常連さんと行く日本百名山・安達太良山(一日目)。

2019年8月1日(木) 晴れ

福島県の山に初めて登ったのは2016年9月だったから、間もなく3年になる。
初めて登ったのは福島県南部と日光市との境にある帝釈山だった。
登山口となる猿倉峠まで、日光市から延びる林道が通行できる時期であれば2時間、林道がクローズしていると回り道をするので3時間半かかる。その林道は一年を通して閉鎖している期間の方が長くまた、その時期はいちいちネットで調べなくてはならないという難があることから結局、福島県の会津田島に北上して今度は日光へ向かって南下するという、時間がかかる方法をとる。
日光市との境界線上にある山にも関わらず移動時間がかかるのだ。

まっ、でも山頂からの眺めは360度もあるし峰続きの田代山は山頂全体が湿原になっていて気持ちがいいのでこれまで4回ほど訪れたであろうか。
実は帝釈山だけで終わっていれば今ほど福島県の山にのめり込むことはなかったはずだ。
帝釈山に行く道中、檜枝岐村に会津駒ヶ岳の登山口があるのを目にして登ったのが、実質的に福島県の山の虜になる発端と言える。
日光市との境界よりも福島県に入り込んでいるが登山口までの所要時間は帝釈山よりも短い。
会津駒ヶ岳の初登ではその雄大さに大きな衝撃をうけた。
それまでの殆どの時間を日光の山に費やしていた管理人にとって、目の前に広がるそれまで日光の山では見たことのない光景に目を奪われた。
どこまで続いているともしれない傾斜湿原とそこに咲く花は、管理人を湿原の果てまで誘い込むに十分な魅力を携えていた。

ヒトは山に沢や滝があることを見て自然が生きていることを感じるのではないか、これは初めて女峰山に登ったときに、2千メートルを超えたところにいる自分の足元から水が激しく吹き出しているのを見て思ったことだ。実に不思議で感動的な光景だった。太古の昔からそこに身動きせずにいる山なのに、水を蓄え草木を育み生きていることに気づいたのもそれが最初だ。
その感動が会津駒ヶ岳で蘇った。

以来、日光の山には目もくれず、福島県の山に傾倒し登り続けているのはこのブログに記録しているとおりである。
自然は生きている。
福島県の山はこの3年でずいぶん登ったが、期待を裏切られることなく今日に至っている。

深田久弥・日本百名山「安達太良山」。
昨年8月、2日続けて登った。
四季折々の姿を見たいと思い、今年は5月の残雪期に登った。
今日が4登目となる。

行程表
沼尻登山口(9:07)~船明神(11:53)~安達太良山(12:39/13:40)~峰の辻(14:07)~くろがね小屋(14:45)

メモ
・歩行距離:10.4キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:6時間32分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:1186メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

4時に自宅を立ったものの買い物をしたりトイレに立ち寄ったりすると、ここまで5時間はかかってしまう。
とはいえ、今回はくろがね小屋を利用する1泊2日の登山なのでこの時間から歩き始めてもまったく差し支えない。気になるといえばすでに気温が上がっていて暑いことだ。


白糸ノ滝展望台。
200メートルほど先にある岸壁を流れ落ちる滝だが地形から見て近づくことはできないようだ。


白糸ノ滝遠景
どう見たってあそこへは行けそうにない。
空中を這うワイヤーに気を止めた。
あれは一体、何をするものなのだろう。
滝の先は沼尻温泉の源泉そして、湯の花の採取場になっているのでもしかすると採取した湯の花を運ぶためのゴンドラなのかも。


林が開けると船明神山が見えてくる。


実になったコケモモ。


お~、これはこれは。君はツルリンドウだよね!
日光でも一部のエリアで分布しているらしいが、管理人はこれまで見たことがなかったので貴重な植物発見に喜びは大きい。とはいえ、この1株だけだった。


左に分岐する道があり沼尻温泉の源泉と湯の花の採取場に降りることができる。


そう、分岐した道はこの下に降りられるようになっている。
沼尻温泉の源泉と湯の花の採取場である。
明日はあそこからここへ上がってくる予定だ。


マイヅルソウの実


ニガナ


白く変色した荒々しい光景と出合うとそこは沼ノ平。
地底から硫黄性のガスが噴出している危険地帯で立入禁止になっている。
白く変色しているのはガスの影響による。
安達太良山は今も活動している火山群で、火口のひとつである沼ノ平は1996年9月に噴火。その際に硫黄性の有毒ガスが発生したことでそれまでここを横切る登山道があったが以後、立入禁止となった。
翌97年9月、安達太良山を目指していた14人のパーティーが霧で視界不良となり、間違って立入禁止の沼ノ平に踏み込んでしまい、4人が亡くなる事故があった。


オトギリソウ


シラネニンジン


沼ノ平にさらに近くなり地震観測計が見えるようになった。
噴火の前兆となる微動地震をキャッチするための機器である。


いい光景だね~
手前に沼、遠くに安達太良山。そして沼ノ平の荒々しさ。


沼ノ平脇を抜けると次はあの岸壁の上に立つよう、道が続いている。
砂礫帯は踏跡がつかないため、昨年はどこをどう行っていいのかわからずこのあたりを右往左往した。


今が盛りのコメツツジ


岸壁の上に行く道


ノリウツギ


岸壁の上に建つ船明神神社
昨年は祠が横倒しになっていたが元に戻っている。


船明神山(1667メートル)を目の前に、右へ行くと母成登山口と銚子ヶ滝登山口、左は矢筈森を経由して安達太良山へ行く三叉路。ここは左へ行く。
なお、安達太良山山頂3KMとあるがこれはなにかの間違い。
地図をなぞると1.4KMと計測された。


三叉路から安達太良山へは北上して矢筈森に出て、それから南下するがその間、地面は砂礫帯でとても歩きにくい。特に下りだと靴が滑り転倒の危険大。


沼ノ平はどこからでもよく見える。


イワシモツケ


荒涼とした安達太良山山頂。
山名板の向こうに見える岩の堆積が「乳首」と呼ばれているピーク。


乳首の上に立つと360度の展望が得られる。


西の方角に先ほど歩いてきた船明神山が見える。
その向こうには磐梯山がうっすらと見えているが写真には映らなかった。


明日行く鉄山の方向


シラネニンジン


今夜は小屋に泊まることを考えると気持ちに余裕がある。


峰の辻の手前まで来るとサラサラと涼しげな音が聞こえ、そこに澄んだ水の流れがあった。
沢と出合うとどうしても味を確かめたくなる。
両手を流れの中に浸し口の周りの汗が乾燥して結晶化した塩分を洗い流し、次に口に含む。
やや酸味がかっていることからわずかに硫黄の成分が含まれているようだ。飲み込むことはしなかった。


くろがね小屋は奥岳登山口へ向かう途中にあり、ここはその通過点の峰の辻。
振り返って安達太良山を眺める。


広葉樹の中ではもっとも早く紅葉するナナカマド。
それにしても早くない?


林間を抜けると眼下に今日の宿泊地、「くろがね小屋」が見える。
老朽化を理由に今年度中(2019年度)に取り壊される予定のある木造の山小屋である。
当初の予定では2018年度中に行われることになっていたが一年、延長となったそうだ。


建物内部は太い梁が使われていて重厚な造り。
1階に食堂と男女別の浴室(源泉かけ流し/石鹸・シャンプーは不可/カランは水のみ)と男女別のトイレ(和式・非水洗・非電化)があり寝室は画像の階段を上がった2階に、4人部屋を基本に10号室まであった。
食堂の半分は吹き抜けになっていて開放的である。登山靴は寝室の床下収納庫に入れるから履き間違いの心配はない
Wさんとはここで落ち合うことになっている。
くろがね小屋は夕食にカレーを提供することで人気が高く、常連客も多いらしい。
我々もそのカレーを食べたくて申し込んだのだが、後でわかったことだが食事を必要とする場合は宿泊3日前すなわち29日までに予約をしなくてはならないことになっていて、管理人が申し込んだのは30日なのであった。カレーにはありつけなかった。
週間予報で1日がほぼ間違いなく晴れる日を待った結果、遅くなり30日の申し込みとなったわけだが、残念なことをした。また次回ということにしよう。
なお、自炊はテラス下の専用室(シンクあるが物置のような雰囲気)でおこなうが食べるのは食堂が利用できる(食堂が満席の場合は定かではないが)。


一日目のルート