動となる。太ももを上げる必要はないが歩幅が大きくなりその分、股関節に負担がかかる。管理人が苦手とする動作なのである


6キロの道のりのうち、途中1キロほど走ったせいか1時間ちょっとでゴールできた。
シャリバテは完全に解消されているが前進運動の時間が長かったため股関節に難のある管理人には痛く、辛かった。
この痛みが筋肉の増強に結びつけばいいのだが、、、

脂肪燃焼スイッチがONになるタイミングは残念ながら把握できなかった。
人は機械ではないのだから、こちらが望んだときにONになることなどあり得ない。把握できないのはやむを得ないことだ。ただし、スイッチONになるタイミングを追求する気持ちはこれからも持ち続けよう。

朝食で摂ったエネルギー400kcalは山頂まで5時間45分、かろうじてだが保った。
足はフラフラだったが思考の衰えはなかった。これは脳への栄養が供給されているということになる。朝食で撮ったエネルギーは枯渇したようだが、もしかすると微少ながら脳にブドウ糖がエネルギー源として供給されていたのかも知れない。あるいは肝臓に蓄えられたブドウ糖が供給されたのかもわからない。
後者であれば脂肪燃焼スイッチではなく、ブドウ糖供給スイッチがどこかでONになったのか?

人は空腹になると腹を満たしたいという欲求が起こる。
それが朝昼晩といった定期、定時の食事に結びつく。
野生の肉食動物は空腹になると腹を満たすために狩りという行動を起こす。食事はその後だ。しかも、獲物が採れたときに限られるので人のように定期、定時というわけにはいかない。
野生の肉食動物は空腹状態にもかかわらず、空腹を満たすために狩りという激しい運動をしなければならないわけだが、そのエネルギーはどこから産み出されるのだろうか。人とは異なる肉食動物独自のメカニズムというものがあるのだろうか。

人も肉食動物と同じように空腹への耐性を高めることができれば、日常生活における食事をもっと軽くすることができる。それは各臓器への負担を軽くすることにつながるばかりでなく、身体に好影響をおよぼすことになるはずだ(確証はないけれど)。
結果として登山のパフォーマンス向上に大きく貢献するのではないだろうか。

山岳小説やドキュメントを読むと、とにかく荷を軽くしなければならないような国外の高所登山では、クライマーは早朝、砂糖をたっぷり入れた熱い紅茶とわずか数枚のビスケットを食べただけで高みへ向かうシーンが登場する。当然ながらエネルギーはたかが知れている。だから無事に還ってきた彼らは見る影もないほど痩せ細り、登山前の姿とは別人のように見える(とある)。
彼らクライマーは元々、体脂肪が少ないので脂肪から得られるエネルギーは期待できない。ということは筋肉や肝臓からエネルギーを得ながら活動しているということになる。

管理人のように筋肉は少ないが脂肪だけはたっぷり蓄えているような人は、その脂肪からエネルギーが供給される身体のシステムが望ましい。
なにしろ脂肪は1グラムあたり9kcalというエネルギーを産み出してくれるから、1キロの脂肪で9000kcalという膨大な潜在エネルギーとなり、それだけで1週間の縦走が可能だ。
脂肪を10キロも蓄えていれば90000kcal。何も食べずに百名山を廻れる、、、んなバカな!!

最後に今日の山行は画像右の本を参考にした。
画像左は筋トレ(筋肥大)で体脂肪減少にアプローチするもの。